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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-スカーレット編ー
78/1227

1-63 哲学は神の世界と、闇の砂漠と4つ陽。

宜しくお願いします。

――― ブオミル侯爵領

ロイ 侯爵邸 地下5階

――― 6月12日 22:40


「いきます。terre(テール)promise(プロミース)


 アルさんは、地下5階全体を一時的に聖域化した。


「この広さを聖域化したんですか?」


「神気量が増えたからでしょうね。意外に簡単にでき自分でも驚いています」


「大樹の森の聖域と感じが少し違うみたいなんですが」


「気付いたかね」


 やっぱり違うのか!


「何処が違うと感じたね?」


「何となくなんで何とも・・・」


「ロイク様。この世界に存在する聖域に神気を感じた事はありますか?」


「大樹の森の聖域や自分の結界の中で神気を感じた事は無いです」


「今はどうですか?」


「・・・あぁ~そういう事か、なるほど、ここや、スタシオンエスティバル(中空の避暑地)クリュの中空の離宮・・・池の内側全体か!それに、エルドラドブランシュ(領主館であり俺の家)。大神殿は聖域の中に神気を感じてるのか」


「気付いたかね。付け加えるとだね。ロイクが建立したノートルダム(聖母の)大聖堂や聖人教会も微量だがね神気が存在しているね。聖域ではないがだね」


「神気を感じない聖域が普通なんですか?」


「何をもって普通と定義しているかね?」


「そうですね・・・どっちの聖域が本当何ですか?これだとおかしいか・・・う~ん」


「どちらも言葉の便宜上の問題だね」


「便宜上ですか」


「創造神はこの世界に大樹の聖域を創造し次に地水火風の聖域を創造したね」


「マルアスピーから教わりました」


「うんうんだね。この5つの聖域は、自然の力の均衡を統制する精霊樹、一枚大岩、大火山、大瀑布、大風穴を、理による矛盾の干渉から隔離する為に存在しているね。つまり清らかに澄みきる自然の中の清澄属性を保つためだね。そして、スタシオンエスティバル(中空の避暑地)クリュの天空池や、エルドラドブランシュ(・・・・・・・・・・)やスカーレットにある(・・)の大神殿やここは、創造神や神、眷属神や眷属、精霊種や人間種や悪魔種、あらゆる存在の存在そのものを守る為に存在する神聖域。理による干渉が及ばない存在なんだね」


「つまり?」


「神聖域って長いから呼び難いね。短くして聖域って呼んだね。そしたらだね最初に存在させた領域と名前が被ってしまったね。名前なんて別に被ったっていーんじゃねぇ!ってなったね」


「この聖域と大樹の聖域の違いの話だったんじゃ?」


「説明したね」


「いつですか?」


「聞いて無かったのかね。まったくだね」


 運の神フォルティーナ様は、胸の前に腕を組み胸を少しだけ上に押し上げ夢と希望の2つの双丘の谷を強調し、頬を膨らませ俺に抗議の視線を向けた。口元がニタ付いているのが非常に残念だ。


 だが、・・・・・・凝視・・・ 分かって居ても気になってしまうんです。


「なるほどだね」


 ・・・


「アスピーはこうやって篭絡した訳だね・・・アル分かったかねだね」


 運の神フォルティーナ様は、夢と希望を自ら上下に動かし、俺に見せ付ける。


「はい・・・なるほどです」


 ・・・凝視・・・俺って奴は・・・だが、何かが足りない・・・何かが・・・


「触っても構わないんだね」


「なっ!何言ってるんですか!」


「これもアスピーの言ってた通りだね。なるほどだね」


「オホン。それで、・・・あのぉ~フォルティーナ・・・胸を揉むの止めて貰えませんか集中出来ないんで・・・」


「分かったね。・・・重くて肩が凝るね」


「そこは胸です」


「知ってるね。分かったね。真面目にやるね。さっき説明したね。聖域は清澄属性を保つ為に存在するね」


「聞きました」


「神気の中で自然の力は存在出来ても属性は存在出来ないね」


「神気には本来属性が存在しないって話ですね」


「そうだね。神気に属性を加えるには、微量の神気を核にし属性を帯びさせるしか無いね。神気の中に属性を秘めさせる事では無いね」


「5つの聖域の中に神気が存在した場合、中の属性が存在出来ないから5つの聖域には神気が存在しない。だから、神気を感じないって事ですか?」


「端的に言うとそうなるね。自然の力の均衡と統制を保つ為に存在する聖なる領域と、創造神や神や眷属神や眷属や精霊種や人間種や悪魔種の存在を守る為に存在する神聖なる領域。そういう事だね」


