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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーマルアスピー編ー
9/1223

1-3 夜の為?いえ、美容の為に。

作成2018年1月29日

***********************

【タイトル】このKissは、嵐の予感。

【第1章】(仮)このKissは、真実の中。

 1-3 夜の為?いえ、美容の為に。

***********************

――― ヒグマの丘 調査開始から1時間程


 ヒグマの丘の魔獣調査(討伐)は、セリューさんとロージャンさん一応父に任せて、俺自身は精霊様の指導を受けながら、魔法の制御練習を魔獣相手の実戦形式で行っていた。威力範囲規模の制御が思い通りになら事に加えて、相手の居場所を的確に捉えていても発動位置に若干の誤差が生じてしまい、魔獣達から受ける被害よりも俺自身が人為的に与えてしまう被害の方が大きくなってしまうと判断したからだ。


「あなた、ほらもう1度です」


「・・・はい。26回目の正直。『精霊魔法【アグニ】自然魔素:清澄火属性1/32(32分の1)・発動』≫」


≪ブゥオォ―――ン シュ―――――バチッ バチバチッ シュゥ――― ボォッ シュゥ―――


「・・・」


 俺の目の前には、白く光り輝く火の球体が出現し、正面距離2mの地面に置かれた薪へとゆっくり動き出す。薪と周辺の草は球体が近付くと火を噴き出し燃え上がり跡形も無く消滅した。火の球体は地面に落ちると土を溶かしながら沈み始める。


「ちょっ、ちょっと!何やってるのよ。『精霊水属性魔法【キャナル】』」

 

≪チャップ~ン ボコボコボコボコボコボコ ザバァ――――――――― カァッ ジュシュー! モワモワモワモワァ~ シュゥ―――――


 彼女は右手の人差し指を立て、小さくハートマークを描き、そのハートマークを俺が出現させた火の球体に向け指で軽く押し出す様な仕草をした。ハートマークから水が流れ出す。その流れはまるで洪水の様な水量、激しい滝の様な勢いで、地面に沈み込む火の球体目掛け流れ込んだ。


≪キュン キュッ ザァアァ――― チィ チィッ ジュッジュッ ジュッ チィ ジュゥ~ ドーン ドドーン ドォ――――――ン ジュゥ―――


 激しい爆発音と激しい爆風そして熱・・・蒸気で良く見えないが、この蒸気の中では物凄く大変な事が起きていると容易に理解できた。


≪シュゥ――――――――――――――――――


「薪に火を着けるだけなのよ。熱で大地を溶かしてどうするのよ・・・まったく」


≪ジュッ チィ ジュゥ~ シュゥ―――


 ハートマークから絶え間なく水が流れ出てやっと鎮火した様だ。


「精霊火属性下位魔法【アグニ】を消す為に、優位属性の精霊水属性上位魔法【キャナル】って、自然魔素(まりょく)を集め過ぎよ。森どころか世界が壊れてしまうわよ」


「・・・何て言うか、特に何もしてないんだよ。自然魔素(まりょく)も集めた覚えも無いし。ただ魔法の名前をイメージして発動させただけなんだよね・・・」


「火付けぇ~ってイメージして、森や大地を燃やしたり溶かしてどうするんですか。もう!『【アルプランブル】』≫」


 彼女は、何かを発動させた様だ。火に焼かれ蒸発と爆発に巻き込まれ、水に流された地面に、草が生え出し生い茂り、花が咲き乱れ、穴は塞がった。


「す、凄いですね・・・」


「フフフッ。自然は生き物なの、切っ掛けがあればほんの少しの流れの変化でこんな事も出来るのよ」


 自然があっというまに復活する光景を目の当たりにし、頭に思い浮かんだ言葉としては安っぽいかもしれないが、これは奇跡の瞬間だ。精霊様は神様にとても近い存在なんだ。と、改めて感じた。


「フフフッ。あ・な・た!私達は夫婦なのよ。忘れちゃ駄目よ」


「精霊様は、本物の精霊様なんだと、何か感動が」


「もう・・・私が精霊って事よりも、私があなたのお嫁さんだって事に感動して欲しいわ」


 彼女は、胸の前で腕を組み、少し俯き瞼を閉じて考え始めた。


 凝視・・・(彼女は精霊。精霊様だから・・・)


「ブツブツ 火でこれでしょう・・・?大地なんてつかったら地震とか起こしちゃいそうよね。水なんて利用させたら、森が水没しかねないし・・・風は森がバラバラになりそうね。害の無い【聖属性】が良さそうなのだけれど。う~ん。そうよね・・・その方が、ブツブツ ブツブツ」


 彼女は何かを考えている時に、考えている事を口に出してしまう様で、その癖に気付いた俺は、気付かないふりをしていた。胸を強調する姿勢で俯いた彼女が余りにも眼福過ぎて・・・しかも無防備な瞬間がとっても可愛い。見惚れたりするのは男の性だから許して欲しいところだ。しかし、あの胸は夢と希望に溢れている。


 凝視・・・


「そうよねっ!決めたわ」


 彼女は、頷くと瞼を開け視線を俺に向けた。俺の視線は当然の事ながら夢と希望に釘付け中である。


「あ~らぁ~あ・な・た!」


「え?あっ・・・」


「私の身体を隅々まで舐め廻す様な熱視線で念入りに・・・」


「舐め廻すとか熱視線とか、な、何、言ってるんですか。俺は、そ、そんな視線・・・」


 否定できない・・・ごめんなさい。自信を持って違うんだ誤解なんだなんて言えない。彼女は精霊様なんだぞ。神様に近い存在なんだ確りしろ俺。


「別に良いのよぉ~。だってぇ~夫婦でしょう」


「・・・・・・」


「フフフッ。それでね。調査が終わりましたら、周りを気にしないで魔法の練習ができる珍しい魔獣を倒しに行きませんか?」


「珍しい魔獣ですか?」


「はい。魔獣なのですが、聖属性を秘めた個体でして、聖属性か無属性しか効きません」


「聖属性の魔獣ですか、珍しい魔獣なら見るだけでも価値がありそうですね。ここが終わったら行ってみましょう」


「聖属性の魔獣だから珍しいという訳では無いのです。その魔獣の肉を食べると、生命力が高まり状態異常を改善し、お肌の美容にも大変効果があり、夫婦の夜も元気に過ごせるそうなんです。素材もとても貴重で高額で売れるそうですよ。人間種は生きる為にお金は大切なのですよね」


「そ、そうですね・・・」


 彼女は、精霊様なのに、妙にお金の事に確りしていて、高く売れる素材に詳しかったり、特産品に詳しかったりする。


「おぉっ!夫婦で今後の相談かぁー?」


「親父。違うから・・・」

「はい。義理の御父様(おとうさま)


「ロイクぅー。稼ぎがねぇー男は捨てられる!まじだぜぇ!金がねぇー男はなっ。飲み屋でだれぇーも相手してくんねぇんだよぉっ!」


 父は頷きながら、悟りを開いた者だけが持つ独特な雰囲気を放ちながら語った。


「親父。何の話してんだ?」


「人生はなぁっ。難しいって事だよぉ!」


「そっか。肝に銘じておくよ・・・」


 関わるとろくな目に合わない。話を変えるか?


