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デート編(1)

 ドレス、たぶんよし。お化粧、たぶんよし。髪型、たぶんよし。

 

 鏡を覗き込み、わたしは自分の出来を念入りに指さし確認してから、頷いた。

 

 今日はアーサー様とのデート。でもいつものように王都の史跡散策ではなく、高級レストランでランチの予定なので、ドレスもおとなびたラインのものを選んだ。

 ドレスにあう髪型とお化粧はセシリー様に教えていただいた。公爵令嬢として様々な経験をお持ちのセシリー様は、悩むことなくわたしの質問に答えてくださった。

 

 というわけで、理論上は完璧なはずなのだけれど……。

 

 理論と実践は違う。微に入り細を穿って立てた計画も、実行してみればまったく思いがけない結末へ……なんてこともある。

 組みあわせばっちりのドレスとお化粧と髪型も、わたしがやればとんでもないことになっているかもしれないのだ。なんせデビュタントだったころのわたしは情報の取捨選択ができずに三十年前のお化粧をして大失敗した。

 仕事では些細な不整合でも「おかしいな?」と思える勘は、おしゃれにかんしてはまったく役に立たない。

 だから、自信を持って「よし!」とは言えず、「たぶん」がついてしまう。

 

「でも、これでも進歩よ。オリヴィア、あなたはやればできる子!」

 

 窓から外を眺めると、ちょうど家の門の前にアーサー様の馬車がついたところだ。

 門番たちが飛びだしていって門を開けた。ダリエル侯爵家の紋章を掲げた馬車がしずしずと石畳の道を進んでくる。

 

 ――オリヴィアがかわいくて、どうしても顔がゆるむ。

 

「ふぐっ!!」

 

 アーサー様のほほえみを思いだしてしまって、わたしは叫び声をあげた。どきどきと胸が鳴り、顔に血がのぼる。

 今からそのアーサー様にお会いするというのに、顔を見たら真っ赤になってしまうかもしれない。

 

 両手で自分を仰ぎ、熱くなった頬をなんとか冷まして、わたしは部屋を出ていった。

 

 こんな状況で大丈夫なのだろうかと心配していたけれども、馬車から降りてきたアーサー様は、淡いグレーの爽やかな印象のジャケットに、エメラルドのピンをつけ、銀髪をサイドに流したスタイルで……。

 要は、とてもかっこよかった。

 

 そんなアーサー様が私を見て軽く目を見開き、

 

「いつもと雰囲気が違うな……とても、可憐だ」

 

 などとおっしゃってほほえむものだから、わたしは無事、膝から崩れ落ち、アーサー様に抱きあげられて馬車に乗り込む羽目になったのだった。

『仕事人間な伯爵令嬢は氷の宰相様の愛を見誤っている』のコミカライズがコミックガルド様でも連載開始です!

アプリではすでに公開中、サイトのほうは2/14連載開始とのことです。

連載開始を記念して、今週はデート編を連載していこうかと思います~よろしくお願いします!

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