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ストレインシティ・ロックンロール  作者: 水茄子
街の中の飽きない面々
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『日時不明 東京国際空港正面口』

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空または筆者の想像の産物であり、実在のものとは関係ありません。

 なぁ、アンタ。その様子だと、この街に来たのは初めてらしいな。どうだ、金さえ払ってくれればこの心底イかれた街の事を、観光案内のパンフレットやネットの情報よりも簡潔に、それでいて詳細に話してやるよ。

 別に俺としちゃあ、アンタが僅かな金をケチって、この街に腐るほどある厄介事に首を突っ込んで、物言わぬ死体になっても構わねぇんだがよ。

 

 ……へへ、そうこなくっちゃな。支払いはドルでも円でも良いぜ。この街じゃあ、この二つが主に流通してるんだ。なんせ、元々は日本の領土だからな。公用語だって日本語と英語だ。

 さてと、金を貰った以上はしっかり話してやるよ。このインサニオって街の、楽しさと怖さをな。まず、この街にあるのは大きく分けて三つ。大体の連中が、それを求めてやって来る。

 

 ひとつは、はかり知れないほどの金とモノ。もうひとつ、めんどくせぇしがらみを捨て去った自由。そして最後に、考えつく限りの馬鹿騒ぎだ。

 この街には、数えきれないほどのチャンスが眠ってる。途方もねぇ大金が、買いきれねぇ商品がアンタを待ってるんだ。もっとも、それが手に入るかはアンタ次第だがな。

 アンタを縛るくだらねぇモンも存在しねぇ。やりたい事を思う存分、飽きるまでやるといい。ただし、自由にはそれなりの責任が伴うってのを忘れるなよ。

 

 そしてそのチャンスに、この世で一番危険な連中が群がってる。マフィアにテロリスト、自警団や各国の諜報員なんて序の口だ。イかれた宗教家に倫理観がぶっ壊れた企業家、崩壊したソビエト連邦の復活を狙う共産主義者なんてのもいるな。そして、そいつらが起こす馬鹿騒ぎを、傍観者気取りで観戦してやがる自称一般市民共。こいつらがある意味、一番信用できねぇ。

 

 この街の全部が、とことんイかれちまってる。インサニオってのは、ラテン語で『狂気』って意味なんだとよ。日本って国が戦争に負けて、分割統治された後に生まれたこの街のイかれた様子を見た誰かが、そう呼び始めたらしい。それがいつの間にか、この街の仇名になったのさ。本当の名前は、東京共和国って言うんだが、お堅い政府の連中以外に、その名前で呼ぶ奴はいねぇなぁ。

 

 この街は、イかれてる。そしてイかれちまってるからこそ、普通じゃねぇからこそ、人を惹きつけるんだ。アンタも気をつけな。この街は全てを受け入れるが、その全てを飲み込むぜ。善も悪も、愛も憎しみも、理想や信念さえもな。だからこそ、この街で生きていく為には、強くならねぇといけねぇんだ。観客気取りじゃあ、この街に飲まれるだけだぜ?

 何かしらの、力を手に入れな。権力、暴力、知力、財力、ホントに何でもいい。そうすりゃ、この街はアンタにとっての天国になるぜ。

 もし手に入らなかったら、だって? その時は……。


 この街に、喰われるだけさ。


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