1-64 神獣の喜びと、悪鬼神と悪狐神。
宜しくお願いします。
俺の人生史上最も長い1秒だった。他者に貶められ自由を奪われ最も快適な時間だった。俺と、アルさんと、フォルティーナ様は、49日間にも及ぶ罠の中での快適生活を送り、堕落怠惰を貪りそしてそれに打ち勝ち協調と結束の大切さを学んだ。
神様の言葉はとても深い。
・
・
・
「何も見えないですね。アルさんもフォルティーナも大丈夫ですか?」
「はい」
「闇の砂漠の次は闇その物かね。なかなか手が込んでるね」
「これ闇の中って事ですか?」
「さっきの魔法陣もそうだったがだね。この闇もまたそうだね」
「さっきの魔法陣?」
「少し前に古代語の魔法陣を見たね」
「あれですか・・・」
少し前って・・・
≪パチン
・
・
・
≪パチン
・
・
・
≪パチン
「フォルティーナ。さっきから何やってるんですか?」
運の神フォルティーナ様が鳴らす指の音が、何も見えない闇の中に響く。
≪パチン
「闇属性の精霊魔法の干渉を受けこの空間は闇に支配されているね。光属性の精霊魔法で打消しをと思ったのだがね。自然魔素の光属性がここには無いね」
「神気を核にしても帯びる属性が無いってやつですね」
「そうだね」
「神気を光属性とかに変換出来ないんですか?」
「ロイク様。属性を持たない神気に属性を持たせる事は」
「あぁ~不可能でしたね・・・」
「自然魔素が存在してないんじゃ、俺も集積出来ないから発動させるのは無理だし・・・」
「ロイク。君はvariableの短剣を装備していない時でも、【MP】が300万を越えているね。アル。君の【MP】は神気が2から4に増えた事で、84000あるね」
「それがどうしたんですか?」
「【MP】を消費して光属性を発動させるね」
「魔術を発動しろって事ですか!」
「そうだね」
「フォルティーナ様。私は神獣ですので、魔術や魔法は扱えません」
「知ってるね」
「そ、そうですか・・・」
「さぁ~ロイク。おやりなさい」
「やれって言われても、俺魔術使った事ないんで無理だと思います」
「大丈夫だね」
「大丈夫って言われても・・・」
「自分を信じるね。人生、適当に生きていても何とかなるね」
「また、適当な・・・」
「さぁ~やるね」
「う~ん・・・光属性魔術【ルークス】☆1☆1 ≫ ・・・なんの手応えも無いです」
「もう一度だね。さぁ~やるね。さぁ~だね」
「分かりました。やります。・・・光属性魔術【ルークス】☆1☆1 ≫」
「ロイク様。暗いので【MP】の流れが何となく分かるだけなのですが、補助スキルが常に発動しているみたいなので、一度補助スキルを停止させ【MP】の出力を高めてみてはどうでしょうか?」
「そうだね。それが良いね。流石アルだね。よっ神鳥だね!よっだね」
「それで、この補助スキルってどうやって解除するんですか?」
「簡単だね。神気を上手に統制出来る様になる頃には勝手に解除されるね」
「・・・それって、いつ頃を見越してます?」
「・・・あぁ~・・・だね。ロイク。1つ良いかね」
「はぁ~何でしょう」
「あの49日間何してたね・・・」
「何って・・・・・・皆で楽し・・・・・・聞かないでください」
「確かにだね1秒以下という短い時間だったね。だがだね時間は無限ではないね。もっとこうなんていうかだね。楽しまないと損だね!」
「そ、そうですね」
「49日分を今取り戻すね」
「無理言わないでくださいよ」
「う~んだね・・・仕方が無いね。アル!やっておしまい」
「ですから、私も無理です」
「地下7階まで来たというのにだね・・・ここまで来てお手上げとは悲しいね」
「地下6階をクリアしただけですよね?」
「そうだね。ここは冷静に考えてみるね」
人の話を聞かないって言うか。本当に前向き過ぎるだろう・・・
