1-65 絶対自由な存在と、ゴルゴ―ンの真実と呪い。
宜しくお願いします。
「悪狐神様。お客さんのガムシロップをお持ちしました」
「うんうんだね」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、運の神フォルティーナ様の前にガムシロップを2つ置いた。
「どうぞ」
この人なら、遊の樹人族と違って話になりそうだな。
「お爺さん」
「なんでございましょう?」
「お爺さんと同じ邪の人を知ってるんですが、知り合いだったりしますか?」
「さて、誰の事でございましょう?」
「遊の樹人族が王国軍に身柄を拘束されたそうなんです」
「そうでしたか!・・・何か悪事でも働きましたか?」
「みたいです。盗賊達と一緒にいたそうです」
「盗賊達とですか、それは良くありませんねぇ~・・・」
「それにもう1人。世界創造神創生教の大司教クレメンス・オデスカルに成り済まし、英雄誕生の儀式の際に、英雄に邪属性の魔術でおかしな事をしようとしたそうなんです」
「なんと、大胆な事を・・・」
「ですが、失敗し意識を失い倒れ、王宮内にある王宮教会の介護室に運び込まれたんだそうです」
「意識を?・・・」
「その後、ベッドで眠っていたはずの大司教クレメンス・オデスカルに成り済ましていた遊は忽然と姿を消してしまったそうです」
「姿をですか」
「はい」
「王宮から誰にも気付かれず姿を消すとはなかなかやりますねぇ~」
「皆さん、悪鬼神様に祝福していただいた遊なんですか?」
「・・・私は崇高なる智恵の巨匠悪鬼神様より過分なる冥加をいただいた身でございます」
「悪鬼神様は智恵の巨匠なんですね」
「御存じありませんか?」
「智恵の巨匠かね。凄いね。それで、どんな知恵を追求したかね?」
「失われしゴルゴ―ンの呪い。崇高なる智恵の巨匠悪鬼神様は、ゴルゴ―ンの呪いの1つが御自身が持つ力に近い事に気付き研究を重ねました」
「呪いに似た力ですか?」
「ゴルゴ―ンの呪いの1つは死を与える物です」
「命を奪う呪いって普通過ぎませんか?」
「そうです。世界に最も多く存在する呪いの1つです。ですが、この呪いには副産物がありました」
「お爺さんは詳しんですね」
「わ・・・私は、崇高なる智恵の巨匠悪鬼神様より過分なる冥加をいただいた後、側にお仕えしておりましたので・・・」
「そうなんですね。それで、副産物ってそんなに凄い物だったんですか?」
「それはもう素晴らしい物でした。ゴルゴ―ンの呪いの1つ死を与える呪いには、その呪いに触れた存在を石に変える。ゴルゴンの真実を守る呪いが隠されていたのです」
「あぁだね。何処かで聞いたと思ったね。ゴルゴ―ンの加護の話だね!」
「し、知っているのかっ!ですか・・・」
運の神フォルティーナ様は、ドヤ顔を皆の前に披露した。
「全てを退く全能の力だったかなだね」
「そ、それはどうすれば手に入るのか御存じでしょうか?」
「あれは・・・遊の魔人種の翁。知ってどうするね」
「・・・好奇心でございます」
「好奇心かね。まるで神の様な貪欲さだね。気に入ったね」
「あ、ありがとうございます・・・」
運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤと厭らしく笑った。
「あたしは空腹なんだね。知ってるかね」
「あぁ・・・いえ、お聞きしておりませんでしたもので・・・」
「そうかね。あたしは空腹だね。人に何かを問う時は、何も言わずにカツ丼を提供する決まりがあるね」
「そ、そうでした・・・ただいまお持ちします」
そんな決まりが神界や神域にはあるのか?
『そんなルール聞いた事がありません』
『今作ったね』
・・・この人はブレないなぁ~
『キューンキューンだな』
カツ丼って、森豚の肉をサクサクの衣で包んだ物を、まさかの汁で煮て鳥の卵でとじ、米の上に乗せるあれですよね?
