1-62 邪を追う者と、魔法陣と魔力陣。
宜しくお願いします。
――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ ビジネスエリア 地下1階
――― 6月12日 19:30
俺は、ゼルフォーラ王国軍に盗賊のボスと幹部と思われる男3人を引き渡し、ボスから聞き出した例の場所を伝えた。王国軍の討伐隊は、例の場所に集合した盗賊達を後日一網打尽にした。
盗賊達のボスは西側の集落に居ると報告を受けていた東側の集落を担当した討伐隊の隊長は、ボスと幹部を捕らえたと部下から報告を受け勢い勇んでやって来た。協力者だと部下から追加報告を受けた隊長は俺の事など気にも留めず盗賊達のボスを拘束した馬車へと向かって行った。
俺は、どさくさに紛れ気付かれる事無く神授スキル【フリーパス】で移動した。
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「お待たせしました。何か分かりましたか?」
「拘束を解く前にステータスを確認してたね」
「それで、名前は分かりましたか?」
「分からないね」
「フォルティーナの神眼でも視認出来ないって、邪の神様の眷属神って意外に凄いですね」
「違うんです。この遊の樹人族は、名前を持っていないみたいなのです」
「名前をですか?」
「はい。フォルティーナ様と私の瞳で分からなかったのは、名前と生年月日と性別の3つです」
「どうやらだね。邪の神の眷属神から祝福された存在は、姓名、生誕、性別の理も代償として失う様だね」
「本当呪いだなぁ~」
「はい」
「さっきも言ったね。祝福だね」
「祝福ねぇ~有難みを感じない嫌な祝福です。さて、何か知ってるかもしれないし聞き出しましょう」
俺は、遊の樹人族に手を翳し聖属性の自然魔素を吸収した。
「ん?」
遊の樹人族は、キョロキョロと辺りを見回している。
「こ、ここは何処だぁっ!ふざけるなぁっ。私は何も悪く無い悪いのは全部お前等だ!」
「名を失った遊の樹人族よ!少し黙るね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――・・・お前か!お前が悪いんだぁっ!あぁ~~!そうだあいつらだぁあいつらが無能だから私がこんな目にぃ~~」
≪パチン
「ぎゃぁ――― ハァーハァーハァー」
「黙るね」
「フォルティーナ何を?」
「己を省みず他者を愚弄する愚か者の精神を正してやってるね」
「ふざけるなよお前ぇっ!お前だ糞女っ!私は何も悪く無いそもそも悪いの全部」
≪パチン
「ぎゃぁ――――――――――――」
「黙れと言ったね」
遊の樹人族は、涙と涎を垂れ流し、失禁した。
「やり過ぎじゃ無いですか?」
「邪な神の祝福を受けた者にはだね。これでもぬるいね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
「フォルティーナ様。今は静かでしたよ」
「あぁ・・・おまけだね。名を失った遊の樹人族よ。答えるね」
「ハァーハァーハァーな、何をだぁっ!」
畏怖すら感じる今日の運の神フォルティーナ様に、名を失った遊の樹人族は視線だけを動かし睨み付ける。
「うんうんだね。そこまでの意思を持ち合わせていながら邪に落ちる何て勿体ないね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
≪パチン
「ぎゃぁ―――――――――」
「あっ!フォルティーナ様。気を失ってしまったようですけど・・・」
「問題無いね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
「眠って良いと言った覚えは無いね。答えるね」
こえぇ~~~・・・何かいつものフォルティーナと違うんですけどぇ~
『ロイク。君はあたしが怖いかね』
今日のフォルティーナはちょっと怖いかと・・・でも、母さんに叱られた時の様な何かちょっと優しさも感じるというか・・・
『そうかね』
運の神フォルティーナ様は、俺に美しく優しい微笑みを向けていた。
