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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
91/1227

2-10 完成しない美学と、愛の欠けた者。

宜しくお願いします。

※―――


「どうやら、本気で朕を怒らせてしまったようだな。人間種風情が(わきま)えろぉ~!」


≪ブーン ブーン ブーン


「4の5の言わずに戦斧六の舞【二刀流戦斧(ダブルアックス)惨劇(三撃)の雨・夜の女王に捧げる輪舞】くらえぇ~~~!」


≪ダンダンダーン ダンダンダーン シュルンルンルンルンルンルン


≪♪(ジャ)ァーラッタ (ジャ)ァ―ラッタ (ジャ)ァーラッタ (ジャ)ララ・・・



※―――


「うぉ~」


≪パチパチパチ パチパチパチ


「凄いわトゥーシェさん」


≪パチパチパチ


「えぇ~心からの賛辞を貴方に贈るわ」


≪パチパチパチ


「ありがとう。トゥーシェ。ありがとう」


 俺は、トゥーシェの手を取り握手した。


「て、照れるでは無いか人間の男!精霊も神獣もやめるのじゃぁ~」


「何言ってるんですか。あんな凄いピアノを聴かせておいて」


「そうですよ。愛と憎しみの館に相応し過ぎる演奏でした」


「そうね。素晴らしい曲だったわ」


「フン。だが1音狂っていたのが残念であったのじゃぁ~この音じゃぁ~」


≪♪トーン ♪トーン ♪トーン


「半音高いのじゃぁ~・・・人間の男。この鍵盤を押した時に中で弦を叩いている所があるのじゃぁ~」


「触って大丈夫ですかねぇ~」


「悪魔が良い事をしようとしているのじゃぁ~黙って従うのじゃぁ~」


「それもそうですね」


≪カコ


 俺は、ピアノの大屋根を開けた。


≪♪トーン ♪トーン


「あ、動きましたよ」


 ハンマーが弦を叩いた。


「今、叩いた張っている弦を抑えているパーツがあるのじゃぁ~それを緩めて弦の張を緩めるのじゃぁ~」


「えっとどうやって・・・まぁ~良いか【マテリアル・クリエイト】音が半音高くなっているピアノの弦をチューニング『再創造』≫」


≪♪ターン♪ ♪ターン♪


「一発で直ったのじゃぁ~良くやった人間の男」


「魔法で直しただけですけどね。ハハハ」


「マルアスピー。ここに座るのじゃぁ~」


「私が?」


「簡単な曲を教えてあげるのじゃぁ~」


「どんな曲ですか?」


「人間の男。お前にでは無い。この曲は精霊に似合いの曲なのじゃぁ~」


「マルアスピーに似合いって事は可愛い曲何ですか?」


「ロイク・・・私は可愛いですか・・・」


「まぁ~ロイク様ったら!」


「えぇ~そう思いますけど」


「そ、そうですか・・・」


「フン。何を夫婦で気色の悪い事をしておるのじゃぁ~。この曲はキラキラ星変奏曲初心者右手わたしヴァージョンなのじゃぁ~」


≪♪邪邪邪邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー


「指一本で弾ける曲なんですか?」


「マルアスピーのレベルに合わせたのじゃぁ~」


「へぇ~トゥーシェって皆を良く見てたんですねぇ~・・・」


「当たり前なのじゃぁ~。敵を知ってこそ、我を知る事が出来るのじゃぁ~」


「フフ。トゥーシェさんは努力家さんだったのですね」


「俺、トゥーシェを見直しました。戻ったらフォルティーナにもう一度外出の話をしてみます」


「おぉ~人間の男。お前実はダメ過ぎる悪魔だったのじゃぁ~おーいおいおいおい」


≪グズゥー


 トゥーシェは、俺の服で涙と鼻水を拭いた。


「ちょっと、トゥーシェ汚いですよ」


「誉め言葉として受け取っておこうなのじゃぁ~」


≪ブビィー