『あれは、なかなか美味いね。出汁と言ってたね。それが味の決め手になるそうだね。アランギーの話では極めるとだね。サクサクジューシーフワフワトロトロアツアツホフホフの世界が丼と呼ばれる小宇宙に生れるそうだね』
スケールの大きな料理だったんですね。
『全ての食は小宇宙だね。アランギーが言ってたね』
なるほど・・・料理の神様だからこその深い言葉なんですね・・・なるほど・・・
『神秘の世界それが料理だね』
それで、何で俺達ヒソヒソコソコソ話してるんですか?
『ロイク。君が始めたね』
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・
・
「話は戻しますが、ゴルゴ―ンという呪いの1つに死の呪いが存在して、その呪には呪いに触れた者。この場合は解呪しようとした者の事なんでしょうが、そういった人達を石化させる力が存在していて、でもその力は、全てを退く全能の力を守る為に存在しているって事なんでよね?」
「そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないここの地下13階に思い出を作りに行くと大志を語り祈願を遂げ地下13階に辿り着き見事思い出を刻み続けゴルゴ―ンの呪いを機にゴルゴンの真実を解き明かしつつある青年よ」
「俺の事ですよね?」
「青年はなかなか見所があるな。流石は大恩人運の神の眷属だ」
子猫サイズの毛の色がやや濃い狐色の悪狐神は、漆黒色の毛に変化した。サイズの割には威圧感と存在感が大きい。だが、腕を組み上から口調の偉そうな姿が妙に可愛いままだった。
「あ、ありがとうございます」
「褒めちぎるだけならタダだからなキューンキューン」
「その通りだねハッハッハッハ」
「話は戻しますが、それでその呪いなんですが、大地石の民の祠の守り人に残された継承の呪いと似てると思うんですが、同じ物って事はありませんか?」
「おぉ~!そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないここの地下13階に思い出を作りに行くと大志を語り祈願を遂げ地下13階に辿り着き見事思い出を刻み続けゴルゴ―ンの呪いの1つ石化にまつわる真実を解き明かすべく果敢にもその身を犠牲にし挑み続ける青年よ。良く気付いたな」
「・・・同じ物って事ですね」
「ゴルゴ―ンの呪いはだね。創造神が創造した創神具の1つゴルゴ―ンの真実の全てを退く全能の力が強過ぎる事が問題になってだね。創造神が自ら5つの呪いに分解して捨てたね」
「何処かで聞いた様な話ですね。それに呪いにして捨てたってまた迷惑な」
「創造神の行動には全て理由があるね」
「強過ぎる力を持ったゴルゴ―ンの真実が問題なら再創造して消滅させた方が早かったと思いますが」
「全てを退くね」
「えっ?でも、5つの呪いに分解できたんですよね?」
「そうだね」
「・・・創造神様のやる事には意味があるんですよね・・・」
「そうだね」
詮索するのは控えよう。相手は創造神様だしな・・・
「5つに分解されて捨てられたゴルゴンの真実って、どんな形をしてるんですか?」
「どんなだったかね・・・う~んだね・・・カツ丼を食べると思い出すかもしれないね。今はカツ丼をまつばかりだね」
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・
・
――― その頃 厨房と化した給湯室では。
「何なんだあの女は!悪鬼神である私を奴隷の如く扱き使いやがって!それに、人間の女が・・・どうしてゴルゴ―ンの真実を知ってるんだ!」
「悪鬼神様。カツが揚がりました」
「そうか。色は!?」
「コンガリきつね色です」
「良いかぁ!人様にお出しす物だ。手を抜くんじゃねぇ~ぞ」
「畏まりました」
「米は炊けたか?」
「まだです。赤子が泣き出したところです」
「チッ!耳障りな・・・だが、決して甘やかすな。堕落して良いのは神かそれに連なる存在のみ。分かったかぁっ!」
「はい」
≪ズズズッ
悪鬼神は、わりしたを味見した。
「このカツオの風味良い感じだぁ~・・・我ながら素晴らしい」
「流石は、智恵の巨匠呪いの匠悪鬼神様」
「おう任せとけぃ。智恵の追求、聞き出す為には、妥協は許されねぇ~ってなぁっ!」
「はい」
――― その頃 4人は。
「継承の呪いに悪鬼神が関わってる可能性はありますか?」
「カツ丼を食べないと分からないね」
こいつは・・・
「悪狐神様はどう思いますか?」
「キューンキューンだな」
「どういう意味でしょうか」
「面白い。実に面白い。私は悪戯と油揚げ洞察する事が6度の飯より好きでね」
子猫サイズの愛くるしい姿が脚を組み替えた。
「あぁ~・・・油揚げって良いですよね・・・」
神様って奴はぁ~・・・
「私の親は九尾狐狸神と言ってね神獣種の神狐の長なんだが」
「狐狸・・・狐と狸の神様なんですか?」
