1-66 動き始めた世界と、始まりの時代。
宜しくお願いします。
――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ ファミリーエリア
ーーー 6月12日 28:00
俺は、マルアスピーと寝室のベッドで横になっていた。
「ロイク。私の力がまた上がったわ。ロイクが盗賊の討伐に行ってからの事よ」
そっか、俺の神気が増えたから、マルアスピーの神気も増えたのか・・・
「神気が35から10増えて45になったからそれでですね」
「何があったの?」
「神授スキル【Baise】が5から6に突然上がったんです」
「そう」
マルアスピーは、何かに気付いたみたいだ。一瞬だけ目を見開いた。
「どうしたんですか?」
「神授スキル【Baise】のレベルが上がるタイミングが何と無く分かっただけよ」
「凄いじゃないですか」
「えぇこのスキルは凄いスキルだわ」
「教えてください」
「・・・私眠くなって来たわ。今度教えるわ・・・おやすみなさい」
「・・・お、おやすみなさい」
≪チュッ
マルアスピーは俺の唇に軽いキスをし寝返りを打った。
「・・・」
「何か言いましたか?」
「何でもないわ。フフフッ」
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――― 王都モルングレー
王宮 本宮殿 国王の間
――― 6月13日 9:10
一夜明け、俺は朝から御前会議に出席していた。
シャロン子爵領シェリーベルと、王兄エンゾ天爵領リヤンの領都登録承認の報告を受け、トミーサス王国の王都トミーランへ使者を派遣する事を決定した。使者に選ばれたのは、サス湖の畔に領都となったばかりのシリウスを構えるダリウス伯爵だ。ダリウス伯爵の任務は、サス湖から流れるサラン川の水運を利用した交易路と巡礼観光路の確立と安全保障交渉だ。
王都モルングレーの副都市港町エルピスは、国王・王国直轄領王太子臨時行政区として勅令が発せられ、王太子アルセーヌが臨時行政区長官に就任した。
ヒグマの丘の楼閣迷宮の調査は初日から躓いていた。楼閣迷宮が解放されたヒグマの丘の風の断層にある邪気の洞窟を調査団(マルアスピーの貴族領軍私兵隊)が見つけられなかったからだ。洞窟が見つからないという報告を受けた俺は、迷宮の解放が遅れているのかもしれないとだけ返答し言及を避けた。邪気の洞窟には、ヒグマ山脈の中精霊様と聖梟獣サビィ―さんによって封印された過去があり、その封印によって人間種には視認出来ない状態にあると説明したところで調査団には何も出来ない。結局は俺が解放する必要があるからだ。
マルアスピー村の両親と俺の家の地下には、挑戦者を選ばない地下迷宮の入り口が神授の通り出現した。家は、王国軍の出入通行管理事務所兼アンカー男爵領応急処置施設として管理される事になった。
他良く分からない内政外交の報告を受け採決に参加し適当に頷いた俺は、会議が終わると出席者への挨拶を早々に済ませ神授スキル【フリーパス】でスカーレットのエルドラドブランシュの5階の中央にある執務室に移動した。
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――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 5階 執務室
――― 6月13日 10:40
俺は、執務室に......
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125歳の解呪士 モニカ
解呪士モニカの父 ピーター
解呪士モニカの母 ビアンカ
モニカさんの来孫ルナ
他 石化を解呪された 71人
俺の契約奴隷パフ・レイジィー
パフさんの母リディア・レイジィー
ヴィオラ・マーガレット辺境伯爵夫人
レイナルド・マーガレット辺境伯爵
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......に、集まって貰った。傍聴者として、運を司る遊びの女神フォルティーナ様と、神獣種神鳥の長アルさん、副王ロイク・ルーリン・シャレット天爵代行として大樹の聖域の精霊樹に宿りし大精霊マルアスピー様が出席した。
応接用のソファーに皆が腰掛けるのを待って、俺は椅子に腰掛け切り出した。
「集まっていただいてありがとうございます。今この場所には大樹の英雄であり創造神様より神授いただいロイク・ルーリン・シャレットとして参加しています」
