1-57 大神殿の秘密と、地下迷宮と楼閣迷宮。
宜しくお願いします。
――― 創生の地 大森林
――― 6月11日 21:30
魔獣ヴァンアヌトン6匹を仕留めただけで、アリスさん、サラさん、テレーズさん、パフさんの個体レベルは55になっていた。そして、所持しているJOBの修練度は2ずつ上がっていた。
「私達のレベルが55!?」
4人は、狐につままれた様な顔で、ほぼ同時に声を発した。
俺は、4人の表情を確認してから1度だけ確りと頷き、神授スキル【タブレット】の画面を4人の顔の前50cmへ飛ばした。
「宙に絵?」
「・・・これは?」
テレーズさんとサラさんは、このスキルを見るのは始めてだ。
「これは、ロイク様のスキルの1つです」
「はい。ロイク様の神授スキルの1つで、タブレットという物です」
アリスさんとパフさんは、先日のステータス確認のおかげか、このスキルにかなり慣れていた。
「分かり易い様に、魔獣の経験値をまとめたものです」
4人は、目の前にある画面を食い入るように確認した。
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「オプスキュリテが1匹16で、ソイルウルフは1匹5・・・先程の魔獣ヴァンアヌトンは1匹で5000?」
「えぇ~↑・・・今の6匹だけで3万って事ですか・・・」
「3万に、神授していただいたスキル連携の歓喜の効果が加わり更に9倍・・・」
「に、27万ですかぁ!・・・ソイルウルフ54000匹分を今の一瞬で獲得したという事ですか!」
アリスさんが自分に言い聞かせるようにボソボソと声を出しながら確認していると、パフさんはアリスさんの声が聞こえたのか画面からの情報に反応したのか驚きの余り大きな声を上げる。それをサラさんは冷静に訂正し、テレーズさんが更に冷静に分析?していた。
「このヴァンアヌトンは、オプスキュリテ310匹分以上の経験値みたいですが、そんなに危険な魔獣だったのですか?」
「危険かどうかはだね。君達4人で戦って見れば分かるね。ちょうど来たね」
運の神フォルティーナ様が指差した森の中から、1匹の魔獣が飛びながら向かって来た。
「ロイクはこっちに来るね」
「あ、はい・・・」
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前衛無しの4人での魔獣戦が始まった。
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アリスさんとテレーズさんはサンバを踊り、パフさんは混声四部合唱の低音パートのバスを彷彿とさせる低音を喉から絞り出し讃美歌を歌っていた。
後方支援役のサラさんは見た事も聞いた事も無い状態異常攻撃に成す術も無く、先程の戦闘同様に傍観するしか無い状況の様だ。
4人の相手は、ヴァンアヌトンでは無く、【フェイクコキシネル】という魔獣だ。創造神様の怒りを買い創造の地へ落された昆虫型の魔獣で直接攻撃を一切行わ無い。ただし、状態異常攻撃を得意とする。
アリスさんとテレーズは矢を射るよりも早く、フェイクコキシネルの精神攻撃【偽天道虫のサンバ】の直撃を受け踊り出し。パフさんは無詠唱で魔術を連射し好戦していたが、精神攻撃【偽天道虫の讃美歌】の直撃を受け歌い出した。物理攻撃を得意とする者から行動の自由を奪い、非物理攻撃を得意とする者から詠唱の声を奪う。実に素晴らしい精神攻撃だ。だが、このフェイクコキシネルは直接攻撃の手段を持ち合わせていない。【HP】を削る手段を持ち合わせていない。
パフさんは声に成らない低い声でバスのパートを歌いながら、無詠唱で火属性上級魔術【インフェルノ】を撃ち続けたが、フェイクコキシネルの【HP】を削る程の威力には達していなかった。
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――― 1時間が経過