 相変わらず、聞きたい事を聞けるまでに長いなぁ~・・・


「神は欲深い存在だからね。1を知ると100を知りたいね。1を聞かれると100を語るね。98は雑学レベルの余談に過ぎないがだね。ハッハッハッハッハ」


 それ、無駄話って言うんですよぉ~・・・


「生きるとは無駄その物なんだね」


 急に哲学を語り出した運の神フォルティーナ様は、ここから1時間以上語り続けました。



――― 6月12日 23:50


「つまりだね。生きる事は楽する事では無いね。厳しい様だがね苦しむ事何だね」


「あのぉ~フォルティーナ様・・・」


 運の神フォルティーナ様はアルさんを左手で制しながら語り続ける。


「だがだね。生きる事の苦しみを和らげる方法も創造神は創造したね。それは、欲望の追求。物欲、性欲、食欲、他にも沢山あるがだね・・・つまりだねあたしが言いたいのはさぁ~ロイク欲望を解放し神であるあたしやアル。精霊であるアスピーにぶつけるね。人間を正しく導く為にあたし達は存在しているね。犯罪に走る前に言うね。相談に乗るね」


 この神様・・・こいつ(・・・)何言ってんだ・・・阿呆だろう・・・


「あのぉ~フォルティーナ様・・・」


「アル何だね。あたしは順番で争う気は無いね。1番じゃ無くても良いね。だがだね決して譲ってはいけない事があるね。それは継続する事によって生み出される努力や輪によって齎される物。手放してしまうと取り戻す事が難しい物だね。無駄だと言って切捨てるだけではそこからは何も生まれないね。無駄の中の無駄を的確に見極めそれを正す事が重要なんだね」


「あのぉ~・・・何を言ってるのですか?」


「愛の手解きだね」


「今の・・・愛の話だったのですか?」


「そのつもりで話たね」


 大丈夫なのかこの神・・・


「ロイク。あたしを心配してくれるかね。嬉しいね」


 あぁ~・・・


「は・・・い・・・」


 ダメだ、前向き過ぎる・・・


「存在の意義や愛の話はまた今度にしましょう。フォルティーナ様。ロイク様」


 俺に振らないでください・・・


「そ、そう・・・ですね・・・」


「2人に言われては仕方ないね。そろそろ、地下に行くかね!」


「はぁっ?」


「あたしが理の矛盾を追求し始めた頃だね・・・」


「いつの話ですか?」


「1時間位前の事だね。そこに道が現れたね」

 

 運の神フォルティーナ様は、魔法陣?魔力陣?を指差した。


「あれは、地下6階或いは地下13階へ通じる道だね」


「1時間前にあれに気付いてたんですか?」


「当然だね」


「へぇ~・・・」


「ロイク様。私は、少し前に気付いて、フォルティーナ様に伝えようとしました・・・」


 アルさんは、上目使いで至近距離で俺を見つめる。俺の視線は・・・夢と希望の双丘が生み出した神秘の谷だ。


「まさに、神鳥大白鳥だね。男に取り入る術を心得ているね・・・」


「私はそんな事しません」


「うんうんだね。構わないね。さっきも言ったがだね。あたしは2番でも3番でも何番でも良いね」


 ・・・このままこの神のペースに合わせていたら、地下13階に辿り着く前に寿命を迎えそうだ。


「アルさん。下に行きましょう」


「あっはい!」


「ロイク」


「なんですか?」


「さぁ~下に行くね」


「それ、俺、今言いましたよ」


「聞いてたね」



 俺達は、魔法陣の前に居る。


「フォルティーナこれ、普通に魔法陣ですよね?」


「そう見えるね」


「方式が教会のレリーフ(浮彫細工)みたいですが、転位用の魔法陣なんですか?」


 運の神フォルティーナ様は、魔法陣を見つめながら、小首を傾げていた。


「どうしたんですか?」


「おかしいね。悪鬼神が精霊達の言語(文字)をどうして使うね」


「と、言いますと」


「悪気神は、神以外の存在により生み出された神だがだね。神聖文字を理解してるね。わざわざ旧言語で魔法陣を設置した意味は何だね?」


「どうしてでしょうね。俺は神様じゃないんで」


「精霊種が、悪鬼神に協力している可能性はありませんか?」


「精霊がかね・・・否定は出来ないがだね。可能性は低いと思うね」


 運の神フォルティーナ様とアルさんの推論合戦が暫く続く。


 

