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第3話 「C級冒険者バラックの憤慨」

しばらく時を遡る。


プルゼニア王国 カレドニク公領ブラム

C級冒険者バラック


 ようやくあのクソいまいましいレオナールのガキがどこかへ行きやがった。これでまたやりやすくなる。

 あいつの殺気、今でも思い出すだけで背筋が震えてくる。アレはヤバイ奴だった。関わったら命が幾つあっても足りねぇ。

 あんなガキにいいようにやられちまうのは胸糞悪いが、どうしようもねぇ。でも、もうあいつは居ない。


 さて、クランメンバーという名の奴隷どもを使って、また今日から遊び暮らすことにするか。


 この日は5月10日。

 ブラムの街に突然現れた驚異の新人冒険者レオナールが去って行ってから5日が経つ。


 この2,3週間ほど、バラックは自分の塒にしている宿からほとんど外へ出ていない。レオナールに投げつけられる濃密な殺気に、身体が付いていかず宿にこもっていることしか出来なかったのだ。

 ここ数日、殺気を当てられることが無くなったから、宿の女将に聞いてみると、「あぁ、レオナールくんならもうドルッセンに行ったよ」との言葉だった。


 もう居ないのならまたこれまでの生活に戻ればいいだけだ。バラックは早速、自らの奴隷だと思っている冒険者たちの宿へと向かった。

 宿と言っても、全員雑魚寝の最下級の宿である。F級の駆け出し冒険者ならまだしも、D級やE級に上がった冒険者が塒にするような宿では決してない。


 が、宿に行ったところ、主の爺さんから返ってきた言葉はバラックを激怒させるのに十分なものだった。

「あぁ、あの子らはもうここを出てったさ。自分らで稼いでもう少し別な所に泊まってみたいとさ」


 なんだと!あのガキども。俺の飯のタネを稼ぐのではなく、自分たちのために稼ぐだと・・・?

 ほぉ・・・。随分と偉くなったもんじゃねぇか。自分の立場を分かっちゃいねぇとみえる。まぁいい、とりあえずギルドに行って待ってりゃ何とかなるだろ。


 ギルドに顔を出したバラックに対して、好意的な目を向ける者はいない。誰しもこの男が、対人戦ではブラムの街でも随一の実力を誇り、そのやり口が理にかなってはいるが一々汚いことを知っているからだ。

 悪い噂も耳にするが、これでいて「黒の盟約」というクランのリーダーでもあるし、ギルドとしても表立っての罪状がある訳でもないため、中々手を出せずにいるのだ。


 そしてこの男もそのことをよく承知していて、恐れられるくらいがちょうどいい、と周りの目線を気にも留めないでいる。


 バラックはギルドの受付に近づいていき、「うちのクラン所属のパーティはどこで何やってんだ?」と受付嬢のシェイラに尋ねる。

 が、その回答はバラックの想定の斜め上から返ってきた。


「バラックさんがリーダーを務められているクラン『黒の盟約』ですが、所属メンバーが皆脱退されましたので解散という扱いでよろしいですか?」

「は?・・・あ゛ぁっ!!いいわけねぇだろうがっ!!誰の許可を得てあいつらを勝手に脱退させてんだっ!御託はいいからとっとと連れてこいっ!!」


 受付嬢・シェイラはバラックの恫喝にも怖気づくことなく、淡々と語る。

「もともとパーティメンバー、クランメンバーは脱退したいと思えば自らの意思で脱退することが可能です。出来る限り、パーティ内、クラン内で話し合いの後に脱退を決定し、リーダー立ち合いの元で手続きを行うことが推奨されてはおりますが、ギルドの細則にも『リーダーの承認が必要』とは一言も書いてないんですよ」

「あ゛?・・・そうかよ」

「はい。それぞれのパーティの方は夕方ごろにはこちらにお戻りになると思います。・・・ちなみに、彼らの後見はレオナールさんです」


 シェイラのどことなく得意げな表情に、内心を溶岩のように怒りで滾らせながら、バラックはギルドの飲食スペースで「元」クランメンバーたちを待つことにした。


 どいつもこいつもバカにしやがって。俺は人をいたぶって殺すことにかけては天才だと言われてんだ。

 あの奴隷ども・・・一度主人に噛みついたらどうなるか、徹底的に恐怖を味合わせてやる。もうどいつが死のうが構うものか。徹底的に殺ってやる。


 剣呑な雰囲気を漂わせるバラックから距離を取ろうと、周りの人間は皆避けていく。バラックは敢えて飲食スペースの奥の方へと席を取った。

 飲食の給仕もなるべくなら関わり合いになりたくない表情で、しぶしぶと注文を取りに行き、「酒だけ持ってこい」とどやしつけられている。


 このバラックという男、見るからにろくでもない男なのだが、元はと言えばそれなりにちゃんとした男だったのである。



 C級冒険者・バラック。年齢は32歳。金髪碧眼の甘いマスクに秘かに自信を持っている。

 王都生まれ、王都育ちの生粋のシティボーイである・・・とまでは言わないが、王都でもそこそこ名の知られた靴工房を営む職人の三男坊として生まれた。今でこそ冒険者ではあるが、昔は靴職人として身を立てようとした時期もあった。