「さぁ~だね。あたしは今日はとっても気分が良いね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
「答えるね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
≪パチン
・
・
・
母の愛は海よりも深く山よりも高い。神であるフォルティーナ様ならばそれは一入だ。それ故に無償の愛は無償で精神への責め苦を続けた。
――― 6月12日 20:00
「魔法陣。あっ魔力陣でしたね。その魔力陣の研究をしている時に、声が頭の中に聞こえたって事ですか?」
「そうだぁっ!もう分かっただろう。私は何も悪く無いここからだせぇ~~!」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
「少しは学習するね。いつまでも他人のせいにしていないで己を省みるね。前を見るね」
≪パチン
「ぎゃぁ―――――――ハァーハァーハァー」
「それで、貴方の名前は?」
「名・・・私は・・・私は誰だふざけるなぁ~~!あぁ――あぁ――!」
≪パチン
「ぎゃぁ―――」
「煩いね」
「それで、名前は?」
「・・・」
「ロイク様。この遊の樹人族ですが、名前を記憶していないみたいです」
「失うって名前の存在そのものって事か・・・そうなると、誕生日も性別も覚えてないって事になるのか!貴方は男なんですか?女なんですか?」
「わ、私は・・・」
「ロイク。邪落ちした者はだね・・・邪の神の眷属神から祝福を与えられた者はだね。死者と変わらないね」
「死んでるって事ですか?」
「生きる事を止めた者だね。生かされ続ける死者だね」
「何とかならないんですか?」
「死人が生き返る事は無いね。生き返らせてはいけないね」
「ロイク様。生ある者の死の理を奪ってはいけないのです」
「唯一それが許される存在は、創造神だけだね」
「遊の樹人族は、この世界の理では死者って事なんですよね?」
「そうだね」
「それなら」
俺は、遊の樹人族に手を翳した。
「何をするね」
「試してみます」
邪属性魔法【エロジオーネ】☆1☆1 発動 ≫
「お前、何をっ! あぁぁぁぁ――― ・・・」
「ロイク。何をしているね」
「生きてる人に邪属性何か使ったら下手したら死んじゃいますが、死んでる人になら使えるんじゃないかなって思って、この遊の樹人族の記憶に介入してみようかと」
「精神を操るエロジオーネでかね?」
「はい」
「ロイク様・・・」
アルさんは、不安げな表情を浮かべ俺を見つめていた。
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「ダメそうです」
「どうしたね」
「この遊の樹人族の思考ですが、穴だらけなんです」
「記憶が枯渇しているかね」
「そうみたいです」
「仕方ないね。エロジオーネを解くね」
「はい」
運の神フォルティーナ様は、遊の樹人族の額に人差し指を当てると、黒紅色のモヤモヤを頭部から引き抜いた。
「それは?」
「これは、遊の樹人族の残された記憶だね。このまま放っておくとだね全て失う事になるね」
「それどうするんですか?」
「ロイク。君は今朝ルーリン湖の畔で瓶を6本回収したね」
「あぁ~はい・・・道具の中に瓶がありました」
「それを出すね」
「今朝回収した瓶をですか?」
「良いから出すね」
「6個ありますけど、どれが良いですか?」
「どれでも良いね」
「分かりました」
【タブレット】『表示』・道具・瓶 ≫
≪・・・表示しました。
えっと、今朝のは・・・これか『取り出し』っと ≫
≪道具・神雑具より【記憶の小瓶】を取り出しました。
俺の手に瓶が現れる。
「これ神雑具って神具か何かの親戚ですか?」
「そうだね」
「神具が神界や神域の武具なら、神雑具は道具です。どうしてHDDがこんな所に・・・」
「HDD?」
「はい。【記憶の小瓶】という神雑具は画像や映像や音声や方式や文章を保管する為の道具なんです。言葉通り瓶を記憶の小瓶にしている物は初めて見ました」
「へぇ~・・・」
「渡すね」