「まずは、ロイクだね。スキルを確認するね」
「お好きな様にどうぞ」
「なるほどだね。アル、君もだね」
「あ、はい」
・
・
・
「何か分ったんですか?」
「凄い事に気付いてね。闇の砂漠をクリアする方法だね」
「えっ!」
闇の砂漠って聞こえたけど・・・闇の中の間違いじゃないよな・・・
「ちゃんと聞くね。闇の砂漠のクリア方法だね」
あぁ~・・・
「今更ですが、これ聞かないと次に進んでくれないですよね?」
「フォルティーナ様。どんな方法ですか?」
「アル。君の神鳥スキル【異空間転位】だね」
「えぇ?転位は無理だって話でしたよね?実際俺の神授スキル【フリーパス】や強化された【極】でもダメだったじゃないですか」
「盲点だったね・・・まさか聖邪獣や神獣達のスキルに抜け道があったとわだね」
「あのぉ~俺の話は無視ですか?」
「なるほどだね・・・コルト下界のここからは目的の座標まで転位出来なくてもだね・・・ここから異空に一度移動し異空からコルト下界の目的の座標に移動するなら転位による干渉をした事にならないね。しかしだね・・・どうやってあたしの転位を妨害してるのかが問題だね。アル!」
「は、はい」
「ダラダラと考えていても仕方が無いね。適当な異空間にあたし達を移動させるね」
「適当と言われましても・・・」
「あのぉ~フォルティーナ。もう地下6階はクリアした訳で、この場をどうするか考えませんか?」
「当然だね。さぁロイク頑張るね」
・・・この人はぁ~
「ロイク様は自然魔素の清澄魔法が得意ですよね?」
「どうなんでしょう。発動すると清澄魔法なんで・・・」
「ロイク。清澄に拘るのは止めるね」
「いや別に清澄に執着してるつもりは無いです」
「それならだね。運用魔法を発動してだね。あたしを地下8階に連れっててだね」
「運用魔法ってどっかで聞いた覚えが・・・」
「精霊魔法の発動方法だったと思いますが」
「あれか!マルアスピーが『運用魔法は、自然界の流れから集積した自然魔素を、発動させたい属性に変換してから利用する自然魔素の運用効率が悪い方法なのよ。それでもメリットは大きいわ。水の自然魔素が存在しない火の中に居る時でも火の自然魔素を水の自然魔素に変換して利用する事が出来るのよ。優劣位属性同士の変換は発動する前に半分以上を失ってしまうのだけれど、失ってしまう分を念頭に集積して発動に気を付けると良いのよ。発動までに余裕が必要なのだけれど、デメリットはこの余裕の有無だけなの・・・』って教えてくれたような気がします」
「なるほどだね。闇の自然魔素を光の自然魔素に変換してだね。この空間を闇の支配から解放するのですだね」
「簡単に言わないでください。少し前までの発動方法に戻した上で、更に発動方法を変えるんです」
「そんなに難しいかね?」
「やってみないと分かりません。試してみます。光属性下級魔法【ルークス】自然魔素・闇属性運用光属性レベル5・発動≫」
右手の人差し指が闇属性を吸収する。だが、吸収した闇属性が光属性に変換される感じはしなかった。
「集積は出来るんですが、属性変換がダメみたいです」
「自然魔素統制が苦手なロイクには、変換はまだ難しいって事だね。気にする事は無いね。変換出来なくても、あたしもアルもロイクを嫌いになったりはしないね。安心するね」
「・・・それは、特に気にしてないんで良いんですけど、手詰まりですよ、どうします?」
「仕方ないね。ロイク」
「はい・・・?」
「マテリアル・クリエイトで光を創造するね」
「あぁ~~~!って、気付いてたなら先に言うべきですよね!」
「何を言うね。自分のスキル位自分で把握するね。人に頼ってはいけないね」
我慢我慢。冷静になれ俺・・・
「・・・【マテリアル・クリエイト】光・創造:場所・俺達が居る空間全体 発動 ≫」
