1-61 ジューのエルフと、盗賊達が巣食う集落。
宜しくお願いします。
――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 屋上
――― 6月12日 17:50
≪≪ 我が従う神の眷属神により祝福を与えられし遊が存在するは、我が従う神の眷属神が存在する証 ≫≫
そうなるか・・・
「何が言いたいね」
≪≪ ここコルト下界の守護者よ。我に遊の居場所を示せ ≫≫
う~ん。王国軍と盗賊が戦ってる所に、神獣様が現れたら大変な事になるだろうし、どうしたら良いんだ。
『ロイク。これはチャンスだね』
何のですか?
『来る悪の手前の手前位設定で悪が来た事にするね』
それもはや何でも無いですよね?
『あの性悪な人相を見るね』
人相って・・・竜ですよね?見慣れていないので善し悪しが分からないです。
『仕方が無いね・・・』
「邪神竜。あたしが案内するね。ただし・・・」
≪≪ ただし、何だ ≫≫
「姿を不可視化し神気を持つ存在以外の存在に決してその姿を見られるなだね」
≪≪ ふざけるな!我に虫けらの真似をしろと言うか ≫≫
「仕方ないね。ロイク」
「何ですか?」
「交渉決裂だね。やっておしまい」
「はぁ?交渉って誰が誰と交渉してたんですか?」
「あたしの華麗な交渉術を見ていなかったのかね。残念だね」
命令して断られた様に見えたんだけど、違うのか?
≪≪ 9 ≫≫
カウントが再開したのか?自由過ぎるだろう・・・
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アルさん!
『はい?』
邪神獣様ですが、質問ってあんなくだらない事だけなんでしょうか?
『確かに変ですね』
フォルティーナみたいに神様って脱線し易い存在なのかもしれないです。聞いてみて貰えますか?
『分かりました』
「邪神竜よ。貴方の質問は、私達の存在の確認だけですか?」
≪≪ 我は我が従う神の眷属神だった神を、我が従う神の命により捕まえる為に存在している。悪鬼神を知らぬか?悪鬼神に繋がる何事かを知らぬか?我は見返りを約束しよう ≫≫
「それを早く言うね」
運の神フォルティーナ様は、肩を竦めながら言った。
「つまり、邪神竜。君は悪鬼神を探している訳だね?」
「さっきからそう言ってましたが・・・」
「捕まえると言っていたね」
「・・・同じ事ですよね?」
「違うね。捕まえるとは、動く者・逃げようとする者を取り押える事だね。探しているとは、対象を見つけ出そうと行動を起こしている事だね」
運の神フォルティーナ様は、ドヤ顔で俺を見る。
「・・・はい、そうですね」
ドヤ顔の使い方間違ってますから・・・
「探し出したら捕まえる訳ですから同じです」
「違うね。あたし達が見つけ出し捕まえ引き渡しても同じだね」
確かにそうですが・・・
「悪鬼神はあたし達が捕まえて来るね」
≪≪ 何のつもりだ ≫≫
「ロイクは創造神から索敵探索に優れたスキルを神授されているね。それで探し出しあたし達が捕らえて来てやるね」
「あのぉ~フォルティーナ。それ無理ですよ」
「何故だね?」
「悪鬼神って神様ですよね?」
「当然だね」
「神様や使徒は干渉規制対象ワードです」
≪≪ 遊びの女神よ。我は遊びに興じるつもりは無い ≫≫
「だがだね。あたしなら可能だね。【タブレット】『認証更新』・対象・運の神フォルティーナ。『視認対象』・ロイク・アル・邪神竜。『画面選択』・横に固定・縦100倍・横100倍。『表示座標』・頭上10m。『検索』・対象・悪邪神。『表示』・半径5Km Goだね ≫」
宙に大きな画面が出現する。
≪・・・検索中 ・・・検索中
画面にはこの世界の地図が表示されている。
≪・・・対象は1件です。
「表示するね。 Goだね ≫」
≪・・・表示しました。
そこには、ブオミル侯爵領ロイの侯爵邸とその周囲が表示されていた。
「フォルティーナ。ブオミル侯爵邸みたいですけど、悪鬼神は何処に?」
「知らないね。悪鬼神を目立つ様に鮮血の赤で表示 Goだね ≫」
≪・・・表示しました。
≪≪ 遊びの女神よ。この赤が悪鬼神なのだな? ≫≫
「そうだね」
≪≪ そうか ≫≫