 だが、2人の兄の存在がバラックを歪ませた。実際に歪むことを選択したのはバラック自身であるから、兄たちに責任がある訳ではない。


 長兄は天才肌の職人で、父の後を継ぐには申し分のない人だった。ゆえに、同じ場所にいては自分はいつまでも兄の下でしかない、と感じたバラックは家を出て一端の職人として食っていくために他の工房で修業を積むつもりでいた。


 実際に13の歳から家を出て、他の工房に弟子入りをしたが、当初は順調であった。上2人と比べると歳の離れた末っ子の早過ぎる手放れに、特に母親は悲しい思いをしたが、バラック本人の意思は固かった。

 実際、長らく父や兄の仕事、父の元で働く職人たちの仕事を見てきた者が、特にそのような背景もなく弟子入りした素人と比べれば、優れていない訳はない。

 バラックは瞬く間に様々な仕事を覚え、任され、自らの意匠で靴を作ることができるようになる。


 ところが、自らの意匠で作ったものを店に出しても誰も見向きもしてくれなかった。

 一方でその頃、長兄の方はと言えば若き天才靴職人としての名声が高まっており、王都の着道楽たちが挙って長兄の作品を手に入れようとしていた。向こう3年は仕事の空きが無い、とまで言われるほどだった。


 現状でのあまりの格差に、若きバラックの心には空虚と挫折感のみが残った。初めての挫折は兄の名声が相手だった。


 次兄は、もともと靴づくりの才能など無いと自分で分かっていたのか、15の歳になると王国軍に入った。次男特有の要領の良さゆえか、彼は軍という組織の中で徐々に頭角を現していく。

 もともと体格がよく運動能力にも秀でていた次兄は、軍の訓練の中で身体強化の魔法を使えるようになり、戦場では誰からも頼られる存在になった。


 バラックは靴職人としての自分に限界を感じ始めていたころ、とはいっても16の頃だから随分と見切りが早いのだが、次兄に触発されたのか剣の稽古をつけてもらうようになった。

 既に軍功を積み、王国軍の中で小隊長を務めるまでになっていた次兄は、バラックが武の道に進むことを喜んでくれた。


 王国軍の所属する部隊の中では名だたる剣士の1人として名を馳せていた次兄はたしかに強く、そうそう簡単に勝てる相手ではなかった。

 だが、毎日毎日鍛錬を積み重ねていくにつれ、少しずつ打ち合いの形が整うようになっていく。元来が小器用な面もあったバラックは、一定の水準までの到達が早い。

 が、やはり本職にはなかなか敵わず、次兄を打ち負かすことは遂に敵わなかった。


「いや、本職の俺が負けてちゃ守るもんも守れんだろ。お前は十分に強いぞ」

と慰めの言葉を掛けてもらえるも、その言葉は逆に、次兄への妬みの気持ちを育てることにしかならなかった。


 この頃からバラックは、質の悪い冒険者たちと付き合うようになった。世の中、真正面から生きるだけが能じゃない。

 裏道進んで何が悪い。俺は俺のやりたいように自由にやるんだ。誰に何と言われようと、この裏道で俺はのし上がってやる。そのような思いを秘めながら。


 時に実家の仕事を手伝って、カムフラージュをしながら次兄との訓練、自らの自己鍛錬を続けていたバラックであったが、ある日次兄から誘いを受ける。


「どうだ?軍に入らんか?」

と。次兄の目から見て、軍に誘ってもよいと思えるほどの相応の実力を身に着けたと判断したバラックは、自ら「冒険者になる」との意思表示をした。


 次兄は残念がったが、それでもバラックの決めた道を尊重してくれた。


 冒険者となってからは一般的な依頼をこなしつつ、順調に冒険者のランクを上げていった。一方で、王都の裏街道では相変わらず悪い冒険者や冒険者崩れ、果ては暗殺者ギルドの人間とも付き合い、後ろ暗いことをやっていた。

 中でも、一般的に非道とされることへの順応は非常に早く、その酷薄さと残忍さから仲間内からも徐々に恐れられるようになった。


 バラックが23歳の時、既に家を出て、貸し家を借りて独り立ちしたD級冒険者となっていたが、少しばかり危ない橋を渡ることになった。

 仕事の内容自体は単純明快、ただの人攫いである。王都の闇オークションに出すために若い娘を攫う、という仕事にさすがの悪仲間も危険性の高さから二の足を踏んだのだが、バラックは話を聞くなり二つ返事で請け負った。最高に悪い笑顔で。


