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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーアシュランス王国建国編ー
83/1227

2-2 獅子族バルサと、新たなJOB。

宜しくお願いします。

――― R4075年7月12日(地)13:50


 みなみみの湯を後にした俺は、ラトゥースへ移動した。


「旦那。お楽しみだったようですねぇ~かぁ~↑羨ましいぜぇっ」


「それで、火属性の魔術で良い具合に上級以上の物って存在しましたか?」


「おぅよ、これ何かどうだぁ~」


 神獣アイドルさんは魔術の名前を紙に書いて見せてくれた。


「なるほど・・・名前を見ただけじゃサッパリですね」


「そう来たかぁっ。とどのつまり実演して見せろぅっ。買って欲しいならって事かっかぁ~↑」


「とどのつまり、それは有難いです」


「かぁ~↑足元見やがるぜぇ~。よしわぁ~ったぜ着いて来いっ」


 足元を見た覚えは無いけど、実演して見せてくれるのは実際かなり有難い。俺は神獣アイドルさんと店の中にあるお試しブースへ移動した。


「旦那。良く見てるんだぜぇ~」


「はい」


 神獣アイドルさんは、右手を前に伸ばし、左手で右手首を上から掴み、右手の掌を広げた。



「あっ」


「どうしたんですか?」


「魔術だったなぁ~詠唱しねぇ~と。確か巻物の後に魔術で使用する際の注意書きがあったな」


 神獣アイドルさんは、巻物を広げ注意書きを読み始めた。



「準備OKだぜぇ~旦那。良く見てるんだぜぇ~」


「お願いします」


 神獣アイドルさんは、さっきと同じポーズを決め、詠唱を開始した。


四象(ししょう)四獣(しじゅう)四聖(しせい)四神(ししん)青春(せいしゅん)朱夏(しゅか)白秋(はくしゅう)玄冬(げんとう)暦鬼(れっき)驩兜(かんこう)黄熊(おうゆう)淵源(えんげん)。南座の神よ(しん)に示したまえ火属性(きわみ)魔術【パーンヴェルミオン】≫」


 火焔を纏った孔雀の様な雉の様な何か鳥が、神獣アイドルさんが構える手の前に出現し、炎を揺らめかせながら高速で的に突っ込んだ。


「魔術だとこんな感じだぜぇ~巻物の注意書きに炎の鳥が横切る際は貰い火に注意が必要ですってあった気ぃ~つけんだぜぇぃ!」


 購入決定みたいな流れだけど・・・・・・まっ良いか。これは所持していて損は無いだろう。


「幾らですか?」


「そうだなぁ~・・・魔術は売った事がねぇ~本店に掛け合ってみて売価が決定するまではぁ~適当に持ってていいぞぉ↑」


 本当に良いのだろうか?


「それじゃぁこれください」


「おっ!実演して良かったぜぇ~お買い上げありがとうごぜぇやっす。んじゃ付与すんぜ」


≪パチーン


 神獣アイドルさんは、俺の背中を叩いた。結界が弾かなかったって事は悪意や殺意や敵意が全く無いという証拠だ。なかなかの痛みだ。何か他意があるのではと考えてしまう。


「終わったぜぇ~」


「ありがとうございます!」


「おう、また来やがれってんだ馬鹿野郎!」



 買い物を済ませ休憩室(リビング)へ移動すると皆が居た。


「お待たせ」


「「「「ロイク様」」」」


 テレーズさん、パフさん、サラさん、アリスさんは、西の窓際に設置された4人掛けの焦げ茶色のテーブル椅子に腰掛。俺が来るまでの間に何か相談していた様だ。


「は、はい」


「私達、自分達の力を正確に把握して連携の効率を高めたいと思います」


 アリスさんだ。


ヴァンアヌトン(風黄金虫)では、ロイク様にターゲットウォール(壁役(壁担当))をお任せし、私達は仕留めるまで攻撃を繰り返しているだけです」


 テレーズさんだ。


「パフさんも、アリスもテレーズもまだ良い方よ。自身の成長具合が分かるのですから。私に至ってはロイク様に手解きを受け習得した補助魔術ギャルドスルーを連呼しているだけです」