邪神竜は、翼を大きく一度羽搏かせた。
まずい。
咄嗟だった。俺は、邪神竜の進路を塞ぐ様に空に飛び出していた。
≪≪ 何の真似だ ≫≫
「ちょっと待ってください」
≪≪ 何故待つ必要がある ≫≫
「フォルティーナ。悪鬼神は侯爵邸の何処にいるんですか?図面を表示してください」
「分かったね。表示中の屋敷を図面表示・悪鬼神が居る階を表示 Goだね ≫」
≪・・・表示しました。
「地下13階って・・・あの屋敷は牢獄になってる地下5階までしかないはずです」
「知らないね。だがだね。これで、邪神竜はあたし達に頼むしか無く成ったね」
運の神フォルティーナ様は、ニヤニヤとほくそ笑みながら邪神竜に視線を移した。
≪≪ その様だな。・・・ここコルト下界の守護者よ ≫≫
「は、はい・・・」
≪≪ 我は地下へは行けぬ ≫≫
あの破壊力なら、地面何て粉砕しながら進めると思うけど・・・
『それは無理だね。邪神竜は捕らえる事が目的だね。屠ってしまっては捕らえる事が出来ないね』
えっ!でも、邪の神様が存在し続ける限り、悪鬼神も存在し続けるって。
『存在し続けるのは確かだね。だがだね。それは、次の悪鬼神としてだね』
神様も死ぬって事ですか?
『死にはしないね。次の神として存在するね』
≪≪ 我の代わりに悪鬼神を捕らえては貰えぬか? ≫≫
ロイで暴れられても困るし、引き受けた方が良いんだろうけど、悪鬼神は邪の神様の眷属神だった神様。俺が敵う相手なのか?
「安心するね。悪鬼神は、三級下級神。神気は3位だったはずだね」
「分かりました。その依頼お請け致します」
≪≪ そうか。ならば、神獣種神竜類邪竜種の神として神託を与えよう。悪鬼神を捕らえ我に引き渡しせよ ≫≫
「期日はいつまでですか?」
≪≪ 不要だ ≫≫
「分かりました。これから、行く所があるんで、その後で悪鬼神を捕まえに行きます」
≪≪ 我を召喚する力を与える ≫≫
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何も起こらなかったが、召喚出来る様になったらしい。
邪神竜は、姿を消した。
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――― 領都スカーレット
エルドラドブランシュ 執務室
――― 6月12日 18:30
俺は、祖父エンゾ、祖母イネス、マルアスピー、パフさん、アルさん、フォルティーナ、トゥーシェと、執務室にいる。
「ドラゴンとはまた今度会う事になっただと!」
「はい」
「ドラゴンには知性があって、私達と会話が出来ると言うのだな?」
「今日の竜はそうでした」
「意味が分からん」
「あなた。ロイクに任せて私達は成り行きを見守りましょう」
「う、うむ・・・」
「御祖父様。今は退いた竜の事よりも、盗賊が巣食う集落の方が問題です」
「そ、そうだな・・・」
俺は、全員の顔の前に画面を飛ばした。
「まぁ~動く地図何て便利ね」
「御祖母様。これは俺の神授スキルです」
「創造神様に感謝ね」
「はい」
「王国軍が殲滅作戦を開始したのは、16:50頃です。今、18:30なので、かれこれ1時間40分程、戦闘が続いている事になります」
「このタイムカンターという指輪も便利ねぇ~」
「イネス。今は軍事会議中だ」
「そうね・・・」
「俺とフォルティーナは、東側の集落に居る邪の属性を帯びた樹人族に接触して来ます」
遊とはあえて言わないでおいた。
「ロイク様。私も御一緒します」
「そうですね。アルさんも一緒に行きましょう。マルアスピーはどうしますか?」
「私は、パフちゃんと料理の勉強をしているわ」
「分かりました。トゥーシェさんは、フォルティーナの寝殿で待機です」
「連れて行かないのかね?」
「連携の歓喜の効果外ですから」
「分かったね」
≪パチン
運の神フォルティーナ様は、指を鳴らすと、トゥーシェさんは中空の離宮の神宮殿に移動した様だ。
「御祖父様と御祖母様は、俺達が戻るまでエルドラドブランシュを自由にどうぞお使いください」
「ロイク。ありがとう」
「うむ」
chefアランギー。オムレットさんを俺の祖父母の案内役として借りたいんですが、良いですか?