「それで、獲物袋だけど、狩ったのそれだけ?」


「邪狼獣の兄弟があっという間に周囲の魔獣を喰っちまってよぉー!森兎1匹と森狐1匹と兎耳狼1匹しか仕留められなかったぜぃ。あいつらすげぇーよなっ!」


「セリューさんとロージャンさんはあれで本調子じゃないらしいから本当に凄いよ」


「そういや、兄弟姉妹があと7人居るらしいなぁっ!この近くの洞窟に封印されてるらしいけど・・・20年以上この辺りで狩りしってけどぉー洞窟なんて見た事ねぇーんだよなぁっ!」


「・・・あれ?ヒグマの丘に封印されてたけど、・・・リトル・アンカーの臭いがする男が何かを持って行ったから封印が弱くなって出られたとか言ってたような気がするな・・・」


 襲撃を受けた夜に【邪念の咆哮(マルヴェイヤンス)】を受け意識を失い。意識を取り戻したら意識だけが確りし他の感覚が全く無い空間に居て、【レソンネ(共鳴)】でセリューさんとロージャンさんと寂しさを紛らわす為に、沢山話をした中で聞いた覚えがある。


「ヒグマの丘に洞窟なんかあったっけかぁっ?」


「親父も知らないのに、俺に聞かれても」


「それって、邪気の洞窟の事でしょうか?」


「邪気の洞窟?」


「はい。ここ【コルトの丘】には、諸事情ありまして、現在(いま)は封印中の洞窟が1つあります」


「ん?精霊様。ここはヒグマの丘ですよ」


「マルアスピーでしょう。あ・な・た」


 凝視・・・


 +


 !熟視!


「フフフッ。素直な義理の御父様(おとうさま)の熱視線に免じて許して差し上げます」


「ロイク。俺に感謝だなぁっ!」


「・・・」


 お前は、彼女の夢と希望が溢れる2つの浪漫を堂々とガン見してただけだろうが・・・



「人間種達が、ヒグマの丘と呼ぶこの丘は、私達の間では【コルトの丘】と呼ばれています」


「へぇー、それじゃーよぉ。コルト湖。コルト川。コルトの町。それに、コルトの丘かぁー!更にコルト平原とかコルトの森何てあったらコルト尽くしだなっ!」


「そうですね。少し前まではありました」


「おぉ、やっぱりあったかぁー!だと思ったんだよ。精霊様よぉっ!今のどの辺りにあったんだっ?」


「そうですわね、勉強熱心な、義理の御父様(おとうさま)にも折角ですから・・・」


「精霊様、教えてしまっても大丈夫なんですか?」


「あ・な・た!私の事は?」


 彼女は胸の前で腕を組み、俺に抗議する。


 凝視・・・


 +


 !熟視!


「あぁーっ?ロイクおめぇーって奴はよぉー。ここまで仲良くやってきたぁー俺を、こっこっで仲間外れにするってぇーのは・・・おめぇー、世の中にはなっ!やって良い事とぉっ。やっちゃ何ねぇー事がある訳よ!なぁー分かんだろう?あぁー!何てこったぁー。よりにもよって俺の息子がぁー・・・」


 父は、2つの浪漫をガン見しながら、阿呆を口からばら撒く。俺も父の事を言えた口では無いが。


「フフフッ。・・・この話は、人間種達に知られて困る内容でもありません。それに、義理の御父様(おとうさま)は、家族なのですから問題は無いと思いますよ」


「うんうん。俺は、おめぇー達の御父様(おとうさま)だからなぁっ!世間一般様では、家族って奴だぁっ!家族は大切にしねぇーとなっ」


「はぁ~・・・」


 本当に調子の良い人だ。


「それでしたら、まずは、【魔術】と【精霊魔法(魔法)】。【自然魔素(まりょく)】。【四大属性】と【非四大属性】と【無属性】の相関関係。【聖域】と【精霊地】について簡単に話ますね」


「ちょっと待ったぁー・・・。これって長いのかぁっ?俺、なげぇーのはぁ苦手でよっ!」


「簡単な話ですので、直ぐ終わりますよ」


「そっかぁ!そんじゃ宜しく頼むぜぇっ」



―――マルアスピーによる説明開始―――

***【魔術】と【魔法】の説明***


 【魔術】


 人間種8種族(亜種)固有の【自然魔素(まりょく)】の活用法で、体内に蓄積した自然魔素を適正属性に変換し発動させ使用する。

 ※人間種は【無属性】を適正属性に変換し

  体内の自然魔素を使用する設定です。※


  ①【属性魔術】【属性特化】【属性耐性】

   3つの発動方法が存在する。


 ≪≪属性魔術≫≫


 【MP(魔力量)】を消費し、適正属性を魔術として発動させ対象に攻撃或いは補助を行う。


  ①体内に蓄積した自然魔素を発動させる

   属性に変換させ使用する。


  ②発動条件。スキル【〇属性の心得】と、

   スキル【〇属性魔術】が必要。


 ≪≪属性特化≫≫


 【MP】を消費し、適正属性を物理攻撃時に肉体や武器等へ付加させ攻撃を行う。


  ①体内に蓄積した自然魔素を発動させる

   属性に変換させ使用する。


  ②発動条件。スキル【〇属性の心得】と、

   スキル【〇属性特化】が必要。


 ≪≪属性耐性≫≫


 スキル【属性耐性】のレベルや、ステータス値の【MND(精神力)】に依存ずる属性攻撃に対する耐性(防御力)値の事をいう。。


  ①常時発動条件。スキル【〇属性の心得】と、

   スキル【〇属性耐性】が必要。


 ≪メリット≫


  1.威力の調整が容易。

  2.日常生活に転用応用が容易。

  3.自然魔素暴走の心配が不要。


 ≪デメリット≫


  1.【MP】を消費する。

  2.【MP】が0になると意識を失う。

  3.【MP】の回復には休息が必要。

  4.【MP】の回復には回復道具の、

    【回復水(ポーション)・MP】が必要。


 ≪回復水・MP≫

 

  回復水・MP(A)は、30回復する。

  回復水・MP(H)は、80回復する。

  回復水・MP(E)は、30%回復する。 

  回復水・MP(M)は、50%回復する。

  回復水・MP(D)は、100%回復する。



 【精霊魔法(魔法)