 その頃のバラックは当然、女を知っていた。ただし、普通に相手を口説き落としてそういう関係になったことはない。

 気に入った相手がいればまずは相手の弱みを握る、もしくは相手を追い込む。そして機が熟すと一気呵成に畳み掛け、「俺の女になれ。ならないというなら、分かってるな?」とやるのだ。


 それで上手くいく相手もいれば、上手くいかない相手もいる。が、上手くいかなければその筋に流してしまえばいい。バラックという男にとって、女とはそういう風に扱うものだった。


 ゆえに、闇オークションに出品する「商品」を攫ってくる、というのは、自分自身が十分に楽しんだ後で最後にオークションで金までもらえる、いいこと尽くめの事だと思えたのだ。

 が、結果としてこの仕事に手を出したことで、バラックは王都から逃げ出さざるを得なくなる。世の常というか、王都にもスラム街にあたる地区があるが、そのような場所から女を調達するなら特に問題にもならなかっただろう。


 だが、バラックが狙ったのは普通の若い女性、それもそこそこ良いとこの令嬢ばかりだった。


 それなりに家柄の良い令嬢の場合、一度でも攫われてしまえば、その事実が一生付きまとう。『傷物』のレッテルを貼られ、まともな婚姻は望めない。『傷物』でも構わない、という奇特な人間でもない限り。

 そして、得てしてそういう奇特な人間というのは、後妻を求めている中年男性であったり、女癖の悪い人間であったり、何かしら理由があって結婚できない男だったりするものだ。


 つまり、攫われたという事実だけで、大半の令嬢は打ちのめされ、絶望し、バラックの都合のいい女になる可能性が高いのだ!・・・あくまでバラックの主観では。


 そう、あくまでバラックの主観ではそうだった、というだけで、実際にそう都合よく事が運んだわけではない。最初の3人までは良かった。

 バラックの思った通りの展開になり、実際にそれぞれ1~2ヶ月ほどは自分の慰み者にした上で、闇オークションに出品してある程度のお金も手に入った。


 だが、4人目の令嬢は心の強い娘だった。打ちのめされたフリをしつつ逃げる機を窺い、そして実行した。

 逃走は成功しなかった。バラック自らその令嬢の背中にナイフを突き立てたからだ。


 だが、その現場を複数の人間に見られることまでは想定外だった。遺体の回収も出来ないまま、王都の闇に隠れ潜むことしかできなかった。

 すぐに王都の保衛部が駆け付けてきたからだ。王都の保衛部ではここ数ヶ月で3人の令嬢が行方不明となっている事件を秘かに追っていた。秘かに、というのはそれぞれの家族から出来るだけ内密に捜査してほしいとの要望があったからだ。


 捜査の過程で3人の行動の共通点を見出し、何となく怪しい地域を絞りこんでいた時に4人目の行方不明者が出た。


 ここでさらに絞り込みができ、後は虱潰しに調べるだけかと思われた時、どこかから逃げ出したと思われる4人目の令嬢が複数人の目撃者の前で背後から刺し殺される事件に発展した。

 4人目の令嬢も家族が知る限り男を知らない乙女であったのだが、既に純潔は散らされていた。


 この時点で保衛部はこの一件に闇オークションが絡んでいる、と推測し上位組織の王国内務省と連携し、王国内での徹底的な闇オークションの摘発、および浄化作戦を行った。


 バラックの動きは素早かった。自らと闇オークションとの繋がりを知る者は全て始末していった。

 令嬢刺殺事件のあったその日のうちには、王都でバラックと闇オークションとの関わりを知る者は全て冷たい骸となっていた。

 そして翌日の朝、バラックは両親に書き置きを残して王都を抜けた。どこに行く当てもないが、まず目指したのは南の公都・グリュイエールだった。


 グリュイエールでも基本的にバラックの活動は変わらなかった。最初のうちは冒険者としてまともに働く。

 その後は、街を知り、悪さをするために情報を集め、土地の悪い人間と付き合う。しばらく状況を見極めた上で、本格的に悪事に手を染める。そしてしばらくすると、欲が出て危ない橋を渡り、保衛部の影を感じて逃げる。


 グリュイエールには2年ほど住んでいたが、ここからもまた逃げるようにして出ていかざるを得なかった。逃げる時には、自分と悪事との関わりを知る人間を始末していくのも変わらなかった。


 次に向かったのは王国では北東に位置する公都・ドルッセンであった。

 これまで2回の逃走劇を経て、バラックは悟った。危ない橋を渡るのは分が悪い。何かもっとうまい手を考えよう。


 バラックがドルッセンで確立したのは、人の弱みを掴んで金を脅し取るスタイルだった。悪の道は情報が大事。これまでの経験から身に染みていた。情報を疎かにすると、必ずしっぺ返しを食らう。

