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プロローグ

なろうでの初投稿作品となります。

プロットはある程度固まり、最後までのストーリーも大筋では出来ていますが、まだまだ作品がどのように変化していくかは私も想像がつきません。

出来るだけ皆様に楽しんでいただける作品をお届けしたいと思いますので、温かい目で見守っていただければ幸いです。

2024年4月1日 札幌・白石

 

 今日から新年度が始まる。まだまだ寒い札幌の朝だけど、私、夏川汐里は愛する愛する旦那様を送り出した後、もうすぐ2歳になる娘の遥香が「ママー」とひっついてくるのをあやしながらベランダで洗濯物を干している。

 ちなみに今年から小学校3年生になる啓人と、新1年生の陸翔はこたつに入りながらiPagでゲームをしていたり、VTubeを見ている。うちには2台もiPagがあるの。信じられない。


 旦那様は優しくていい人なんだけど、ちょっと息子たちに甘すぎる気がするわ。

「喧嘩するくらいなら2台買っちゃえ~」と言って、1台買った次の日に2台目が追加されたのだ。ほんとに信じられない。

 血が繋がっていないから遠慮してるのかな、と思ったけどそんな感じでもなさそうだし。

 ひろとりくが悪いことをすれば結構マジになって叱ってる。ただ、厳しい言い方で「ダメ」と伝えた後は、「なんでダメなのかわかるか?」と優しく語りかけて、息子たちがなぜ叱られたのかをちゃんと納得できるようにしてるのはすごいと思う。


 私はどうしても感情的に怒ってしまって、息子が拗ねて、時間が経ってから何となく和解する、みたいな感じが多い。

 それを旦那さんに・・・祐樹くんに悩みとして相談すると、

「母親はそうなっちゃうもんじゃないかな?あんまり気にしなくても大丈夫だよ。ひろもりくも、汐里がちゃんと自分たちのことを愛してる、ってことに全く疑いは持ってないから。愛情をちゃんと注いでくれてる、っていうのはあの子たちも理解してるから」

という返事が返ってきた。


「でも、もう少し祐樹くんみたいに穏やかに諭すような形にしたいんだけどなぁ・・・」

「えー、それを汐里がやっちゃったら俺の出番が無くなっちゃうじゃん」

「そういう問題!?」

「・・・冗談だけど。言うことを一回ですぐには聞かないからね。立場が逆だったら、俺もついつい声を荒げてしまう気がするけどね」

「そうかなぁ・・・」

「うん、そうだと思うよ。今はお腹もだいぶ大きくなってきたし、身の回りのことが思うようにはできないだろうから、余計に言うこと聞いてくれないとイライラするよね」

「それはあるかも」

「ま、あまり気にしないことだよ。どーせ10年もすりゃそんなこと誰も覚えてないんだから」

「それもそっか・・・。んむっ!」

いきなりチューされた。それもディープなレロレロなやつ。


「可愛い顔をそんなに悩まし気にしないで。チューしたくなっちゃう」

「ちょっ、ちょっと・・・」

と、いうやり取りの後は、大人の規制が掛かるシーンだった。


 妊婦なんてそんなに抱いて楽しいものなのかは分からないけれど、彼は妊娠してからも毎日のように求めてくる。

 もちろん、私の身体に負担がかからないように。

「だって、今しか味わえないじゃん、赤ちゃんを宿している汐里の綺麗な身体は」

と言っていた。


 私からしたら、お腹が出ちゃって不格好にしか見えないけど、何か言葉では言い表せない魅力があるそうだ。ちょっぴり変態さんなのかもしれない。


 エッチなことが好きなのは間違いないけど。

 だって、再婚してからもう3年経つけど彼が求めてこなかったのは、生理の日、臨月のホントにもう生まれそうな直前、生まれた後のしばらくは母体の回復をしなきゃいけない時期、だけだから。