「狐種のみの神なのだが、淫乱淫靡を善とし、若さと美を意識した食生活を私達子供にまで強いた訳だ。その反動で私はベタベタに甘い油揚げが大好きでねぇ~キューンキューン」
何の話だ?・・・神様特有の病気みたいな物なのかもしれないな。
「キューンキューンだよ。そこに居る神鳥に頼めば一瞬で得られるであろう若さと美を、あの自尊心の高い母は頼む事も問う事も出来ず時間ばかり浪費し、瑞神獣と凶神獣を繰り返した。キューンキューンだよまったく」
「それで、継承の呪いについてはどう思いますか?」
「私の兄は白狐神なんだが、これがまた同じ白虎神で虎が存在するものだから良く間違えられてねぇ~キューンキューンだよまったく」
「・・・そ、そうなんですね」
「ロイク。神獣の中でも白い存在は徳の高い存在だね。一家に1枚は欲しいコートだね」
「そ、そうなんですね・・・」
「ロイク様。幸い私は真っ白です」
「そ、そうですね」
ダメだ、本当に話が進まない・・・
・
・
・
――― 40分後
「カツ丼をお持ちしました」
「うんうんだね。それでは実食!」
「それで、ゴルゴ―ンの話をお聞かせ願えませんか?」
「まぁ~待つね。あたしは、食事は落ち着いて優雅に良く噛んで掻っ込む性分なんだね」
また、適当な事を・・・
「それは失礼致しました・・・」
・
・
・
――― 僅か3分後
≪シィーシィーシィー
運の神フォルティーナ様は、爪楊枝で歯間の手入れを始めた。
「フォルティーナ。人前で下品ですよ」
「何を言ってるね。口内衛生は健康な身体の基礎になるね。習わなかったかね?」
・・・食ったら元気になったか!
「それにだね。あたしはもう頑張らなく良い女になったね」
「はぁ?」
「日々努力していた、見てくれだけの時代は終わったね。高収入、高学歴、高身分、そんな物は真実の愛では無いね」
・・・
「良いかね。ロイク。アルの言う愛だけが、愛の形では無いね。愛も神も形にする事が難しい物だがね。存在の有無を悩む必要は無いね。声に形は無いが多くの声には個々の存在の思いが込められているね」
「・・・はぁ~」
「つまり、形が無いね」
「爪楊枝で歯の間をホジホジする事と何か関係が?」
「ある訳無いね」
「下品な行為を正当化出来るとでも?」
「あたしは小さな事は気にしない性分だね」
「そ、それで・・・ゴルゴ―ンのお話を・・・」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、かなり苛立ってる様子だ。
「そうだったね。何が聞きたいね」
「・・・で、ですから、ゴルゴ―ンの加護。真実を手に入れる為にはどうしたら良いのでしょうか?」
「あぁ~そんな事からね。簡単だね。5つ集めると良いね」
「5つですか?」
「当然だね。1つ集めただけで良いならだね。ゴルゴ―ンの真実は1つでは無く5つになってしまうね。世の中真実が4つも5つもあっては疲れるね。1つで十分だね」
・・・また脱線しそうだな。
「5つ集めるとゴルゴ―ンの真実を手に入れられるとして、何処にあるか御存じでしょうか?」
「1つは知ってるね」
「何処でしょうか?」
「石になって、祠にあったね」
「何処の祠でしょうか?」
「今だと、調度この王国だね」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さん。遊なのに気が長いなぁ~良くこの会話に・・・
「この王国の何処の祠でしょうか?」
「ここから近いね」
「近い?」
「そうだね。寝ている時だね。足の方からビンビン感じたね」
「足の方からですか・・・それはどちらの方でしょうか?」
「正確な方位は分からないね」
「この辺りですと、大地石の民の集落跡地に祠が1つありますが・・・」
「そこだね」
「・・・まさか・・・石になって・・・石だと!何て事だ。150年間も近くに居ながら気付けなかったとは、あの石がゴルゴ―ンの真実の1部。呪いその物だったのかぁっ!」
「フォルティーナ。もしかして、大地石の民の集落の祠にあった大地石水晶石がゴルゴ―ンの真実の1つなんですか?」
「石の姿にしたのは創造神だね。地属性の流れをおかしくしたのは人間による封印のせいだね。自然魔素の流れを破壊され精域を保つ事が出来なくなっているようだったね。石化の呪いを得意とする1つの存在を石の姿で封印するとは、創造神もお茶目だね。いやいや滑稽だね。ハッハッハッハ」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、大きな声で独り言を言い始めた。
「あの時かぁ~・・・地属性の精石のくせに大地石水晶石がマジックスポットから溢れ出る心地の良い邪属性に反応して活性化していた。所詮人間種のやる事だと高を括っていたのが失敗だったか。私を祈らず石ころを祈る姿に嫌気が刺し子々孫々に続く死の嫌がらせの呪いを呪詛したが、あの時殺しておくべきだった。あぁ~何て事だ目の前に存在していたゴルゴ―ンの真実の1部を見す見す封印されてしまっていたとは。この悪鬼神一生の不覚」
悪鬼神?