 これまで王都やグリュイエールから逃げ出さなければいけなかったのは、自分の稼ぎが増えたことで気を良くして知らず知らずのうちに情報を疎かにしていたからだ。そう分析した。


 いや・・・そもそも悪事に関わるのをやめなさいよ、というのが普通の考えなのだろうが、まぁ、この男に言っても無駄であろう。

 バラックはドルッセンで慎重に動いた。人の弱みを握るには情報が大事。まずは情報を集めるのに集中した。裏道を歩いていれば、何だかんだと様々な情報が入ってくるもので。


 十分な情報が集まってきたところで、実際に脅しに掛かる。が、慎重を期して自分の顔は晒さなかった。

 かつ、実際に脅して金を巻き上げる獲物の前には姿を見せず、自身の子分などに脅しの実務をさせた。


 ネタ元はバラックなのだから、子分どもには多少の分け前は与えても、そのほとんどはバラックの懐に入る。

 この仕組みは当たった。なんせ、自分はネタを集めることに集中すればいいのだから。バラックの子分はどんどん増えてドルッセンでも30人ほどの子分を抱えるようになった。

 ちなみにこの子分どもには、自身の対人戦の腕を見せつけて恐怖で縛っている。毎月のアガリは金貨7,8枚にもなった。


 思えば、この時がバラックにとっては絶頂期だったかもしれない。遊ぶ金には困らないし、無理押しをしてる訳でもないからそれほど悪い噂も立たず、裕福な商人の子供並みに豊かに暮らすことは出来ている。

 人生を謳歌しているとさえ言えるかもしれない。娼館では相変わらず好かれはしなかったが、それでもまぁ、よく遊びにくるバラックのことを表向きは歓迎していた。

 

 が、この自分が遊ぶ金の元手が何か、をもう少しこの男はよく考えるべきだったかもしれない。この男の子分たちは、少々熱心に仕事をし過ぎた。

 おかげで、中小の商会で身を持ち崩す者がちらほらと出始めたのである。そのうちの1人が、恥を忍んで家族に全てを打ち明けた時、バラックの絶頂期は急速に終わりを迎えることとなる。


 とある身を持ち崩した商会の娘が、自分に思いを寄せている冒険者に事の次第を説明し、「助けてほしいの・・・」と上目遣いでお・ね・が・いをしたのだ。

 その冒険者はドルッセンのギルドでもそれなりに評価の高いB級冒険者だった。どちらかといえば、正義感の塊といったタイプのこの男は、パーティ仲間と共にこの件を調べ始める。


 バラックへの恐怖に駆られて、かなり阿漕な脅しをしていた子分はあっさりと捕えられた。バラックは偽名で指示を出していたし、子分どもが自分に繋ぎをとる方法の中に、自分の居場所を知られる手段を用いなかったので、この子分はさっさと保衛部に送られておしまいとなった。


 さて、件の正義漢くんはそれだけでは満足しなかった。

 何か勘が働いたのか、似たような問題がないかを調べて回った。結果として、ドルッセンの中でかなり多くの人がこの問題によって苦しんでいることを知る。後は、子分を捕まえては保衛部に送り、の繰り返しである。


 バラックが異変に気付いたのは、定期的な金の回収の時だった。子分が少ない。そして、金も少ない。何が起こってる?

 しばらく情報を探ってるうちに、バラックの「事業」がとあるB級冒険者のパーティによって根底から覆されそうになっている事実を知る。


 黒幕がいない?知ったことか、資金源となっている子分どもを一人ずつ潰して行けばそんな奴はいずれ根腐れして消える。その正義漢はそう語ったらしい。


 バラックは、結局何も出来なかった。それはそうだ。ドルッセンに来てから丸4年が経とうとしているが、これまで悪事がバレなかったのは、仲介を挟むことで表向きバラックが「恐喝、脅迫」から切り離されていたからだ。

 実務と離れている以上、そっちに手入れが入ったとしてもバラックに出来ることなどない。まさか、「俺の金づるに何してくれる」と文句をつける訳にもいくまい。


 だが、バラックの心にはやり場のない怒りがあった。自分が手を汚さなくても十分な収入を得られる仕組みをつくったのに、何てことをしやがる。そんな思いだった。

 そして、その思いは簡単に復讐心へと変化した。ただ、相手はB級冒険者パーティだ。正面から仕掛けても勝ち目は薄い。幾ら自分が対人戦に特化しているといっても。


 調べたところ相手の正義漢は、助けを求めてきた商会の娘といい仲になっているらしい。バラックは躊躇しなかった。

 相手の娘が、正義漢の家に1人でいるところを狙い、遮音結界を張れる魔具を使って音が漏れないようにした上で凌辱した。


 さらに、その娘を毒で弱らせ、娘の身体に触れると闇魔法により意識の混濁に襲われる暗器を仕掛けた。それだけでなく、娘の身体を抱き寄せようとすれば、毒の刃で貫かれるようにした。

