2-17 戦う者の為の武具②と、正午の侵入者。
宜しくお願いします。
――― R4075年7月16日(聖)13:00
俺は、パフさんを聖都スカーレットに送った後、スタシオンエスティバルクリュの中空の離宮本殿の管理者控室(5LDKバストイレ冷暖房完備)のリビングルームへ移動した。
アリスさん、サラさん、テレーズさんには、同行して貰い結界が弱くなる或いは消えてしまう事態に対処しようと考えていたが、3人は父バイルとの朝帰り、闇の迷宮の探索や攻略や魂集めが殊の外ハードな様で、夢の中の住人になっていた。起こすのも何なのでそっとしておく事にした。
マルアスピーは、13時~17時の間、自然の力の理つまり自然魔素の循環を監視する為、大樹の森の聖域の精霊樹の精域で待機中だ。俺と目的は異なるが、精霊樹の真上で2つの陽が重なる正午(15時)に備えての行動で、精霊樹に宿りし(大)精霊として欠かさず続けて来た使命なんだそうだ。
中空の離宮本殿のリビングルームには、フォルティーナとアルさんとトゥーシェがいる。トゥーシェは相変わらずな感じだが、以前と比べるとかなり接し易くなった。ただ、非常に騒がしい存在だ。
「おい人間」
「何度も言ってますが、この世界は人間だらけなんです。おい人間って呼んだら該当者続出ですよ」
「ここには、人間はお前だけだろうなのじゃぁ~」
・・・確かにそうか。
「それになのじゃぁ~人間の男バイルと人間の女メアリと......
≪パチン
運の神フォルティーナ様が指を鳴らした。
......ぎゃぁ――― ・・・なのじゃぁ~」
「トゥーシェ。何度も言ってるね。確かにバイルは欲望に忠実で適当なところがあるね。だがだね。敬意を持って接するね。そして、メアリーは確かに人間種だね。だがだね。ロイクの母親だね。敬意と感謝の気持ちを持って接するね。分かったかね」
「・・・は、はい・・・なのじゃぁ~」
フォルティーナは事ある毎にトゥーシェを調教。もとい躾ている。
「それで、トゥーシェ。俺に用ですか?」
「これの何処が外出なのじゃぁ~?」
「小部屋から出て、広いリビングルームでノビノビしてるじゃないですか?」
「創造神と縁のある胡散臭い建物の中でノビノビ出来る訳無いのじゃぁ~」
「そんな事言ったら、エルドラドブランシュも別荘(フォルティーナ曰くハレム)も普段トゥーシェが住んでる神宮殿のフォルティーナの寝殿も全部胡散臭い建物って事じゃないですか」
「捕らわれの身とはいえ人間の男に意見される時が来るとは自分が不憫でならないのじゃぁ~」
「意見って、事実を言っただけです。小部屋に戻りたいならフォルティーナに言うと良いですよ。快く入れてくれると思いますよ」
「そ、それは脅しなのじゃぁ~おい神!」
「なんだね」
「この人間の物言いには問題があるのじゃぁ~。何故パチンとやらないのじゃぁ~」
「トゥーシェ・・・モグモグモグモグ」
フォルティーナは、ニタニタした表情でトゥーシェを1度見てから、手に持つ赤い箱から何かを取り出し口へ運んで食べた。
「さっきから、何を食べておるのじゃぁ~?」
「気になるかね」
「俺も気になります」
「私も先程から気になっていました」
フォルティーナは、待ってましたと言わんばかりにドヤ顔を俺達に向けた。
「これはだね。海で取れる海藻の一種昆布と呼ばれる物を御酢と砂糖等の甘味料で味付けした物だね。これと全く違う物なんだがね。昆布に御酢と醤油と酒で味付けした物もあってだね。これがなかなかいけるね」
「酒の肴って事ですか?」
「何を言ってるね。これは料理に使うと良い感じに化けるね」
「なぁ神。食べたいのじゃぁ~1つよこせなのじゃぁ~」
「俺も1つ良いですか?」
「私も」
「うんうんだね」
俺達は、フォルティーナから白い粉の付いた昆布を貰った。
「おっ!酸っぱいが甘くて美味しいのじゃぁ~」
「これ、癖になる味ですね」
「はい。この昆布という食べ物は美味しいですね。何処の海でも採れる食材なのですか?」
