空想のマチュピチュ
私のお父さんとヨシアのお父さんは仲が良かった。いつも交代で、それぞれの家に集まっては酒を飲んでいる仲間達の一員だ。
この山奥の町には酒場なんかないから、交代で家に上がり込む。お母さんは交代の料理の順番が回ってくるのを嫌がった。
酒が入り出す、いつもは優しい無口なお父さん達は、人が変わったように大声で話だし、時には喧嘩にもなった。
大人も喧嘩するんだと私は思ったけど、翌日は喧嘩したどちらもそのことを忘れたように、普通に「どうも」と挨拶していつもの関係に戻っている。そこが大人なんだろうか。
どちらにしても、長屋で隣にも迷惑に成る程の大声の喧嘩は子供にとってもいい迷惑だ。
ヨシアは丘の上の家にいるけど、ヨシアのお父さんは私のお父さんと一緒の仕事だ。けど、労働組合とかでヨシアは一戸建ての家にいるらしい。ずるいと言う人もいれば羨ましいと言う人もいた。
私はどっちでもなかった。どうせこの小さな山奥の町なんだから同じことだ。
鉱山の町は裕福だった。
同じように、どの家にもテレビはあって東京オリンピックも見ることができる。冷えたジュースや移動販売で買ったお肉だって入っている冷蔵庫もあれば、蛇口をひねると飲める水だって出てくる。麓の温泉町ですらテレビは集会場にしかなく、水だって井戸水をキコキコ汲み上げないといけないのにね。
お父さん達は、鉱山の坑道でのツルハシ一本で穴を掘ったり、ハッパ仕掛けたり、百キロ荷物も背負ったりの荒くればっかりだったけど、お母さん達はお洒落な人達ばかりだった。
こんな小さな行く場所もない町を歩くにも、日傘をさして行き来した。
温泉町の従兄弟もその姿を見て、「お前のお母さん綺麗だなぁ」と羨んだ。