 サラさんだ。


「あのぉ~私も杖が記憶したインフェルノを初日以降発動しているだけですので、自分が今どの辺りに居るのか全く分からないです」


 パフさんだ。


「つまり、俺が居ないと倒せないヴァンアヌトン(風黄金虫)だと分かり難いから、別の何かで自分達の成長の状況を確かめたいって事ですよね?」


「「「「はい」」」」


「皆さんレベル92ですよねぇ~・・・」


「「「「はい」」」」


「大樹の森じゃ弱過ぎるし」


「ねぇロイク。私、信仰の集落の初心者の迷宮に行ってみたいわ」


「初心者の迷宮?」


「えぇ。メアリーママさん(義理のお母様)おとうさま(義理のお父様)(うち)の下に解放された地下迷宮です」


「でも、初心者用の迷宮ですよ」


「サビィ―の話では、階層の攻略を、軍や各ギルド(協会)が競う様に進めて、昨日の夜に地下29階を攻略し地下30階へ下りられる様になったそうよ」


「へぇ~皆頑張ってるんですね。1日1階ペース何て凄いじゃないですか」


「地下29階のフロアー長(BOSS)の特徴が、ヴァンアヌトン(風黄金虫)に酷似しているの」


ヴァンアヌトン(風黄金虫)にですか?」


 彼女達でも、俺がターゲットを取って高火力で押し切って仕留めてるのに、どうやって倒したんだ?


「ロイク。あなたも私と同じ疑問を感じたはずよ・・・同じだとしてどうやって倒したのか」


「そうですね」


「ロイク様。マルアスピー様。それですよ。私達には、地下29階のヴァンアヌトン(風黄金虫)を確認しておく義務があると思います。ロイク様は初心者の迷宮の管理者様です」


「そうね。ロイク様は管理者としての義務がありますわ」


 パフさんとサラさんだ。


「ハッハッハッハだね。なかなか面白いじゃないかね」


 運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤとニタ付いた表情を浮かべ提案した。


「こうしたらどうかね。アドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)で前衛を募集してからだね。パーティーに加えたターゲットウォール(壁役(壁担当))前衛とサイドアタッカー(陽動攻撃役)側衛のアリスとテレーズとだね。中衛のロイクは見守るだけ、ハードアタッカー(高出力攻撃役)サポート(補助支援役)後衛のパフとサラでだね。試しに行って来ると良いね」


「フォルティーナ達はどうするんですか?」


「後衛の後衛は本来の目的が違うね。トゥーシェとあたしは別の事をしているね」


「そうですか。マルアスピーは一緒に行くとして、アルさんはどうしますか?」


「私はロイク様に御一緒します」


 アルさんも同行する様だ。


「そうかね。それなら、アスピーとアルはロイクと中衛だね。戦闘への参加は禁止だね。正しだね。前衛が死にそうな時は助けても良いね。パーティーメンバーを見殺しにしてはいけないね」


 おっ!たまには良い事を言うじゃないですか。運の神様も・・・


『あたしを何だと思ってるね』


 えっと、フォルティーナかな・・・


『正解!だね』



「そうだ。ヴァンアヌトン(風黄金虫)かもしれないのを相手にするなら、さっき仕入れた火属性の魔術が使えるかもしれないから、迷宮に入ったら教えるけど、パフさんは確定として、皆はどうする?」


「そうですわね。私はエリートマージ(上級魔術師)もJOBに所持していますし、扱える魔術が多い方が嬉しいわ。ロイク様。是非私にも手解きをお願いします」


 サラさんだ。


「ロイク様。私もマジシャン(魔術師)を所持しています。お願いします」


 テレーズさんだ。


「アリスさんはどうしますか?」


「私は、【MP】も【INT】も低いので、剣や弓を鍛えた方が・・・」


「そうでも無いですよ。アリスさんのステータスもさっき確認しましたが......