 最後に、とどめとして娘の身体を外に運ぼうとすると、仕掛けられた火魔法の魔具により家の中で炎が渦巻くようにしていた。


 仮に正義漢を倒しきれなかったとしても、愛する者の命だけは必ず奪ってやる、というどこをどうしたらここまで根性が捻くれるのか分からないような執念深さでもって、罠を仕掛けたのだ。

 結果的に、正義漢は死んだ。愛する女の骸を守るように。焼け落ちた家の中から見つかったのは2人分の燃え残った骨だけだった。


 バラックはその家が燃え上がる様子を歪んだ笑顔で眺めながら、ドルッセンの街を去った。生き残った子分たちには、既に5年はこの街に戻るな、と伝えている。

 それを破って捕まろうがどうなろうがバラックの知ったことではなかった。


 ドルッセンには保衛部のドルッセン支部が置かれており、状況からしてこれは殺人だと踏んだのだが、犯人の手がかりは全くなくなっていた。

 既にとらえた子分たちも、何も知らない者ばかり。手がかりになりそうな残りの子分たちも既にドルッセンから消えていた。


 この後、バラックが逃れた先は、カレドニク領ではドルッセンに次ぐ街・ブラムだった。バラックがまず調べたのはこの街の冒険者たちの分布と性質だった。

 A級が1人いるが、そいつは正義感の塊のような奴ではない。B級も基本は魔獣ばかりを相手にしていて、対人戦でありとあらゆる手段を使う俺が恐れるような奴はいない。


 なんだ、この街は素晴らしいじゃないか。ギルドが目を付けるようなヘマをしなければ、ガサも無いだろうし、継続して弱い奴らから搾り取れる。

 何かあった時のための金貨10枚には手を付けずにこのまま何とかやっていけそうだ。


 それからのバラックの動きは素早く、裏道に逸れているものを時に脅しすかし、徐々に人の弱みを握っては、自分の「奴隷」たちで作ったクラン「黒の盟約」を作り上げた。

 所属するパーティはD級、E級の冒険者たちが主で、20名あまり。そのランクの一日の稼ぎなどタカが知れているが、それでも20名分ともなればそれなりだ。


 今回は自分が直接、「奴隷」たちを管理した。その中で、少し扱いに差を設けて、憎しみが自分にだけ向かないようにした。自分に向けられるのは恐怖と絶望のみでいい。


 自分の奴隷たちを見て、バラックは悦に入っていた


 毎日のアガリは大体大銀貨1枚程度にはなった。王都や公都で派手に遊ぶには物足りないが、このブラムで遊ぶ分には十分だ。それなりの酒場で飯を食い、酒を飲み、女を抱いても1日に大銀貨1枚あればおつりがくるのだから。


 それでいて、この男が恐れられているのは、それがどのようなものであれ自らを鍛えることを忘れないからであろう。

 完全に堕落してしまえば、そのうち自分を恐れるものなど居なくなる。ゆえに、次々と嫌らしい手立てを考え、それを実行に移していく。対人戦の訓練は常に怠りないのだ。基本的にその全てが卑怯な技だが。


 そんなこんなで、ブラムの街で2年とちょっと楽しい時間を過ごしていたバラックだが、一つだけ思い通りにならないものがあった。

 それが、娼館:リリー・マリーの一番姫と呼ばれるニコラの心である。こちらがどれだけ粉をかけても、のらりくらりと躱すばかりで靡こうとしないのだ。


 王都でもなかなか見かけないほどのいい女、自分のモノにしてやろうと思ったのだが、さすがに見受けの金をポンと用意できるほどでもない。

 せめて自分に靡かせて、店の外で会って・・・と思ったのだが、何度通ってもうんとは言わなかった。


 この時バラックは、いつもの「女など掃いて捨てるほどいるのだ、適当に遊んで捨てればいい」とばかりの態度ではなかった。本気でニコラに惚れていたようだ。


 そんな時に現れたのがレオナールだった。


 最初はF級冒険者だった。というより、レオナールはブラムの街で冒険者登録をしたのだ。

 レオナールが登録のために初めてギルドに現れた日、バラックは新たに「奴隷」を補充するための活動に勤しんでいたのだった。最近壊れて使えなくなった奴の代わりとして。


 だが、声をかけ、新人なら付いてこい、俺が色々と教えてやる、と言ったのに対しレオナールの答えは「やだね」というものだった。それだけでなく侮辱されたのだ。(バラックの主観では)