「どうぞ」
俺は、記憶の小瓶という小瓶を手渡した。運の神フォルティーナ様は、小瓶に黒紅色のモヤモヤを移すと指を鳴らした。小瓶はチップに姿を変えた。
「瓶では使い難いね。メモリーチップにしたね。タブレットに入れるね」
「はい」
・
・
・
【タブレット】『表示』・メモリーチップ内の情報 ≫
≪・・・表示しました。
「何か凄い損傷ですね。記憶がボロボロじゃないですか」
「そうですね」
「さてだね。【タブレット】『検索』・表示中の情報の中から、悪鬼神・邪の神の眷属神・眷属 ≫」
≪・・・・・・・・・・・・・・・
「なるほど。タブレットに探して貰った方が確かに速いですね」
「そうだね」
「長いですね」
≪・・・・・・・・・・・・該当は、1件です。
「表示するね。Goだね ≫」
≪・・・表示しました。
「映像も声も・・・これだと誰なのか断定は出来そうにないです」
「だがだね。この記憶の中の存在はだね。現化しコルト下界を欺いてるという事が分かったね」
「記憶だと、神眼でも視認出来ないんですね」
「当然だね」
「遊の樹人族から掴んだ情報はこれだけですか・・・ロイの侯爵邸に踏み込む前に何か分かるかもって期待してたんですけど」
「ロイク様。記憶の中の人ですが、神官に見えませんか?」
「法衣を着ている様にも見えますね」
「後ろに映ってる人なのですが」
「どうしました?」
「ここの人です」
「軍服みたいですね。見た事の無い軍服です」
「そういう時はだね。『検索』表示中の男の衣類の名を全て ≫」
≪・・・該当は、3件です。
「表示するね。GOだね ≫」
「世界創造神創生教神官用法衣と、ヴァルオリティア帝国軍貴族士官用軍服と、樹人族の戦闘用軽装備・・・」
「樹人族っていました?」
「映っていなかったと思います」
「重なっていたか、枯渇した所にいたって事か?」
「枯渇していたならだね。検索されないね。記憶のその場に存在していたがだね。視覚の記憶には残っていなかったという事だね」
「不可視の樹人族が視認はされなかったけど、遊の樹人族の脳が記憶してたって事か・・・普通に怪しいですがどうしようもないです」
「今はそうだね。邪落ちした存在から記憶を集めるか、邪の神の眷属神や眷属達から聞き出すしかないね」
「はぁ~残念です」
「人生そんなものだね」
「そ、そうですね・・・」
「ところで、ロイク様。フォルティーナ様。この遊の樹人族ですが解放出来ませんしどうしますか?」
「ここの牢に収容しておくね」
「それが無難かな」
≪パチン
「それ便利ですよね。やり方教えて貰えませんか?」
「うんうんだね」
「簡単そうに見える事って、実は複雑だったりするんですよね・・・親父の連射とか未だに真似出来無いし・・・」
「慣れれば1万年位で両手で出来る様になるね」
「あぁ~」
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――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 執務室
――― 6月12日 21:00
俺は、祖父エンゾに盗賊達が巣食う集落の報告をした。
「街道も農地も無いルーリン平野の真ん中で、1000人以上もの盗賊を養うだけの食料と水を確保し、人目に触れる事無く非合法の奴隷を取引していたというのか・・・食料と水はファルダガパオを駆使すれば何とかなるかもしれんが、馬車も使わずに人をどう運んだのだ」
「それが、踏み込んだ時に発見した魔法陣。彼等は魔力陣と呼んでいるそうですが、その魔力陣を用いた可能性があります」
「魔力陣か聞いた事が無いな」
「魔晶石を使い方式で魔術に似た事を発動する点では、魔法陣と類似しているみたいなんですが、樹人族や妖精族に伝わる文字が方式に組み込まれているようなんです」
「樹人族や妖精族達の文字か」
「見つけた魔力陣は転位魔術を発動する物だったのですが、魔力陣間の移動可能距離や重量がどう関係するのか調べる必要があったのと、応用して使えそうだったので回収しておきました」
「軍は知らないという事か?」