****アリス・パマリのステータス値*****


【生年月日】R4055年9月23日

【血液型】O 【個体レベル】92

【身分】貴族 【階級】天爵花嫁見習い

【虹彩】シトロンイエロー 【髪色】ゼウス

【髪型】ニュアンスロング 【体型】スレンダー

【利き手】右

【B】87 【W】58 【H】85


【JOB】本職:BT:弓聖Lv10

【JOB】inh:BT:グラディアートル(剣闘士)Lv10

【JOB】inh:LBT:ハンター(狩人)Lv10

【JOB】inh:NBT:為政家Lv1

【JOB】inh:NBT:商人・貿易商Lv1


 ≪ステータス値≫


【 HP】 2515

【 MP】 2573

【STR】 5990

【DEX】 3478

【VIT】 2489

【AGI】20130

【INT】 3089

【MND】 3991

【LUK】 2355

【Bonus】 498


***********************


......なので、仕入れた魔術も1発なら余裕で使えます」


「1ヶ月前と比べ随分と成長していたのですね・・・」


「そうだね。忘れていたね。創造神から、強制離脱記憶機能の責任者として神授を受けていたね」


≪パチン


 運の神フォルティーナ様は指を鳴らした。


「パフには、魔術魔導を極めし魔導士。JOB『ソメポールマージ(頂魔導士)』だね。アリスには、弓聖を極めし弓士。JOB『武弓聖(ぶきゅうせい)』だね。テレーズには、JOB『知弓聖(ちきゅうせい)』だね。サラには、JOB『ソメポールサージュ(頂賢者)』だね。そして、所持するJOBの習得済のJOB・SKILLはだね。転職しても使える様になったね」


「あのぉ~・・・私のソメポールマージ(・・・・・・・・?)は今迄と何が違うのでしょうか?」


「かなり違うと思うね。メディウム(神官巫女)と、マジシャン(魔術師)エリートマージ(上級魔術師)パレスマージ(王宮魔術師)グレートマージ(大魔導士)の頂点に存在するね。そしてだね。おまけでサージュ(賢者)のJOB・SKILLを全て扱えるね」


「サージュ様の補助支援魔術がですか?」


「そうなるね。適性が備わっている属性全てで回復治癒の魔術が使えるね」


「フォルティーナ様。私のソメポールサージュ(・・・・・・・・・?)はどうなのでしょうか?」


「サラのはだね。メディウム(神官巫女)ヒーラー(治癒士)エリートヒーラー(上級治癒士)サージュ(賢者)マジシャン(魔術師)エリートマージ(上級魔術師)パレスマージ(王宮魔術師)を極めた存在だね。そしてだね。おまけでグレートマージ(大魔導士)のJOB・SKILLが全て扱えるね」


「す、凄いですわ」


 ん?


「フォルティーナ。1つ聞くけど、ソメポールマージ(・・・・・・・・?)ソメポールサージュ(・・・・・・・・・?)何が違うんだ?」


「難しい質問だね。だがあえて答えようだね」


 あえて答えてくれるのか・・・


「端的言うとだね。経緯が違うね」


「あぁ~なるほど」


 凄い端的だ。


「サラは、どうして、フォルティーナを未だに様付けて呼んでいるのかしら?」


 話題を大きく変えたのは、マルアスピーだ。


「え?どうしてからしら・・・そう呼んだ方が良いかもって気分になるのよね」


 フォルティーナは神様だ。その感覚を持ってるサラさん貴方は素敵だと思います。俺もあの頃の純粋な気持ちを取り戻したいと思います。


「ふ~ん」


「さてだね。ロイク。愛の逃避行の前にだね。ロイクが所持するJOBを皆のステータスに全て付与するね」


「全部ですか?」


「全部だね」


「何でまた?」


「聞いていなかったのかね?全くだね。良いかね。創造神の神授で所持するJOBのスキルを転職しても使う事が出来る訳だね。JOBが多い方がメリットだね」



 俺は、俺が所持しているJOBを、BT(戦闘型)LBT(準戦闘型)NBT(非戦闘型)関係無く全て皆に付与した。神授によって転職する事が可能になるJOBは付与する事が出来なかった。