『おんや、居住地の1つエルドラドブランシュの管理業務の1つですねはい。問題ありませんですはい。オムレットさんをそちらに飛ばしますはい。≪パンパン」
オムレットさんが執務室に現れた。
「パトロンロイク様に奥様方にロイク様の祖父母様。御機嫌好うですわ」
「オムレットさん。屋敷の案内をお願いしたいんですが良いですか?」
「ウイ。パトロンロイク様。御任せください」
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――― 王兄エンゾ天爵領
盗賊が巣食う集落 東側の集落
――― 6月12日 18:54
俺は、邪の属性を帯びた樹人族が居る住居に、アルさんとフォルティーナと神授スキル【フリーパス】で移動した。
≪バタン
紫色のフードで全身を隠す様に覆った樹人族は、俺達が突然目の前に出現した事に驚き腰掛けていた椅子から慌てて後ろに飛び退いた。
「人間か?どうやって結界の中に転位した!」
樹人族は、男の物とも女の物とも言えぬ声で問い掛けて来た。
「えっとだね。遊の樹人族の君に聞きたい事があるね」
「な、何故それを知っている!お前達は、黒の手の者だな・・・」
「あたし達が何者かはこの際気にしなくて良いね。悪鬼神を知ってるかね?」
「・・・」
「それもですが、あと盗賊が2つの集落に分かれて何をやっていたのか知ってますよね?」
「・・・」
≪トントン
「プロフェート殿」
「何だ!」
「ゼルフォーラの軍勢が雪崩れ込んで来ます。ここは捨てるそうです。西集落のボスに例の場所でと伝えてください」
「そうしよう」
≪タッタッタッタ
「貴方は預言者なんですか?」
「・・・話す事は何も無い」
≪タッタッタッタ
樹人族は、話の語尾を待たずに駆け出し、奥の部屋へと入って行った。
「あぁ~~・・・何故転位しない!ふざけるなぁっ!・・・あいつらだぁあいつらがやったんだ。私は何も悪く無い。あぁ~~」
奥の部屋からは間髪入れず奇声と罵声と地団駄が響いて来た。
「あぁ~~あぁ~~ふざけろうよぉ~悪いのは全部あいつらなんだよぉ~~」
俺達は、阿呆か馬鹿のスイッチがONになってしまったのか奇声と罵声を連呼する樹人族の後を追い奥の部屋へ移動した。
樹人族は、床に描かれた魔法陣の中で地団駄を踏みながら奇声と罵声を繰り返す。
「何故だぁ~~転位だ転位転位しろよぉっ!ふざけるなぁ~~あぁ~~まさか西集落の魔法陣を・・・あの馬鹿野郎達が勝手に触りやがったなぁっ!ゼルフォーラ軍かそうだ愚か者な人間族だ!私は何も悪く無いそうだ・・・転位だ転位転位転位転位しろよっ!ふざけるなぁ~~」
≪ダンダンダンダンダン
「常軌を逸してますよね?」
「遊そのものだね。感情の起伏が激しくなり怒りの統制や善悪の判断が曖昧になるね。他にも弊害が沢山あるね。その代償として強力な自然魔素を扱えるね」
「魔法(精霊魔法)としてですか?」
「魔術と魔法の中間だね。フェイクローと呼ばれる万物の理を都合よく解釈し屁理屈を無理矢理通し、魔法や魔術に似せた何かを発動させるね」
「うるせよぉ~~お前等だろうっ!お前等が悪いんだ!」
騒ぎ立てるだけで、俺達に向かって来る様子は無い。遊の樹人族は奇声と罵声を繰り返す。俺は、遊の樹人族に近付くと、目の前で膝を付き魔法陣の中に組み込まれている5つの中魔晶石の1つを軽く指で弾いた。俺に弾かれた魔晶石が一瞬で濃い黄褐色に染まると、飽和し溢れ出した自然魔素が他の4つの魔晶石へと流れ5つ全ての魔晶石が濃い黄褐色に染まり、魔法陣の方式に組み込まれたカノン語が輝き出した。
「発動しないのはですね俺のせいです。ですから、その問いへの応えはYesです」
「お、お前の仕業かぁっ!ふざけるなふざけるなよぉっ!・・・何だこの光は・・・お前何をしたぁっ!」
「俺が抜いた自然魔素を戻しただけです」