 邪獣種、聖獣種、精霊種が主に用いる【自然魔素(まりょく)】の活用法で、自然界の流れより集積した自然魔素を適正属性に変換し発動させ利用する。


  ①【清澄(せいちょう)魔法】【運用魔法】

   【(精霊)属性特化】と【属性耐性】

   4つの発動方法が存在する。


 ≪≪清澄魔法≫≫


 適正属性を魔法として発動させ、対象に攻撃或いは補助を行う。


  ①自然界の流れより集積した自然魔素を

   無変換で発動させる属性として利用する。


  ②発動条件。スキル【〇精霊属性の心得】と、

   スキル【〇精霊属性魔術】が必要。


  ③集積可能な自然魔素量は【MP】の最大値

  (【MP】値=【MP】+【SMP】+【GMP】)


 ≪≪運用魔法≫≫


 適正属性を魔法として発動させ、対象に攻撃或いは補助を行う。


  ①自然界の流れより集積した自然魔素を

   発動させる属性に変換させ利用する。   


  ②自然界の流れより集積した自然魔素だが、

   属性変換による発動の為、運用効率は悪い。


 ≪メリット≫


  1.【MP】を消費しない。

  2.詠唱が不要。

  3.規模効率効果が高い。


 ≪デメリット≫


  1.威力の調整が難しい。

  2.自然界の流れ自然魔素の影響を

    受けやすい。

  3.自然魔素暴走の危険を伴う。


***【魔術】と【魔法】の説明おわり***


***【属性相関】の説明***



 【四大属性】


 【地】は【風】に弱くて【水】に強い。

 【水】は【地】に弱くて【火】に強い。

 【火】は【水】に弱くて【風】に強い。

 【風】は【火】に弱くて【地】に強い。


  ※精霊達には、【地】を【大地】。

   【火】を【焔】と呼ぶ者が多い※


 【非四大属性】


 【聖】は【邪】に強い。(優位500%)

 【聖】は【地】【水】【火】【風】【邪】

     【光】【闇】【無】に強い。

 【邪】は【聖】に弱くて(劣位500%)

     【地】【水】【火】【風】【光】

     【闇】に強い。

 【光】は【聖】【邪】に弱くて【闇】に強い。

 【闇】は【聖】【邪】【光】に弱くて

     【地】【水】【火】【風】に強い。


 【無属性】


 【無】は【聖】【無】に弱くて【無】に強い。


 ※優位属性は劣位属性に対して、

       2倍の威力効率効果を持つ。※ 


***【属性相関】の説明おわり***


***【聖域】と【精霊地】の説明***

―――自然魔素の分散レベルの説明含む


 【聖域】


 この世界には、5つの聖域が存在する。



   【大息吹の大陸ネコトミサール】の

 東:【息吹の谷】の【聖域】で

   【風穴】(谷)【精霊風属性】12/30


   【大火山と一枚大岩の大陸ベリンノック】の

 西:【結束の一枚大岩】の【聖域】で

   【大地】(岩)【精霊地属性】12/30

 南:【憤怒の火山フルムテル】の【聖域】で

   【火焔】(火山)【精霊火属性】12/30


   【大瀑布の大陸フィンベーラ】の

 北:【大瀑布ガルネス】の【聖域】で

   【水煙】(滝)【精霊水属性】12/30


   【大樹の大陸ゼルフォーラ】の

中央:【大樹の森】の【聖域】で【精霊樹】

   【精霊聖属性】15/30

   【精霊地属性】 8/30

   【精霊水属性】 8/30

   【精霊火属性】 8/30

   【精霊風属性】 8/30

   【精霊無属性】 5/30


 ≪大樹の森の聖域の精霊樹の自然魔素(まりょく)

 【聖】15

 【地】8【水】8【火】8【風】8

 【邪】1【光】1【闇】1 

 【無】5

 【大樹】30


 ≪東の聖域は風穴の自然魔素(まりょく)

 【風】12

 【地】1【水】1【火】1

 【聖】1【邪】1【光】1【闇】1

 【無】5


 ≪西の聖域は大地の自然魔素(まりょく)

 【地】12

 【水】1【火】1【風】1

 【聖】1【邪】1【光】1【闇】1

 【無】5

 【大樹】15


 ≪南の聖域は火焔の自然魔素(まりょく)

 【火】12

 【地】1【水】1【風】1

 【聖】1【邪】1【光】1【闇】1

 【無】5


 ≪北の聖域は水煙の自然魔素(まりょく)

 【水】12

 【地】1【火】1【風】1

 【聖】1【邪】1【光】1【闇】1

 【無】5



―――マルアスピー中心会話説明調

 【精霊地】


「この世界には、4つ精霊地が存在します」


「1つ目は、精霊樹を中心に少し北にあります。大樹の森の【コルト湖】で、私達精霊は【コルトの泉】と呼んでいる場所です。【コルトの泉】は、8000年程前に、旧【大ゼルフォーラ湖】が2つに分離し、現【ゼルフォーラ湖】と、旧【コルト湖】になりました。旧【コルト湖】は、少しずつ縮小し6000年程かけて、現【コルトの泉】になりました。因みに、8000年程前に湖が2つに分離したのは、大精霊と中精霊の喧嘩が原因です。喧嘩した大精霊は私の祖母精霊で【ドゥーミナ】、中精霊はゼルフォーラ大陸の北にあります。ヴァルオリティア帝国建国の地アンガーレムから南へ約8Km程行ったヴァルオリティアの丘と人間種達が呼ぶ丘の精霊【アンガーレム】です」


「・・・」


 喧嘩で・・・


「なるほどなぁっ!」


「2つ目は、精霊樹を中心に西にあります。【ゼルフォーラ大陸】の【ホラセイラ山脈】にある大陸最高峰の山【カイライ山】です」


「あの山かぁー」


「3つ目は、精霊樹を中心に南にあります。私達精霊が【嘆きの痕(なげきのあと)】と呼んでいる【コルトの丘】にある【風の断層(・・・・)】の【邪気の洞窟】です。【コルトの丘】は先程話ましたが、人間種達が【ヒグマの丘】【ヒグマ広陵】と呼んでいる今私達が居るこの丘の事ですね」


「風の断層ですか?」


「聞いた事ねぇーぞ!」


「風の断層(嘆きの痕)はですね。【ヒグマ山脈】と【ヒグマの丘】の渓谷の事です。先程話しました喧嘩の際に、元は1つの山脈だった物を2つに割ってしまった事から、そう呼ばれる様になりました」


「・・・」


 これも喧嘩なんですね・・・


「天変地異レベルの喧嘩かよぉ!すげぇーなっ!」


「山脈が割れてしまう前の、8000年程前のコルト川は、南には流れていなかったそうです。ヒグマ山脈の北を東に流れ、今の【貿易都市フォーラム】の【美しき姉妹川】と呼ばれる生命線で、北の【グー川】に合流し、次に南の【ミー川】と合流してフォーラム湾に流れ込んでいました。因みに、ヒグマ山脈の南に広がる森林【ヒグマ森林】は当時【コルトの森】と呼ばれていました」


「おぉ!コルトの森はそこかぁー!そう思ってたぜぇ・・・コルト平原はぁー?」


「・・・」


 何これ?ゲームか何かですか?


