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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
88/1227

2-7 地下0階の神殿と、針金と鍵穴。

場面転換が多くて申し訳ありません。

宜しくお願いします。

――― R4075年7月13日(水)5:37


 2つの陽が昇り光の時間になるまで、後23(ラフン)


 人間の坊やよ。迷宮の最下層のフロアー長(BOSS)を攻略するとここから強制的に排除されるのか?


 らしいですね。


 それならば、強制排除の真似事を坊やがやれば良いのではないか?


 あっ!なるほど、巻き込まれた人は全員ここに居る訳だし、それで良いのか。ナイスです!それでは、神授スキル【召喚転位・(きわみ)】『転位』対象:ワン修道士、ツー聖騎士、スリー助祭長、フォー聖騎士、ファイブ司教、シックス聖騎士の首と体、セブン助祭官、修道女(シスター)エイト、他修道女(シスター)10名、エイブラハム・ラモス聖騎士:『場所』中央創生教会の講堂:発動≫・・・神授スキル【フリーパス】『中央墓地』対象:トゥーシェ、俺:発動≫ ・・・



――― R4075年7月13日(水)5:38


 ここは、ゼルフォーラ王国の王都モルングレーのカテドラルエリアの旧教(世界創造神創生教(そうせいきょう))の中央創生教会の裏手側に広がる墓地。朝陽(あさひ)が昇る22(ラフン)前、まだ夜の墓地だ。


「なっ?なんなのじゃぁ~。ここは何処なのじゃぁ~」


 え?


「おい人間」


 あれ?・・・もしかして、普段の騒がしいだけの存在に戻ったのか・・・


「何をしたのじゃぁ~」


「何もしてませんよ。これから魂を集めるんです」


「た、魂・・・あぁ~外出の為なのじゃぁ~人間手伝うのじゃぁ~」


「そのつもりですよ。それで、俺は魂に触る事が出来ないので、捕まえて来てください」


「おい!」


「何ですか?」


「それの何処が手伝うと言うのじゃぁ~」


「・・・見守ってますから、早く捕まえて来てください。朝になっちゃいますよ」


「あぁ~ん」


 悪魔トゥーシェが身悶え変な声を出した。


 もしかして、お色気モードになったのか・・・?