騒めいていた執務室が静まり返った。
「後程、景色を楽しむ時間を用意致します。もう暫く俺にお付き合いください。まずは急な誘いにも関わらず集まっていただきありがとうございます。2つ伝えたい事があります。1つ目は、大地石の民の祠の守り人の末裔を苦しめた継承の呪いと、その呪いの解呪返しによって皆さんから時間を奪った石化の呪いについてです」
「それで、私達を呼んだ訳ですか。副王陛下・・・いや、大樹の英雄様・・・?」
「はい。レイナルド・マーガレット辺境伯爵」
「それで、どんな報告なのでしょうか?」
「率直に申し上げます。昨晩、神様より啓示を受けました。それは、継承の呪いが世界から完全に消滅したという喜ばしい内容でした」
≪おぉ~ (何となく皆)
勿論、そんな啓示は受けていない。だが、創造神様と運の神フォルティーナ様に確認し、啓示という形でならば良いと許可を神授神託していただいた。
「出産と同時に親となった者の生命力を徐々に奪い死に至らしめる継承の呪いは、暴走したマジックスポットから大量に溢れ出た邪属性の自然魔素が、大地石の祠の地属性の大地石水晶石を汚染し、その汚染を除去し邪属性の自然魔素を抑え込もうとした際、不運にも邪属性と地属性の術式統制が成立しこの世界に誕生してしまったそうです」
「大地石の恵でもある地属性を邪属性が蝕み、呪詛返しという複雑な術式を継承の呪いの中に偶然組み込んでしまった訳ですか」
「はい、モニカさん」
モニカさんとは事前に打ち合わせをしている。
「呪いの経緯については分かりました。解呪士であれば、今の話で納得しない者は居ない。皆の者そうであろう?」
125歳の解呪士の一声は解呪士達にとって鶴の一声だ。
≪ガヤガヤガヤガヤ
「解呪士の皆さんの中には、継承の呪いの数字が気になっている人が居ると思います。あれは、大地石の民に伝わる地文字と呼ばれる言語で、古代文字よりも古い言語なんだそうです。4分の1と俺達が読んでしまうこの文字は、俺達の言葉に変換すると『V』。4分の2は『W』。4分の3は『X』。4分の4は『Y』。4分の5は『Z』。Zは最後、終わり、終焉という意味があり、文字による死へのカウントダウンだったようです」
「現代の私達では誤認し正しく認識出来ないおまけつきだったとは」
「俺も啓示を受け驚きました」
「ここに集まっていただいたのは、呪いが消滅した事を報告する為ですが、もう1つあります。解呪士の皆さんは歴史文献古文書等過去の事例に詳しく、また数学や魔術や魔導具の理論にも精通している方ばかりです。ですが、石化していた期間に発展した技術や知識。変化した文化や道徳に対しては学ぶ機会が必要です。ここスカーレットに皆さんの新居を準備します。学芸院や研究所に似た場所も準備します。王都の王宮内に準備された監視付きの区画で過ごすよりは良いと思います。ここスカーレットを新しい生活の拠点にしてくれませんか?衣食住や金銭の相談は、この後で紹介します。ルーリン・シャレット領の財務長官アランギー・フゥファニー家臣伯爵が親切丁寧に対応します。気軽に相談してください」
≪やっと、王宮から出られるのか!
≪石化が解け生き返ったのは良いがどうして良いか先が不安だったが何とかなりそうだな。
≪あぁ
「解呪士諸君。皆礼はどうしのかな?石化を解呪された時は事態を飲み込めず礼を忘れた者も、今日のこの待遇には礼の1つ位は言えるだろう?」
≪そ、そうだな。
≪ありがとうございます。
≪ありがとう。英雄ロイク様。
モニカさんの一声で、71人とモニカさん家族4人がスカーレットの住民として正式に登録される事となった。
「俺の呼び方ですけど、皆さんはこれで、俺を呼び易くなりましよ。今日からは、領主でも、ロイクでも自由に呼んでください。領民は家族も同然です」
「分かりました。今日この時から、英雄ロイク殿!ではなく、領主様、御領主様とお呼び致します。ルーリン・シャレット天爵領の領民として領の発展に協力致します。御領主様!」
≪御領主様!領主様!領主様!
モニカさんの一声で、俺の呼称は領主、御領主に決まった様だ。
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――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 屋上
――― 6月13日 11:30
俺は、屋上に......