「海水温が低い方が理想だね。ゼルフォーラ大陸では難しいね」
「そうなんですね」
「アルさん仕方無いですよ」
「ロイク様の領地には海があります。もしかしたらと思ったのですが残念です」
「だがだね。海には非常に可能性があるね」
「可能性ですか?」
トゥーシェは、フォルティーナから昆布が入った赤い箱を奪い。中にあった昆布を全て口に入れた。
「うがぁ~~~モグモグ」
「あら・・・食べられてしまったね」
「隙ありなのじゃぁ~ハッハッハッハ」
「あれ?パチンは無しですか?」
「この位の事であれは流石に可哀想だね」
「なぁ人間」
「なんですか?」
「考えたのじゃぁ~。酢と砂糖という調味料は魔法に良く似ているのじゃぁ~。お前から以前貰った塩苺飴、醤油苺飴、柚子胡椒苺飴。何か出来そうなのじゃぁ~」
「トゥーシェさん。料理には、お砂糖、お塩、お醤油、他にも沢山の調味料、香辛料、香料、お酒を使うんですよ。勿論、お酢もです。使う調味料を変えるだけで色々な料理になるんです。魔術や魔法に確かに似ていますが、料理の方が複雑かもしれませんよ」
「へぇ~アルさん詳しいですね」
「料理の神アランギー様が仰っていた言葉を真似しただけです」
「なるほどだね」
なるほどって、また何か始める気か?
「トゥーシェ」
「な、何だ神?」
「明日からお前には、ある事をやって貰う事にしたね」
「・・・遠慮しておくのじゃぁ~・・・」
「ふっ!却下だね」
「うぅぅ~嫌なのじゃぁ~」
「そうか残念だね。やってくれるならだね。5分の1時間外出時間を増やしてやろうと思ったいたのにだね・・・残念だね」
5分の1時間って・・・12ラフンだよな!何やらせる気なんだ?
「やるのじゃぁ~ハッハッハッハ」
「フッ・・・」
フォルティーナのニヤニヤした表情と、トゥーシェの勝ち誇った笑い声が、何だかとっても無常で世知が無い世の中に生きている事を悟らせてくれた。そんな瞬間だった。
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「ロイク様。パフさんと武具の為の素材を集めに行ったのですよね?」
「あ、そうでした。悪魔域の武具の話を聞いておきたいのですが、その前に、神界や神域の武具事情と何処までが戦争に対しての関与になるのか確認しておきたかったんです」
「武具事情と関与の確認ですか?」
「はい。まずは、創造神様は、ゼルフォーラ王国とトミーサス王国の戦争に参加する事を禁止されました。それは、俺や俺の周りに居る創造神様の御力の恩恵を受けた者に限定されていますよね。ルーリン・シャレット領の貴族領軍私兵隊を援軍として派兵しても問題無いのは以前聞きましたが、装備武具は何処までが良くて何が駄目なんですか?」
「簡単だね。この世界には本来存在しない次元の武具や、希少過ぎる武具、神具に極めて近過ぎる武具は絶対に駄目だね」
「それって、準ミスリル(ミスリルが25%以下のスチールの事)ならOKって事ですよね?」
「ミスリルはこの世界で採掘出来る最高の鉱石素材超希少素材だね。問題無いね」
「それって、純ミスリル(ミスリルが90%以上のスチールの事)とか神ミスリル(ミスリルの純度が100%の事)とかでも大丈夫ですかね?」
「ミスリル100%の武具で身を固めた軍隊かね・・・面白そうだがだね。止めておいた方が良いね」
「やっぱりダメか・・・」
「この世界に存在する神具を除いた場合の武具の最高傑作は、純ミスリル製の武具か上位ドラゴン種素材を加工した武具か古代種の素材を加工した武具だね。これらの武具に近過ぎる武具を装備する軍隊は普通では無いね」
「なるほど」
「それにだね。能力より遥かに高い武具はその人間の成長を阻害するね。下手をするとだね。死に直結する恐れがあるね」
何か真面目なフォルティーナってカッコいいと言うか素敵だ・・・
「うんうんだね。もっと褒めて良いね」
・・・ドヤ顔しなきゃもっと良いんだけど・・・前言撤回・・・!
