10話
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―――おどろおどろしい、城だ。
切り立った崖、どんよりと曇った空、荒れ狂う黒い海、人を拒むようなモチーフが刻まれた門、そびえたつ尖塔。
……どこからどう見ても誰が見ても、魔王城と答えるような、そんな外観だ。
ようやく、目的地の、ハイネが住んでいる城の門前に到着したようだ。
「……もういいか」
「ダメーーー!」「くそっ、この下等生物がっ」
イライラしながら言う角野郎、改めオマリー。
そう、今私を片手で縦抱きにしているのだ。クククッ、嫌がってる嫌がってる。
森から移動するのだが、私の屋敷に行き来した瞬間移動はもうできないらしい。
なんでも、とっても貴重な魔法スクロールを使ったからできたのであって、それももうないのだと。
だから、徒歩で行くことになったのだが、問題は私。
目的地へは距離にして一日かかるとのことで、そんな体力も気力も今の私にはない。
というか、元気いっぱいでも普通の幼児には無理だよ。
普通じゃない幼児のハイネは平気らしいが、私は自慢じゃないが一歩たりとも歩けない。
なので、ハイネに命令されてオマリーが私を運ぶことになった。その時の絶望顔ったら……ぷくく。
最初は荷物のように担がれたが、胃の内容物をかけるぞと脅すと渋々抱えなおして。
体勢について色々注文する私と、早く移動したくて「言う通りにしろ」としか言わないハイネのせいで、オマリーは私を大事に抱えることとなったのだ。あー、おもしろ。
……ちょっとちょっと、私のこと性格悪いとか思っちゃった?
大丈夫、オマリーも負けずにずぅぅぅぅっと私に対して「忌々しい人間が」とか「スライム以下」とか文句ばっかりだったから、ハイ相殺相殺。
「おい、何者だ」
牛頭の門番に、ばっちり誰何された。あれれ?ハイネって王子じゃなかった?
「第三十二王子のハイネだ。門を開けろ」
王族多いな。……後どれだけ居るかはわからないけど、それって結構末席なんじゃ??
私の悪い予感は的中して、ただの門番のくせにそいつはハイネを鼻で笑う。
「あぁ、あの魔力なしのダメ王子か。……何を連れてきたんだ?」
じぃっと私を見る門番。
……そういえば、私たちって戦争、してるんだっけ……これまずくない?
「おい、彼女は僕の捕虜だ」
「はぁ?こんな丁寧な扱いの捕虜なんぞいるか!」
いや居るだろ、例えば何かの重要人物だったら。
そんな私の心のツッコミも虚しく、怒り出した門番が武器を構える。
「人間は問答無用で殺す!」「あ」
私に向かって、武器を振り上げる門番。
イマイチ止める迫力も身長も足りないハイネ、私を庇う気が微塵もないオマリー。……はぁ。
門番の槍が、私を突き刺す前に。
「…………時間逆行」
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「……もういいか」
「ちょっと、門番くらい買収しといてよ」
早速ハイネに文句を言う。
オマリーは訝し気だが、ハイネには伝わったようだ。―――私が力を使ったことに。
「……十三王女か、二十王子辺りかな。どうやら門番は逆に買収されたみたいだ。オマリー、裏門から入るぞ」
「……………どういうことです?」
くるりと踵を返して、正門から離れるハイネ。
それについて行きつつも、納得ができない様子のオマリー。まあそれはそうよね。
片眉を上げて私に問うハイネ。……まぁ私の能力を伝えるかどうかは、そっちに任せるわ。
「……気にするな」「はっ」
「それでいいんかい」
面倒くささをほんの少しも隠そうとしないハイネ。
それに不満をほんの少しも見せないオマリー。……なんだかなぁ。
あまりの盲目さに若干の居心地の悪さを感じてきたところで、こじんまりとした小屋にたどり着いた。
「ここから城に入るよ。僕の切り札の一つだから、口外しちゃダメだから」
「誰に言うっていうのさ、こんな敵地で」
とは言ったけれど、万が一にも拷問なんかされたら、誰にだってあっさり売るけどね。
心の中で白状しつつ、ハイネに睨まれつつ、古びた扉をくぐる。
外見そのままの、薄暗くて埃っぽい小屋の中は、庭仕事だか掃除用だかの物が乱雑にしまわれていた。
普通の小屋と言えば普通だけど、いかにも秘密通路があると言われればいかにもって感じ。
ジロジロと遠慮なく見ていると、ハイネが手慣れた様子で足を床で踏み鳴らす。
傍から見れば幼子が癇癪を起しているだけのようだけど、床の一部がゆっくりと下がっていった。
地下に続く階段が、薄暗い空間の中にぽっかりと浮かび上がる。
そのままスタスタと降りるのかと思いきや、ふと気づいたというようにハイネが振り返った。
「オマリー、彼女を落としたり置いてったり助けなかったら、ダメだから」
「…………………はい」
…………え?何それどういうこと?
これからただ薄暗い地下の旅をするんじゃないの??
「ちょっとハイネ、どう「時間が惜しいから、説明は省くよ」……はぁ??」
ちょっとちょっとちょっと!!!
命の危険性でもあるの?やだやだ、ハイネの秘密通路安全じゃないの?!?!
「じゃ、リンは頭をできるだけひっこめといてね」
「こらぁ!!ちゃんと教えてよ、情報共有は大事でしょ!!」
私の足となったオマリーに抱えられてる私の抗議はまるっと無視され、三人とも暗い地下へと吸い込まれていき。
―――そして、静かに入口が閉じていった。
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※大変申し訳ございません。名前を間違えておりました。
「ヨハネ」ではなく「ハイネ」でした。こんな聖人っぽい名前だったっけ?と思いながら書いておりました。
誤字報告してくださった方ありがとうございます!




