【コミックス③巻発売】第一王子のプロポーズ
ファーガスの婚約は、政略によるものだった。
父が発展させつつある国で、王家の地位を盤石にするための、筆頭公爵家との結びつき。
第一王子として当然のことだ。相手のセシリー・ロメイドは歳も同じ、やわらかな声色と笑顔が聡明な印象を抱かせる令嬢で、結婚するのも悪くない、なんて偉そうに思ったものだ。
今から振り返ればそれは幼い強がりで、すでに心は奪われていたのだと思う。
恋心を自覚してからもどう接すればいいのかわからず、いたずらに時をすごした。
落ち着いたふるまいのセシリーは、ファーガスを尊重しつつも、媚びることもなく、公爵令嬢として完璧で――要は、〝脈アリか脈ナシか〟を悟らせなかった。
変に想いを告げて、嫌がられたら立ち直れない。
そんな不安がファーガスを臆病にさせ、一歩を踏みだせなかった。
セシリーも同じ気持ちだったのだと知るきっかけを作ってくれたのは、オリヴィアだ。
そのオリヴィアは、アーサーからのアプローチにまったく気づかず、盛大にすれ違っていたが。
「……ファーガス殿下? どうされたのですか」
「あ、いや、すまない」
不思議そうな表情のセシリーに覗き込まれ、ファーガスは我に返った。
時刻はすでに夜で、シャンデリアには灯がともされている。
今夜はわざわざ時間をとって、宮殿にきてもらった。
なのに、理由を告げもせず、ぼんやりとセシリーを見つめてしまっていた。
「お疲れでしょうか」
「違う。そうじゃなくて……見惚れていた」
婚約したばかりのころは、互いに学ばなければならないことも多く、会うのは月に一度あるかないか。会うたびに美しくなっていく彼女に戸惑っていた。
ほとんど毎日顔をあわせるようになった今でも、鼓動の跳ね方は変わらない。
顔を赤くするセシリーに、気の利いた言葉をかけることもできない。
無言のままとりだしたリングケースを、もたつきながら開く。セシリーの目がいよいよ見開かれるのを見て、ファーガスも唇を引き結んだ。
婚約指輪は鮮やかなブルートパーズを花びらの形に組み、葉を象った金細工とあわせたもの。
純白のクッションに置かれた様はたおやかで、セシリーのようだと思った。
「俺はセシリーのくれたピンをつけるから、セシリーはこれをつけてほしいんだ。なんていうか、いつも身近に感じてほしくて……ああ待った、その前に」
最高だと確信している指輪の出来とは裏腹な、自身の落ち着きのなさに内心で肩を落としつつ。
指輪から自分へと移った視線をまっすぐに見つめ返し、ファーガスは告げた。
「俺と結婚してほしい。必ず幸せにする」
アーサーとオリヴィアが不穏な噂を解決してくれたおかげで、立太子の儀はつつがなく迎えられそうだ。
その立太子の儀では、セシリーは当然ファーガスの婚約者として紹介される。でもその前に、生涯の誓いを、自分の口で言いたかった。
見開かれていたセシリーの目が、ふんわりとたわむ。
「――はい」
答えと笑顔が同時に返ってきて、ファーガスの口元も無意識にゆるんだ。
セシリーの手をとり、薬指に指輪を通せば、潤んだ瞳は灯りを反射してきらきらと輝く。
「嬉しいです……わたくしも、この指輪をつけて、ファーガス殿下のお隣に。この先もずっと」
そう言ってセシリーが笑ってくれるから。
格好のつかなかったプロポーズだけれど、きちんと想いは伝わったらしい。
コミカライズ『仕事人間な伯爵令嬢は氷の宰相様の愛を見誤っている』
2月25日(水)にコミックス3巻が発売です!
本屋さんでは早売りが始まっております。
3巻は晩餐会での偽装婚約発表&ファーガスとセシリーの想いが通じあうお話からなので、二人のその後を書いてみました☆
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