 それ以外の日は、何か特別な事情があるときは別だけど、本当に毎日求められた。


 私は過去の諸々があってそこまで好きではなかった。

 だけど、祐樹くんのことは本当に心から愛してるから・・・求められること自体は悪い気はしないし・・・程度だったのだけど。


 いつしか、こんな風に求められるのが当たり前になっていて、自分も祐樹くん限定ではあるけど好きになってしまった。

 ただ、これだけ求められるのはすごく嬉しいんだけど、3年間一緒にいてここまで求められることがあるんだ、という新鮮な驚きがある。多少は飽きがくるはずじゃないの?と思うのだけど・・・。それが全くない。


 他のママ友や昔からの友人にそれとなく聞いたら、そんなに求められるのって精々最初の3か月くらいじゃない?との返事だった。


「今はうちの旦那、若い女の子がお酒を注いでくれておしゃべりするところとか、すすきののもっとアダルトなお店に隠れてこそこそ行ってるわよ。私が妊娠しているのをいいことに。バレてないつもりでしょうけど、バレバレなんだから!」

と結構お怒りモードになってしまった人もいて、なだめるのに疲れた。


 むしろ、祐樹くんもどこかのタイミングで遊びに行くんじゃない、と思っていた。

 だって・・・ねぇ、私と彼との出会いを考えたら。。。でも、現実には夜に遊びに行くことが全くない。仕事が終わればまっすぐ帰ってくるし。帰ってきたら真っ先に抱きしめられてしばらく離してくれないし。


 妊娠する前は、そのまま長いチューをしていたけど、妊娠してからはハグをした後で、洗面所に駆け込んでうがいをしてから長いチューをしてくれる。

 改めて考えると・・・照れるわね。何か私、愛されてるなぁ、と毎日実感できて・・・かなり、いや、すごく嬉しい。


「ママ!」

ハッ、いけないいけない・・・いつの間にか洗濯物は干し終わってるし。


 遥香が服を引っ張ってくる。さて、どうしたのかな?喉が渇いたかな?

「ごめんね、はるちゃん。ママぼーっとしちゃってたね。どうしたの?」

「おみじゅ!」

「喉が渇いたのね~、じゃ、お水飲もっか。少しお湯もいれて温くしないとね。はるちゃんお腹痛い痛いになっちゃうから」

「あぃがと」


 まだ舌足らずの娘が可愛くてたまらない。

 私にも似てるけれど、目は思いっきりパパに似てる。自慢じゃないが、祐樹くんはなかなかのイケメンだ。特に目だけだったら、そこらの俳優さんにも引けをとらない綺麗な目をしている。まつ毛も長いし。


 私は好きだけど、鼻が低くて顎にほくろがあるから、彼自身は「俺は二枚目じゃなくて三枚目なの」なんて言ってるけど。

 遥香は私のいいところと、祐樹くんのいいところを集めてきたような顔立ちだから、将来は期待できそうだ。


 少し温めのお水を飲んだ遥香は満足したのか、自分の大好きなお人形さんの置いてある所へといった。きっとお人形と一緒におままごとでもして遊ぶのかな。


「ママ、俺もジュース飲みたい」

「俺も~」


まったく・・・。

「分かったわ。何がいいの?カルピス?グレープジュース?」

「カルピス!」「俺も!」


 この2人も最初は喧嘩ばかりしていたけど、最近になってだいぶ落ち着いてきた。祐樹くんが新しいパパになってからだと思う。2人があまり喧嘩しなくなったのは。


 祐樹くんが2人のパパになりたての頃、彼は2人が喧嘩をしてもすぐに声を掛けるんじゃなくてじっくりと観察していた。

 2人のことはすごく可愛がっていて、世間一般の子煩悩なパパと比べてもかなり上位に来るくらい遊んであげていたと思う。

 でも、2人で遊べば大抵どこかで喧嘩になる。そんな時、祐樹くんはまず2人がどう喧嘩を解決するかを観察した。その後、どんなふうに仲良しに戻るのかも。


 全部見ていた上で、喧嘩が激しくなった時には、2人をしっかりと自分の両側で抱きしめて、2人共に言い分をちゃんと聞いてあげて、相手の気持ちを考えてあげようね、って話で落ち着かせる。