闇の支配は一瞬で終わった。
「それで・・・次の予定は?」
「無いね」
――― ブオミル侯爵領
ロイ 侯爵邸 地下7階
――― 6月12日 24:40
光が支配する空間に俺は、アルさんと、フォルティーナ様と居る。闇が支配する空間と変わった事と言えば、明るくなった事と、互いの姿を確認出来る様になった事と、この空間には何も無いという事が分かった事だ。
「ロイク様。会いたかったです」
アルさんは、俺の目前まで駆け寄ると、手を取り眩しい笑顔で頬んだ。
「アル。あたしには会いたくなかったかね?」
「そういう意味では・・・」
「冗談だね」
≪ガゴン ガゴン ガゴン ガゴン
「何の音だと思います?」
「分からないです」
「音から想像するとだね・・・・・・・・・・・・・・・分からないね」
「今の間は何です?」
「ちょっと前に同じ様な音を聞いた覚えがあってだね」
「それは結局何の音だったんですか?」
「それがだね。なかなか笑える話でだね。危なく消化されてしまう所だったね」
「・・・笑える話なんですよね?」
「フォルティーナ様・・・」
「あの時は、笑ったねぇ~だね。ハッハッハッハッハ」
「この状況と、その消化されてたら食べられちゃってた状況で良く笑っていられますね」
「何を言ってるね。食べられてしまったから消化されそうになったんだね。順番が逆だね」
「そ、そうですね・・・」
「それで、フォルティーナ様。何に食べられ消化されそうに?」
「それがだね」
≪ガゴン ガゴン ガゴン ガゴン キューン キューン
「そうそうこんな感じだったね」
≪キューン キューン キューン
「フォ・フォ・フォルティーナ。それ、でかい狐ですよね・・・」
俺は、運の神フォルティーナ様の頭上を指差した。
「どれだね」
運の神フォルティーナ様は上を見た。
「フォルティーナ様。悪狐神です!」
「その様だね」
「何、呑気な事を」
「大丈夫だね。一度食べられたからね。同じ手には騙されないね」
「この狐に食べられたんですか・・・」
「ロイク様。ただの狐ではありません。悪狐神。邪の神様に連なる神獣種です」
「ただの狐だとは思いませんでした。森狐より10倍以上大きいし・・・」
森狐の大きさは、約70cm~80cmだ。
「フォルティーナ様が食べられてしまったくらいです。ロイク様、気を付けてください」
「そうですね。アルさんもです」
「はい」
アルさんと俺は、後方20mへ移動し身構えた。
「何やってるんですか、フォルティーナもそこから・・・あぁ~~~」
「フォルティーナ様ぁ~!」
悪狐神は、運の神フォルティーナ様に、鋭く尖った牙を剥け飛び掛かった。
≪パチン
と、同時に時空牢獄に拘束された。
「あれ・・・随分あっさりですね」
「はい・・・フォルティーナ様?」
「前はだね。意気投合してだね4~5年飲み続けて酔い潰れた所を食べられたね」
「それはまたぁ~気の長い話で・・・」
「見てください。小さく成っていきます」
拘束された悪狐神は、ドンドン小さくなり、子猫位の大きさまで小さくなった。
「正体を現したかね」
「正体?それじゃ本当の姿はこれなんですか?」
「前に消化されそうになった時の話をしたね?」
「前って言うか、今さっき聞いた話ですけど」
「目が覚めたらだね。消化されそうになっていた訳なんだがね。そのまま消化される訳にもいかない訳だね。さてどうしたものかと考えたあたしは腹を破り無事脱出事なきを得た訳だね。その時にだね。前の悪狐神から今の悪狐神になったね」
「つまり、殺しちゃったって事ですよね?」
「何を神聞きの悪い事を言うね。神は死なないね。死なない存在を殺す事は全くもって不可能だね」
「それで、次の悪狐神様に狙われている理由は何ですか?何をやったんですか?」