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俺の父(44)誕生日前、見た目(36)
バイル・シャレット
俺の母(41)誕生日前、見た目(31)
メアリー・シャレット(王女殿下)
母方の祖父エンゾ・ルーリン天爵殿下(63)
母方の祖母イネス・E・ルーリン妃(62)
母方の曾祖母クララ・J・ルーリン国太后(87)
母方の祖父の弟(56)
イヴァン・ルーリン国王陛下
母方の祖父の弟の第1夫人(48)
アリス・I・ルーリン王妃
母方の祖父の弟の長女(21)
リナ・ルーリン王女殿下
母方の祖父の弟の長男(18)双子
アルセーヌ・ルーリン王太子
母方の祖父の弟の次男(18)双子
ガスパール・ルーリン王子
母方の曾祖父の弟(87)
サラ・ルーリンの祖父(義祖父)
ボードワン・ルーリン天爵
母方の曾祖父の弟の第1夫人(85)
サラの祖母(義祖母)
ドミニク・B・ルーリン妃
母方の曾祖父の弟の長男(59)
サラの父(義父)
バルタザール・ルーリン王子
母方の曾祖父の弟の長男の第1夫人(54)
サラの母(義母)
パトリシア・B・Jr・ルーリン妃
母方の曾祖父の弟の長女(49)
サラの父の妹
サンドラ・ルーリン王女殿下
母方の曾祖父の弟の長男の長男(26)
サラの兄(義兄)
ジャマル・ルーリン王子
母方の曾祖父の弟の長男の次男(24)
母方の曾祖父の弟の長女の養子
サラの兄(※義兄)
クレマン・ルーリン王子
母の兄(伯父)
オーレリー・ルーリン王子
母の兄の第1夫人
ローラ・O・ルーリン妃
母の兄の長男(従兄)
クレーリー・ルーリン王子
母の兄の第1夫人の兄(50)
レイナルド・マーガレット辺境伯爵
母の兄の第1夫人の兄の第1夫人(47)
ヴィオラ・マーガレット
母の兄の第1夫人の兄の長女(24)
パオラ・マーガレット
母の兄の第1夫人の兄の長男(19)
ナトン・マーガレット
母方の祖父の兄の第1夫人(63)
テレーズ・トゥージューの祖母(義祖母)
エメ・B・デェイビュー前王妃
母方の祖父の兄の長女(王女殿下)(44)
テレーズの母(義母)
リラリス・トゥージュー公爵夫人
母方の祖父の兄の長女の夫(外戚王族)(50)
テレーズの父(義父)
アラン・トゥージュー公爵
母方の祖父の兄の長女の長男(外戚王族)(26)
テレーズの兄(義兄)
セザール・トゥージュー次期公爵
母方の祖母の兄の長女の長女(外戚王族)(23)
テレーズの姉(※義姉)
プティット・トゥージュー
母方の祖父の兄の次女(王女殿下)
クリオ・ラカコア伯爵夫人
母方の祖父の兄の次女の夫(外戚王族)
ヤン・ラカコア伯爵
母方の祖父の兄の次女の長男(外戚王族)
エディ・ラカコア次期伯爵
母方の祖母の兄(66)
ゴドウィン・モンロー伯爵
母方の祖母の兄の第1夫人(63)
オービーヌ・モンロー伯爵夫人
母方の祖母の兄の長男(44)
クリストフ・モンロー次期伯爵
母方の祖母の兄の長男の第1夫人(40)
エリア・モンロー次期伯爵夫人
母方の祖母の兄の長男の長男(19)
オーバン・モンロー
母方の祖母の兄の長男の長女(17)
オリヴィア・モンロー
母方の祖母の兄の長男の次女(13)
ヴェロニク・モンロー
母方の祖母の兄の長男の次男(11)
リオネル・モンロー
精霊樹の大精霊マルアスピーの母(義母)
前任の精霊樹の大精霊で追放精霊
ミト
パフ・レイジィーの母(38)(義母)
リディア・レイジィー
アリス・パマリの父(44)(義父)
ジェルマン・パマリ伯爵
アリス・パマリの母(38)(義母)
マリア・パマリ伯爵第1夫人
アリスの祖父(義祖父)(71)
ステファン・パマリ侯爵
アリスの祖母(義祖母)(67)
ミント・パマリ侯爵第1夫人
アリスの父の兄(46)
セイズマン・パマリ次期侯爵
アリスの父の兄の第1夫人(41)
バートリー・パマリ次期侯爵夫人
アリスの父の兄の長男(19)
ジョージ・パマリ
アリスの父の兄の次男(16)
アンガス・パマリ
アリスの父の妹(39)
ダリア・ボルニ―家臣男爵夫人
アリスの父の妹の夫(37)
ワルテール・ボルニ―家臣男爵
アリスの父の妹の夫の父(74)
ヨルゴ・ボルニ―前家臣男爵
アリスの祖父の第2夫人(43)
マイラ・パマリ
アリス・祖父の第2夫人の長男(25)
トランプ・パマリ
アリスの祖父の第2夫人の長女(17)
イザベラ・パマリ
精霊樹の大精霊