「それで、ロイク様。手頃で良い素材は見つけたのですか?」
「ステンレスリザードから手に入れた素材何ですが・・・【タブレット】『取り出し』ステンレスリザードの鱗 ≫・・・これを見てください」
俺は、3人に入手したばかりの素材を見せた。
「珍しいね。ステンレスだね」
「うん?格羅謨と悪魔銅の合金なのじゃ~」
「悪魔銅?」
「魔界ではニッケル。悪魔域では銅の悪魔なのじゃぁ~」
「フォルティーナ。もしかしてですが、これも元々はこの世界に存在しない物って事ですか?」
「レミレリラスもステンレスも存在しちゃってるね。この世界に合成や加工や生成の技術が無いだけだね」
「それって、兵士に持たせちゃ駄目って事ですよね?・・・」
俺は、フォルティーナの顔を見た。
「当然だね」
ドヤ顔で頷かれた。
「元々存在する素材で、伝説級の素材じゃなければある程度は融通が利くと解釈して良いんでしょうか?」
「例えば何だね?」
俺は、ここ数日、思考し懊悩していた。駄目と言われる可能性の高い素材を予め除外し限られた素材の中で実験を繰り返していた。
「水晶石と準ミスリルを合成加工した武具とか、オプスキュリテやキャプテンウルフやソイルウルフやジェッドリザードやクリスタルリザードの素材を合成した武具です」
「なるほどだね。高レベルなスキル付与やレアスキル付与や高効果な付加がなければ問題無いとおもうね」
「実はですね。重装の装備防具は既に準備してあるんです。【タブレット】『取り出し』ロイスピー製シャレット合金のプレートアーマー ≫」
俺の目の前にプレートアーマーが現れた。
「4つの素材を合成してあたらしい素材を生み出したのかね?」
「はい。大地石化している水晶石で最初は考えていたんですが、たぶん駄目って言われると思ったので、普通の水晶石と翡翠と準ミスリルを合成したものです。比率は、ミスリル25%、スチール50%、水晶石15%、翡翠10%です。階級や功績に応じて、スチールの比率を下げ、クリスタルの比率を上げ、装備している武具を見るだけ立場が分かる様にしました」
「ロイク様。この色は、マルアスピーさんの髪の色をちょっと濃くした感じですね」
「そうなんですよ。作ってから気付いたんですが、クリスタルの比率が30%位まで上がると、あの綺麗な色に近付くんです。大樹の英雄とか呼ばれてる俺の現状にはこの緑色はなかなか似合ってると思うんです」
「そうですね。真っ白な武具も今度作ってくださいね」
「アルさんみたいな武具ですか?・・・ドレスとか服の方が良くないですか?」
「そ、そうですよね・・・」
残念・・・いや違うか、嬉しそうにも見えたし。
「それで、武器はどうしたね?」
「武器は、基本素材を準ミスリルにしました。木を使う物には大樹の森で調達した高齢巨木を素材として利用して、皮を使う物にはダークウルフの背中の皮を鞣した物を素材にしています」
「大樹の森の高齢巨木は入手するのが大変な素材だね。だがだね。この世界には多く存在する木だね。良い選択だと思うね」
「ありがとうございます」
***準備した武具のまとめ***
≪ロイスピー製≫
本社:聖都スカーレット
工房:聖都スカーレット
技師:ロイスピー(ロイク)
ルーリン・シャレット天爵領
貴族領軍私兵隊 正規採用防具
金属:シャレット合金
※ミスリル25%以下※
※スチール15~50%※
※クリスタル15~50%※
※ヒスイ10%※
木材:高齢巨木
皮:ダークウルフ
軽装用(外套等)
皮:オプスキュリテ
皮:キャプテンウルフ
皮:高齢巨木
その他:高齢大樹の葉
※この世界では非常に希少※
等
****************
R4075年7月16日18時。ルーリン・シャレット天爵領・聖都スカーレットの貴族領軍私兵隊は、エンゾ・ルーリン天爵領・領都リヤン防衛の為に出陣した。編成は次の通りだ。聖都スカーレット防衛隊2600名。聖都チュテーレ騎士団2600名。聖都サント騎士団2600名。計7800名。
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・