「こら、鼻をかむなぁ~」


「ハッハッハッハなのじゃぁ~。さぁ~マルアスピー。1オークターブ高い場所で真似をするのじゃぁ~」


「えぇ」


≪♪邪邪邪邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー


≪♪タタタタァ~タタタァ~タァ~タァ~タタタァ~タァ~タァ~


「良い感じなのじゃぁ~」



※―――


「何だ?終わらない様にわざと外しておいた音が!?あの小娘かぁ~朕をここに足止めし罠に嵌めるとはぁっ!お前等ぁ~!」


≪ザザッ チューチューチュー


「トゥーシェさぁ~ん!そっちに」



※―――


「さぁ~もう一度なのじゃぁ~」


「そうね。忘れる前に身体で覚える方法ね」


≪♪邪邪邪邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー

≪♪タタタタァ~タタタァ~タァ~タァ~タタタァ~タァ~タァ~

≪♪キラキラァ~ヒカルゥ~ヨォ~ゾォ~ラノホォ~シィーヨォ~


「歌詞がある曲なんですね」



※―――


「貴様ぁ~良くも朕の世界をぉ~!」


≪ブーン


()わしてぇ~~」


「「「きゃぁ~」」」



※―――


「何だ?」


「どうしたのかしら」


「次は大きな声で合図を送り合う練習を始めたみたいですよ」


「まったく。ピアノを弾きながら初めて歌を覚えたというのに、騒がしい子達ね。あの子達は放っておいて、トゥーシェもう一度歌って貰えるかしら」


「良いだろうなのじゃぁ~・・・人間の男よ。分かっているのかなのじゃぁ~」


「良いでしょう。トゥーシェ。マルアスピーがこんなに楽しそうにしているのを食べている時以外で初めて見ました。フォルティーナに必ず掛け合いましょう」


「良し、それでは、もう一度なのじゃぁ~」


≪♪邪邪邪邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー邪邪邪ァー邪ァー邪ァー

≪♪タタタタァ~タタタァ~タァ~タァ~タタタァ~タァ~タァ~

≪♪キラキラァ~ヒカルゥ~ヨォ~ゾォ~ラノホォ~シィーヨォ~



※―――


「ダメです。ピアノの音が邪魔しているのか、私達の声が届いていないみたいです」


「サラさん」


「パフさん、アリス、テレーズ全力で火焔の鳥を!」


「「「分かったわ」」」


「いけぇ~いけぇ~いけぇ~」


「「「四象四獣四聖四神。青春朱夏白秋玄冬。暦鬼驩兜黄熊淵源。南座の神よ心に示したまえ火属性(きわみ)魔術【パーンヴェルミオン】≫」」」



「止めろぉ~正しい音でピアノを奏でるなぁ~」


≪ブオ―――ン ブオーン


「間に合わない!」


≪ドンドンドンドン ドンドンドン ドンドンドン


「きゃぁ~」



「え?」


「トゥーシェさんに当たって無い」


「な、何ぉ~・・・こ、こいつは・・・この短時間で愛が足りたと言うのかぁ~朕を見捨てた愛がどうしてだぁ~チューチューチュー」


≪ブオ―――ン ブオ―――ン シュルルルルルルル


「もう、どうでも良いわぁ!お前等愛の欠けた4人を道連れにして死んでやるぅ~!夜の女王よぉっ!朕に力を与えよぉ~朕はザラストロ!魔鼠の王ザラストロぉ~~~!」


※―――


「あれ?何か闇属性と邪属性が急に強くなった気がしませんか?」


「ロイク様。パフさん、サラさん、アリスさん、テレーズさんの中央に闇溜まりがぁっ!」


「あの4人次は何を始めたんだぁ~?全くぅ~」


「そうね」


「おぉ~ドブネズミ退治は終わった様なのじゃぁ~」


「そうみたいですね。でも、また何か始めたみたいです」


 シャドーバトルを止めたと思ったら次は属性の練習を始めるし何しに来たんだこの4人は・・・