アリスさんテレーズさんはサンバを踊り続けて、パフさんは讃美歌をバスのパートで歌い続けていた。サラさんは後方から見守る俺達の前方で更に前方の3人を成す術も無くただ立っていた。
「フォルティーナ。危険かどうか確認するのは構わないんですが、魔獣が違いますよ」
「神界でも台所で良く見かけるあれと、アブラムシを良く食べてるあれ同じ昆虫だね」
「幻の昆虫、黄金虫をゴキブリ扱いですか?」
「あれは神界では、この世界のあれだからね・・・黒光りしているか、黄金に輝いているかの違いだね」
「かなり違うと思いますよ」
「見た目に騙されてはいけないね。本質を見極める事が重要だね」
「つまり?」
「昆虫という事だね」
「相変わらず大雑把ですね」
「細かい事を気にするとハゲるね」
「これどうするんですか?」
「もう暫く彼女達に実戦を積ませるね」
「・・・踊ったり歌ったり立ってるだけが実戦ですか?」
「・・・死と隣り合わせの緊迫した空気を味わう事で人は強くなるね」
「死ですか・・・」
目の前で繰り広げられる決定打を持たない同士の喰うか喰われるかの世界。時間の無駄では無いかと思いつつも見守り続けた。
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――― 更に1時間が経過
フェイクコキシネルは飛び去り、前衛無しの4人での魔獣戦は終わった。2時間以上も踊り続けた2人は足腰腹筋背筋の疲労や痛みを訴え、低い声で歌い続けたパフさんはかすれた声で喉の痛みを訴えていた。サラさんは謝罪の言葉を何度も口にしながら、水属性の回復魔術で3人を治癒治療していた。
「うんうんだね。パーティーらしくなって来たね」
「・・・何処ですか!」
「見事敵に撃退し戦闘後のケアーを仲間同士でやってるね。美しいね」
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因みに、4人はダメージを与える事が出来なかった為、経験値を獲得する事は無かった。
「この位にしてだね。今日はスカーレット大神殿に戻るね」
「大神殿にですか?」
「大神殿だね。神授スキル【連携の歓喜】には、あたしにだけ強制離脱記憶機能があるね」
「強制離脱記憶機能!?」
運の神フォルティーナ様以外の声が気持ち良くハモった。
「ここ0階、創生の地から出る為には、強制記憶離脱するしかないね」
「俺の神授スキルじゃダメって事ですか?」
「ロイクでは正確な記憶が出来ないね。ここに戻って来た時にだね。また最初からは時間の無駄だね」
時間の無駄って・・・いや、今は触れずにおこう。脱線されてはたまった物ではない。
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――― ルーリン・シャレット天爵領
スカーレット大神殿 帰還の間
――― 6月11日 22:10
俺は、大神殿の最上階地上30mにある帰還の間に居る。運の神フォルティーナ様の強制離脱記憶機能で瞬間移動した俺達はこの場所に転位した。帰還の間には転位移動で戻って来る為だけの広さ約18㎡の部屋【帰還室】と、個室20部屋に、健康器具等が完備された広さ約54㎡の【保養室】に、広さ約180㎡の【休憩室】。そして、温泉風呂が4つ【ひがしみの湯】【にしみの湯】【みなみみの湯】【きたみの湯】があった。スパルームと温泉は、領主館の地下で魔獣を倒した際に入手する事が出来る【ゴッドマネー】を支払う事で利用出来るそうだ。
美容健康回復スパは、金貨1枚で1時間。温泉は、金貨1枚で20人まで全ての温泉の利用が可能になり時間制限は無い。必要な物は全て清潔な状態で貸し出してくれる徹底したサービスが売りなんだそうだ。
今日は、ヴァンアヌトン6匹を仕留め、ゴッドマネーを30枚GETしていた。
「フォルティーナ。この金貨だけど、素材の代金ってどういう事?」
「神界の素材買取所がヴァンアヌトンの素材を買い取ったね。1匹5ゴッドマネーという事だね」