・
≪3≫
≪2≫
≪1≫
――― R4075年7月16日(聖)15:00
≪1≫
≪2≫
7月16日15時。スタシオンエスティバルクリュは2カウン程無風状態になった後、風速30m程の風が西から東へ精霊樹へ向かって吹き始めた。俺達は、中空の離宮の別荘の近くにある幼樹庭園の精霊樹の幼樹の前へ移動していた。
「これって、精霊樹の真上で2つの陽が重なる事で起きる現象なんですよね?」
「そうだね。アスピーが大樹の森の聖域の精霊樹の循環を統制している頃だね」
「マルアスピーは凄い事をやっていたんですね」
「アスピーが精霊樹を統制する事で、この世界には季節が存在するね。見直したかね?」
「そうですね。正直なところ初めて会った時から尊敬してます。大精霊様ですから」
「ロイク。あたしは神だね」
「そうですね」
「神だね・・・」
「知ってます」
「・・・」
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・
・
「ロイク様。お話では無風状態になって、結界が無くなるか弱くなるって・・・?」
「そう言えばそうですよね。フォルティーナ。どういう事ですか?」
「だからだね。風が無風に成って、そして西から東へ吹くね。もう暫くするとこの強風が止んでだね。2時間かけて午前中とは逆の循環に切り替わるね」
ちゃんと聞かなかった俺が悪かったんだ。やっと意味が分かった。精霊樹から風が生まれて、1月1日の15時過ぎ~7月16日の15時までは東と南へ風が吹く。7月16日の15時過ぎ~1月1日15時までは西と北へ風が吹く。
上半期の西からの風は、精霊樹が東へ生み出した風が世界を一周して戻って来る風で、精霊樹に最も近くほぼ真南に存在する俺の生まれ故郷は、精霊樹が南へ生み出した風を北風として受ける。精霊樹と故郷の位置の関係上、故郷に影響を与える風は北風だけになる。
下半期の東からの風は、精霊樹が西へ生み出した風が世界を一周して戻って来る風という事になる。精霊樹が北へ生み出した風が世界を一周して精霊樹に戻って来るまでに、北へ生み出された風は西へ生み出された風の影響を受ける。故郷に影響を与える風は、南南東の方角から吹き付け北へ抜ける。
結果的に故郷では、上半期は北から南へ風が吹き、下半期は南から北へ風が吹く。大雑把な解釈だが細かい事を気にしなければこうなる。
フォルティーナが前に話していた事は、ここスタシオンエスティバルクリュの特殊な環境によって、東西の風の影響を強く受けるんだと言いたかったのだろう。
「ようするにだね。精霊樹の風を生み出す力と取り込む力はだね。生み出される力と取り込む力が強過ぎて、その時点では干渉し合わ無いね。だがだね。精霊樹から離れた場所では生み出す力に絶えず押し出される風と、取り込む力に絶えず引き寄せられる風は干渉し合うね」
まとめたつもりだったが、どうやら何か微妙に違うみたいだ・・・だが、本来の目的は風の事ではない。俺達がここに待機しているのは結界が消える或いは弱くなるから念の為に集まって様子を見ようとフォルティーナが提案し強制実行したからだ。
「この世界の風事情は何となく分かったんですけど、完全な無風になる訳じゃないし結界が消えるって事は無いと思うんですけど・・・」
「良く見るね。既に風属性の外結界が消えかけているね」
「え?」
「ロイク様。西側の風結界が消えそうです」
「1つ質問があります。風の結界が無くなると喜ぶのは何ですか?」
「何を言ってるね。地属性を秘めた存在。帯びた存在に決まってるね」
やっぱりそうなるのか・・・
「無風状態でも強風の時でも羽ばたく事の出来る存在。自由に空を飛ぶ事の出来る能力の高い種にとっては、渦を巻いた風の結界が無くなる事は侵入出来る事を意味します」
なるほど。
「つまり、風属性の高い個体や、地属性の個体の侵入の可能性が高くなるって事ですね」
「はい」
「そうだね」
「それって、気にする必要が無いって話になりませんか?」
「どうしてだね?」
「東西の......