「コルト平原については聞いた事がありません。ですが、この世界の事を【世界創造神様】は、【コルト】と呼んでいたそうですよ」


「はーい、来たぁー!」


「そしてですね。邪気の洞窟は諸事情ありまして、現在封印中なんです」



***


 ≪北【コルト湖(コルトの泉)】の自然魔素(まりょく)

  【聖】13【水】8


 ≪西【カイライ山】自然魔素(まりょく)

  【地】8【火】 8


 ≪南【邪気の洞窟】自然魔素(まりょく)

  【風】 8【邪】13



***【聖域】と【精霊地】の説明おわり***



「神様にちけぇー存在はやる事がでけぇーなぁ!」


「精霊地の4つ目がまだですよね?」


「4つ目は、この世界でなら何処にでも存在している物なのです。陽が昇り世界が光で満たされる時間は【光属性】で溢れています。陽が沈み世界が闇に満たされる時間は【闇属性】で溢れています。それに、自然界の流れの中であれば【無属性】はいつでも何処にでも存在している自然魔素です」


「なるほどなぁっ!んでよぉ。その封印された洞窟ってぇーこの丘にあんだよなぁっ!」


「はい」


「風の断層かぁー?崖の何処かにあった入り口を埋めたとかかぁっ?」


「そうですねぇ~。私が封印した訳ではありませんので、当時の状況を良く知る【聖梟獣(サビィ―)】か【邪狼獣兄弟(セリュー&ロージャン)】に聞いてみてはいかがでしょうか?」


 あれ?彼女は洞窟の場所を知らないみたいだ。彼女は俺を見つめながら、


「・・・洞窟と便宜上呼んでいるだけで、風の断層に広がる迷宮全体の事なのよ。1度も行った事の無い場所だった上に、100年位前だったかしら。何かがあったらしくて、入り口を誰かが封印してしまったものだから・・・詳しくは知らないのよ」


「そっかぁっ!邪狼獣の2人が戻ったら、聞いてみよぉーっと」


「親父、今日の目的は、ヒグマの丘の魔獣の生息状況と、リトル・アンカーの武具(いさん)を発見した場所の調査だから、邪気の洞窟の事を聞くのは構わないが、襲撃に関係ない様なら今日は帰るからな。分かってるよな?」


「お、おぅっ」


「フフフッ」



――― マルアスピーの説明が終わり暫くして


≪ザザッ


≪ザッ シュッシュッ ササササ


「ロイク。俺の方は片付いたぞ」


「俺様も腹いっぱい喰って来た」


「セリューさんも、ロージャンさんも、ありがとうございました」


「腹が減っていただけだ。気にするな」


「そうだ、俺様達は喰ってたまでよ。おぉ~そうだ。俺様は肉食だ」


「突然、どうしたんですか?」


 邪狼獣のセリューさんとロージャンさんは、見た目通り肉食だと思いますが・・・


「昨日から消化できない物まで飲み込んでいたからな吐き出すからちょっと待ってくれ」


「え?ここで?食べ過ぎで気分が悪いなら向こうの茂みで吐いた方が・・・」


≪グゴォーゲゲッ ゲゲ ゲロゲロゲロゲゲェー


 俺が言い終える前に、ロージャンさんは見事な逆流を俺達に披露してくれました。


「ちょっと、もう邪獣何考えてるのよ。レディーの前で嘔吐物巻き散らかすってありえないでしょう」


「ガッハッハッハッハ。俺様の胃はかなり丈夫にできてるんだが、これだけは消化できんのだ。ロイクに全部やるぞ」


「・・・は、はぁ~・・・ありがとうございます」


「良かったなぁっ!ロイクゥッ!・・・いやぁー。これはなかなかぁーすげぇーぞぉ」


「おおぉ~そうか、それなら俺も沢山あるぞ、ちょっと待ってろ」


 まさか・・・


≪ゲゲゲゲゲ ゲェ――― ゲロゲロゲゲゲ


「遠慮せず受け取ってくれ。友よ」


「あ、ありがとうございます・・・」


 とっても血生臭い、何かがベットリと纏わり付いた。とってもグロテスクな魔晶石の山が2つ目の前に完成していた・・・


「ちょっと、邪獣。そこに座りなさい・・・」


「怒っているのか?兄者、何故精霊様は怒っているのだ?」


「分からん・・・オッ・・・あれか、あれの日だ」


「お座り。お座り。お す わ り!」



 セリューさんとロージャンさんが精霊様にお説教されている内に、俺はこの魔晶石の山2つを何とかしておかないとな・・・


「まずは、洗浄しないと臭くて・・・『精霊魔法【アクア】自然魔素:清澄水属性1/32(32分の1)・状態:雨・発動』≫」


≪サァ~ァ~ァ~


 水の塊が魔晶石の山の上に出現し、弱い雨が降り注ぎ始めた。


「なんだぁ?おめぇー水の魔術も使えんのかぁ?」


「家に帰った時に、説明しただろう。聞いて無かったのかよ」


「悪りぃー眠て返事だけしてたんだよぉっ!あれだよ、あれ。メアリー(あいつ)が聞いてっから良いかなぁーって思ってよぉ!」


「でもよぉーこれじゃ!洗い終わんねぇーぞぉー」


「ちょっと弱過ぎたみたいだから、1つだけレベルを上げてみるか・・・『精霊魔法【アクア】自然魔素:清澄水属性2/32(32分の2)・状態:雨・発動』≫」


≪ボワァン ザザァ―――ドドドドドザザァ―――


「うわっ。ストップストップ・・・」


 って、魔法に言っても無駄だよね・・・


「ロイクゥー・・・おめぇーって奴ぁー限度ってもんがあんだろうがぁー」


 !熟視!


「あ・な・た!魔晶石を洗ってるのよね?」


「は、はい。その・・・つもりでした」


「ガハッハッハッハ!ロイク。水浴びか!気持ちがいいなぁ~111年ぶりに洗ったわい」


「俺様は水浴びは嫌いなんだぁ~」


「もう、全身ずぶ濡れじゃない・・・」


≪ギュッ ピチャッ ピチャッ


 水に濡れ透けたワンピースの裾を絞りながら、


「自然魔素の制御早く覚えた方が良さそうね」


「ロイク!ナイスだ・・・」


 !熟視!