「・・・前提としてあたしが何かやった事になってないかね?」
「フォルティーナ様・・・」
「アル。お前もか・・・だね」
「そこに居る遊びの神は、私の腹を破った挙句に毛皮を剥ぎ取り、その毛皮をコートにした。私は腹を破られ毛皮を剥ぎ取られ失意の中で次になった」
悪狐神が勝手に語り出した。
「フォルティーナ。余り人の趣味にとやかく言う気はありませんが、鬼ですね!」
「前にも言ったね。私は神だね」
「ロイク様。でも、剥製にされるよりは良かったと思いますよ」
「毛皮を剥がされるのも剥製にされるのも嫌なんですけど・・・」
「次になった時に、前の姿が残っていたら気持ち悪いです」
「基準が分かりませんが、そういう事にしておきます。それで、毛皮のコートはどうしたんですか?」
「あのコートはだね・・・確か邪の神の孫娘の誕生日に呼ばれ酔い潰れて手に入れたコートだったね」
また、脱線しかけてる・・・
「・・・それで、そのコートはどうしたんですか?」
「邪の神の孫娘が欲しいと煩く付き纏うからだね」
「まさか、邪の神様の関係者の毛皮で作ったコートを邪の神の孫娘に?」
「誕生日の祝は4~5年位経って終わっていたからね。準備していた下界の生プリンはプレゼント出来る状態じゃ無かったね」
「えっとぉ~・・・生プリンの話は今度聞きます。それでコートは何処に?」
「邪の神から神気で邪属性を扱う方法を教わってね」
「それで、コートは何処に?」
「御礼にあげたね。あたしは運や遊びが専門でお返しに教えられる属性が無くてだね」
「あぁ~・・・邪の神様に連なる神獣様の毛皮をプレゼントしたんですか?」
「喜んでいたね」
「・・・喜んでたんですか・・・」
神様・・・きついなぁ~・・・
「そうでも無いね。7mかね8m位はあった毛皮で作ったからね余裕があったね」
「あ、いや・・・そういう意味じゃ・・・」
「私の毛皮だったのかあれはっ!」
あぁ~羽織ってるところ見たんだぁ~
「あれ?アルさん泣いてるんですか?」
「いえ、余りにも」
「酷い話ですよね」
「羨ましい話で、感動しています」
「そうですよね・・・今何と?」
「フォルティーナ様。私、フォルティーナ様の事を見直しました」
「あぁ~見直される必要があったのかね???」
「はい」
「そうかね・・・」
「運の神。私はお前を勘違いしていたようだ。良い奴だったんだな」
前の神獣様の時のあれは?
「気にする事はないね」
「自らの神に己の身体の一部を身に付けていただいていたとは・・・運の神。私は貴殿に何か出来る事はないだろうか?」
「そうだねだね・・・地下8階か地下13階に行くところなんだがね。案内して欲しいね」
「そんな誰にでも出来る様な事では恩は返し切れない」
恩って・・・腹を破られて、毛皮を剥がされて、コートにされて、神様に献上されたんですよね?
「ロイク様。私の羽で作った毛皮のコート」
「羽だし毛皮のコートはちょっと無理ですね」
「羽毛布団を作ったら一緒に寝てくれますか?」
「羽毛布団って、あの羽根布団よりも数段寝心地の良いというあれですか?」
「はい。私こう見えて水鳥なので、ダウンには自信があります」
「人に見えますけどね」
「神鳥の羽毛は永久器官です。幾らでも御用意致します」
「あぁ~1枚あれば良いんでお願いします・・・ありがとうございます」
アルさんは、俺の手を確りと握り締め、とても真面目な表情で力強く頷いていた。
「何をやってるね。地下13階に行くね」
「信用して大丈夫何ですか?」
「そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもない青年。私は誇り高き狐種の神獣。悪狐神。姑息な事はしない」
酒で潰して喰ったのこの神様だったよね?