――― R4075年7月12日(地)16:00


 ランチを済ませた俺は、俺の生まれ故郷のアンカー男爵領マルアスピー村の両親と俺の家だった建物の2階の俺の部屋に神授スキル【フリーパス】で移動した。


 この部屋は、この家が王国軍とアンカー男爵家による共同管理状態になった今でも、迷宮の管理者専用の部屋として俺と俺の許可を得た者だけが入室出来る『管理者専用開かずの間』として、俺の部屋のままだ。


 階段を降り1階へ移動した俺は、1階の入場受付カウンターに待機しいる王国軍の兵士に絡まれた。


「おい貴様。誰の許可を得て2階に上がった!」


 管理者でも許可取る必要があるのか?新設された迷宮管理庁の長官に聞いておくべきだった様だ。


「えっと・・・2階に俺の部屋があるんで、それでちょっと用事がありまして・・・」


「部屋だと?」


「身分カードを見せろ」


「あ、はい」


 俺は、ポケットに手を入れる。神授スキル【ホームカード】『選択』身分カード ≫


「どうぞ」


「おい、このカードを通行判定魔導具にかけてくれ」


「迷宮に入るなら列に並んで貰え」


 王国軍の兵士は通行判定魔導具の前に座る兵士に俺の身分(ホーム)カードを渡した。


「いや、こいつは2階に侵入した不審者だ。犯罪履歴が無いか見てくれ」


「はいよ」


 通行判定魔導具の前に座る兵士が、水晶体に俺の身分(ホーム)カードを近付けた瞬間。


≪ピッ


 水晶体は、黄金色と白金色のマーブルに発光し点灯状態になった。


「え?・・・お前大変なこ・と・を・・・してる・ぞ」


「何だ?もしかして指名手配中の凶悪野郎だったかぁ~!」


 俺に絡んで来た兵士は、俺から通行判定魔導具の前に座る兵士へ視線を動かす。


「・・・・・・プ・プラ・プラチナゴ・ゴールド・・・」


 俺に絡んだ王国軍の兵士は、入場手続きの為に並ぶ沢山の人達の前で、口から泡を吹き出し気絶した。


 通行判定魔導具の前に座る兵士は受付カウンターから慌てて、俺が暮らしていた時は台所だった場所を改装し設置した、出入通行管理税徴収兵詰所所長の部屋へ入って行った。間髪入れず、4人の王国軍兵士が俺の前に整列し軍人としての臣下の礼をとった。


「本日は、王都より御来訪いただき誠にありがとうございます。私は、アンカー男爵領マルアスピー王民居住地区地下迷宮出入通行管理税徴収兵『大樹の英雄生誕の家屋』詰所所長を任されております。ゼルフォーラ王国衛兵徴収兵隊所属コルト駐屯軍アンカー男爵領駐屯小隊第38班班長アンダルシアであります」


「人が見てるんで、所長室で話ませんか?」


 人目が気になる今日この頃です・・・



 俺の部屋で地下迷宮へ入る為の戦闘準備をしていた皆と、俺は狭い所長室で合流し。


「大樹の英雄様とお茶を飲みながら話が出来る何て夢の様です」


「はぁ~・・・」


「息子に自慢話が出来ます」


「私もです」


「副所長。お前はまだだろうが」


「8ヶ月後には自分も父親であります」


「腹の中の子供に自慢話をするつもりか?」


「はい。自慢になります」


 流石、俺の故郷・・・緊張感が無いや・・・


「えっと、話を進めていいでしょうか?」


「申し訳ございません。余りの嬉しさに興奮してしまい、本当に申し訳ございません」


「地下29階のフロアー長(BOSS)を倒し、攻略が地下30階に到達したと報告を受けました。地下29階のフロアー長の情報が、今俺が調べている魔獣と酷似して様なのですが、詳しい情報はありますか?」