「それとなぁっ!精霊様も下着くれぇー付けねぇーと俺みたいな紳士相手ならぁー問題ねぇーが、相手がわりぃーと大変な事になんぞぉー」


 欲望向き出しのお前が言うなよ・・・でも、胸元が大きく開き丈の短い、薄い青色で光沢のある滑らかな生地の刺激的なワンピースが、水に濡れ身体に張り付いて・・・


 凝視・・・


「もうぉ~。フフフッ」


「わ、わざとじゃない、わざとじゃないです」


「分かってるわよ。あ・な・た!」


 彼女は微笑みを浮かべながら俺を見つめていた。


「でも、どうしましょう・・・。邪獣達は毛皮よね?問題無いとして、私達はどうしましょう?」


「ちょっと待って。精霊魔法を自然魔素の属性統制でだとまだ難しいみたいだけど、神授の方は何故か扱えてるみたいだから平気だと思う。『神授スキル【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄風属性2/33(33分の2)+清澄火属性1/32(32分の1)・状態:竜巻状の送風・回転回数15回・場所:自分を中心に10m』≫」


≪フワァッ シュルルルル ルルルルルルルルルルル―――――― ブオォ~~ フォ――――


 俺の頭上1mに小さな渦巻きが出現し、少し熱い風を巻き込みながら徐々に広がり、最終的に20m程の渦を完成させた。


 ちょっと予定より多きけど問題ないか。


「予定より気持ち大きいけど・・・ちょっと待って仕上げにもう1回・・・『神授スキル【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄聖属性1/61(61分の1)・状態:眩しくない光・点滅回数:2回・場所:自分の頭上1m+清澄風属性2/33(33分の2)・状態:竜巻状の送風・回転回数5回・場所:自分を中心に次こそ10m』≫」


≪ピカッ フワァッ シュルルルル ル


「ぎゃぁ! 何だ今のは・・・?毛が焦げたぞ」


「俺様も眉毛が・・・」


≪ピカッ ブオォ~~ フォ フッ


「ぎゃぁっ!」「ぎゃぁ」


「あ、雨に濡れた後って、服が乾くと臭いだろう。だから、聖属性で殺菌除菌できないかなって試してみたんだけど、どうかな?」


「あ・な・た!これ素晴らしいわ。聖属性の魔法にこんな遣い方があったなんて、流石私の旦那様でですわ」


「ロイクよ・・・俺達は邪獣だぞ・・・聖属性の魔法を扱う時は注意してくれ」


「・・・あっ。ごめん、忘れてたよ」


「ロイク。俺様の眉毛無事そうか?」


本当(ほんと)にごめん・・・」


 覚えたての魔法は、精霊魔法でもスキルでも取り扱い注意って事を学んだ瞬間だった。昨日の昼までは、魔術すら使えない平凡な狩人。ごめんなさい嘘です。個体レベル1の最弱狩人だった事を考えれば当然だとは思うけど・・・


「乾いたわ・・・どうしたの?そんな残念そうな顔をしなくても大丈夫よ。後でゆっくり見せてあ・げ・る!から」


「ロイクゥ!お前って奴は・・・けしからん」


「いや、俺じゃないでしょう?」


 彼女は胸の前で腕を組み胸の谷間を強調させ少しかがみながら


≪パチィッ


 左目でウィンクした。


 当然、凝視・・・


 揺るがず!熟視!


「フフフッ!よっし!ブツブツ」


 ・・・眼福眼福・・・って、精霊様だから、彼女は精霊様だからね。親父も分かってますよね?って、あれで、ガッツポーズとかしなければ、お色気ムンムンの美人過ぎる精霊様なのに。・・・でも、本当に綺麗だ・・・凝視癖治さないと・・・


「とどのつまり目的はクリアしてんぞぉ!」


「ん?」


「見てみろよぉ。魔晶石はピッカピッカ。んでもって、俺もおめぇーも精霊様も風呂の必要がねぇーくれぇーに清潔だしよぉっ!」


「眉毛・・・」


「俺の毛焦げた・・・」


「もう春なのよ」


「何かあるのかぁー?精霊様よぉ!」


「兄者、春だと何だ?」


「さぁ~な」


換毛期(かんもうき)でしょう?そろそろ」


「・・・」


「・・・精霊様。それは、犬の話だ」


「・・・ごめんなさい。セリューさんにロージャンさん」


 俺は深々と頭を下げ、心の底から謝罪した。


「あら、狼って毛生え変わらないのね」


「おっ!」


「どうした兄者」


「見てみろ。ロイクのさっきの痛い魔法で、邪気が中和されたのかほとんど無くなっているぞ」


「どれ・・・・・・・・・おぉ~」


「あら、本当だわ」


「どうしたんですか?」


「ロイク。お前は俺達よりも上位の瞳を持っているのだ。その目で見ると良い」


「そうね、私の精霊眼よりも上位の瞳ですもの・・・流石は、私のあ・な・た!」


「【神眼・万物】って常時発動みたいなので、普段は意識して見えない様にしてるんですよ。じゃないと色んな情報が飛び込んで来て大変なんです」


 神授スキル【神眼・万物】を精霊様に聞いて、自分のSTATUSとSKILLを認識した時から、意識しなくても何でも瞳に映る物の情報を理解認識できる様になってしまい。その瞳で彼女を見た時が大変だった。大精霊様である事。40XX歳である事。スリーサイズ。彼女の胸中。あらゆる情報が俺に飛び込んで来たのだ。このスキルにはON/OFFの切り替えが無い様で、意識して見ない様に認識しない様に心掛け昨日知った時から頑張って来たのだ。


「ちょっと待ってくださいね・・・・・・あぁ~」


「どうだ?」


「確かに、俺の周辺20m位だけ、邪属性の自然魔素が全く無いですね。聖属性が強い位です」


「あれれ?」


「あぁ~」


 セリューさんと彼女が同時に声を上げた。


「あ・な・た!が、どうして聖属性魔法で、兎耳狼(ラビットウルフ)大地牙狼(ソイルウルフ)闇牙狼(ダークウルフ)闇炎牙狼(オプスキュリテ)を浄化できたか、答えが分かったわ。彼等は、コルトの丘に充満した邪属性の自然魔素(まりょく)の影響を受けて、成獣でありながら核(魔晶石)に邪属性の浸食(活性化)が起こり2属性以上を帯びた上位種或いは変異種に進化していた様ね。戻ったら、魔獣と魔晶石を【タブレット】から出して貰えるかしら?」


「良いけど、それで分かるの?」


「フフフッ。高額で売れる邪属性の魔晶石が沢山あるはずよ」


「なぁーこれって、魔獣の調査終了って奴かぁ?」


義理の御父様(おとうさま)。私はそれでも構いませんが、それでは信仰の集落に住む人間種達が、暫くして邪属性の自然魔素(まりょく)で活性化した魔獣達にまた襲われてしまうかもしれませんよ」


「正確にわぁー、アンカー家だけどなぁっ!・・・あーれぇっ!闇炎牙狼(オプスキュリテ)がマルボー達を襲ってた訳は?」


「親父、俺に聞くなよ」


「それもそっかぁっ!ワッハッハッハッハ」


「その事なんだが、ロイク」


「どうしたんですか?セリューさん」


「言いたい事があんなら全部吐き出しちまいなぁ」


 ・・・あれ?さっきから気になってたんだけど、父の話す内容ってセリューさんとロージャンさんの話が聞こえてないと成立しないよね?