「これって、神様の世界の通貨って事ですか?」
「そうだね」
「さっきの魔獣とかを倒すと、素材と交換してくれるって事ですね?」
「交換では無いね。エルドラドブランシュで手に入れた素材を売った代金だね」
「そうですね・・・。それで、この金貨でここのサービスを受けられる訳ですよね」
「まだ、ゴッドマネーが少ないね。もう少し豊かになるとだね。ここに出店するはずだね」
「何がですか?」
「店だね」
「・・・そうですよね。店ですよね・・・」
「神界や神域に本店のある老舗達だね」
「もしかしてですけど、エルドラドブランシュと同じ様に、精霊地や悪霊地の、地下迷宮や楼閣迷宮でもこの金貨が?」
「地下迷宮や楼閣迷宮の魔獣はこの世界と同じ魔獣しかいないね。素材は自分達で街に売るしかないね。宝箱に入っていたとしても【創造神銀貨】だね」
「ゴッドマネーとハーフゴッドマネーの違いは何ですか?」
「創造神銀貨は、108枚集めるとその人間が今最も必要としているステータス値が5上がるね。宝箱の中には神界や神域の武具や道具が入ってるね。創造神銀貨はハズレみたいな物だね」
「ハズレですか?」
「神界や神域の武具や道具をだね。この世界で手に入れられるのは地下迷宮か楼閣迷宮の宝箱だけだね。それとロイク、君のプレゼントBOXだけだね」
「でも、ステータスが5上がるって魅力だと思いますよ」
運の神フォルティーナ様以外の皆が頷いた。
「何を言っているね。【HP】が5増えたとして何が出来るね。君達が戦っていた初級魔獣ヴァンアヌトンの1撃は8000~9000だね」
「え?」
アリスさんは額から汗を・・・テレーズさん、パフさんは唾を飲み・・・サラさんはフリーズしていた。
「【HP】が5増えるよりも、【HP】が2倍になる様な神具を入手した方がお得だね」
「でも、フォルティーナ。【HP】が100位の人が2倍になったとして、何か出来るでしょうか?」
アルさんが、運の神フォルティーナ様に珍しく意見した。
「・・・それもだね。だがだね、気分の問題だね」
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「たぶん、これってここに居る皆が考えてる事だと思うんだけど、俺達って何を相手にしてるのかな?」
「この世界を創造神が創造する前にだね。練習で創造した世界0階に住む神界神域の魔獣だね」
「神界の魔獣?」
「ロイク様。正確には、神界神域に大量発生した獣や虫を保護する為に創造された世界の1つだと思います」
「創造神は練習で創造した世界を勿体ないって思ったね。使える物は何でも使う創造神の良い所だね」
「ちょっと待ってください。こんな危険な場所と繋がってる建物をこの世界に設置出来る様に俺に神授するって変じゃないですか?」
「封印してたね」
「・・・そ、封印ってあれですよね!」
「何を言っているね。まだ地下に行ってもいないね。0階に居たヴァンアヌトンは神界や神域に暮らす主婦なら1撃で撃退出来るね」
「・・・そ、そうなんですね・・・」
神様ってやっぱり凄いなぁ~・・・
「あれを簡単に仕留める為のスプレーという道具もありますよ」
アルさんが笑顔で教えてくれた。
「そのスプレーでシュッって1回するだけで仕留める事が出来ます」
「ロイク様。先程からこの御2人は何を?」
サラさんが疑問に思うのは当然だ。
「神界?神域?・・・」
「う~ん・・・だね。まだ早いね。さぁ~今日はこのまま温泉に入って身体を癒したら、下の主祭壇で皆で御祈りだね」
≪パチン
運の神フォルティーナ様は指を鳴らした。
「さぁ~、ロイク様。レベル上げも終わった事ですし、皆で温泉に入りましょう」
「そうですわね」
「はい」
サラさん、アリスさん、テレーズさんは、楽しそうだ。
「ロイク様。ゴッドマネー1枚で20人まで大丈夫みたいです」
パフさんは、さっき皆で確認した事を、今気付いたかの様だ。
まさか!フォルティーナ!記憶を操作しましたね?