「あそこを見るのじゃぁ~。魔界から闇属性が流れ込んでるのじゃぁ~」


「魔界?」


「あの4人の中央なのじゃぁ~。悪気(あっき)が何者かの求めに応じ集まってるのじゃぁ~」


「ロイク様。あの4人。愛と憎しみの館で憎しの方に目覚めてしまったのではないでしょうか?」


「憎しみに目覚める?」


「愛憎の女神様は憎しみの心の女神様でもあります。もしかしたらの話です」


「でも、憎しみに支配されている様には見えないですよ。楽しそうだし」


「フン。やはり人間は愚かものじゃぁ~。今日は魔笛を奏で気分が良いのじゃぁ~あの闇代わりに喰ろうてやろうなのじゃぁ~スゥー―――――」


≪フゥ――――――スゥー――――


 トゥーシェは闇を吸い込み始めた。



※――――


「ガッハッハッハッハッハ。力が力が力がぁ~!ガッハッハッハ・・・あぁ~?」


「黒い靄がトゥーシェさんの方に流れて行くわ」


「パフさん。ドブネズミが油断している今がチャンスよ」


「はい、いっけぇー。いっけぇー」


「テレーズ、アリスは、弓を!」


「分かったわ」


≪シュッ シュッ


「・・・魔術【パーンヴェルミオン】≫」


≪ドッゴゴゴ―――ン シュッシュッ


≪ブーン


「邪魔だ愛の欠けた人間共がぁ~!」



※―――


「こんな感じでよいか?人間の坊やよ」


 闇の迷宮に巻き込まれた時と同じ雰囲気だ。


「トゥーシェさん?」


「トゥーシェ・・・貴方・・・」


「大精霊に神獣・・・・・・まぁ~良い。坊や」


「は、はい」


「坊やは妾をどうしたいのか?」


「何がですか?」


「ハッハッハッハ。まぁ~良いか。大精霊、神獣お前達の事は嫌いではない故今日は坊やの願いを叶えてやろうではないか。あの神に外出の許可を必ず貰えるか?」


「ピアノのお礼はします。その前に、俺の願いって何ですか?」


「ハッハッハッハ。ドブネズミ退治が願いでは無いのか?」


「ドブネズミ?」


 何だ?煩いだけの存在から少し見直したばかりだったのに、女王様プラスモードになったら、パフさんのシャドーバトルに参加?


「フン。まぁ~良いか」


≪シューゥ


 トゥーシェは、4人の近くに一瞬で移動した。


「おい。ザラストロ聞こえているか?聞こえているのなら姿を現せ死にたいか?」



※―――


「この人間共がぁ~・・・・!朕の名を呼び捨てるとは、この小娘がぁ~・・・ぅえぇ?・・・ぇぇぇぇ―――姫様ぁ~―――女王様!?」


≪ガクガク ブルブル ガクガク


「どうしたのかしら、怯えてる様に見えます」


「私もです。パフさん」


「アリスさん、テレーズさん、サラさん。トゥーシェさんの傍に移動しましょう」


「「「えぇ~」」」


※―――


「おい。ザラストロ聞こえているか?姿を見せぬか!」


≪は、はい・・・女王様!≫


 滝の様な汗を身体中から流し、大きなドブネズミが5人の前に姿を現した。


「あっ!ドブネズミ」


「ロイク様。パフさんのドブネズミが・・・」


「パフちゃん・・・貴方・・・」


「ち、違います。私のじゃありません!」


「パフちゃん。いつ魔獣の召喚を覚えたの?」


「ち、違います。召喚出来る様になっても、こんなの召喚しません。あのドブネズミは、最初からここにいたドブネズミです」


「パフさん。俺達も最初からここに居ましたが、そんなドブネズミはいませんでしたよ」


「はい。いませんでした」


「えぇ~いなかったわ」


「ですから、ロイク様とマルアスピー様とアル様には見えていなかっただけでぇ~」


「人間如きが、ギャーギャーと喚くな騒がしい。誰の前で口を聞いている。こちらの御方は、悪魔種の魔王サザーランド様の御孫様で夢魔族夜の女王トゥーシェ様なるぞぉ~!魔王の一族、夜の女王陛下の御前である」