「親父。1つ聞いて良いか?」


「おぉ!」


「親父って、邪狼獣のセリューさんとロージャンさんの話聞こえてる?」


「あったりめぇーだろう」


「いつから?」


「昨日、助けてくれた時あんだろうぉー」


「ロイク。俺から説明する。代わりに1つ俺の俺達の願いを叶えてくれ」


「願いって、難しい事は無理ですよ」


「ロイクなら簡単な事だ・・・」


「やれる事なら何でもやりますが・・・それで、親父がセリューさんとロージャンさんの話が理解できてるのは何故なんですか?」


「それはな、この男、お前の父親は、(よこしま)な気持ちを、清らかな心のまま属性として適正に所持している様でな、我々と何もせずに【属性同調(どうちょう)】している様なのだ」


「つまり?」


「子供は無邪気に何も知らずに良い事も悪い事もするだろう。この男は、無邪気を適正に所持しているという事だ」


「子供って事ですか?」


「兄者よ、俺様は人間の子供を沢山見て来たが、話をした事は無いぞ」


「無邪気な子供と、無邪気を適正に所持する者では。全く違う」


「おぉー。何か分かんねぇーけど、俺何か持ってんのかぁー!得した気分だぜぇっ」


「・・・」


 それって、邪属性手前の(よこしま)属性って事だよな。喜んじゃいけない気がするぞ親父。


「親父は、精霊様や俺がセリューさんやロージャンに話かけてるのは聞こえてるのか?」


「ん?お前。俺に隠れてコソコソ何か話てたのかぁー?って、騙されねぇぞぉー」


「今、この状況で、親父を騙してどうするんだよ」


「・・・いや、分んねぇーぞ!」


 聞こえて無いみたいだから、今は適当に誤魔化しておいて構わないだろう。


「それでだ、ロイク。俺達の願いというのは、リトル・アンカーの臭いがする男と闇炎牙狼(オプスキュリテ)の事にも繋がる話なのだ」


「何故、マルフォイ・アンカーや、リトル・アンカーの臭いがすると襲われるのかって事ですか?」


「それは、リトル・アンカーの臭いがする男が、封印された邪気の洞窟から僅かに漏れていた邪の自然魔素を吸収し浄化していた魔導具を動かしたからだ。我々を封印していた邪属性が弱くなったという事なんだ」


「あれ?邪獣なのに、邪属性で封印されていたって事ですか?」


「そうだ」


「洞窟から漏れていた邪の自然魔素を吸収していた魔道具が無くなったら、邪属性が強くなりませんか?邪属性で封印されていたんですよね?」


「邪属性は強くなっているぞ」


「ですよね・・・」


「あ・な・た!この丘全体の邪属性の事よ」


「あぁ~。そういう事ですか」


「漏れると何かあんのかぁっ?」


「えっと、つまり、マルフォイ・アンカーと貴族領軍の兵士達が持ち帰ったリトル・アンカーの武具(いさん)は、邪属性を吸収して浄化する魔道具で、その魔道具は洞窟の中から僅かに外に漏れ出していた出口を塞ぐ様に置いてあったって訳ですね?」


「そうだ」


「で、洞窟の邪属性が薄くなったから、セリューさんとロージャンさんは封印・・・洞窟から外に出られたって訳ですか?」


「俺様と兄者は、邪属性と地属性と火属性を持っていたおかげで、邪属性の自然魔素酔いから何とか解放されて、外に出るだけの力を取り戻した」


「だが、弟や妹達は、俺達より邪属性が強い。丘に漏れ出した邪属性の自然魔素だけでは、洞窟の邪属性の影響を強く受けてしまい。動けない」


「それで、俺はいったい何をすれば?」


「簡単な事だ」


「フフフッ。確かにそれなら、この丘も正常に戻るし、魔獣達の邪属性化(狂暴化)も防げるし、邪狼獣(あなたたち)の兄弟姉妹も助け出せるわね」


「精霊様。自然の流れに反した事はしていないと思う。止めないで欲しい」


「あら、私は止めませんよ。夫を支えるのが妻の努めなのですから。フフフッ」


「おぉ~。ロイク。精霊様よりお墨付きをいただいたぞ。一気にやってくれ」


「は、はぁ~・・・で、俺は何をすれば?」


「俺達がロイクの影に避難したら、この丘全体をさっきの聖属性の風で浄化して欲しい」


「あぁ~あれですか。あれ、風は風属性で、2回点滅したと思いますが、あの光が聖属性なんですよ」


「ふーむ。ならば、あの風も必要だと思う。あの風も一緒に頼む」


「でも、風の威力がちょっと問題なんですよ」


「どうした?兄者・・・」


「ロイクが風の威力が問題だと・・・」


「さっきの勢いでこの辺り全体の空気を散らしてしまえぬのか?」


「それがですね、さっきの竜巻予定では、自分を中心に10m程の大きさにするつもりだったんですが、20m位になってましたよね?・・・」


「精霊様。ロイクの魔法に力を貸しては貰えないだろうか?」


「私ですか?・・・下界に干渉できない事になっているので・・・」


「あん?でもよぉー。精霊様は、俺達に干渉しちゃーなんねぇーってのに、ロイクの嫁になったんだろうぉー?俺は巨・精霊様が家族になってくれてものすげぇー嬉しいけどよぉ!俺も妻もロイクも村の連中もよぉっ。もう普通じゃありえねぇー状況に置かれちまった気がすんだよぉ!」


「・・・確かにそうですね。旦那様を通して人間種には大きく干渉していますよね・・・」


「だろうぉー!」


「おぉ~バイル殿。俺達に味方してくれるのか」


「味方っていうか、あれだあれ。おめぇー達は家族の為に動いてんだろう・・・俺と妻も、ロイクもだけどよ、家族を大切にできねぇー奴は人間の屑だって思ってる訳よ。おめぇー達はロイクの友達なんだろう?」