「闇の砂漠や闇の中を仕掛けたのはだね。この悪狐神だったそうだね。いやーやられたね。ハッハッハッハ」
そこ笑う所じゃ無いですよね!
「まさか、あんなに綺麗に嵌るとは思わなかった。見ていてスカッとしたよ」
「ハッハッハッハだね。あたしもあんなに綺麗に罠に嵌るとは気持ちの良い嵌りプリだったかね!」
「あぁ~」
「そうかだね。ハッハッハッハッハ。さて、笑ったらお腹が空いたね。地下13階は今度にして、食事にでもするかね?」
「はぁ?何言ってるんですか、食事は全部終わってからで良いじゃないですか?さっさとこっちを終わらせたいんですけど」
「せっかちだね。早いのは嫌われるね」
「そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもない青年」
「はい?」
「私は悪狐神」
「先程から何度も聞いたので流石に覚えました。それで何でしょうか?」
「そんなに地下13階に行きたいのか?」
「どちらかと言うと行きたく無いんですけど、依頼されてるので、仕事として割り切って行くしかないかなって」
「そうか。そこまで地下13階に思入れがあるのか。そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもない青年よ地下13階との思い出を聞かせてくれないか?」
「今日、始めて立ち入る予定なので、思い出を作るとしたらこれからかと・・・」
「過去に執着しない潔さ。流石恩人運の神の眷属だ」
「うんうんだね」
どういう事?
『ロイク様。神がこの手のモードになっている時は、適当に合わせて機嫌を取って有耶無耶の内に終わらせるのが一番何です』
それって、アルさんにもですか?
『私は、・・・』
「ロイク。アル。ヒソヒソ話は良くないね。小さくまとまってはいけないね」
「そうだそうだ。良くない。そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないここの地下13階に思い出を作り行くと大志を語った青年よ」
「・・・気を付けます・・・」
可能な限り無我無心、無心無我、無想・・・
「悪狐神様。地下13階まで、そこの運の神フォルティーナ様とアルさんと俺を、今から導いていただけませんでしょうか?」
「うん、良いよ!」
「ロイク。急いては事を仕損じる。あたしはお腹が空いて役に立つ自信が無いね。もしもの時は任せたるね」
「・・・分かりました」
アルさんと俺で何とかした方が確実そうだし・・・
「それじゃぁ~行くよ」
≪キューン キューン
あぁ~キューンって鳴き声だったんだ・・・
・
・
・
「そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないここの地下13階に思い出を作り行くと大志を語った青年。祈願の地、地下13階に着いた。確りと思い出を刻むと良い」
「あえ?もう地下13階に?」
――― ブオミル侯爵領
ロイ 侯爵邸 地下13階
――― 6月12日 25:30
俺は、悪鬼神を探し求め、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の地下13階に、アルさん、フォルティーナ様、悪狐神と居る。
「お客さんとは珍しいですねぇ~。お茶にしますか?紅茶にしますか?珈琲にしますか?」
「私は砂糖水で良い。遊の魔人種の翁よ」
「畏まりました。そちら御三方は何になさいますか?」
「あたしは、アイスティーだね」
「私はお気持ちだけで・・・」
「俺もお気持ちだけで・・・」
「畏まりました」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、飲み物を容易する為部屋を後にした。
「フォルティーナ。ここって地下13階なんですよね?」
「そうみたいだね」
「悪鬼神様は?」
「悪鬼神を探してたのか?」
「邪神竜様からの依頼でして」
「残念。ここに居たのは半年前」
「何処に行ったか分かりませんか?」