「地下29階のフロアー長を倒したのは、コルトのアドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)に所属する民間パーティーです。王国軍や騎士団や領軍のパーティーではありませんので、詳細情報の報告はまだ来ておりません」


「大樹の英雄様。アドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)に確認の鳩を飛ばしましょうか?」


「いえ、大丈夫です。情報はあったらで良かったので、このまま迷宮に入って直接確認して来ます」


「今から地下迷宮に入られるのでしょうか?」


「えぇそのつもりです」


「ロイク様。まだ前衛を雇っていませんが・・・」


 アリスさんだ。


「あっ!・・・忘れてました」



――― R4075年7月12日(地)17:30


 俺は、コルトの大聖堂に新しく常設された聖守護者の間へ神授スキル【フリーパス】で移動した。そして、アドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)ギルドマスター(協会長)のカルバーン・ヌー子爵(51)を大聖堂の聖守護者の間へ呼び出した。詰所での兵士の件を思い出し直接出向く事を控えた結果だ。


 カルバーン・ヌー子爵は、俺が魔法で城壁を設置し準領都ゴールデンブレを領都にしたヌー子爵家の現当主の従弟だ。準男爵だった父の爵位を継承し準男爵として騎士団に入団。功績が認められ子爵位待遇の名誉子爵(世襲が認められた)を叙勲されている。


「お久しぶりです。その節はお世話になりました」


「いやーあの時は御見苦しい所をと言いますかあれです。・・・こちらこそ貴重な体験をさせていただき光栄な時間でありました。誠にありがとうございました。連絡鳩で手紙をいただき急ぎ参りました。初心者の迷宮の地下29階のフロアー長(BOOS)の詳細情報と、前衛を御探しとの事ですが間違いありませんでしょうか?」


「はい」


「当ギルド所属のパーティー3チームが30日間初心者の迷宮に篭り28日目にやっと倒し得た情報です」


「帰りはどようやって?」


「王国軍の転位魔術士が転位魔術の練習を兼ね、初心者の迷宮に配属されているのです。その転位魔術士の転位移動で帰還したそうです」


「あぁ~そうなんですね」


「受付カウンターの横と、地下4階、地下8階、地下12階、地下16階、地下20階に転位中継エリアが設けられ王国軍の小隊2部隊が待機しています。転位移動代金はPTの人数や移動距離は関係無く一律5000NLなんだそうです。緊急の際の避難所としても機能しているそうですが、民間PTに対し友好的では無いとの報告が・・・おぉ断線しましたね」


 これは、改善しろって要求だな。


「地下20階から3パーティーとも転位移動で帰還したのですが、迷宮内で命を落とした者が5人。成果としては喜ばしい物ではありませんでした」


「因みにですけど、そのパーティーに参加した人達のレベルはどの位だったんですか?」


「皆レベル20前後の中堅手練れ達です」


 なるほど。レベル20前後だと厳しいのか。


「地下29階のフロアー長(BOSS)との戦いで命を落としたギルドメンバーの中には、3パーティーの指揮を執っていた当コルト支部Aランカーで『常勝』の二つ名を持つあの(・・)スピルバーグが含まれています」


 あの(・・)って強調されても誰だか分からないんだけど・・・


「スピルバーグは、個体レベル27でJOBゲリエブウクリイェ(盾戦士)Lv4。絵に描いたような前衛職の男でした。残念な奴を失いました」


 ・・・


「そ、そうですね・・・それで、前衛を紹介していただく話は?」


「それが・・・ギルドの連中は、あの(・・)の常勝Aランカーのスピルバーグですら生きて戻れなかった地下29階のフロアー長(BOSS)には暫く関わりたくないそうでして・・・」