「あぁ。ロイクは友だ」


「俺様の子分みたいな友だな」


「だったら、家族みたいなもんだろう。味方するとかじゃねぇーよ。無条件で協力すんもんだろう」


「バイル殿。もし家族が間違っていたらどうする」


「ん?そんときゃぁーぶん殴る!」


 親父、相変わらず適当で無責任だけど、俺も家族は大切だと本気で思うよ。親父と母さんのおかげだな。



「・・・あのー。今、私の能力を確認してみたのですが、今迄通り下界への干渉制限はあるようですが、加護を与えた者を通しての干渉には制限も規制も無いみたいなので、旦那様が魔法の統制を1人でできる様になるまでは、私が補助しても問題なさそうです」


「おぉ~。なんと、大樹の聖域の精霊樹の大精霊マルアスピー様をロイクは独り占めできるという事か・・・なんと凄まじい人間種が邪獣聖獣種を超える時をこの目で見る事になるとは・・・」


「盛り上がってるところ恐縮ですが、結局、俺は何をどうすれば良いんでしょうか?」


「私が自然魔素の統制を補助?今は全部するから、あ・な・たは、魔法のイメージと属性を集める事だけに集中して」


「それだけで良いの?」


「ん?ロイク。精霊様がやろうとしている事は、自然界への干渉その物だぞ。お前を通して干渉制限が無くなった状態で大精霊様が下界に関わろうとしているという事だ。お前は神にも近い精霊の、その中でも下界に存在する最も尊敬される精霊樹の大精霊様の力を自由に扱う事のできる唯一の存在だという事だ」


「統制して貰うだけで、精霊様が魔法を扱う訳じゃ無いし、そんな凄い事ですか?」


「フフフッ。そうね。私達は夫婦なのだから、普通の事よねっ!」


「だから、違うって・・・」


≪チュッ


 彼女の唇が俺の唇に軽く触れた。


「下界でもあなたと自由に生きられる事が分かってしまったの、だから今のは改めて宜しくお願いしますの挨拶よ」


「おい。親の前でイチャツクなよぉ!」


義理の御父様(おとうさま)も、改めて宜しくお願いします」


「おっ!俺にもKissしてくれんのかぁ?」


「それは、ちょっと・・・」


「ちぇっ!そのうち、頬位には祝福のKiss頼むぜ」


「さぁ~。あなた、全部解決して、下界への干渉に制限が無くなった今私達を止める物は何も無くなりました。夜の・・・干渉制限解除のお祝いの為にも、聖属性の魔獣を倒しに行きましょう。愛の為に」


「はぁ~・・・言ってる事が良く分かりませんが、セリューさんロージャンさん。そして村が救われるならやりますよ」


「邪獣達。義理の御父様(おとうさま)と一緒に影に避難していてちょうだい」


「分かった」


「おぉ!頼んだぞ」


「おぉー!って、俺って影に入れるのか?」


「バイル殿。俺に乗れ」


「おぉ。分かった」


 父がセリューさんの背中に乗ると2匹は俺の影に飛び込んだ。


「さぁ~。あなた、夫婦2人での初めての共同作業が精神の共鳴だったのを覚えていますよね?」


「はぁ~」


 もう何でも良いや。さっさと終わらせたい。


「【レソンネ】の応用です。私はあなたが集める自然魔素を統制する為、あなたが魔法を扱う時は、統制が1人でできる様になるまで、精神の中から補助します」


「え?精神の中からですか?どうすれば」


「私を抱き締めてKissしてください」


「はぁ~?」


「ですから、抱き締めてKissです。あ・な・たが、1人で魔法を扱って惨事を起こさないで解決できるのでしたら、私は隣で見ているだけにしますよ・・・フフフッ」


「分かりました」


 俺は彼女を抱き寄せると、彼女の柔らかな唇にKissした。彼女の舌が俺の口の中に入って来た。トロける様な・・・この感じ前にも味わった事がある様な・・・



 あれ?抱き締めていたはずの彼女が居ない。俺は1人でヒグマの丘に立っていた。


『あ・な・た!今私達は1つに繋がってる状態なのよ。さっきの魔法をお願い。ここ居心地が良過ぎて長時間は無理そうなのよ』


 これって、【レソンネ】に近いけど、ちょっと違う。彼女の中というか俺の中に彼女が居ると言うか難しいけど、凄く傍に感じる。とっても心地良い。


「了解。『神授スキル【マテリアル・クリエイト】自然魔素・清澄風属性3/33(33分の3)・状態:竜巻状の送風・回転回数15回・場所:自分を中心に2Km+清澄聖属性1/61(61分の1)・状態:眩しくない光・点滅回数:5回多目の10回の方か良いかな?10回・場所:自分の頭上20m』≫」


『凄い魔法の扱い方ね。人間種達限定のBIRTHDAY・SKILLってなかなか凄い物なのね・・・』


 自然魔素の統制はお願いします。精霊様。


『だから、マルアスピーでしょう・・・って、聖属性レベル1よね?これ・・・』


 そうですよ


『私の聖属性魔法レベル15よりも魔力量が多いわよ・・・それにとても暖かい綺麗な聖属性だわ。清澄聖属性・・・まるで神気みたい』


 発動して大丈夫そうですか?


『もう少し待ってちょうだい。強過ぎて邪属性を適正に持つ人間種までこれだと光を見た瞬間に浄化されてしまうかもしれないから』


 俺の影の中の親父大丈夫でしょうか?


『邪属性では無いし、(よこしま)なだけなら問題無いと思うわよ。それに影の中に届く光は、聖属性では無くて、光属性の光だけのはずだから・・・発動しても大丈夫よ』


 発動


≪フワァッ シュルルルル ルルルルルルルルルルル―――――― ブオォ~~ フォ――――


≪ピカッ 10回



 俺を中心に風の渦が発生し、瞬く間に半径2Km程を巻き込んだ。次いで優しい光が10回点滅し、嵐は去った。


『上手く行ったみたいね。それにしても、とても気持ちの良い自然魔素循環に驚いたわ。あ・な・たと初めてKissした時に、ビビビッて感じたのは気のせいでは無かったみたい』


 ん?初めてってあの時何か感じたんですか?


『そ、そう、あの時ね・・・気持ちが良過ぎて変になってしまいそうだから、戻るわ』




――― 


≪シュッ シュッ


「あぁ?何だよぉ!何も変わってねぇーじゃねぇーかよぉっ!」


「ロイク。凄い。丘の自然魔素に邪属性を一切感じ無い。洞窟から漏れ出す邪属性すら無い様だ」


「まるで神気の聖属性みたいだったのよ。この魔素の感じだと、この辺りは100年位聖属性の影響を受けてしまいそうね」


「セリューさんもロージャンさん。ここに居て平気なんですか?」


「気持ち擽ったいが問題無いぞ」


「俺様も擽ったい」


「浄化の対象を、自然魔素の邪属性と魔獣達の核に蓄積された邪属性に限定して、聖属性を利用したから大丈夫なはずよ」


「精霊様って本当に凄いですよね」


「マルアスピーでしょう。何度言ったら分かるのかしら・・・あ・な・た!」


 彼女は頬を膨らませ、胸の前で腕を組む。


 凝視・・・


 +


 !熟視!