「何なのじゃぁ~ん。下着の中に変な物が入ってるのじゃぁ~ん」


 トゥーシェはもぞもぞと下の下着の中から(・・)な物を取り出した。


「それ何ですか?」


「人間お前かぁ~なのじゃぁ~」


「そ、そんな事する訳ないじゃないですかぁ!」


「股間を触らせた変態が何を言うのじゃぁ~」


「勝手に触ったのそっちですよね・・・」


「変態変態変態。下着の中に生物(なまもの)を入れるなんて・・・へんたぁ~~い!なのじゃぁ~」


「なまもの?・・・それ、生き物か何か何ですか?」


「この変態がぁ~。入れておいて白を切るとは見下げ果てた変態なのじゃぁ~」


 仮に本物の変態であるならばだが、見下げ果てられたところからスタートするんじゃ・・・


≪ふ、振り回さないでぇ~・・・


「ん?何か聞こえませんでしたか?」


生物(なまもの)が喋っただけなのじゃぁ~」


「そ、それ喋るんですか・・・」


「新鮮なうちは喋るのじゃぁ~」


≪まの御力と御導きによりぃ~・・・


「様の御力と御導き?」



――― R4075年7月13日(水)6:00


「トゥーシェ!」


「何だ人間」


朝陽(あさひ)です」


「見ればわかるのじゃぁ~」


「何とか間に合った様です・・・」


「墓地で見る朝日・・・ふん、意外にロマンティックではないかぁっ・・・人間」


「どうしたんですか?赤くなって」


「朝日なのじゃぁ~」


「あぁ~なるほど」



「さて、戻りましょう。一眠りしたら、地下0階(れいかい)創造の地の攻略です」


「に、人間」


「何ですか?」


「朝食を済ませてから戻るのじゃぁ~」


「朝食?・・・それなら家に帰ってからで良いじゃ無いですか」


「折角、新鮮な生物(なまもの)が沢山あるのじゃぁ~」


 トゥーシェは、近くを浮遊する新鮮さは不明だが死者の魂を、捕まえて食べ出した。


「あれ?・・・トゥーシェ!これどういう事ですか?」


「何がなのじゃぁ~ パク チュルン」


「もう朝ですよ。光の時間ですよ」


「それが、どうしたのじゃぁ~ パクバク」


 周囲には、新鮮な死者の魂はおろか長らく迷い彷徨えるベテランの魂が沢山彷徨っていた。


「何で?」


「人間。人間はやはり愚かな存在なのじゃぁ~」


「何がですか?」


生物(なまもの)が夜しか迷わない訳がないのじゃぁ~」


「え・・・陽が昇る前に集める必要があったんじゃ・・・」


「パク チュルン パク パク パク」



――― R4075年7月13日(水)10:00


 俺は、運の神様フォルティーナと悪魔トゥーシェと3人で、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の地下0階(れいかい)に広がる大森林の北側の一画で見つけた神殿の前に居る。


「ロイク。死んだばかりの新鮮な魂を出すね」


「トゥーシェ。フォルティーナに渡してください」


「良いだろうなのじゃぁ~。だが、神よその前に約束して貰おうなのじゃぁ~。そして人間、お前はそこの神に言う事があるのじゃぁ~」


「無事にあたしのお使いをクリアしていたらだね1時間~2時間外に出してやるね」


「おい人間。お前もそこの神に言う事があるのじゃぁ~」


「何をだね?悪魔に囁かれ愛の告白かね!」


 運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤとほくそ笑む。


「例え神様に囁かれてもそんな告白はしません。彼女と約束したんですよ」


「何をだね」


「旧教の人達に正体がバレる事無く迷宮から無事に脱出したら、外出時間を1時間~2時間増やして貰える様にフォルティーナに口添えするって」


「なるほどだね」


「どうなのじゃぁ~」


「まずは、新鮮な死者の魂を確かめるね。さぁ~渡すね」


「わ、分ったのじゃぁ~」


 悪魔トゥーシェは胸元から3つの瓶を取り出した。


 あの瓶何処に入ってたんだ?


「ロイク」


「は、はい」


「君は、本当に胸が好きなんだね」


「ち、違いますよ!」


 違うく無いけど・・・


「あの瓶がどうやったら3つも入ってたのかなって思ってただけで・・・」


「まぁ~良いね。欲望は生きるエネルギーになるね」


 運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤとほくそ笑み、自身の谷間を腕を組み強調してみせた。



 運の神フォルティーナ様は、神殿の扉の様に見えなくも無いガラス張りの2枚の板の前に立つと、板が重なっている中央の穴に針金を刺し込み何かを始めた。


「フォルティーナ・・・何をやってるんですか?」


「わざわざ神界に行かなくてもだね。これで開かないかと思ってだね」


「そんな針金で封印って解除されるんですか?」


「封印はこの先だね」


「今は何を?」


「この横スライドのドアの鍵を開けているね」


「そ、そうですか・・・あ、開くと良いですね」


「何じゃぁ~!面白そうな事をしてるのじゃぁ~。その穴の中に入れると良いのじゃぁ~そうなのじゃぁ~」


「ロイク」


「何ですか?」


「そこの騒がしい悪魔を黙らせて欲しいね。この作業は集中力がいるね」


「は、はい・・・」



――― R4075年7月13日(水)10:30


「あぁ~止めだ止めだね」


≪カン


 運の神フォルティーナ様は、手に持つ針金をドアに投げつけた。


「なんだね。このドアはだね!・・・創造神めもう少し来客に優しく成れなかったのかね!」


 ・・・防犯がどうこうって言ってなかったっけ・・・


「諦めたね」


≪パチン


 運の神フォルティーナ様は、指を鳴らすと何処かへ移動した。


「人間。あの神は何故泥棒の真似事をしておったのじゃぁ~」


「泥棒?」


「この針金をこうやって使うとなのじゃぁ~」


≪カチャ カチャ


 悪魔トゥーシェは、針金を拾い2本に折ると、ドアの穴に差し込み器用に2本の針金を動かした。


≪カチィッ


「開いたのじゃぁ~」


 ・・・流石、悪魔と称賛するべきだろうか?