「それで、下には行くんですか?行かないんですか?」


「ロイク。焦ってはいけないね」


「そうですよ。ロイク様。罠かもしれないのです。慎重になる時ですよ」


「は・・・はい」


 2人の気迫に押され俺は静かに従う事にした。アスピーもそうだが、この人達いや、この神様達と精霊様はとっても非常にものすごーく押しが強い。俺は平和主義者だ。無益な争いや殺生を心の底から嫌う平和主義者だ。



「さぁ~ロイク。下に行くね」


「ロイク様行きましょう」


 結局、下に行く事になったのか・・・


「はい。罠かもしれないんですよね?」


「そうだね。だがだね。行ってみないと分からないね」


「罠だった時は」


「罠だった時は?」


「その時に考えましょう」


「何とかなるね」


 結局、このパターンですか。


「さぁ!魔法陣に入るね」


「本当に行くんですね」


「そうだね」


 俺達は魔法陣の中に入った。


≪パチン



――― 地下6階 24:30:03


 俺の目の前には、漆黒の砂漠が広がり、空には陽が4つ存在していた。


「闇の砂漠ですね」


「闇?こんなに明るいのにですか?」


「はい、ロイク様。ここは光と闇を創造神様が創造した際の神話に出て来る世界に似ています」


「そうなんですね」


「スケールの大きな謎解きかね・・・厄介な物を準備してくれたね」


「フォルティーナ様どうしましょう」


「4つの陽が重なるのを待つしか無いかね」


「そうですね」


「ロイク。創造神の家シリーズから、砂漠のオアシスの一軒家を出すね」


「そんな家ありましたっけ?」


「あったね」


「そうでしたっけ・・・」


 【タブレット】『取り出し』家シリーズ・砂漠のオアシスの一軒家 ≫


≪・・・道具・建造物・家シリーズから『ジャミールバイト』を設置しました。


 目の前に、大きな池とヤシの木が9本。常夏樹が1本。温帯樹が1本。大きな池にはイルカが2匹。丈の高い緑の中に、真っ白な壁の平屋建ての家が出現した。


「ロイク様。家の庭にも小さな四角い池がありますよ」


「池が2つもあるんですね」


「アル。ロイク。それはプールと言ってだね。人工的に水を貯め遊戯する為の物だね」


「あの池も自然じゃ無いですよね?」


「創造神が創造した物だからね。自然と変わらないね」


「なるほど」


 つまり、四角い小さいプールって池も自然って事か・・・


「それで、家を出しましたけど、どうするんですか?」


「ここには、水も野菜も果物も魚も鳥もベッドもバスもシャワーもトイレもあるね」


「自給自足型の家って感じですからね」


「そしても氷もある(・・)ね。アル。グラスに氷と炭酸水を持って来るね」


「は、はい」


 ドヤ顔の使い方間違ってますからね・・・しかし、神様を使う神様って良いのかなぁ~


「アルは尽くすのが好きなんだね。ロイクには勿体ない花嫁さんだね」


「はいはい・・・それで、陽が重なるまでここで待つんだろうなぁ~って察しは付きましたが、重なると何が起こるんですか?」


「闇の時間になるね」


「陽が4つ重なると闇の時間になるんですか?」


「そうだね」


「4つある時点で理屈じゃないんでしょうけど、どうして重なると夜に?」


「夜では無いね。闇の時間だね」


「はぁ~?」


≪カラン シュワワワワ


「フォルティーナ様。冷たい炭酸水をお持ちしました。ロイク様も一緒にどうですか」


 アルさんは、グラスを俺に1つ差し出した。


「ありがとう」


「いえ」


 俺はグラスを受け取ると、グラスの中の氷に目をやった。


「あれ?・・・氷が沈んでる・・・家で氷が入った飲み物が出た時って、水に浮いていた様な・・・」