「フフフッ」


≪クンクン


「ロイク。沢山魔獣を倒したみたいだぞ。俺様達は邪属性の充満していた洞窟周辺の魔獣達だけを喰っていた。ここまで広範囲に魔獣を殲滅したのか?」


「え?2Km位の空気を風で散らしたけど・・・邪属性じゃなければ聖属性の光を見ても平気なんですよね?」


「ロイク。あなたのSTATUSとSKILLを今覗いて驚いたわ・・・」


「どうしたんですか?」


「あなたレベルが飛んでもない事になってるわよ。それに、邪狼獣達とも・・・あとね、私との関係が・・・」


「ちょっと」


「ロイク。俺様は兄弟姉妹を見て来る」


「あ、はい」


「俺は、ロイクが倒した魔獣達を影の中に集めて来る。兄弟姉妹達の食事に貰っても良いか?」


「・・・えっと、【タブレット】で管理してから、提供でも良いですか?」


「おぉ~有難い。感謝する。では、集めて来る」


「俺様は兄弟姉妹達を連れて来るぞ」


≪ササササササァ シュッ



――― 数分後


「なぁーロイクゥ!俺考えたんだけどよぉ。さっきな邪狼獣の兄弟から聞いて思った訳よぉっ!」


「どうしたんだよ。急に改まったりして」


「精霊様も聞いてくれ」


「はい。義理の御父様(おとうさま)


「人間種と精霊種の結婚にはなぁ!兄弟達が知ってるだけでも2件あってなぁっ。お前達も加えると3件って事になる訳だぁ。そんでな、子供の名前なんだけどよ。男の子だったら俺で、女の子だったら母さんに付けさせてくんねぇーか?」


義理の御父様(おとうさま)何て嬉しい申し出でしょう。喜んでお願いしますわ」


「ぶっ・・・!何の話だよ・・・」


「子供の話だろうが・・・見た事あんだろう。赤ん坊くらいー!」


「そうじゃ無くて、何で急に赤ちゃんの話を」


「おめぇーそりゃー。結婚した男と女がやる事ってぇー言ったら・・・ムフ。あれだろあれぇ!」


「・・・」


 ん?彼女の口元が一瞬だけ緩んだ様な・・・目が真剣(マジ)になってる。


義理の御父様(おとうさま)。私はこれから、主人ととても貴重な素材を取りにある魔獣を倒しに行こうと考えています」


「主人?」


「あら、あ・な・た!の方が宜しくて?」


「・・・どっちも遠慮したいというか」


「それでですね。その魔獣はとても珍しい魔獣で、人間種は生きた個体を知らないと思います」


「ほうぉー・・・古代種とか化石種系か何かの魔獣って事かぁ?」


「それは分かりませんが、これから行く所に居る魔獣は、寿命が10万年以上と長寿の魔獣で、その肉は、老若男女問わず生命力を高め。邪属性や闇属性で受けた身体の状態異常を改善し、呪いを身体に負担を与える事無く解除し、健康な者が食すると【HP】や【MP】の最大値を上昇させると言われています。最大値の上昇に関しては定かではありません。ですが、その血には、美容効果が高く肌や髪質の改善。老化防止若返り効果があり、大人の夜のお供にも効果的で、その夜をとっても激しい物にしてくれるそうです」


「すげぇーなぁっ!」


「おほん。勿論、甲羅と呼ばれる白金よりも堅い素材や、髭と呼ばれる貴重素材。とっても巨大な魔石もいただけると思いますので、これからの人生の為にもお金に余裕をと思いまして・・・」


「おぉーそっか。行ってこいっ!家庭の金の心配ぇーまでしてくれる嫁かよぉっ!うんうん。息子の事頼むぜぇ!精霊様!」


「・・・」


 何、この茶番劇・・・


「はい。それでですね」


「まだ何かあんのかぁ?」


「はい、義理の御父様(おとうさま)一緒に、このまま行きませんか?」


「うーん・・・どっすっかなぁー・・・邪魔しちゃわりぃーしなぁっ!・・・うーん。よし行くぅっ」


「親父・・・」


「安心しろってぇー。おめぇー達夫婦の邪魔はしねぇーたぶん・・・ぜってぇーにな。俺も自分用にちょっとばっかし血が欲しいかなってよぉ!」


「倒したらどうせ家物だし皆で分けるだろう」


「俺も参加して正当な権利で貰いてぇー訳よ!それにな、その魔獣今回を逃したら一生見られそうにねぇーしなっ!」


「それは、俺も考えた」


「だろぉぅ!で、精霊様よ。その魔獣の名前は何て言うんだぁっ?」


「【大樹髭大陸亀(トフォレルチェ)】です」


「聞いた事ねぇーや」


「背中には防御力が非常に高い甲羅と呼ばれる物を背負っていますが堅いだけです。尻尾はありますが飾り程度の物でその両サイドに並行して大量に生えた髭がとても高価な素材です。何本も生えているそうなので期待できますよ。頭部は伸び縮みし噛み付かれるとちょっと痛いですが、背負った甲羅の中に隠れられるよりは噛まれた方が倒す機会は多くなると思います。属性は、聖属性1/30...



...―――大樹髭大陸亀(トフォレルチェ)の説明


 【大樹髭大陸亀(トフォレルチェ)


 【地】6/30

 【水】4/30

 【風】5/30

 【聖】1/30


 体長200m~210m(成獣の場合)

 体重300t以上


 1年間に動く距離は非常に短く約3cm以下


 驚かせたり、怒らせたりすると、短い尻尾を

 回し飛翔します。ですが、浮き上がる速度も

 飛び回る速度も非常に遅く、

 1分間に10cm以下しか動かないそうです。

 飛行可能時間は30分前後という話です


――― ...ですので、浮き上がったところを、甲羅の無い。お腹の方から攻撃して倒していただけたらと・・・」


「ビエールさんやサビィ―さん達に頼んで倒して貰えばもっと早く手に入れられたと思いますが」


「おめぇーなぁ!女心くれぇーちょっとぁー分かれよぉっ!」


「親父は分かるのか?」


「おうよ!俺はなぁ!恋の類、愛の類の伝道師を目指してたぁー頃があってよぉっ!」


「初耳だぞ」


「本職じゃねぇーからよぉ!あれだよ、あれ。おめぇーの為に綺麗になりてぇー訳よ!健気じゃねぇーか・・・そんでもって、丈夫な赤ん坊を産む為って訳よっ!ま、頑張れってぇー、この伝道師バイルが応援してやるよ!」


義理の御父様(おとうさま)。私頑張ります」


「おう」


「・・・」


 何このノリ・・・ついていけないです。

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