「あのぉ~・・・お爺さんは悪鬼神様なんですか?」
俺と悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、短い時間だったが確かに見つめ合った。
「・・・チィッ。バレち待ったか。不覚を取ったぜ」
不覚取り過ぎだろう。学習した方が・・・
「口は災いの元だね」
あなたが言いますか!それ・・・
「あれ?変装ごっこはもう終わったの?キューンキューンだね。次は誰が鬼?」
「ハッハッハッハだね。悪狐神。冗談が上手い笑えるね。悪鬼神に次は誰が鬼かだってね。ハッハッハッハだね」
「今の何が冗談に聞こえたんですか?」
「鬼に鬼だなんてだね。人間にお前は人間かって質問する位面白いね。ハッハッハッハだね」
この人のツボって何処にあるんだ?
「あたしは神だね」
「神だと?き、貴様も神なのか!?」
気付いて無かったんだ・・・あの会話の流れってどう考えても普通じゃ無いし、気付けるよね・・・・・・あっ!俺もお爺さんが悪鬼神だって気付いて無かったし御相子か・・・
「名を名を名乗れ。露出の激しい如何わしい女!」
「如何わしい女と呼ぶのは構わないね。だがだね。名を名乗れと命令されるのは気に入らないね」
そっちで怒るんですね・・・
「私は運を司る遊びの女神フォルティーナだね。どうだまいったかぁ~だね」
名乗るのか・・・それにここでニヤニヤするって絶対おかしいですよ・・・
「な、何だと、・・・フォルティーナ?誰だお前は!」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、激高している。
あぁ~本当の名前ってフォルトゥーナだったっけ・・・何か凄い怒ってるし、神様同士のいざこざに巻き込まれたく無いし、静かにしてよっと。
「さぁ~ロイク。今でしょう。さぁ~おやりなさい」
運の神フォルティーナ様は、ドヤ顔で俺に言った。
「な、何で俺に振るんですか?神様同士仲良く決着を付けてくださいよ。俺人間の方で忙しいんで」
「もはや神だけの問題では無いね。人間の未来がロイク、君の双肩に委ねられたね」
「勝手に俺の肩に乗せないでください!」
「水臭いね。遠慮する事は無いね」
「な、何がですか?」
「夫婦はいつも一緒だね。協調性と歩み寄りと連帯感が必要だね」
・・・こいつはぁっ!