≪ガラガラガラガラ


「これで、外出は約束されたも同然なのじゃぁ~」


≪パフゥ


 運の神フォルティーナ様が宙から舞い降りた。


「いやぁ~初めからこうするべきだったね。面倒臭がってはダメだね。さぁ~ロイク、ノックする・・・・・・ね」


 運の神フォルティーナ様と瞳が重なった。俺は悪魔トゥーシェを指差し


「彼女が開けてくれました」


「この程度のセキュリティー造作も無いのじゃぁ~」


 悪魔トゥーシェは、胸を張りご満悦の表情だ。


「おいトゥーシェ良くやってくれたね」


「そうなのじゃぁ~」


「1ヶ月外出禁止だね」


「そうか1ヶ月間外出禁止なのかなのじゃぁ~・・・・・・って、おーい!どうしてなのじゃぁ~」


「見て分からんかね。トゥーシェ。君は神様の家の玄関の鍵を悪なる方法で開け、神様の家に土足で上がり込もうとしたね。これは立派な悪事だね」


「罠なだったのかなのじゃぁ~・・・」


 運の神フォルティーナ様は、ドヤ顔で悪魔トゥーシェを見下ろした。


「人間。何とかいってくれぇ~なのじゃぁ~」


 絶対他意があってだろうが、こいつには極力関わらないでおこう。身の為だ。


「・・・さぁ~封印を解除しに行きましょう」


「なぁ・・・に、人間。お前もか。なのじゃぁ~」


 次、機会があったら、時間延長具申します。恨まないでください。



――― R4075年7月13日(水)10:35


 俺は、慎ましさの中に優美さを兼ね備えた木造の祭壇の様な物の前に居る。


「これは、仏壇と言ってだね。祭壇の一種だね」


「これ全部木ですよね。凄い細かいレリーフです」


 繊細で優美。慎ましくそれでいて威厳を感じさせる重厚感。


「さぁ~トゥーシェ。魂を出すね」


「何を言ってるのじゃぁ~。さっき出して扉の前に置いたのじゃぁ~」



 俺達は、神殿の入り口に置かれた瓶を回収した。


「フォルティーナ。魂はこっちで使うんですか?」


「そうだね。ここに捧げた魂と同じ種族だけが、この神の封印の影響を受ける事無く出入り出来る様になるね」


 ・・・俺はフリーパスがあるから頭数に入って無いとして、マルアスピーは精霊様。アルさんは神獣様。パフさんは人間種人間族。アリスさんは人間種人間族。サラさんは人間種人間族。テレーズさんは人間種人間族。トゥーシェは悪魔種夢魔族。フォルティーナは一応神様。