「何だと・・・今の一瞬で魔晶石に魔力を注入しただと・・・ふざけるなぁっ!そんな事が出来る訳ないだろうぉ~~」
俺は日頃から鍛え上げた無視して進行するの姿勢だ。
「まさか、転位の魔法陣が存在していたなんて知りませんでした。これってカノン語の方式ですか?」
「お前に言う事は・・・・・・カノン語だと!?・・・樹人族に伝わる草形文字が理解・・・・・・ハッハッハッハ。所詮は人間族・・・魔力の注入感謝する愚か者よ。ハッハッハッハ」
≪フワッ ・・・
遊の樹人族は転位した。
「突然常軌を逸し突然優越感に浸り、遊って病気か何かなのでしょうか?」
「精神がおかしくなってるとし思えないです。あんな祝福は欲しく無いですね」
「はい」
「まぁ何だね。神から与えられる物を呪いと呼ぶのもなんだからだね。祝福と説明しただけだね」
「呪いの方が適切な表現だと思います」
「私もそう思います」
「邪の神の眷属神もまた立派な神だね。否定してはいけないと言う事だね。しかし、この魔法陣・・・確か魔力陣とか言ってたね」
「知ってるんですか?」
「何処かで見た様な聞いた様な気がするね」
「思い出したら教えてください」
「分かったね・・・」
「ロイク様。どうして、魔晶石に自然魔素を注入したのですか?」
「逃げて貰う為です」
「それなら、魔晶石から自然魔素を抜く必要は無かったと思いますが」
「不可抗力です。この家に移動したと同時に自然魔素感知をしたら、満タンの風属性の中魔晶石を見つけたんですが、感知と同時に感知する為の自然魔素として利用しちゃったみたいで・・・それに、この家は簡単な結界にですが覆われていて、風属性と地属性以外を遮断しているみたいなのでそのせいもあると思います」
「ロイク様は、離れた場所の自然魔素統制まで行える様になったのですね」
「タブレットの画面上から表示している座標に干渉したり、フォルティーナから貰った神様の子供用の補助スキルのおかげだと思います。意識してって感じじゃないのが残念ですが・・・」
「そうなんですね」
アルさんは、タブレットの画面に視線を動かした。
「ロイク様。西側の集落の樹人族の傍に盗賊が3人集まりました」
「集まった様ですね。それでは、行きますか!」
「故意に逃がしたのですよね?」
「えぇ、ですから、次は意図して捕まえます。ですが、このまま行ったら王国軍と鉢合わせしちゃうので、今日は名前の認識が出来ない遊の樹人族さんと愉快な仲間達3人をここに御招待したいと思います。アルさんもフォルティーナも粗相の無い様にお迎えしてくださいよ」
「うんうんだね」
「は、はい・・・」
「楽しそうですね」
「あたしとしては、もう少し何だがね」
「その割には顔がニタ付いてますよ」
「女は笑顔が命だね」
「笑顔とはかなり違うと思いますが・・・【召喚転位・極】『対象』・画面に表示されている4人。『場所』・隣の部屋のテーブルの椅子に1人ずつ。 発動 ≫」
・
・
・
「な、何が起こったんだ?」
「王国軍に囲まれていたはず」
「ボス!ここは東集落のアジトじゃ???」
「プロフェート殿・・・」
「ま、まさか。さっきの!」
「正解だね」
運の神フォルティーナ様は、魔力陣のある奥の部屋から手前の部屋へ歩きながら、満面の笑みを浮かべながら優しく答えた。
「誰だ・・・って、うひょうぉ~めっちゃ良い女じゃねぇかぁっ!ボス飽きたら俺にもお願いしますぜぇ~」
「あぁ~・・・おい姉ちゃんよぉ!海もねぇのに水着姿って事は誘ってんだよな」
「あぁ~・・・忘れてたね」
あっ!俺も忘れてよ・・・
≪パチン
「おい何をした?」
「着替えたね」
「てめぇ~何のつもりだぁっ!」
服に着替えただけだろう・・・何のつもりも何も阿呆だろうこいつら・・・
アルさんと俺も奥の部屋から手前の部屋へ移動した。
「ボス。兄貴。もう1人上玉がいやすぜ」
「その様だな。男は始末して、女は楽しんだ後で売り飛ばす。お前等やっちまえ」