『忘れて貰っただけだね。今は、その方が良いね』
・・・あのねぇ~・・・
「私の母もここには入れるのでしょうか?」
「うんうんだね。親思いの娘は良い子を産むね」
また、適当な事を・・・
「フォルティーナ。そうなのですか?・・・ねぇロイク。私も母を大切にしようかしら!」
「ぞんざいに粗末に扱うよりは良いと思いますよ」
「そうよね。フフフッ」
「忘れていたがだね。この温泉は、ロイク以外の男が入っている時は、男風呂になるね。しかもここは湯あみ着が禁止だね」
『湯あみ着って何かしら』
さぁ~聞いた事が無いです。
「湯あみ着とは、神聖な式典の前に身体を清める際に肌を覆う湯着の事でしょうか?」
「そうだね。ここは大神殿の上に存在しているのだがね。神聖な地では無いね。だから湯あみ着を着て温泉に入るのは逆に失礼だね」
フォルティーナが湯あみ着って言うのを着たく無いだけとかって言いませんよ?
『それもあるね。ただ、主祭壇や降臨の間や講堂より上に存在するここは既に神域や神界の域や界に達しているね。神同士で敬意を示し合うのはおかしな話だね』
はぁ・・・
『身分としての上下は存在しても、存在自体に上下関係は存在しない。人間種間も、精霊種間も、神もそれは同じだね』
またいつもみたいに話が大きく脱線しているみたいなので、今度ゆっくり聞きますよ。
『最近、冷たいね』
・・・
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俺や、アリスさん、サラさん、テレーズさん、パフさんの母親や祖母や姉妹を招待し女性陣だけで温泉を楽しんで貰った。その後、男性陣達からの避難の視線に耐え切れず男性陣達にも温泉を楽しんで貰った。
俺は、領主館にある温泉に1人で入り、今日の疲れを癒す事になる。だがそれは5時間程後の事になる。
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――― ルーリン・シャレット天爵領
エルドラドブランシュディナー専用ルーム
――― 6月11日 24:30
「あの慈愛と慈悲に満ちた空間。創造神様に包まれている様な錯覚を覚えたぞ」
「はい陛下」
「パトリックにイヴァン。少し違うぞ。あの空間は畏敬と威厳に満ちておった」
「叔父上。創造神様なのです。慈愛や慈悲、それに畏敬や威厳を私達が感じたとして何も不思議ではありません」
「イヴァンの言う通りだ叔父上よ」
イヴァン・ルーリン国王陛下、パトリック・ミィストゥリィー宰相閣下、剣聖ボードワン・ルーリン天爵殿下、王兄エンゾ・ルーリン天爵殿下、アラン・トゥージュー公爵閣下、バルタザール・ルーリン王子、オーレリー・ルーリン王子、アルセーヌ・ルーリン王太子、ガスパール・ルーリン王子、クレーリー・ルーリン王子、ジャマル・ルーリン王子、クレマン・ルーリン王子、セザール・トゥージュー次期公爵、ヤン・ラカコア伯爵閣下、エディ・ラカコア次期伯爵、ステファン・パマリ侯爵閣下、ジェルマン・パマリ伯爵閣下と、俺の父バイル・シャレット。
クララ・J・ルーリン国太后、エメ・B・ルーリン前王妃、アリス・E・ルーリン王妃、ドミニク・B・ルーリン妃、パトリシア・B・Jr・ルーリン妃、サンドラ・ルーリン王女殿下、リナ・ルーリン王女殿下、リラリス・トゥージュー夫人、プティット・トゥージュー公爵家令嬢、クリオ・ラカコア夫人、イネス・E・ルーリン妃、ローラ・O・ルーリン妃と、俺の母メアリー・ルーリン。
そして、俺と、世界創造神様公認の俺の嫁&花嫁見習い達は、料理の神chefアランギー様と妖精達が織りなす究極至極の料理を楽しみながら、ルーリン・シャレット天爵領の領都となったスカーレットに建立した大神殿や大聖堂や領主館や領地内の街道や城壁や橋について意見を交わし合った。