 これは躾けてやらなきゃなぁ、なんて思いながら対人戦用の暗器でレオナールの急所を少し外して襲ってみると、気付いた時には天井を見上げており、その後即座に、レオナールから放たれた濃密な殺気でバラックは気を失ってしまった。

 ヤバイ奴を見分ける能力はこれまで磨いてきたつもりなのに、今回は全く機能しなかった。


 下手に手を出したら瞬く間に自分が物理的に消される・・・。

 バラックの狙いはあの暗器に塗ってあった毒で、レオナールを動けない状態に追い込み、解毒薬を金貨10枚で売り付けて、その分の返済を求める、というものだった。

 もちろん、利息は法外に取る。いずれ使えなくなるまでずっと、自分に金を運んでくるいい奴隷に仕立てるつもりだったl


 だが、そんな目論見は一瞬で崩れ去る。レオナールから金をとるどころか、自分が逆に無様を晒すことになった。

これでは「黒の盟約」の箍が緩みかねない。


 その日以降、バラックはレオナールのことを全く無視するようになった。が、その日から、何かが狂い始めた。最初は気付かなかった。だが、徐々に気付くようになる。


 別にアガリが減った訳ではない。「奴隷」たちの目から、自分への恐れが日に日に消えていくのだ。こいつら・・・何してやがる。

 ある日、バラックは「奴隷」たちが受けた依頼に気配を消して付いていった。奴隷たちはこれまで自分が見たこともないほどに熟練の動きを見せていた。


 依頼の内容を達成した後で、「奴隷」たちはどこか別の場所へ移動するようだった。そこへ付いて行こうとしたとき、突然、どこからともなくやってきた殺気に身体の自由が利かなくなる。


「何なんだこれは・・・」

 歯の根の合わなくなる中、少し殺気が緩められた一瞬でバラックは逃げ出した。最早、「奴隷」たちの素行などどうでもよかった。


 とにかく、この震えを収めるために、酒を飲んで、女を抱いて、寝るしかない。

 その日バラックの相手をした女はニコラではなかったが(ニコラはレオが一晩貸し切りの予約をしていた)、あの悪名高いバラックが、酒臭い息を吐きながら、妙に震えながら自分の身体に縋り付いてきたことを気味悪く思った。


 もっとも、この男の「普通」は女を甚振るような行為を際限なくするので、接客後に仕事にならなくなってしまい、それはそれで嫌なものだが。


 ちなみにその甚振るような扱いは、ニコラに対してだけはしない。

 それもあって、バラックは娼館で働く女性たちからはひどく嫌われている。


 一晩経ち少し落ち着いたところで、あの殺気を放てる人間に1人だけ心当たりがあることに気付く。

「レオナールの野郎か・・・。俺の奴隷どもに何をしてやがるっ・・・あぁクソッ・・・」


 どうにかして何が起きているかを突き止めたい気持ちと、あの殺気に縫い留められたらどうにもならない、思い出すだけで歯の根が合わなくなりそうな気分になる。そのせめぎ合いでバラックはどうしようもない焦燥に駆られていた。


 だが、焦燥に駆られるバラックをさらに追い詰める事態が発生する。

 その日、バラックは何となくを装って宿の他の客から聞き出した情報で、レオナールの大まかな行動パターンを知り、「今日は遠くに外出しているはずだ」と当たりをつける。

 そして、出かけようとしたその時、またもあの殺気が襲ってきたのだ。


 「ひぃっ!」と叫んで、腰砕けになり、へたり込むバラックを好奇の目線で眺める他の客と、宿の女将。

 ブラムはそれなりに大きな街だが、冒険者などが良く利用する宿ともなれば、それなりに情報が周り、噂が流れるもの。


 対人戦に特化し、特別忙しく働いているようにも見えないのに、なぜか毎日のように娼館に繰り出す男。

 街でもあまり良い噂を聞かない連中と付き合っている男。


 何より、顔は整っているのに、あの嫌らしい、暗い目。

 そんな男が、そんな男の目が、恐怖と怯え一色に彩られている。


「なっ、何なんだよっ!くるなっ、くるなーっ!!」

 喚きながら、後ずさりしながら、バラックは一目散に自分の部屋へと逃げていく。


 客たちは何か不可解なものを見たような、何とも言えない顔でバラックを見送る。まぁ、自分たちに実害がなければいいのだ。

 あのような男と、好き好んで付き合う必要もない。皆、思い思いに散っていったのだった。


 それ以後、バラックは宿から出ることすら出来なくなった。宿を出ようとすると、必ず殺気に襲われる。寝ている時にも度々あの殺気で叩き起こされる。


 恐怖に苛まれたバラックは、日々顔色を悪くしていき、目が落ちくぼんでいった。宿の食堂で食事をとると、そのまま部屋に戻って震えている。1週間も経つと誰もバラックのことは気に留めなくなった。


 そして、ある日バラックは気付く。3日ほど、殺気を感じていないのだ。

 ・・・もしかして、もうあいつはいないのか?