「この家の炭酸水は、神気水で炭酸水を作っているみたいなんです」


「そうなんですね・・・それでその神気水って何ですか?」


「水です」


「水ですかぁ~・・・」



「イヤァ~~!砂漠で飲む。氷炭酸水は生き返るねぇ~」


「はい。フォルティーナ様」


「知ってるかね。この炭酸水に柑橘系の果物の果肉や絞り汁を混ぜ合わせ飲むと、この爽快感が二乗三乗するね」


「そうなんですね」


≪カラーン


「この氷の音も心地が良いねぇ~だね」


「はい」



 プールサイドのソファーベッドで寛ぎながら・・・。プールに浮かべた大きな浮き輪の上で寛ぎながら・・・。プールサイドのハンモックから転げ落ちたり・・・。プールサイドのBBQコンロ・グリルで野菜や魚や肉を焼いたり・・・。冷たいワインやシャンパンやウィスキーやブランデーを飲み・・・。プールに落とされたり・・・。シャワーを浴び・・・。ベッドでゆっくり睡眠を取り・・・。プールで泳いだり、池のイルカと戯れたり・・・。


「・・・フォルティーナ」


「どうしたね」


「陽が動いた気がし無いんだけど気のせいですかね?」


「まだ、4日しか経ってないね」


「4日ですか・・・はぁ~?4日ってまだ夜にもなって無いのに・・・いつ4日経ったんですか?」


「ベッドで寝たのは何故だね?」


「眠くなったからですが・・・」


「体内時計というやつだね。日頃眠っている時間になるとだね。何となく眠くなるものだね」


「・・・4日もここで俺達何やってるんですか?」


「忘れたかね。陽が重なるのを待ってるね」


「・・・もしかして罠に嵌ってませんよね?」


「捉え方は夫々違う物だね・・・安心するね。そのうち重なるね」


「・・・そのうちっていつですか?」


「人生焦ってはいけないね。幸い、こことここの時間の軸は相違しているね。こっちの1年は、コルト下界の1カウンくらいだね。ここで60年暮らしても、あっちでは1(ラフン)だね。戻ったら浦島太郎は悲しいね。良かったね」


「そのうち重なるって・・・60年後とか言いませんよね?」


「安心するね。60年なんてだね。あっという間だね」


「心配はそこじゃないです。あっという間かもしれませんが、俺生きてたら84歳です。その前にお迎えが来るかもしれないですよ」


「安心するね」


「安心出来ない事実に直面している物で・・・安心出来ないんですけど」


「ロイク。君は84歳で死ぬ事は無いね」


「寿命が84歳以上だって知れたのは嬉しいんですけど・・・それでも安心出来無いんですけど・・・」


「欲しがるねぇ~だね」


「いやいやいやいや・・・」


「安心するね。どんなに長くても、10年以内で重なるね。待てば海路の日和ありだね」


「・・・他に方法は?」


「ロイク様は。私達と一緒に居るのが嫌なのですか?」


「はい↑?・・・今そういう話してるんじゃないで・・・戻ったら聞きます」


「そんな・・・」


「罠にしてもそうですが、神様は気が長過ぎます。脱出に10年かかる罠って何なんですか!」


「脱出に10年の時間が必要な罠って感じかね」


「そのままじゃないですか」


「ロイク様。この闇の砂漠は、神でも徐々に神気を失い陽が重なる闇の時間に外に吸い出され解放されるまでじっとしてるしかないんです。光と闇を創造神様が分離するまで、この様な場所は創造の地に沢山存在していたのです」


「光と闇を創造した当初はだね。まだ光と闇は対の存在だったね。分離してからはこういう世界は無く成ったがね。創造神に感謝だね」


 話の論点が・・・


「それで、ここから脱出する方法は他に無いんですか?」


「2つある(・・)ね」


 運の神フォルティーナ様は、ドヤ顔で俺を見つめる。


 その顔・・・あぁ~無視無視!