「ふざけた漫才は終わったのかな!」
「ちょっと待つね」
「そ、そうか・・・」
待つんだぁ~・・・
「良いかね。ロイク。アルも聞くね」
何かまた始まったよぉ~
「は、はい。フォルティーナ様」
「神と言う字はだね。神に捧げる祭壇、台を形で示し、神に申す事を言うね。神は神だったね」
「それで、俺がどうして、悪鬼神様とやり合わないといけないんですか?」
「ある神が言ってたね。神は絶対だとね」
こいつは・・・
「1つ良いですか」
「なんだね」
「俺にとっては、悪鬼神様も神様何ですけど、この場合、どの神様を優先したら良いと思いますか?率直な意見をお願いします」
「う~んだね。人生史上稀に見る難解な質問だね・・・悪鬼神。悪狐神。アル。一緒に考えるね」
「は、はい」
「キューンキューン任せろだ」
「お、おう・・・」
・
・
・
「見解が一致したね」
4柱が俺の正面に並び立つ。
「良く聞くね」
「あ・・・はい」
張り詰め凛とした空気と、正面から放たれる神気の濃さに、俺は姿勢を正した。
「邪神竜に命じたのは邪の神だね。邪の神は創造神が創造した神だね。あたしは創造神から生まれた神だね。悪狐神やアルは神獣だね。悪鬼神は神以外の存在によって生み出された神だね。皆神だね」
「・・・つまり?」
「悪鬼神を捕まえてから、改めて議論する事で見解が一致したね」
はぁ~?
「悪鬼神様はそれで納得したんですか?」
「まぁ~なぁっ!脱獄する前に看守と良く話たもんだぜ。神は皆兄弟姉妹だってな」
「人類皆兄弟みたいな感じですか?」
「近いな」
「それで」
「んな訳あるかぁ~ってなぁっ!ったりめぇーだろぉっ!皆兄弟姉妹だったら子供どぉーすんだよ。考えりゃ~分かる事を、それで脱獄した訳よ!私の追求したい知識智恵哲学はこれだ!神界の牢獄に入る時よりもとても良い気分だった事を昨日の様に覚えているよ」
「そ、そうでしょうね・・・牢屋から勝手にですけど出られた訳ですから・・・」
「だがその追求も終わりの様だ」
「掴まってくれるんですか?」
「いや」
「あー違うんですね」
「捕まる気は無いが、あえてここは逃げない事にしよう」
「つまり?」
「私の追求も終わりの様だ」
・・・あぁ~この神様も一律同じタイプなのか!寧ろフォルティーナや親父に近いダメな方だ・・・
「あ、ありがとうございます」
「良いんだ。気にするな。お前は何も悪くない」
「え?」
どういう事だ?実際何も悪く無いし。何、この流れ・・・
「神を捕まえる事に罪悪感を覚える必要は無い。私は理不尽にも理に背いたという些細な見解の相違によって捕らわれの身になっていただけの存在」
ルールを破ったから捕まったって事ですよね?・・・
「だが、受け入れよう。理不尽もまた理の1つ。追求しようじゃないか」
「何をですか?」
「何をやっても許される世界。何をしても許される世界。何もしなくても許される世界。何もやらなくて良い世界」
・・・ちゃんと話し合う事が出来ていたら、きっとこの神様はフォルティーナと意気投合してたんだろうな・・・話し合いが成立しない同士で本当に良かった。
「・・・そ、壮大なテーマを追求する為に、逃げるのを止めたんですね」
「その通り。私はもう逃げたりはしない。立ち向かう勇気をくれたのは君達だ。ありがとう。そこの人間よありがとう。御礼に冥加を与えよう」
「いえ、結構です」
・
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・
俺の左隣にフォルティーナ様。俺の右隣にはアルさん。俺の正面に悪狐神様。悪狐様の左隣に悪鬼神様。悪狐神様の右隣には悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんが座りテーブルを囲んでいた。
邪神竜様に悪鬼神様の身柄を引き渡す前に、追求に立ち向かう条件として、ゴルゴ―ンの真実の追求に協力する事になったからだ。真実を追求する代わりロイで何をやっていたのか、この世界で何をやっていたのか、冥加を与えた者の情報を交換条件に出した。その代わり、遊の樹人族を解放しろと要求されたが、俺はフォルティーナの意見を尊重し拒否した。
交換条件の交換条件を決め。その交換条件の交換条件を決め。1つの交換条件が成立した。
――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 屋上
――― 6月12日 27:40
「邪神竜様を召喚します」
「人間」
「どうしましたか?悪鬼神様」
「神界の牢獄で、ゴルゴ―ンの真実が完成するのを待ってるからな。絶対、見せに来るんだぞ。分かったな」
「は、はい・・・」
来たる悪に備え忙しい時に、運の女フォルティーナは勝手に約束した。完成したら見せてやるね。その代わりあたしの条件を全て飲むね従うねそれが条件だね。