 目に怯えを宿したまま、ゲッソリとした様子のバラックに尋ねられた女将は何でもないかのように答える。

「あぁ、レオくんは5日前に街を出てドルッセンへ向かったよ」

それはまさにバラックにとっての福音であった。今、この時だけは。


 バラックは知らない。

 自分の顔がどれほど酷いことになっているかを。

 彼が奴隷と呼んでいた冒険者たちがいかに変貌を遂げたのかを。


 そして、場面は既に述べたギルドの一幕へと移る。ギルドで受付嬢を怒鳴りつけたが相手にされなかったバラックは、ギルドの食堂で「奴隷」たちを待つ。


 その日の夕刻、バラックが「奴隷」と呼んでいた冒険者たちはお互いの貢献をたたえ合いながら、今日の戦いをさらに良くするためにはどうすればよいか、を語り合いながらギルドへ現れた。


 遂に、バラックにとって運命の時が訪れる。


「よぉ、待ってたぜ」

「・・・」

「どうした?俺が来たからビビっちまったか?あぁん?」

「あの、そこ邪魔なんでどいてもらえますか?あと、黒い盟約からは抜けました。もうリーダー面しないでもらえますか?」

「・・・んだと?ほーぅ、この俺にそういう態度を取っていいのか?お前の可愛い可愛い妹がどうなってもいいのか?」


 もはやバラックの判断力は、この場でそんな言葉を発すれば自分の身が危ういという事さえも考えられないほどに低下していた。

 それでも、こいつの弱みはここだ、と信じ切っているゆえに、今の言葉に効果があることは疑っていなかった。


 だが、返事は意外なものだった。

「いいですよ。もう、妹はあなたがどうこう出来る場所にはいませんから」

「・・・あ?嘘言って俺をだまそうとしても無駄だぞ。俺は闇魔法の魔具でちゃんと抑えてるからな」

「知らなかったんですか?魔法ってのは、よい上位の魔法があれば簡単にごまかしが効くものなんですよ。あなたの脅迫のネタは全て安全なところへ逃しました。ここにいる全員分ね。

 それに、恐怖と絶望で縛っていたつもりだろうけど、縛る本人が恐慌状態になると効果が減るんですよ。みんな、もうあなたの言うことに無条件で従わなければいけない状態ではありません。

 あなたは、ここにしばらく顔を出していない。その間に僕らは変わりました。もう僕らは、あなたに脅迫され、甚振られ、怯えて、言いなりになっていた僕らじゃない。

 お互いに支え合いながら道を切り開く、ちゃんとしたパーティです。・・・もう帰って下さい」


「・・・くっ、はははははは・・・。何を言い出すかと思えば、やっぱり甘ちゃんだねぇ。もうここまで来たら躾けも何もねぇな。お前、その言葉をあの世で後悔するんだな」


 その言葉を発するや否や、バラックの暗器による攻撃が先頭で話し合っていた冒険者ピエトロを襲う。バラックがこれまで鍛えた対人戦闘術の全てを駆使した攻撃だったが、不思議なことにその全てが防がれていく。


「なっ・・・」

 焦るバラックに対し、ピエトロは抜かずの鞘ごとの剣でバラックの横面を無造作に張った。派手に吹き飛ばされたバラックは起き上がることが出来なかった。


 その時、ギルドの上階から降りてきた王国保衛部の将校、憲兵がバラックを取り囲む。

「冒険者ピエトロ、協力に感謝する。軍曹、何をしでかすか分からん。拘束具を着せた後で馬車に積み込んでおけ。

 諸君、この男には様々な嫌疑が掛かっていてね。彼らのような若い冒険者パーティを精神的な隷属状態において、依頼報酬の殆どを上納させていた。

 それ以外にもこの男の悪事を知っている者がいたら、保衛部まで届け出てもらいたい。

 先に断っておくよ。今時点で、この男の悪事に関わったと身に覚えがあるものは早めに自供したまえ。ある程度の温情を示してやれるかもしれない。

 だが今、口を噤んでいて、後で我々の捜査によって捕らえられた場合は、遠慮なく拷問させていただくゆえ、よくよく考えるように。

 もし何か情報がある場合は、ブラムの保衛部支所まで届け出られよ。では」


 その後、ブラムの街でバラックの姿を見た者はいない。



西方暦325年8月

プルゼニア王国 カレドニク公領の外れ

デルペジオ鉱山


 3か月後、ブラムより西北西に2日ほど進んだところにバラックの姿はあった。髪は丸刈り、「死刑囚」という文字が両腕と首の後ろに刺青で入れられている。


 ここは王国内でも最も過酷な鉱山、デルペジオ鉱山。王国直轄で、内務省が運営している。ここで働く人間は基本的に罪人である。罪人でない人間は、管理・監督する人間のみ。


 だが、過酷ではあるもののここで死ぬ人間は基本的にいない。大半の怪我は治癒術師によって何とでもなるからだ。

 そして、ここの鉱山労働者である罪人には漏れなく首輪が付いている。


 この首輪、罪人がどんな魔法を使える人間であろうが、それを封じる魔封じであるとともに、その魔力を鉱山の採掘作業だけにしか振り向けられない、という世の中の鉱山経営者が目の色を変えそうな性能を誇る。