マルアスピー(19)本当は(4075)
ゼルフォーラ王国王女殿下
サラ・ルーリン(21)
契約奴隷パフ・レイジィー(16)
伯爵家令嬢アリス・パマリ(19)
神獣神鳥アル(21)本当は(2174)
運を司る遊びの女神
フォルティーナ(不明)
悪魔種夢魔族 本当は(60000013)
トゥーシェ・マハレーン(16)
公爵家令嬢(外戚王族)
テレーズ・トゥージュー(18)
≪仲間達≫
※神様聖邪獣達※
料理の神chef
アランギー・フゥファニー様
妖精のお仕事 スコーチュ
アメール
ソイソース
オムレット
メレンゲ
邪狼獣 セリュー
ディーズ
ナクール
ロージャン
イルーグ
クルーズ
バルーサ
ルクソール
聖栗鼠獣 ビエール
聖梟獣 サビィ―
聖馬獣 エリウス
※アンカー男爵領マルアスピーの仲間達※
※パマリ侯爵領コルトの仲間達※
※ブオミル侯爵領ロイの仲間達※
※領都計画で関わった領地貴族達※
コルト教区教区長、コルト大聖堂大神官長
クレメンス・カルヴァン
王宮教会司祭
トール・ベスキモ
他多数の教会関係者
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......神授スキル【フリーパス】や【召喚転位・極】で家族や仲間や知り合いを集めた。それは、創造神様から届いた1通のメールの内容。つまり、神授を伝える為だ。創造神様からの神授は啓示として世界創造神創生教の一部の者達にも与えられていた。
屋上から見るゼルフォーラの大地と空そして海。大神殿と大聖堂そして大都会サーフィスや王都モルングレーの王宮。皆その景色風景に感嘆の声を漏らしていた。
俺は、落ち着くのを待って切り出した。
「この中には、創造神様より神授をいただき、今から俺が何を話すのか知っている人が沢山居ると思います」
≪はい。えぇ~
世界創造神創生教の関係者達は頷いた。
「陛下、宰相閣下、大臣長官参議の皆さん、そして中央議会評議員や各ギルドマスター、教会関係者の皆さん、騎士団や軍関係者の皆さん。来たる悪の日に備え創造神様より神授をいただきました」
「副王よ。王宮を離れ、この建物の屋上に世等を集めたのはその神授に関係しているのか?」
「副王陛下・・・」
パトリック宰相は、世界創造神創生教の関係者を警戒している様子だ。そのパトリック宰相の発言を遮り切り出したのはコルト大聖堂の大神官長だった。
「国王陛下、そしてロイク殿・・・世界創造神創生教関係者だった者を代表し、ゼルフォーラ王国の皆さんに申し上げたい事がございます」
大神官長は意図的にだったを強調し陛下に発言の許可を求めた。
「だった!?」
パトリック宰相は、コルト大聖堂の大神官長を凝視する。
「ここは謁見の間でも国王の間でも無い。世の許可など不要だ。続けるが良い」
「国王陛下ありがとうございます。・・・それでは、・・・これは啓示である」
世界創造神創生教関係者だった者達は、その場に跪き天を仰いだ。
「陛下・・・?」
パトリック宰相は、状況を飲み込めず落ち着きを欠いていた。
「世界創造神様の御意向御意思を真摯に受け止め、ゼルフォーラ大陸コルト教区、サーフィス教区、サンガス教区、フォーラム教区、王都モルングレー教区の1部に所属する世界創造神創生教関係者だった者は、世界創造神様の御意向御意思を正しく教義し布教する。世界創造神創生教を廃し『正創生教(正教)』を創始する」
≪世界創造神様。神々様ぁ~
世界創造神創生教関係者だった者達は、正創生教(正教)関係者になった。
「神々様?どういう事ですか?コルト大聖堂の大神官長殿」
宗教に疑念と不信感を持つパトリック宰相の反応は当然だ。宗教に疑念を持っていたとしても、創造神様1柱に対して疑念を持つ者はこの世界には居ない。16歳、成人の日に誰もが通過しその存在を理解する神授の日が存在するからだ。
「正しい教義の管理を、世界創造神様はパトリック・ミィストゥリィーに委ねると啓示されました」
「わ、私にですか・・・神々とは・・・?」
嫌悪する宗教のしかも教義の管理を任されたパトリック宰相の狼狽する様は傍から見ていて本人には申し訳ないが滑稽だった。
「はい。世界創造神様は、啓示されました。ロイク殿が神授により与えられ神授により建立したスカーレット大神殿を地上の創神殿とし、ノートルダム大聖堂とコルト大聖堂を二大司教司祭壇とする事、誤った教義を捨て腐敗した信仰を正す事、正しく歩め正しく学べ強く生きよと啓示により御意向御意思をお示しになられました。そして、正創生教(正教)として来たる悪に対峙する聖守護者ロイク殿とゼルフォーラ王国、世界を支えよと」