盗賊2人は椅子から立ち上がると、腰に装備したシャムシェールを抜いた。
「おい、お前等、女の服は切っても肌に傷付けんじゃねぇぞぉっ!」
「ボス分かってますぜ」
盗賊2人は俺達にゆっくりと向かって来る。
「怖くないからねぇ~優しくしてあげるからこっちにおいでぇ~」
「兄貴ぃ~あいつらビビッて逃げようともしませんぜ」
「ボスが羨ましいぜ・・・」
短足で小太りの盗賊に兄貴と呼ばれた男は、アルさんとフォルティーナを舐め回す様な視線で値踏みした。
「良い身体してやがるぜぇ~」
「ホラホラ、逃げないと男は死刑。女はたっぷり可愛がった後で売っちゃうよぉ~グフフフ」
グフフフって・・・おっと逃がしませんよ。
遊の樹人族が椅子から立ち上がり玄関のドアへと駆け出すのに気付いた俺は、聖属性魔法【テル―ルパンセ】☆1☆1を発動させ4人を拘束した。
「この遊の樹人族は連れて帰るとして、盗賊は王国軍に引き渡して良いですよね?」
「その前にだね。あたしやアルを不謹慎極まりない素直な欲望の言葉で冒涜したこの男達3人に能力を与えるね」
≪パチン
何をしたんですか?
『不能にしただけだね』
そ、そうなんですね・・・
「ロイク様。態々遊の樹人族を逃がしてまで捕まえた盗賊を、王国軍に引き渡してしまうのですか?」
「もう大丈夫です」
「そうなんですか?」
「えぇ。盗賊達のリーダーとその取り巻きが分かったんで、王国軍も手間が省けると思います。でも、アルさんのおかげで忘れずに済んだ事が1つあります」
俺は、盗賊のボスに手を翳し聖属性の自然魔素を半分程吸収した。
「手足は動かなくても喋る位はできますよね?」
「お、おみゃえたちぃうわだりぇだ。いったいにゃにぃもにょだ・・・」
「質問するのはこっちです。ここで何をしてたんですか?東西の集落合わせて1000人近い盗賊と1000人近い一般人。畑も無いし」
「にゃかまうを」
「聞き取り難くありませんか?」
「そうですね」
俺は、盗賊のボスにもう一度手を翳し聖属性の自然魔素を吸収した。
「こんな感じかな。変な真似をしたら分かりますね。貴方は質問に答えるだけで良いです。仲間を何ですか?」
「仲間を増やす為の女と、王国の力が及ばない奴隷達を売る為だ」
「力が及ばない奴隷?」
「奴隷の闇取引、闇市だね」
「姉ちゃん・・・詳しい様だがそっちかぁ?」
「どっちでもないね」
≪隊長。後はこの家だけです。
≪さっさと調べろ!
≪それが、窓や戸に触れません。
≪どういう事だ!
「王国軍が集まって来たみたいですね」
「アルさん、フォルティーナ。遊の樹人族を連れて先に戻っててください。エルドラドブランシュのビジネスエリアの地下1階に移動させます」
「分かったね」
「ロイク様は?」
「俺は、盗賊達を王国軍に引き渡してから戻ります」
【転位召喚・極】『対象』・アル・R・ルーリン・シャレット、フォルティーナ・R・ルーリン・シャレット。『場所』・エルドラドブランシュのビジネスエリアの地下1階 発動 ≫
「き、消えた・・・プロフェート殿と女を何処にやったぁっ!」
「女って・・・俺の家族は、樹人族と一緒に家に帰っただけです。1つ確認ですが、邪属性の魔術を使える人とか武具を持ってる人とか知らないですよね?」
「・・・女達が連れて行ったプロフェートだ。プロフェートが邪属性の魔術を使っていた!答えたぞ逃がしてくれるんだろぅっ!」
「そんな約束した覚えはありません。ですが、場合によっては考えなくも無いです。例の場所って何処ですか?」
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「ど、どこへ行く気だ!」
「約束が違うぞ」
「決まってるじゃないですか、王国軍に引き渡すんですよ」
「やめろ!」
俺は玄関のドアを開けた。
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