 2人とも自分の言い分をちゃんと聞いてくれることで、すっきりするのか、そのあとに「こうしたらどうかな」という祐樹くんの言葉には「分かった!」と良い返事を返していた。

 結局、また喧嘩を繰り返すんだけど、そのたびに根気強く話を聞いてあげる姿は、すごく頼もしくて、血が繋がってないのに深い愛情をもって接してくれていることが嬉しくて、時々ウルウルきたものだった。


 さて、思い出を振り返るのはこれくらいにして、今日はどうしよっか。

 祐樹くんは今日もきっとまっすぐ帰ってくるだろう。新年度だから、「とりあえず飲みに行きますか!」みたいな声が上がると思うけど、彼は「とりあえず飲み会」には絶対に参加しないことで会社の中でも有名だ。

 ちゃんと計画されて、何でやるのか目的がはっきりしている飲み会じゃないと行かないらしい。

 ・・・そんなこと言ってたら世の中の飲み会の9割には行かない、ってことになっちゃうように思うんだけど、彼はそれでいいらしい。


 というか、会社の人の前で、

「私は家族との時間を一番大事にしています。仕事は真剣に達成する努力をしますが、家族との時間で使える余力は必ず残しています。ですので、飲み会もちゃんとした目的のない親睦のため、のような飲み会には参加しません。」

とはっきり言ったらしい。


 そんなこと言って会社の人から嫌われないのかと思ったら、そういう人というキャラを確立しつつ、だけど仕事はちゃんとやって結果が出てるし、仕事中はみんなをきっちりフォローしてるから、むしろ超絶愛妻家として生暖かい目で見られるポジションらしい。

 今は、会社のくわしいことはよくわからないけどピーエムとかいう役職?なのか何なのかを任されていて、結構大事な仕事をしていると言っていた。


 お給料も悪くないし、というか、前の結婚の時や、シングルで子供を育ててた時に比べると信じられないくらいにもらってるし、ま、いいんじゃないかな?



 で、今日の話。うーん、まだ寒いけど、お昼食べたら子供たちを連れて近くの南郷丘公園にでも連れていこうかな。

 その後は東光ストアに行ってお買い物して、夕飯の支度を済ませたら遥香を先にお風呂に入れよう。

 きっとお兄ちゃんたち2人はパパと一緒にお風呂に入るから。みんなお風呂に入り終わったらご飯にしよう。今日は何がいいかな・・・祐樹くんに聞いてみよう。


『ねぇ、今日の夕ご飯は何がいい?』

『汐里を食べたい(ハート)』

『もー、そういうのはいいの!・・・それに毎日食べられてますけど。。。で、何がいい?』

『今日は結構冷えるから鍋とかいいかもね。子供たち連れて外に出るんでしょ?しっかり暖かい恰好で出かけてね(ウインク)』

『うん、分かった。じゃ、鍋にする。あとで南郷丘に連れていくよ。重ね着してお出掛けするね(チュッ)。愛してるよ、祐樹くん(ハート)』

『やったね、楽しみにしてる。汐里、愛してるよ(ハート)』


 RINEのやり取りでご飯のメインは鍋に決まった。

 北海道の鍋と言えば石狩鍋だ。ジャガイモは家にあるし、味噌もまだ半分以上残ってる、お豆腐、鮭、白菜、春菊あたりを買ってこればいいかな。


 あと、何気に我が家ではタラとタラの白子を入れるのがお気に入りだったりする。こっちでは白子のことをタチと呼ぶけど・・・。たまに子供たちと一緒に行く居酒屋さんでは、タチをさっと湯通ししたもののポン酢和えを食べる。私と祐樹くんのお気に入りだ。