「トゥーシェさんが悪魔?」


「魔王の一族・・・?」


「アリス。魔王って何でしょうか?」


「知らないわ」


 どうやら、アリスさんとテレーズさんは魔王が何なのか知らないで驚いていたようだ。


「普通では無いと思っていましたが、トゥーシェさん貴方悪魔でしたのね」


 パフさんと、サラさんは冷静だった。


「パフにサラ。お前達は冷静ではないか!」


「トゥーシェさん。貴方と接している時、たまにでしたがとても豊かな経験と感性をお持ちなのだと感じる時がありました。容姿とのギャップに違和感を覚える時がありました」


「はい。私もです。私より年下なのに大人の女性の様な魅力を感じる時がありました」


「そうか。今は、妾の中で眠っているトゥーシェが聞いたら喜ぶであろうな。そう思わんか?ロイク」


「俺に聞かれたも・・・」


「ふっ。まぁ~良いか。妾は悪魔種夢魔族が長の娘トゥーシェ。悪魔域の夜の女王。知っていたか?ロイク」


「知らないです」


「夜の女王様。あの人間種は何なのですか?」


「妾の夫となる人間の事を知らんのか?」


「夜の女王様の旦那様でしたか。それはそれは・・・って、おーい!御父君や魔王様のお耳に入ったら大変な事になります」


「妾は、創造神に掴まり、運の神の監視下にある故逃げ出す事が出来ぬ知っておるか?」


「いえ、今聞きました」


「トゥーシェ。そのドブネズミは知り合いなんですか?」


「気になるわ」


「はい、私も気になります」


「「「「私達もです」」」」


「ここにいる魔鼠の王は、妾の祖父魔王サザーランドに従える12の獣の1角で、死の舞戦斧(デスアックス)のザラストロ」



――― R4075年7月14日(火)13:50


「つまり、魔鼠の王ザラストロさんは、愛と憎しみの館を愛憎の女神様が戻って来るまで、管理維持する様に頼まれていたと」


「はいチュー。ロイク様」


「管理維持を頼まれた魔鼠の王ザラストロさんがどうして私達を襲ったのですか?」


「そうね。襲った理由を知りたいわ」


 サラさんとアリスさんがザラストロさんに質問した。


「それは・・・この部屋が『永遠の愛の間』だからです」


「答えになっていませんわ」


「「「そうです」」」」


 サラさんの言葉に、アリスさん、テレーズさんパフさんが同意した。


「愛の欠けた存在が足を踏み入れてはいけない部屋なのです。これは朕が決めた事ではありません。愛憎の女神様が決めた事なのです」


「私達の何処が愛の欠けた存在なのですか!?」


「「「そうですよ」」」


 サラさんの言葉に、アリスさん、テレーズさん、パフさんが強く同意した。


「と、言われてもですチュー。欠けているのは確かです」


「そんな事はありません」


「そうよ」


「確かに愛が何のか良く分からない所はありますが、愛が欠けている。愛が無い何て事は無いと思います」


 サラさん、アリスさん、テレーズさんだ。


「この部屋で、朕が見えた以上、愛が欠けている存在だという事です。それは愛憎の女神様が決めた事です」


「「「そ、そんなぁ~」」」


「神様が私達には愛が無いと判断されたというのですか?」


 サラさんは、ザラストロさんに食い下がる。


「はいチュー」



「魔鼠の王ザラストロさん。俺も質問があります」


「はいチュー。何でしょうロイク様」


「どうして、愛憎の女神様の手伝いをしてるんですか?悪魔種なんですよね?」


「朕は綺麗な物が好きなのです。美しい物を集めるのが好きなのです。美しくない物や汚らわしい物と美しい物を一緒にしていてはいけないのです。朕と愛憎の女神様は考え方が似ていました」


「そうね。今の説明で納得がいったわ。パフちゃんやアリスやサラやテレーズを攻撃したのは、永遠の愛の間から排除しようとしただけなのね」


「はいチュー。ですが、抵抗されイラっとし、つい少し本気を出してしまいました」


「排除した汚れた物は何処に集めているのかしら?」


「この部屋と対の存在『報復の憎しみの間』です。そちらでは、憎しの欠けた者に朕の姿が見えるのです」


「ちょっと待ってください。私達の何処が愛が欠けていて、憎しみの間の方が相応しいのか納得がいかないわ」


 アリスさんが若干怒鳴り口調で言い放った。


「パフちゃん。アリス、サラ、テレーズ。私の予想なのだけれど、貴方達4人は、どちらの部屋でもこのドブネズミが見えるはずよ」


「あ、あのぉ~私はドブネズミではありません・・・」


「そうね。忘れていたは、ドブネズミの王ザラストロ」


「い、いえ、魔鼠の王です」


「そう。気を付けるわ」


「お、お願いします・・・」


「えぇ~。4人は、まだこれからなのよ。愛も憎しみも全て」


「私達がですか?」


「そうよ。私やアルやトゥーシェ。トゥーシェは意外だったけれど、考えてみれば簡単な事だったのよ。トゥーシェは経緯はどうであれ、常に相手の事を見て考える様にしていたわ。思い遣りからではなかったのでしょうけれど、それは情であったり仲間意識であったり、永遠の愛の間に満たされていると判断される状況に達したのよ」