「私は会ってはいない流石に分からない」
「神授スキルで検索した時、ここに悪鬼神の存在を確認したんですが・・・」
「おかしな事もあるものだな!なぁ~大恩人の運の神よ」
「世の中まだまだ捨てた物じゃないなだね」
「そうだな キューン キューン」
「ハッハッハッハだね」
「ロイク様合わせて ホラ」
「そうですねハハハ」
・
・
・
――― その頃 給湯室 では。
「何だと、悪狐神が、馬鹿っぽいゴージャスな女と、純真無垢清楚可憐な乙女と、頭の弱そうな男を連れて来ただと・・・」
「はい。適当に話をして帰って貰いましょうか?」
「いや、その必要は無い。悪狐神・・・私よりも数倍は強いあいつがここに来たという事は、黒が動き出したという事か・・・部下からの連絡が立て続けに途絶えたのも気になる・・・その3人の顔だけでも見ておくか。翁」
「はい」
「私が飲み物を持って行く。顔を貸せ」
「はい」
――― その頃 4人は。
「神獣様達は、仕える主に自分の身体の一部を身に付けて貰う事が光栄で、それだけで力も強くなるんですか?」
「何だ、そこの人間にしては大きな神気を持つ神に愛されし24歳位に見えなくもないここの地下13階に思い出を作りに行くと大志を語り祈願を遂げ地下13階に辿り着き見事思い出を刻み続ける青年よ。知らなかったのキューンキューンだ。傍に神鳥の長を侍らせていながら知らないとはなかなか面白いキューンキューンだ」
「全くだね」
≪カチャ カチャ
「お、お前・・・お、お待たせしました。悪狐神様。御三方」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは、アイスティーを悪狐神様に、砂糖水を俺の前に置いた。
「おい」
「は、はい・・・悪狐神様・・・」
「砂糖水は私だぞ」
「これはうっかり。歳は取りたく無いものです・・・」
「あれ?遊って年齢が無くなるんじゃ?」
「無くなった時の状態で無くなるので、私は年寄のままで・・・」
「あぁ~なるほど」
「おいだね」
「あぁ~はい・・・あたしはアイスティーを頼んだね」
「あぁ~はい、こちらです。どうぞ」
「違うね」
「違うと言いますと」
「アイスティーと言ったらだね。ミルクにしますか?レモンにしますか?それともあ・た・し?っとだね。質問し返答された物を気合いを入れ準備するね」
「そ、そうでしたね」
え?
「ミルクにしますか?レモンにしますか?それともあ・た・し?」
悪狐神に遊の魔人種の翁と呼ばれたお爺さんは俺の目の前で炸裂した。
「ガムシロップでだね」
運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤと厭らしい表情を浮かべていた。
「ガムシロップですね。取って参りますのでお待ちください」
「分かったね」
――― 給湯室 では。
「何なんだあの女は!悪鬼神である私で遊びやがって!それに、あの男は・・・間違い無いあの時の精霊魔法の男だ!・・・あの茶番劇程度で躍起になって私を追ってここまで来たのか?・・・まさかな。同じ建物に潜んでいるとは、私であっても思いも寄らないな。ハァーハッハッハッハ!」
「悪鬼神様。ガムシロップでございます」
「なんだ、こんな物を飲むのか?人間は寿命が短い癖に・・・良くもまぁ~こんな身体に悪そうな物を・・・もっと自分を大切に出来ないのかっ!翁」
「はい」
「また、顔を借りるぞ」
「御存分に!」
――― その頃 4人は。
「ほう。つまり、邪神竜と約束した訳か!」
「そうだね」
「あいつは、神獣種の中でも絶対種。系統縛りはされないが、神獣としての神格縛りをされては、私やそこの神鳥でも足掻く事が難しい・・・」
「はい・・・」
目の前に居る子猫サイズ悪狐神様が何か可愛く見えて来た・・・腕組何かして・・・きっとさっき変なおっさんのキモイ何かを見たせいだな。
「あのぉ~・・・ここで寛いでて良いのでしょうか?悪鬼神を探さなくて良いんですか?」
「ロイク待てば海路の日和ありだね。目的は果たされたね。後はガムシロップを待つばかりだね」