料理の時間が終わると、マルアスピーが1日の中で最も大好きな時間デザートタイムが始まった。今日のデザートは、クレープシュゼットだ。料理の神chefアランギー様は1人1人の好みに合わせ目の前で丁寧華麗神技で究極至極を神託。そんな中、マルアスピーは5度目のおかわりをする。
「chefアランギー。2枚お願い」
「おんや、パトロンロイクの奥方よ。デザートタイムの私を呼ぶ時は、pâtissierアランギーですよはい!」
「そう。分かったわ。2枚お願い」
「・・・おんや・・・はい」
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「それで、ロイク」
「はい陛下」
「陛下・・・こういう席では叔父上でも良いのだが・・・」
「宰相閣下や臣下の前で叔父上と呼ぶ訳にはいきません」
「仕方ない。私も気を付ける様にしよう。・・・英雄ロイクよ。その、地下迷宮と楼閣迷宮というのは、既に存在する訳だな」
「創造神様より神授をいただいたフォルティーナの話では、俺の領地内にあるヒグマの丘の邪気の洞窟の奥深くに地下にあるそうですが楼閣迷宮(上り)と、コルト湖の湖底に地下迷宮(下り)と、ホラセイラ山脈のカイライ山の頂上にある楼閣迷宮(上り)と、闇属性が強い夜の時間に闇属性が強い場所に不規則に出現する地下迷宮(下り)と楼閣迷宮(上り)があるそうです。状況から見て、【邪気の洞窟】の楼閣迷宮は一般に開放したいと思います。ですが、コルト湖の湖底やカイライ山の山頂は辿り着く事が難しい場所にありますので一般に開放するのは控え、俺のスキルを使い王国軍や騎士団や宮廷魔術師隊。アドベンチャーギルドを通しメルセネールギルドやアローギルドやマージギルドには、条件付きで解放したいと考えています」
「それが無難だろう」
「問題は、管理仕切れない闇の地下迷宮と楼閣迷宮という事でしょうか?」
「宰相閣下。その通りです。2つの陽が沈み陽の光が消え闇の時間になるとランダムに出現する迷宮は誰にも管理する事は出来ないでしょう」
「ロイク安心するね。今日の24:00夜になる少し前に、創造神は世界中の者に神授すると言っていたね。夜の時間になると出現する地下迷宮や楼閣迷宮と邪気の洞窟の楼閣迷宮をだね。そして、悪霊地に出現する達成型の地下迷宮か楼閣迷宮の事をだね」
「悪霊地の場所は分からないのか?」
「陛下。俺が知ってるのは、ロイにある大地石の祠。確認はしていませんがサンガスにある海の祠。リッツにある火山の祠だけです。後は名前だけは分かっているんですが場所の特定が出来ていない風の祠」
「フォルティーナ殿!創造神様は場所は?」
「場所は聞いて無いね。だがだね。集落の名前は言っていたね」
「・・・フォルティーナ。陛下はそれを聞きたいんだよ」
「なるほどだね。風の祠は、ヴァルオリティア帝国の樹人族のフィーラにあるね。世界には他にもあると言っていたね。それともう1つ適性の無い者はその名を持つ祠の迷宮には入る事は出来ないね」
「それって、火属性の適性を持った人間だけでパーティーを組んで火山の祠の迷宮に挑むって事ですか?」
「そうなるね」
「なぁ!それってよぉー複数の属性を持ってる奴が有利じゃねぇーかぁっ!」
「バイルよそれは違うね」
「おぅそうかぁっ!違うよなぁっ!俺もそう思ったぜぇ!」
親父・・・それは無いだろう・・・
「うんうんだね」
この2人って何なの?・・・
「忘れてたね。この王国には、もう1つあったね」
「祠がですか?」
「厳密には祠では無いね。適正に縛られる事の無い迷宮があるね」
「何処ですか?」