「いえ、回収したのは、俺が確認した東西の魔法陣。えっと魔力陣だけです」
「そうか。軍も回収したという事だな」
「はい。ですが、王国軍や宮廷魔術師に樹人族や妖精族の人が居たとしても、解読どころか何の為の魔力陣なのか理解する事はたぶん無理だと思います」
「アカデミーでも無理そうか?」
「はい。アンブル語はコルト語を文字にした古代語が起源です。ですが、起源は分かっていても、解読はほとんど進んでいないですよね」
「そうだな」
「カノン語はコルト語を文字にした草形文字、草形語が起源らしんです。スキルで調べたのですが、古代語同様に解読は進んでいないそうです」
「ファルダガパオに何故物が入るのか分からないが利用している。それとと同じ状態が彼等にも起こっていると考えた訳か」
「はい。ですが、俺は創造神様からいただいたスキルのおかげで視認すると方式を理解する事が出来るんです。なので装填式の固定転位の魔力陣であり、携帯出来る使い捨て転位の魔力陣だと直ぐに分かった訳です」
「用途が別にもあるという事か・・・うん。その転位の魔法陣を使って捕まえた人や食料を運び込んでいた事は分かったが・・・使い捨てに関しては用途が無い故忘れ去れた可能性がないか?」
「そうは思いません。危険な任務や偵察任務。脱出や避難する時に使い捨ては便利だと思います」
「ふむ」
「装填式の魔法陣や魔力陣では追手対策が必要です。ですが、使い捨てなら追手の心配はほぼありません」
「なるほど」
「固定式も便利ですが、使い捨ての携帯式も悪くないと思います。これらも踏まえた上で、実験したり調べる必要があるんです」
「何か分かったら教えてくれ」
「そのつもりです。・・・それと、盗賊達の残党には集合する場所があるみたいだったので、王国軍にはその場所を伝えておきました。明日、明後日には残党狩りも完了すると思います」
「ロイクに助けられたな。本当にありがとう」
「いえ」
王国軍が盗賊達を取り調べたところで、行動のルーチンや盗賊1人1人の罪状が分かるだけだろう。遊の樹人族に、魔力陣をどの様に運用したのか、満タンの風属性の中魔晶石を大量にどうやって準備したのか確認する必要があるか。
「今回は、お前の力のおかげで我が領内に巣食う悪を退治出来たが、魔力陣なる存在が明るみになった以上、領内の集落がある地域だけを王国や公爵領に任せておくという訳にはいかなくなった。領軍を組織し定期的に領内を巡回させる必要があるな」
「そこで何ですが・・・」
「何か良い案があるのか」
「領軍を組織するのは、これが完了してからでも良いと思いますよ」
「なんだ。勿体ぶらずに教えてくれ」
「実はですね」
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「盗賊を討伐する為に敷いた街道がサス湖まで伸びているのを利用して、サス湖の畔の森を切り開いて領都を建設する訳か」
「ルーリン湖の畔に港を設置している時に思ったんです。御祖父様の領地にはサス湖があるし、サラン川を利用すれば、内陸部にある貴族領がトミーサス王国の王都トミーランと交易が出来るって」
「トミーサス王国のランザスや、ダリウス伯爵領の領都に成ったばかりのシリウスとも水運を使って物流が可能になるな。名を持たざる森の夜を気にする事無くサーフィスやサーカスまで物を運ぶ事も可能になるのか・・・ロイクやってくれるか?」
「勿論です」
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モルングレー北の森の一部を切り開き、ゼルフォーラ王国の新貴族領となったシャロン子爵領の領都シェリーベル。ルーリン湖の北の畔、モルングレー東の森の一部を切り開き建設した王太子が代官を任される事になった王都モルングレーの副都市(領都条件をクリア)エルピス。王兄エンゾ天爵領のサス湖の西の畔、ランザスの森の一部を切り開き建設した天爵領の領都リヤン。3つの領都がR4075年6月13日王国に誕生する事になった。
――― ブオミル侯爵領
ロイ 侯爵邸 地下5階
――― 6月12日 22:22