「フォルティーナ。樹人族(エルフ)と魔人族の魂は必要なんですか?」


「要らないね」


「・・・聞きたい事は沢山ありますが、追求するのは止めておきます。それで、魂をどうするんですか?」


「この死んだばかりの新鮮な魂をだね。・・・そこの小窓を開けてくれるかね」


「このガラス窓ですか?」


「そうだね」


「分かりました」


≪スゥー


「よいしょっと」


≪コト キュッ


 運の神フォルティーナ様は、瓶を仏壇の中に置くと瓶の蓋を解放した。中に入っていた新鮮な死んだばかりの人間の魂は、瓶から飛び出し小窓の中にある文字に吸い込まれた。


「えっと、今のは?」


「人間種人間族の封印は解除されたね」


「今のでOKなんですか?」


「創造神が複雑な事をすると思うかね」


「そう思いますけど」


「気のせいだね」


「そ、そうなんですね」


「さぁ~明日から、いよいよ本格的に修練だね」


「今日は先に進まないんですか?」


「疲れたね。神界に行ったらだね。創造神に説教(せっき)・・・との無駄話に付き合わされたね」


「・・・神様って話長いんですね」


「本当に困ったもんだね」


「そうですね・・・」



――― R4075年7月13日(水)12:00


 俺は、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)の5階の執務室で山積みの書類と格闘していた。


「書類ってちょと目を離した隙に分裂とかしてないですよね?」


「ねぇロイク。これはだたの紙よ。分裂する訳がないわ」


「そうですね」


 いつもの様に、的確な指摘をありがとうございます・・・


「領主の執務を代行してくれる人を早くみつけないと、この部屋書類で埋まってしまいますね」


「そうね」


≪バサバサ トン


「連絡鳩が来たみたいよ」


「そうみたいですね」


≪カチャ ガラ


 マルアスピーは窓を開けると、鳩の足から手紙を外し、俺に渡した。


「緊急用の青い蝋の魔術で封印されてるわよ」


「緊急の手紙かぁ~なんだろう」


 だが、俺の神授スキル【フリーパス】に、封印など関係無い。俺は封印を無視し手紙を開いた。


「本当に便利よね。部屋の鍵も全てフリーなのだから」


「そうですね。創造神様に感謝・・・あっ!あのドア・・・まぁ良いか」


 経過はどうであれ封印の解除は完了した訳だ終わった事を悩んでも仕方が無い。今はこの緊急の手紙を読む事にしよう。俺は手紙に目を通した。


「何か港が攻撃を受けたらしく援軍を要請する物でした」


「港が攻撃されたの?」


「えっと、祖父エンゾの領都リヤンの港が攻撃を受けたらしいですよ」


「御祖父様の街がですか」


「そうみたいです」


「あの辺りは、ロイクが治安を整えた場所よね?」


「はい。魔獣も駆逐したし、湖で暮らしてたドラゴン達とも話をして、スタシオンエスティバル(中空の避暑地)クリュの池に移住して貰ったし、治安はかなりいいはずなんですが・・・」