 子供たちの口にはまだ合わないらしい。でも、タラのあの白身は子供たちも好きだから買ってこよう。さて、次は掃除かな。


 遥香はまだ少し歩くと疲れてしまうので、ベビーカーに乗せて公園に行ってきた。ついでに買い物も完了。

 お兄ちゃんたち2人はやっぱり元気だ。ずっと走り回っていた。汗をいっぱいかいただろうから家に帰ったら着替えさせないと・・・。

 でも、走り回るだけじゃなくて、遥香をつれて滑り台に乗せて一緒に滑ったり、なかなかお兄ちゃんっぷりも良くなってきたかな。


 2人とも、遥香のことが大好きだ。競って遥香のことを構いたがる。遥香もお兄ちゃんたちに構われて嬉しそうにニコニコしてるものだから、さらに可愛がる。


 これぞ好循環。さてさて、これで今お腹の中にいる妹が生まれてきたらどうなることやら。でも不安はない。

 もっとにぎやかに、そしてもっと幸せになるに違いない、と確信しているから。


「ただいまー」

祐樹くんが帰ってきたっ!

「おかえりー」

遥香を抱っこして玄関まで迎えに行く。遥香と一緒だから、今日は優しいハグ。


 お互いの存在をしみじみと感じるようなハグ。遥香のほっぺにチュっとしてから、洗面所にいってうがいをしてる。うがいが終わった後は、チューの時間。遥香もニコニコしてる。

 長いチューが終わると、お兄ちゃんたちが遊んでいるリビングへ。ひろはVTubeを見ていて、りくはゲームをやっているらしい。


「ひろ、りく、ただいま」

「あ、パパ、おかえりなさい」

「お風呂一緒に入ろっか?」

「うん!」


 祐樹くんは風呂に入ると身体をあっためるために湯船に浸かって、そのあとでひろとりくには自分たちで体を洗えるように教えているらしい。

 そのうち遥香と一緒に入るようになったら、洗ってあげなきゃいけないだろ?上手にやってあげないとお兄ちゃんと入るのやだー、って言われちゃうぞ。

 そんな風に言われて、ひろとりくはお互いに洗い合いっこの練習をしているらしい。いいパパだわぁ。


 たまーにお風呂に入った後で、もう一回一緒にお風呂入ろ、と誘われることがある。

 私もお風呂は好きだからついつい入ってしまうのだけど、そういう時はもうずっとくっついてる。祐樹くんが離してくれない。

 少し温めのお湯で、ゆっくりと抱きしめられながら入るお風呂は中々に気持ちがいい。それに、ちょっと気分が上がる。

 別に何か特別に話すことがある訳じゃなくても、何だかくっついているだけで幸せを感じる。そういう相手が祐樹くんだ。


 3人がお風呂から上がってきた。風呂上がりのさっぱりした感じで、みんなでお水を飲んだら、夕食ね。

 ちなみに祐樹くんが帰宅したのは18時過ぎくらい。お風呂から上がってきたのは19時前くらい。夕食を摂る時間としてはちょっと遅めかもしれないけど、まぁ気にしない。


 土鍋でぐつぐつしている石狩鍋を鍋敷きを敷いたテーブルの上に乗せる。取り皿やご飯については祐樹くんがちゃちゃっと準備してくれた。

 遥香のご飯の準備もばっちり。遥香も、鮭は食べられるし、ジャガイモも食べる、タラの身も食べるから結構ご機嫌だ。

 お汁をかけたご飯も一緒に食べて、キャッキャと喜んでいる。癒される。。。


 お兄ちゃんたちは結構黙々と食べるけど、祐樹くんが2人に今日は何して遊んだのか、何か面白いものをみつけたか?とか色々と話題を振っている。

 そのたびに、よくぞ聞いてくれたとばかりに熱く語りだす。シングルマザーとしてやっていた時も夕食の時間は明るくしていたけれど、今のこの環境を見ると本当にこの人と結婚してよかった、と心から思う。