「マルアスピーにある信仰の根だね」
「あの小さな村の傍に、邪気の洞窟の楼閣迷宮の他にもう1つ迷宮があると言うのかね!」
陛下は運の神フォルティーナ様に質問した。
「傍ではないね。中にだね」
「え?村にはそんな感じの場所は無いと思いますけど・・・」
「いや・・・」
父バイルにしては珍しく真顔だった。
「無くは無い」
「親父・・・無くは無いってどういう事だよ」
「家があっただろう」
「そりゃ~住んでたからな」
「その下だ」
「家の下?」
「加工場の前に俺と母さんの家があったろぉーあの下だ」
「家の下に迷宮があったのか?」
「お前が産まれる前によぉっ!大樹の森ん中でなぁっ、見た事ねぇー魔獣に遭遇してよぉっ死にかけた事があってなぁっ!いやーあれはマジでやばかったぜーハッハッハッハ」
「親父笑って無いで話を進めてくれないか?」
運の神フォルティーナ様以外の皆が頷く。
「こりゃぁ~無理だって思った訳よぉっ!で、コルト川を這い上がった所で気を失ってなぁっ!目が覚めたらマルアスピー村のビリーの店だった訳よぉ」
親父の言うビリーさんは、マルアスピー村の回復道具屋の店主で、バラの親父さんだ。
「でなぁっ!流石に魔獣の事が気になったからよぉっ!傷が癒えるのを待って、遭遇した近辺を神授スキル【遠望】で何度も探索した訳よぉー」
「この話って迷宮に関係あるんだよな?」
運の神フォルティーナ様以外の皆が親父の顔を見る。
「だから話てんじゃねぇーかよぉ!そんなある日な、飲み過ぎてゲロってたわけよぉっ!そん時な地面が何か光ってんだよぉっ!酔ってたし夢だと思ってなぁー暫くは自分のゲロった場所だしよぉー近付かなかったんだけどよぉっ!魔獣を遠望で見つけた日にそこがアホみたいに光ってな!魔獣が集落に向かって来るのが分かった訳よぉ!」
「それで?」
「勝てねぇ~って知ってる相手だろうー俺は無駄な事はしねぇー性分だからよぉー離れて見守る事にしたんだよぉっ!・・・魔獣はその光の中に吸い込まれる様に入って行ってなぁっ!俺は慌てて石で光を塞いだ訳よ。で、その酔い潰れて眠ってる時に夢でな、俺がゲロった所に家を建て住めって言われてなぁっ!子供を立派に育てろって命令されてよぉっ!」
「親父、母さん・・・それって、創造神様からの神授だったんじゃ・・・」
「酔ってたし寝てたからしんねぇーけどよぉー・・・すんげぇー強ぇー魔力だか自然の力だかがある場所だからって!産まれて来る子供が女を見つけて男になるまでその家に居ろって言われたなぁっ!」
「それ何で俺に言わなかったんだ?」
「おめぇー大丈夫か?神授は普通他人に言わねぇ―もんだろうがぁっ!」
「普通って・・・それに他人って・・・」
「それによ、ゲロった場所に家建てましたって言えっかよ・・・」
それを隠すために神授を・・・まさかな・・・
「で、おめぇーがマルアスピーちゃんを連れて帰って来た時に思った訳よぉー」
「まさか・・・」
「男になってねぇーまだだってなぁっ!」
「・・・」
何、言ってんだこいつ・・・
「家に居ろって命令されたしよぉー遠出も出来ねぇ―し!・・・いやーまいったよぉっ!」
「何の話してんだ?」
「だから、お前が男になるまではあの家に居ろって言われただろうぉっ!俺とメアリーにおめぇーが引っ越すぞって言った時、メアリーと理解した訳よぉー」
「そ、そうか良かったな・・・」
「孫が生まれるってなぁっ!」
「えぇ!」
「メアリーママさんも、おとうさまもセッカチね」
この人達何を言ってるんだ・・・?
「親父、母さん・・・迷宮の話じゃないのかよ・・・」
「あぁーそっちだったなぁっ!迷宮になるとしたら、俺達の家の下だな!」
「始めからそれだけで良く無かったか?」
「そうかもなぁっ!」