 【タブレット】『表示』王兄エンゾ・ルーリン天爵殿下領領都リヤン。港を中心に半径5Km ≫


≪・・・表示しました。


 『表示』魔獣を赤色の点。一般の人間種を白色の点。人間の兵士を青色の点 ≫


≪・・・表示しました。


「無事に撃退したみたいですね」


「そうみたいね」


 画面には、魔獣は1匹も居なかった。


「魔獣殲滅に大掛かりな作戦を立ててたんですね。最近、調査続きで御前会議に出席してなかったから知りませんでした」


「定期的に連絡を取り合う方が良いのかもしれないわね」


「そうですね」


≪バサバサ トン


「あら、また連絡鳩?」



「王兄エンゾ・ルーリン天爵殿下が捕虜とし連行された。至急の対応を求む。だそうです」


「その手紙は誰からなのかしら?」


「えっとですね。新設した貴族領軍の水運保安隊の隊長職の人からみたいです」


「捕虜って捕虜よね?」


「そうですね・・・」


 【タブレット】『表示』エンゾ・ルーリンを中心に半径10m ≫


≪・・・表示しました。


「サス湖の上にいるわ」


「船で移動してるって事ですね。兵士達に守られてるみたいだけど・・・」


≪バーン


「大変です。ロイク様」


 テレーズさんが、北のドアから執務室に入って来た。


「おはようございます。テレーズさん。今日は修練を中止にして済みませんでした」


「おはよう。テレーズ」


「あ、おはようございます。ロイク様。マルアスピー様・・・ではなくて、サーフィスの御父様から連絡鳩で知らせがありました」


「顔が見たいから帰って来いとかですか?」


「違います。そんなほのぼのとした話ではありません。王兄エンゾ天爵殿下様の領都リヤンが、商戦に扮したトミーサス王国軍の奇襲を受け港と領主館が占領されたそうです」


「捕虜ってそういう事か」


「御存じだったのですか?」


「えっと、【タブレット】『認証更新』テレーズ・トゥージュー:可視化 ≫ 『画面表示』拡大30インチ ≫」


 宙に30インチの大きさの絵が浮かび上がる。


「これは?」


「サス湖とリヤンです。この点は祖父です。周りにいるのはトミーサス王国の兵士って事になりますね」


「落ち着いている場合ではありませんよ。これはトミーサス王国からのゼルフォーラ王国への宣戦布告無しの奇襲開戦です。戦争が始まってしまったのですよ」


「あの大規模神授の後、ゼルフォーラにあれだけ人が流れれば流石に逆恨みするか・・・」


「そうね。フフフッ」


「王兄エンゾ天爵殿下様は、ロイク様の御祖父様なのですよ。何を呑気に」


「捕虜として利用されるのは王国としても困りますね。それに生かされる保障も無いし。救出しましょう」


「助けに行かれるのですね」


「行くって言うか。呼ぶって感じです」


 【転位召喚・極】『召喚』対象エンゾ・ルーリン ≫


 俺の前の前に王兄エンゾ天爵殿下こと俺の祖父が現れた。


「あっ!」


「おぉ~ロイク。いやぁ~参ったぞ。港を視察していたら突然拘束されてな。済まんが、この縄を解いてくれ」


 俺は、祖父エンゾを縛り付けた縄を解いた。


「リヤンが、トミーサス王国軍に奇襲され陥落したって話みたいですが」


「そうか、落ちたか。領民達、私兵達は無事であろうか・・・」


「リヤンの人口ってどのくらい増えてたんですか?」


「領内各地から移住希望者を募り、トミーサス王国や他領からの移民移住者を受け入れ、1500人程が定住し暮らし始めている。行き交う商人達も増え、貴族領軍私兵隊の数が人口と商業や運輸の規模に対し足りていないのが現状だな。旧教の詐欺紛いな布教勧誘活動の取り締まりも後手に回っているよ」


「1500人の住民達は、創造神様からいただいた聖人教会に避難してほぼ無事みたいです。兵士に関してはこの状況からだと良く分からないです」


「ロイク様のスキルで、ここに転位移動させることは出来ないのでしょうか?」


「これは転位じゃ無理です。面識がある人や、召喚の許可がある人や、詳細情報を確認して顔や存在を俺が認識した人を、同じスキル何ですが、召喚の方で呼び付けてるんです」


「そうなのですね」


「テレーズ殿。気にする事はありません。貴族領軍の者達はこの様な日の為に訓練し備えているのです。領民や領国、王国を護る為に組織されているのです」


「エンゾ・ルーリン天爵殿下。・・・あっ、これは失礼致しました。御挨拶がまだでしたね。殿下ご機嫌麗しゅう」


 テレーズさんは、スカートを掴み軽く膝を曲げ、俺の祖父エンゾに挨拶した。


「・・・ロイクの嫁は私の孫でもある。殿下はよしてくれテレーズ殿」


「は、はい。それでは、私の事もテレーズとお呼びくださいませ。御義理祖父様(おじいさま)。御無事で何よりでございました」


「うん。テレーズ。ありがとう」


「はい!」


「しかしあれだな。私が目の前から突然消えたのだ。トミーサス王国軍も慌てふためいているだろうな。ハッハッハッハッハ」


「港に引き返して暴れまわらないと良いんだけど」


「ロイク。それは無いと思うわよ」


「どうしてですか?」


「見て御覧なさい」


 マルアスピーは宙に映し出された絵を指差した。


「ランザスに撤退を開始してるみたいですね」


「その様だな。まだ占領には至っていなかったか。立て直し一気に攻め落とす気なのだろう」


「あのぉ~ロイク様。御義理祖父様(おじいさま)。リヤンからの連絡鳩は各地に飛んだと思います。殿下は無事だと連絡した方が宜しいのではないでしょうか?」


「それはまだ早いと思うが、イヴァンや国の中枢には私の無事を知らせておいた方が良いだろうな」


「そうですね。皆さん心配していると思います」


「王宮まで頼めるかな」


「勿論です」


「改装中の旧私の居住区まで頼む」


「分かりました。マルアスピーとテレーズさんは、待っててください。直ぐ戻ります」


「分かったわ」


「はい」


「はぁ~」


「どうした?」


「書類の山が増えるなぁ~と・・・」


 俺は机の上に山積みにされた書類を見た。


「私のところも同じような物だ」


「そうなんですか・・・皆同じ何ですかね」


「若い領国はこんなものだと思うぞ」


「フフフッ」


「どうしたんですか?楽しそうですけど」


「ロイクと御義理祖父さんは、似ているなと思ったの」


 否定はしないが、もう少し良い所を・・・


「祖父と孫だから当然だろう。ハッハッハッハッハ」


 祖父が意外に嬉しそうだった。


「さて、行きますよ」


 【転位召喚・極】『転位』対象、エンゾ・ルーリン:場所、王宮 ≫ 【フリーパス】『移動』王宮 ≫


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