 なんか感慨に浸っている間に食べ終わってしまっていた。


 じゃ、片付けでもしますか・・・ん?祐樹くんがそのままって手で合図してる。

「俺が片付けるからいいよ。そのままにしといて」

出来た旦那様だわ~。惚れてまうやろ~。・・・いや、もう既にぞっこんなんですけどね。


 ご飯を食べ終わって、片付けが全部済んだ後で、パパが本を一冊持ってきた。お兄ちゃんたちはワクワクだ。

 自分ではまだ完全に読むことが難しい本でも、パパの手に掛かれば臨場感たっぷりな物語に変化する。これは本を沢山読んできたからこそできることなんだろうな、と素直に認めるしかない。


 たしかに、祐樹くんの読み聞かせを聞いていると、「うん、それでそれで?」と先を聞きたくなる。出来れば私も出来るようになりたいな。本・・・本かぁ・・・。


 ちなみに遥香は食事が終わって、ちょこっとミルクを飲ませたらすぐに寝てしまった。あの子の寝つきの良さは異常だ。

 それに夜泣きもほとんどしない。寝る子は良く育つと言うけれど、かといっておデブちゃんという訳でもない。


 多分、大きくなったら子供を産む前の私と同じようにかなりスレンダーな体型になるんじゃないかしら。バストは私よりも育ってほしいけど。・・・ちなみに今は、妊婦限定で若干大きい。


 20時半回ったし、そろそろ子どもたちの寝る準備をしよっかな。2人で一緒に歯磨きをさせて、寝る前の白湯を一杯飲ませて、トイレに連れて行って。

 今、お兄ちゃんたち2人は1つの部屋で2人で寝ている。これも大きくなる第一歩。私は少し寂しいけど。私と祐樹くんはリビング横の部屋で寝ている。遥香もこっち。


「よし、じゃ寝ようか~。お布団に入って」

「・・・うん」

もう既に次男坊はだいぶ眠たそうだ。お昼にいっぱい遊んだもんね。

「ひろ、おやすみ。(チュッ)。りく、おやすみ。(チュッ)」


 私と同じように。彼は血の繋がらない息子たちにも分け隔てなく、チュッチュする。

 嫌がらないかな、と思ったけど、ちゃんと見極めてしていたらしい。

 今では、パパからほっぺやおでこにチュッとされるのは、息子たちにとって当たり前のスキンシップになった。これも何だか嬉しい。


 さて、これからは大人の時間。今日は祐樹くんと一緒に見たいドラマがあったんだよね。

 祐樹くんはテレビが点いてても、見ずに本を読んでたり、勉強してたりすることもあるけど、いつも変わらないのはこの時間にずっとくっついてること。

 必ず私にくっついて、時にはあんなとこやこんなとこを触ってくる。で、隙をみてはチューをしてくる。

 どこの新婚さんなんだ、って話だけど・・・でも、これがもう日常になっちゃった。


 今日のドラマは祐樹くんも割と好きそうなストーリー。べたと言われそうだけど、人情派の社長さんの陰で活躍するクールな秘書さんの話。ちゃんと恋愛も入ってて面白い。

 祐樹くんも結構ちゃんと見てる。というか、ちゃんと見るときは集中してるからあんまりちょっかいかけると拗ねられる。



 ソファでのんびりしてると、祐樹くんが私の隣に座る。白湯を持ってきてくれた。

 優しく私の肩を抱く。ふふっ、この時間が好き。CMになったタイミングで長いチュー。特に意味は無い。ただチューがしたいからするだけ。


 あぁ、いいわぁ、この感じ。前の結婚でこんな風にしみじみと幸せを感じたのは何回あっただろうか。祐樹くんと結婚してからは毎日がこんな感じ。


 ・・・って、今回のというか、この初回の終わり方はひどくない!?

