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星屑たちのハッピーエンド  作者: ねこにゃん@灰猫陽路(ハイネコ ヒロ)
第1章 どこぞの天の原、出でし月は違うもの
6/11

6話

 ※※※※※※※※※※※※※※


「いやぁ、全然気づかなかった。キミって地味だね」

「オイオイオイ、どこが地味だ、私可愛いだろうが!!」


 断固として抗議すると、ジロジロ遠慮なく見られた後に首を捻られた。お?喧嘩か??


「やっぱりキミも、同じ姿なんだね」

「……殺そうとしてるターゲットの名前くらい、チェックしてないんですかねぇ????」


「全くないね」

「殴るぞ、コラァ」


 真顔だった、この野郎。

 握りこぶしを震えながら構えると、まあまあと心のこもらない宥めをもらった。


「僕の方は知っての通り、魔族として生まれたよ。まぁ魔力なしのごく潰し王子だけど」

「いや、知らんけど」


 辺境伯の娘殺ってきたら認めるって言われたから来たんだよね、と軽く言うハイネ。

 さらっと重たい話を投げ込まれたが、こちらとしても屋敷半壊皆殺しにされてるわけで、同情なんぞできんわ。


「じゃあ、とりあえず行こうか」


 何がじゃあで、何がとりあえずなんだ。

 私に差し伸べられた、血がべっとりついた手をじぃっと見つめる。―――はぁ、と溜息をひとつ。


「…………時間逆行(ムーンウォーク)



 ※※※※※※※※※※※※※※



 ゆっくりと、目を開ける。

 薄暗い部屋の天井が、視界に入った。―――今世もこの能力は健在だ。


 はぁぁぁぁぁぁぁ、と魂が抜けるほど深い溜息を吐く。あの野郎、無茶苦茶だ。


 微かな音共に、誰かが入ってきた。


「あら?リンお嬢様、お目覚めですか?」


 驚くソーニャの顔を見つめる。

 私だって鬼じゃないし、いくら前世を思い出してからの感覚しかないとはいえ、記憶の中にある人の死をそのまま受け入れたりはしない。


「ソーニャ、直ちに全員屋敷から出ていきなさい」

「お、お嬢様?何を……」


 ま、正しい反応だ。十歳の子供が何言ってんだ、と私でも思うだろう。

 だが構わん!今回は直球勝負といこうか!


 ベッドからぴょんと飛び降りる。

 ペタペタと裸足の音を鳴らしながら、ソーニャの前まで行く。


「聞こえなかった?全員、出ていきなさい、と言ったのよ」

「どうかされたのですか……?悪い夢でも……」


 ソーニャは戸惑うだけで、私を恐れたり慌てたりしない。……私は今まで、権力を振りかざしたりしなかったようだ。


 だがここで子供のように癇癪を起せば、ただの戯言として扱われてしまう。

 ゆっくりと、冷酷に見えるよう、表情を消す。


「今、私に口答えをしたの?辺境伯令嬢たる私に、平民のあなたが?」

「おじょうさま……」


 この差別的発言に、ようやくソーニャの顔色が青くなった。

 よしよし、この勢いだ!


「首を刎ねられたくなければ、言うとおりになさい。それとも、死にたいの?」


 精一杯の睨めつけをかます。ここだ!決まった!!

 ソーニャは言葉も出ないようだ。


「お嬢様?どうかされましたか?」


 部屋の中の騒ぎに、廊下で警護していた騎士が顔をのぞかせる。

 ふふん!お前も私のこのブリザードのような冷たい言葉を浴びるがいい!!


「そこのお前、辺境伯の令嬢たる私が命じます。今すぐこの屋敷から出ていきなさい」

「え?なに、え???」


 ぽかんと呆けている場合じゃないぞ!事態は一刻を争うんだぞ!!

 そうこうしているうちに、わらわらと人が集まってきた。


 よしよし、みんな聞くがいい。お貴族様の命令だぞ!!


「何度言わせるの、屋敷から全員今すぐに出ていきなさい」

「お、お嬢様?一体どのような理由でそのような……」


 ロマンスグレーの渋い執事が、弱り切ったと言わんばかりに眉を下げている。

 理由、理由はやっぱいるか?えっと何にしよう……。うーんこれは定番のアレでいくか。


「お前たちが気に食わないからよ!だから言う通りにしなさい!」

「――――」


 絶句する人々。よぉし、これぞ貴族よ。これならみんな言うことを―――


「やはり、お嬢様にあんなものを観せるべきではなかったのです!!」

「……ソーニャ?」


 わっと泣き出しながら叫ぶソーニャ。……私何か見たっけ?

 記憶を探り探りしていると、回答が出された。


「今流行りだからと言って、悪徳令嬢が活躍する劇など!お嬢様が影響されてこんなに……!」

「な、なんてことだっ!!」


 ………え、いや違う、違うんですけどソーニャさん。

 死角からの攻撃に、思わず動揺してしまう。


「ち、違うわっ!ほんとうに、気に食わないからっ!」

「しかし、お嬢様、劇は劇です。娯楽としてならよいですが、現実ではないのです」


 きっぱりというソーニャ。いや、そうなんだけれども……。

 頭で理解している正論に、ぐっと反論を飲み込んでしまった。その私の態度で、ソーニャが合点がいったように頷いて、指示を出してしまう。


「お騒がせ致しました。皆様、各自お戻りください」

「ちょ、ちょっと!!私の指示はっ?!」


 戸惑いながらもドアから出ていこうとする彼らを、引き留めようとしていると―――

 ―――ドォォォン!!!!


「―――ここかな?辺境伯の「時間逆行(ムーンウォーク)


 …………おっけい、失敗ね、なるほどね??



 ※※※※※※※※※※※※※※

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