「なるほど」


 前衛の確保は無理そうだな。諦めて俺等だけで調査するか。


「それで、この者を連れて参りました」


「この者って、受付のバルサさんしか居ないと思うんですけど、逃げちゃったとか?」


「いえ。受付のバルサで間違いありません」


「ロイク様。マルアスピー様。皆さま。獣人種獅子(じゅうじん)族のバルサです宜しくお願いします」


 PTカードを作る時にお世話になったギルド(協会)の受付カウンターにいた人間種獣人種獅子(じゅうじん)族のバルサンさんは、自身のPTカードを右手に持ち握手の要領でお辞儀をしながら差し出した。


「えっと、どういう事でしょう?」


「ギルドメンバーに確認しましたが誰も行きたがりませんでしたので、急遽ギルドスタッフの中から選ばれました彼女が副王陛下からの御依頼をお受けする事になりました」


「戦えるんですか?」


「ロイク様。馬鹿にして貰っては困ります。私は獅子族です。スピードとパワーと視覚聴覚嗅覚には自信があります」


 俺は、彼女のステータスを神眼で視認した。


 レベル9!って・・・マルアスピー、アルさんどうしましょう?


『パフちゃんと、アリスと、サラと、テレーズの練習も兼ねているのよね?』


『ファルティーナ様は、そのおつもりの様でしたが・・・』


 弱過ぎて、1撃で死んじゃったりしませんよね?


『人間種の中では、高い【HP】を持ってる人間種獣人族よね・・・』


 高いって言っても、306ですよ。


『ロイク様。マルアスピーさん。地下1階から人間種獣人族のレベルを上げながら地下29階に向かった方が良いのではないでしょうか?』


 それだと、時間が掛かりませんか?


『でも、死なれても困りますし』


 確かに。


『ロイク。こうしましょう。あの人間種獣人族に結界を張りましょう』


 でも、それだと、彼女達の練習にならないんじゃ・・・


『大丈夫よ。結界の事を教えなければ良いのよ。1撃で死んでしまう程に弱いとだけ伝えておけば問題無いわ』


『嘘は付いてませんし。私もマルアスピーさんの意見に賛成です』


 分かりました。そうしましょう。


「バルサさん。ギルドマスター(協会長)


「はい。副王陛下」


「はい、ロイク様」


「他に選択の余地が無い状況です。臨時パーティーにバルサさんを雇いたいと思います」


「おぉ~ありがとうございます」


「ありがとうございます」


「副王陛下。いやらしい話なのですが、依頼料の話をしても宜しいでしょうか?」


「えぇ」


「依頼料は、報酬としてアドベンチャーギルド(冒険者探検家協会)が全額御預りする事になります」


「幾らですか?」


「当ギルドの精鋭メンバーで編成した3パーティーが30日間かけ5人の犠牲者を出し攻略した場所ですので、30日間の連続契約として、1日3000~5000NL。食費や雑費等は別途御負担いただく事になります。30日掛ける間を取って1日4000NLとして、12万NLではどうでしょうか?」


 30日間も雇う必要無いよな・・・マルアスピー、アルさん。もう1度相談です。


『はい。ロイク様』


『何かしら』


 さっき仕入れた魔術の練習場所ですが、人が少ない所の方が良いと気付きました。それならいっそ目的の地下29階で良いかなって。神授スキル【タブレット】で地下29階を検索して、神授スキル【フリーパス】でフロアー長の手前に移動して、感覚を掴んだらヴァンアヌトン(風黄金虫)かもしれない魔獣の調査を開始しようと思うんです。


『はい』


『えぇ、それで?』


 所要時間は1時間以下ですよね?


『はい』


『そうね』


 今からなら陽が沈む前に、彼女をギルド(協会)に返せますよね?


『私はそう思いますが』


『そうなるわね』


 ありがとうございます。


「今日の夜前には戻って来る予定なので、その場合の依頼料は幾らですか?」


「はぁ~?半日以下でですか・・・」


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