「相手を考える事が愛ですか?」


「そうとは言っていないわ。愛の形には答えが無いものだと私は思うわ。けれども、私はロイクが悲しんでいたり涙を流したりするのは嫌なの。ロイクの為なら死ぬのだって怖く無いわ。家族皆に近い感情を持つ様になった自分自身に驚いているのだけれど、それとは少し違うみたいなの」


「マルアスピーさん。貴方のそれは立派な愛です。家族や友人を思う愛。伴侶を思う愛。自らを犠牲にする必要は無いと思いますが立派な愛の形です」


「そうね。きっと立派な愛の形なのね」


「はい。マルアスピーさん」


「アル様の愛の形はどんな物なのですか?」


「わ、私ですか・・・そうですねぇ~」


 愛や若さや美を司る神格を持った神獣様だって、教えるのはまだ早いよね・・・


「アルさんは、誰よりも優しくて、誰よりも厳しく、俺達を包み込んでくれるじゃないですか、これもきっと愛の形何ですよ」


「母親の様な愛という事でしょうか?」


「そうですよ。それですよ。テレーズさん」


「でも、ロイク様。私は弓矢や家族に対しての愛は誰にも負けないと思っています」


「まだ分からんか?アリス。勝ち負けではないということなのではないか?そうであろうザラストロ」


「はい。トゥーシェ様。愛に勝ち負けは存在しないと愛憎の女神様は仰っていました」


「合点が行きません。私の愛は十分形になっていると思うのです」


「「私もです」」


 サラさんの発言に、パフさんとテレーズさんが頷きながら合意した。


「そうですチュー。この人間4人は、愛が強過ぎるのかもしれません」


「強過ぎるか!面白い意見では無いか。聞こう」


「はい、トゥーシェ様。朕は、美しを追求しピアノの音を1つ外しておきました」


「あれは、わざとであったか」


「はい。完成しない事による美を追求したのです」


「楽器の音をわざとおかしくするなんて変です」


「アリスさん。もう少し詳しく聞きましょう」


「ろ、ロイク様がそう仰るのでしたら・・・」


「美は完成した瞬間から美を失って行くのです。この部屋の家具や雑貨を御覧ください」


「「「「家具?」」」」


「ソファーとピアノの事でしょうか?」


「アンティークなソファーに年代物のピアノ」


「だけみたいですけど・・・」


「まさか!ロイク様。マルアスピーさん、アルさん、トゥーシェさんには、他にも家具が見えているのですか?」


 サラさんが、俺達に視線を動かした。


「えぇ。とても品の良い家具と集めた人の美しい心やセンスの良さが伝わって来る雑貨が沢山飾ってあります」


「そうね。雑貨のセンスは子供の様な感じね」


「はい。とても優しい美しを感じます」


「家具は朕が集めた物です。雑貨は愛憎の女神様が数万年かけ集めた物です」


「あぁ~なるほど。良く見ると、雑貨も家具も微妙ですけど傷が付いてますね」


「はい。究極の手前で留まり続ける美しさ。究極の手前で止まってしまった儚さと無情な現実もまた美だと愛憎の女神様は考えたのです」


「なるほど、それで、音を1つおかしくする事で、完成しない音楽の美を音を鳴らさずに、ピアノという存在だけで表現していた訳ですか」


「はい。ですので、4人の愛は欠けているのでは無く、1つの方向に強過ぎるのではないかと考えたのです」


「何か、想像以上に深くて哲学になったわね」


「「「はい」」」


 サラさんの発言に3人は頷いた。


「襲われた理由は分かりました。それで、この館は愛憎の女神様の寝殿だったのですよね。ロイク様。私達は何をしにここに来たのでしょうか?」


「それが、創造神様から招待されただけで、何って事は無いんです」


「創造神様からの招待?」


「ロイク様。私そんな話聞いてません」


「えぇ~出発前に説明しようと思っていたのですが、フォルティーナとトゥーシェがいつもの感じで、脱線させてくれたので時間がありませんでした」


≪パァ―――


 部屋に白い神々しい輝きが広がった。


≪≪愛と憎しみの館へようこそ≫≫

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