「2つもあるんですか?」


「そうだね」


「ロイク様。私も知っていますが、かなり無謀なのです。おススメはしません」


「聞いても損はないだろうから、教えてください」


「分かったね。手っ取り早く言うね」


「その方が助かります」


「光と闇を分離させるね」


「あぁ~・・・・・・無理そうなんで次お願いします」


「そう思ったね。地下7階に進むね」


「・・・道があるんですか?」


「当然だね。地下5階から地下6階に来たね。地下7階に通じる道が無かったら詐欺だね」


「詐欺?・・・俺達って罠の中なんですよね?」


 詐欺以上に十二分に嫌がらせとして成立してるだろうこれ・・・


「ロイク様。お気持ちは分かりますが、罠かもしれない地下7階に行くのはかなり危険だと思います」


「そうだね」


「・・・これ罠なんですよね?地下7階も何とかなるかもしれませんし行ってみませんか?」


「ロイク。世の中慎重に事を進めた方が良い時の方が多いね」


「そうですよ。ロイク様。備えあれば憂いなしです」


「行ってみないと分からないし、その時はその時に考えるんじゃ?」


「失敗から学ぶ存在は賢い存在だね。そこから何も学べない存在は愚かな存在だね」


「・・・」


 2人とも口には出さないが、この罠はかなり深刻だって事か。2人をここまで慎重にさせる罠か・・・


「カァ~~。この炭酸強めのレモネード沁みるねぇ~だね」


「ロイクも飲むかね。あたしの自信作だね」


「とっても美味しいですよ」


「そ、そうですね・・・」


「うんうんだね」


≪カラーン



 それは、突然起きた。それは、前触れも無く起きた。


 俺は、いつもの様にプールサイドのソファーベッドに横になりながら、トロピカルジュース(アルコール入り)を飲みながら闇の砂漠のオアシスライフを満喫していた。


 あ?空が何か暗く成った様な・・・俺はサングラスを外し空を見上げた。


 4つの陽が重なり、光が陽に吸われ闇が広がって行く様子が視界に飛び込んで来た。待ちに待った日がついにやって来た。俺は家の中に駆け込んだ。


「フォルティーナ!・・・フォルティーナ!」


 おかしいな?何処だ?


「何だね。こっちだね」


「そっちでしたか!陽が4つとも重なりました」


≪ガチャ


「おぉ~ついに来たかね」


「な、何で裸なんですかぁ~・・・」


「服を着たままシャワーを浴びる神はいないね」


 運の神フォルティーナ様は、仁王立ちしながらドヤ顔で俺を見つめる。ドヤ顔のタイミングも仁王立ちのタイミングも確実に間違っている。だが、今は阿呆に付き合っている時間は無い。


「服を着てください。陽が重なっている間に脱出しましょう」


「落ち着くね」


「のんびりしていたら」


≪パチン


「何ですかその服?」


「見忘れたかね?」


「あっ。ここに来る時に着てた服ですね。ずっと水着だったりバスタオルだったりで忘れてました」


「刺激的且つ官能的で飽きの来ない快適な罠生活だったね」


「ロイク様。フォルティーナ様。闇の時間になりますよ」


「ロイクが教えてくれたね」


「フォルティーナ様?その装いは?」


「私の恰好がどうかしたかね?」


「・・・いえ何でも」


 アルさんも、俺と同じ事を考えたに違い無い。


「アルも下着の様な恰好から服に着替えるね」


 アルさんは暑さに弱いらしい。



 俺は、家を収納した。そして、俺達3人は闇の砂漠に立ち重なる4つ陽を見上げていた。


「辛くは無かったけど・・・快適でしたが、やっと出られるんですね」


「・・・いや、出ないね」


「え?・・・どういう事でしょう」


「ロイク様。出てしまっては、49日間が無駄になってしまいます」


「え?」


「闇の時間になってだね。光が弱くなった時がチャンスだね」


「何のですか?」


「罠を解除するチャンスに決まってるね」


「あぁ~~地下7階に行く事考えてたんですね・・・」


「当然だね。このまま脱出したらだね。また地下5階だね。あたしは無駄な事が嫌いだね。コツコツやるのも嫌いだね」


 ・・・毎回適当に思った事を言ってるんだろうけど・・・相槌しておこう。


「そうですね」


「そこは、否定して欲しいところだね」


 ・・・49日間の共同生活で言葉のキャッチボールが微妙に進化した様だ。


「フォルティーナ様。今がその時です!」


「分かったね」


≪パチン


――― 地下7階 24:30:03

――― 地下7階 24:30:04


 静寂と闇の中に、俺は居た。

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