 こんなモヤモヤする感じで終わらせるなんて・・・続きがめっちゃ気になるじゃん!もー、何このイキたくてもイケない感じ・・・


「これはひどいな・・・。何だろう、ジンギスカン食べに行ったら野菜だけは出てくるけど、肝心のラム肉売り切れですみたいな感じだな」

「あははは・・・何それ、でも・・・なんか分かる」


 祐樹くんもこの終わり方にはご不満なようだ。祐樹くんと一緒になって分かったけど、私たちは結構怒るポイントとか、笑いのポイントが似ている。


 感性というか価値観がすごく合ってる気がする。祐樹くんが前の奥さんと別れたのは、奥さんが不倫して他の男性の子供を妊娠したからだけど、もともと価値観が決定的に違って、それに追い詰められてたって言ってた。

 だから俺は、息子も捨てて逃げ出したんだ、って。それはそれは悲しそうな顔で言ってた。


 「息子を捨てた」なんて言ってるけど、彼は子供に対する愛情が深い。

 私の前の旦那との間の子供、お兄ちゃん2人のことをめちゃくちゃ可愛がってるし、心からの愛情を注いでいる。


 それは遥香が生まれてからも全く変わらなかった。遥香のことばかり夢中になって、お兄ちゃんたち2人が寂しい思いをするんじゃないか、そんな不安はすぐに消えた。

 むしろ、私が遥香のことで手一杯になることを見越して、お兄ちゃんたちともっと遊ぶように時間を作ってくれた。

 子供心にそんな不安感を持っていた2人も、自分は「パパの子供でいいんだ」と改めて認識したようで、今ではパパのことが大好きだ。


 えっと・・・価値観の話か。私と祐樹くんとの価値観はすごく近い。

 だから一緒に居ても全然ストレスがない。基本は赤の他人なんだからもう少しストレスがあってもおかしくないはずだけど、一切ない。それがとても心地よい。


 昔はとんでもない男と付き合ってしまったりしたりして、死にたいとすら思ったこともある。

 前の旦那との結婚も、最後はどうしてこうなってしまったんだろう、というくらいに価値観の違いで毎日喧嘩して、最後は向こうが女を作って借金残して出て行ってしまった。


 あの頃はしんどかった。祐樹くんと出会ってなかったら、今頃どうなっていただろう。

 大体、祐樹くんは表面は優男だし、下手すりゃチャラ男に見えるけど、中身はかなり壮絶な人生を送ってきていながらも、常に明るく前向きに生きているたくましい人だ。

 表面的な男らしさはあまりないけど、そんなのよりよほど強い人だと思う。


 今、こうやって洗面所で並んで歯を磨いてる時も、私の大きくなったお腹を愛おしそうにさすっている。

 その手が胸の方まで伸びてくるのは・・・まぁ、いっか。祐樹くん、私の事、大好きだもんね。


 歯を磨いて、寝る前の水分補給をしたら二人で手をつないで仲良くお布団へ。我が家はベッドではなくてちょっとお高いマットレスを買ってきて、その上にお布団を敷いて寝ている。

 遥香はベビー用のお布団の上でぐっすり。ふふ、可愛い。


 で、今日も、私は祐樹くんに抱かれる。妊娠してからもたぶん1日も休んでないんじゃないかな。悪阻もひどくないし、毎日愛されてる。ゆっくりと、優しく、身体に負担がないように。

 あぁ、やっぱり愛されてるエッチは身体も心も満たされるものね。抱かれた後は服を着るのを手伝ってもらって、そして、一緒に手をつないで寝るの。

 今日も幸せな一日だった。



 ん?・・・あれ?

 ・・・最初は微かな違和感だった。祐樹くんの手から力が感じられなくなったみたいで・・・目が覚めたらはっきりと分かる。

 祐樹くんの気配が全く消えてる!・・・でも身体はそこにある。

 え?・・・どういうこと?

 怖い・・・

 ねぇ、祐樹くん・・・

 何か言ってよ。反応してよ。ねぇ、ねぇったら・・・

 祐樹くん・・・

 身体があるのに、魂が抜け落ちてしまったかのように全く反応がない・・・

 いやよ・・・いや・・・いやだってば!

 いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!

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