 が、そんなことをしたら、一般労働者が強欲な経営者に幾らでも搾取され放題になってしまう。


 困った道具を開発した人間がいたものである。だが、国の管理する罪人を働かせるため専用の鉱山で使うならば、こんなに使える道具はない。


 というわけで、この鉱山でのみ使用されている。さらに、敷地の外に出ようとすれば魔力を全て吸い取って意識を刈り取ることまでする。


 何より、正規の鍵でもって外さない限り、無理やりに外そうとすれば逆に首が締まるという凶悪さ、首が締まってどうにもならなくなり、血が回らなくなって倒れるとようやく外す鍵と別の緩める鍵で少しずつ緩めることができる。


 さらに、首輪だけに見えるが、ここで働く罪人たちにはもう一つの秘密が埋め込まれている。表にはされていないので、罪人たちは知らないが。


 ここの鉱山で働く連中は、一般的には「死刑相当」の者ばかりであって、鉱山の外に出れば皆が迷惑すること間違いない人間ばかり。


 この首輪、外そうと思えば外せなくはないのだが、外すと体内の心臓をぐるりと取り巻くように埋め込まれている魔法陣が発動し、心臓が高熱で瞬時に焼き上げられることになる。

 なぜ焼くのか?・・・この魔法陣を考えた王都の王立魔道学校の教授曰く、「だって、血がまき散らされると後始末が大変じゃない」とのことである。


 先ほど、過酷な鉱山ではあるが、死ぬ人間は基本的にいないと書いた。

 そう、基本的に。ごくまれに、これを引きちぎってしまい、即座に心臓がローストされ死ぬ人間がいる。書いていて心臓がキュンとする話である。


 ・・・決して職場で出会ってしまった笑顔の可愛いあの子にキュンッとしたわけではない。


 という訳で、なかなか腰の定まらなかったバラックは晴れてデルペジオ鉱山に永久就職を果たしたのだ。壊れた身体を治してもらえて、死ぬまで元気に鉱山労働。

 嗚呼、さすらいの殺人鬼よ、健やかに働け。


 ちなみにバラックは既に身体のとある部分を切り取られている。これまでにやらかしてきた罪の重大さから、鉱山で働くことだけでは許してもらえなかったのだ。

 過去の事件の重大被疑者、ということで王都に連行された後、真実のというスキルの持ち主の前で「こいつならやってそうじゃね?」と思われた未解決事件について、「やったのか、やってないのか」を徹底的に調べられたのだ。


 半分はやっていなかったが、半分には全てバラックが絡んでいた。

 王都、グリュイエール、ドルッセンの中でも未解決ながらかなり力を入れて調べていた事件で、全てこの男が絡んでいたこと、逃げる時には軒並み関係者の口封じをしていたこと、令嬢の失踪によるその後の家族の悲劇・・・


 保衛部の人間の心は一つにまとまった。

「お前かっ!!」「地獄に落ちろっ!!」


 王国には法典がある。その法典に基づき罪人は刑の宣告を受ける訳だが、この時、大審院は人の生き死にに関わる判決を下すにも関わらず、小法廷でそれを行った。

 (本来、死刑判決は大法廷で下されるのが原則)


 なぜ?当然である。審理をするまでもないのだ。あまりにやらかし過ぎて、死刑以外に宣告できる刑がなかった。ただそれだけのことだ。


 追加で、女性の尊厳を奪った、それも数限りなく、ということで切り取られる刑が付記された。


 どことは言わないが、キュンと縮こまりそうな話である。

 余談ではあるが、切り取られる際にバラックは異常なまでの抵抗を示したため、やむなく王国軍随一の剣士を呼んで、殺気で気絶させられた。


 そして、家族には何も知らされなかった。

 いや、知らされるには知らされた。「ブラムで魔獣と戦い、食べられた」と。事実とは少しばかり異なっていただけである。


 令嬢失踪という悲劇に見舞われた各家には、内務省より真犯人を逮捕し、死刑に処した旨の通知がなされた。

 その日、王都の4件の家では夜遅くまで家人のすすり泣く声が止むことは無かった。

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