俺は、ブオミル侯爵家から許可を貰わずに、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の地下5階へ、神授スキル【フリーパス】で、アルさんとフォルティーナと移動し、地下へ通じるであろう何処かを探していた。
タブレットの画面に表示された地下13階へ【フリーパス】で移動する事が出来なかったからだ。
「フォルティーナ。本当に神気の移動も出来なかったんですか?」
「そうだね」
「二番目に偉い神様なんですよね?」
「そうだね」
「悪鬼神って何番目位の神様なんですか?」
「・・・何が言いたいね」
さっきは、とっても神様らしいって思ったんだけど、やっぱりこっちが本来の在るべき姿なんだろうなぁ~・・・
「神様らしい・・・あたしは神だね。らしいではないね」
「フォルティーナ様もロイク様も真面目に探してください」
「アルさん。ただやみくもに歩いても無意味かもしれないです」
「そうだね。こういう時は、一休み一休みだね」
「来たばかりで休む必要はないですが、何か地下へのヒントがあるはずです」
「スカーレットのエルドラドブランシュの様に分かり易いと良かったのですが・・・」
「ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸の牢獄は迷路の様に入り組んでいて個室が多いのが特徴なんだそうで、例の大地石の民の事件の時に隔離したのがここだったそうです」
「偶然かね?」
「何がですか?」
「悪鬼神は下界に存在の理を持つ存在の寿命を縮め命を奪う神でもあるね。邪落ちの祝福を人間種に与える機会が多い神でもあるがね」
「寿命を縮めて命を奪うんですか?」
「そうだね。生命力を少しずつ奪い最後を与えるね」
「例えば、途中に石化は関係しますか?」
「石化かね・・・聞いた事が無いね。ただだね。悪鬼神は、創造神が創造したり、邪の神が生み出した神ではないんだね」
「それだと、悪鬼神は邪の神が存在し続ける限り存在するって変じゃ無いですか?」
「そうでもないね。邪の神は、悪鬼神の誕生を憐れみ眷属神に迎え入れたそうだね」
「でも、破門したんですよね?」
「そうだね」
「存在し続けてしまうのは何故ですか?」
「それはだね。創造神の創造した世界に、悪魔種や人間種や精霊種が存在するからだね」
「え?」
「悪鬼神の生みの親は、神以外の存在が心に抱いた悪その物なんだね」
「自分達で生み出した神に、命を奪われる何て・・・」
「ロイク様。神以外の存在が生み出した神様って意外に多いんですよ」
「そうなんですか?」
「はい」
「当然だね。創造神が頭を抱えるのはそれがあるからだね」
「と言いますと?」
「創造神に従う必要の無い存在だからだね」
「神様の世界も大変なんですね」
「当然だね」
「そこドヤ顔するタイミングじゃないですよ」
「うんうんだね」
「それで、結局、地下へ通じる道を探す良い方法は思いついたのでしょうか?」
「全然だね」
「俺もまだです」
「お喋りしてないで、真面目に探してください」
「分かったね」
「探すって言われてもなぁ~・・・邪属性とも違う邪ってどうやって感知したらいいんですか?」
「邪の属性を帯びた神気という事かね?」
「神気には属性が無いから、核にして属性を帯びさせるんですよね?」
「そうだね」
「核になっている神気だけを感知する方法って無いんですか?」
「どういう意味だね?」
「神気に邪の属性が纏わり付いてしまって感知が狂ってる訳だから、その纏わり付いてる邪の属性を無視出来れば、核になってる神気だけを感知出来てそれを辿って行けばって・・・無理なんですかね?」
「・・・考え付かなかったね。アル!【terrepromise】を使えなかったかね?」
「出来ますが、聖域でしたら、ロイク様やフォルティーナ様の方が効果的なのでは?」
「ロイクは本人が聖域化するかだね。生きた者に一時的に結界としての聖域を張る事が出来るね。あたしは聖域化ではなく聖域を作ってしまうね。アルの【terrepromise】は指定した場所だけを一時的に聖域化する物だったはずだね。違うかね?」