***スタシオンエスティバルクリュの結界***
≪結界の状況≫
上半期と下半期で向きを変化させる
『風属性』の【流動結界】
※コルト下界の大気循環を利用した結界※
東西の滝が生み出す
『水属性』の【流動結界】
※水神球1個の3分の1の力と、
水の流れを利用した結界※
東湖と西湖が生み出す
『清澄水属性』の【不動結界】
※水神球1個の3分の2の力を利用した結界※
東西25.2Km、南北6Kmの大地全域を覆い
上空2Kmと5Kmに張られた
『神気』(無属性)による【聖域流動結界】
※南北に広がる山の斜面は結界外※
※創神殿の力を利用した広域結界※
上空2.3Km~3Kmに張られた
『清澄風属性』の【無風結界】
※コルト下界の大気循環を利用した結界※
中空池が生み出す
『清澄水属性』の【不動結界】
※水神球3個の力を利用した結界※
本殿、迎賓殿、神宮殿、研究所、別荘が生み出す
『神気』(無属性)の【聖域不動結界】
※各建物の力を利用した結界※
創神殿が生み出す
『神気』(無属性)の【神聖域結界】
※創神殿の力を利用した限定結界※
幼樹庭園が生み出す
『大樹属性』の【精域結界】
※精霊樹の幼樹の力によって発生※
※大樹属性=4大属性の統制属性※
***********************
......結界や聖域だらけなんですよ」
「言いたい事は分かるね」
本当かな?
「だがだね。一番外の結界がだね無くなるとだね。南北の結界が神気による無属性の聖域結界だけになるという事だね」
「だけって言いますけど、大樹の聖域や他4つ聖域は、自然魔素の聖属性による聖域です。邪や闇の存在に魔獣や人間種は踏み込む事は通常出来ません。ここは、そんな聖域よりも強力な神気による聖域結界で守られているんですよ。どこよりも安全だと思うんですけが・・・」
「結界が張られた当初はそれで良かったね。神気による聖域結界や神聖域結界であれば、神やその眷属以外の存在には見る事も聞く事も感じる事も踏み込む事も出来ないね。だが、現状ではそれが仇になってしまったね。神やその眷属なら神気による結界は結界でも何でも無いね」
「ふむ」
「分かった様だね」
なるほど・・・・・・だけど、創造神様やフォルティーナと敵対する神様や眷属が、ノコノコここにやって来るか?
「ここには、脱獄した神様やその神様に味方する眷属が来るだけの理由があるんですか?」
「無いね」
・・・無いのに、態々来る存在が?
「あのぉ~フォルティーナ様」
「なんだねアル」
「本殿の方から邪属性の神気を感じませんか?」
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「・・・しまったね。話に夢中になり過ぎて侵入を許したね。行くね」
≪パチン
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「そこまでだね。観念して縛に付くね」
「誰だ?・・・愛憎の女神・・・!?嫌、違う・・・」
「ハッハッハッハだね。あたしは運を司りし遊びの女神フォルティーナだね。観念して縛に付くね」
「なっ!なんだとぉ・・・運と遊びの女神がコルト下界で何をしている!」