「正しい教義には、創造神様の他にも神がおられるのですか?」
「その通りです。神は世界創造神様ただ1柱と教え込まれ信じて疑う事を知らなかった自身を恥ずかしく思います」
「そ、そうなのか・・・」
パトリック宰相お気持ちは分かります。頑張ってください。
見ていて気の毒に思えた俺の本音だ。
「パトリックよ」
「は・・・はい、陛下」
「創造神様より教義を託されるとは素晴らしい事ではないか」
「は、はい」
「だが、政治の場に、宗教を持ち込む事は許さぬ。分かっているな」
「はい」
「国王陛下。世界創造神様からいただきました啓示には、国王陛下の名もございました」
「世の名がか!?して、なんと?」
「大ゼルフォーラ王国の分裂によって、ゼルフォーラ王国、トミーサス王国、ララコバイア王国、ヴァルオリティア帝国が成立しました」
「そうだな」
「大ゼルフォーラ王国時代。ゼルフォーラの王都はコルトでございました」
「まさか、コルトに遷都しろと?」
「その様な事はございません。コルトが王都だった時代、現在の王都モルングレーは、聖都ルーリンと呼ばれていたそうです」
「聞いた事が無いぞ」
「はい、陛下。王国史や文献にもその様な記述は一切ございません」
「文献に残された時代それ以前の時代の話との事です」
「前時代の頃には、王都が聖都ルーリンと呼ばれていたとはな。それで、世の名が何故?」
「はい。ゼルフォーラ王国、ゼルフォーラ王国国王として宣言する事を世界創造神様は望まれておられませす」
「創造神様の御意思御意向とあれば、可能な限り何でもしよう」
流石に、可能な限りか・・・
「まず、正創生教(正教)を王国は保護し布教の自由を約束する事、次に世界創造神創生教より正創生教(正教)そして人類を庇護し信仰の自由を約束する事、正創生教(正教)創始の地スカーレット大神殿を有するスカーレットを聖都とする事、ゼルフォーラ王国の国王は世界創造神様の御意向御意思を理解し恭順の意として聖王を自称する事」
「自称だと?・・・それに、スカーレットを聖都、王都に聖王・・・ゼルフォーラ王国が宗教国家の様ではないか」
パトリック宰相が声を荒げる。
「創始の地であり、聖人であり守護者のロイク・ルーリン・シャレット殿が管理する都を聖都と呼称し不都合はありますまい。まして世界創造神様の御意思御意向なのです。それに、創始の地を王国内に有する国王が聖王を自称し何が問題になるというのです」
「ですが・・・」
「パトリックよ。世は聖王と名乗る事にする」
「か、畏まりました・・・」
創造神様の御意向御意思より国王陛下の御意思御意向をパトリック宰相は優先した。
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***正創生教の簡易説明***
≪総本山≫※精神の本山※
中空の離宮にある創神殿
守護者・管理者・聖人 ロイク
≪本山≫※身体の本山※
スカーレット大神殿
大神官 クレメンス・カルヴァン
大司教 パトリック・ミィストゥリィー
大司祭 トール・ベスキモ
守護者・管理者・聖人 ロイク
≪二大主司教司祭壇≫
ノートルダム大聖堂
神官長 トール・ベスキモ
≪二大主司教司祭壇≫
コルト大聖堂
神官長 クレメンス・カルヴァン(代行)
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この日、世界創造神様から啓示をいただいていた世界各地の、教会、大聖堂、神殿、寺院が正創生教に所属を移した。
そして、後に争教腐教誤教と呼ばれる事となる世界創造神創生教は、教王庁枢機卿院の名で、大司教院、司教講堂院を通じて世界各地の世界創造神創生教関係施設に連絡鳩を飛ばし、世界創造神様、宗教、人類への冒涜であり世界を混沌へと導く邪教であると正創生教を邪教認定した。
R4075年6月13日。来たる悪に対峙し立ち向かう者を支える為に産声を上げた正創生教(正教)は、世界創造神創生教(現時点では)と教義による論争を開始した。
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「副王よ。宗教の話をする為だけに、集めた訳ではあるまい!」
イヴァン国王がタイムカウンターで時間を気にしながら俺に話掛ける。
「はい。実は......