1-54 邪なる存在と、創造神様からの指令③。
短いです。
宜しくお願いします。
――― 王都モルングレー
王宮内 エンゾ天爵の居住地区
――― 6月11日 14:50
クレメンス・オデスカル大司教は、俺の魔法で眠ってたはずだ。自然魔素を加減し過ぎたか?・・・いや、それは無いな。補助スキルで自然魔素や神気のコントロールをして抑えてるとはいっても、聖属性(精霊)魔法のドリーマーが1日で解ける何て考え難い・・・大司教が状態異常攻撃に対して耐性を持っていたと考えるべきか!
「目を覚まし行方を晦ませたというのは、話をしたり食事を摂ったり、ベッドから起き上がり歩いている所を見たという事ですか?」
「それが・・・巫女候補生達の話では、午前中の介抱の際には、まだ眠っていたそうなのです」
「それって、朝食の前ですか、後ですか?」
「王宮殿教会では、朝食を済ませた後に治療魔術を施し、その後介抱を行う事になっています」
だとすると、姿を消してからまだそんなに時間が経って無いな。
俺は、右上に設置した画面で時間を確認する。『R4075年06月11日(無)時刻14:55:24』正午少し前だった。
「まだパレスエリアの何処かに居ると思われるので、俺のスキルで場所を絞って探してみます」
「なるほど、その手があったか!」
「スキルで探すとは?」
トール・ベスキモ司祭は、祖父エンゾと俺の会話を理解出来ずにいた。
検索:対象・クレメンス・オデスカル:条件・世界創生教会大司教、邪の神気を帯びた者、ゼルフォーラ王国王都モルングレー ≫
≪・・・・・・・・・UNKNOWN
あれれ・・・居ないって事か?・・・干渉規制???
「居なくなってからまだそんなに経っていないはずなのに、もう王都には居ないみたいです」
「居ない?何かスキルを発動されたのですか!」
「えぇ・・・範囲を王都に絞って探してみたんですが、クレメンス・オデスカル大司教を見つけ出す事が来ませんでした」
「出都するには移動が早過ぎるな」
「転位移動や飛空移動や全力状態で俊足を実行した」
「大司教が所持しているスキルの中に、転位や浮遊、俊足は無いはずです。それに飛行移動用の輓獣を教会は飼育しておりません」
「ロイク。いっその事、ゼルフォーラ王国全土或いはゼルフォーラ大陸で調べてみてはどうだ?」
「そうですね・・・やってみます」
検索:対象・クレメンス・オデスカル:条件・世界創生教会大司教、邪の神気を帯びた者、ゼルフォーラ王国 ≫
≪・・・・・・・・・UNKNOWN
UNKNOWNか!
「ダメです。俺のスキルでは、王国内に居ないというか、クレメンス・オデスカル大司教を検索出来ないみたいです」
「お前のあの凄いスキルででもか?」
「はい、存在が未知認識出来ない様です」
どういう事だろう?
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――― スタシオンエステバルクリュ
中空の離宮 本殿 守護者の間
――― 6月11日 15:40
「来たかね」
「お待たせしました。クレメンス・オデスカル大司教が運び込まれた介護室を指示通り調べて来ました」
「どうだったね?」
「転位や召喚の痕跡はありませんでした」
「空間の歪みはどうだったね?」
「何もありませんでした。おかしな事に、教会なのに神気も全く感じませんでした」
「ん?それはおかしくないね」
「そうなんですか?」
「神気は、神かその眷属。神気を持った精霊だけが持つ力だね。人間達が勝手に建て信仰の象徴にしている場所にある訳が無いね」
「それ凄い暴露ですよ。創生教会に神は関係無いって神様が喋ってるんですから」
「関係無いとは言わないね。偶然神授や神託を教会や大聖堂や神殿で授かる者もいるかもしれないね」
「それ、偶然ですよね!何処でも良いって事じゃないですか」
「問題ないね」
「神様が言うなら問題無いんでしょうけど・・・何か信仰について考えてしまいそうです」
「信仰は目に見え形である必要は無いね。意識や精神、心の中に存在している事が重要だね」
「俺は、コルト大聖堂に4回しか行った事が無いので、創造神様を畏敬し尊敬し心から信じていますが、教会その物に思い入れは無いです」
「ロイク。創造神のきまぐれに愛され、あたしの冥護を授かり、アスピーと繋がり加護を与えられた君が、創造神を信じない訳が無いね」
「神様にそうやって言われるとなんか照れ臭いです」
「創造神は言ってたね」
運の神フォルティーナ様の表情は真剣だった。どうやらいつもの適当とは違う様だ。
「中空の離宮本殿、神宮殿、ハレム。スカーレットのノートルダム大聖堂、大神殿、ロイクの家」
「スカーレットの俺の家?スカーレットはさっき作って来ましたが、俺ってまだ家も持ってないのに別荘を持ってるって変な状況にあるんですよ・・・」
「別荘?・・・・・中空の離宮のハレムの事かね?それに、家は創造神から神授された家を設置したと聞いたね」
「ハレム?・・・神授していただいた家?」
「ロイクが住んで居る建物の事だね」
「俺が住んでる家って、あの建物はハレムって通りを持ってるんですか?」
「そうだね」
「へぇ~・・・凄い物をいただいていたんですね」
「そうだね。神に感謝するね」
「感謝の気持ちは常に持ってますよ。勿論、フォルティーナにも、chef様にもです」
運の神フォルティーナ様は、怪しい笑みを浮かていた。
「スカーレットに置いた館だがね」
「館?取り合えずの領主館ですか?」
「そうだね。家の事だがね。あれの説明書はちゃんと読んだのかね?」
「と、言いますと?」
「屋上に研究施設があるね」
「みたいですね」
「その研修施設は、中空の離宮の研修所と繋がっているね」
「家と別荘が繋がってるって事ですか・・・!」
別荘しか持っていなかった俺が、家しか持ってない状況になったって事だから別段普通か・・・
「そして、研究所と研究施設とタブレットの道具管理の空間は共有になっているね」
「便利そうですね」
「そして、ここからが問題だね」
「問題?・・・欠陥住宅だったんですかあれ!」
「欠陥は......
≪≪You've Got Mail (女の子の可愛らしい声)
......創造神からだね。早く確認するね」
「こ、このタイミングでメールですか・・・そ、そうですね」
創造神様からのメールを中央の画面に表示 ≫
≪・・・表示しました。
画面を10倍に拡大表示 ≫
≪・・・拡大しました。
***********************
差出人:KAMIsama
宛先 :Roiku Rulin Charrette
件名 :スキル強化と指令③
☆スキル強化・対象スキル☆
1.【神眼・万物限定】
↓※精霊域の万物を解放
↓※魔界の悪意、敵意、殺意を解放
↓※悪魔域、魍魎域のスキルを解放
【神眼】※コルト下界の万物※
※精霊域の万物(精霊界では無い)※
※魔界の悪意敵意殺意限定※
※悪魔域、魍魎域のスキル限定※
2.【転位召喚】【限定転位・上位】
↓※スキル統合※
【転位召喚・極】※対象の転位移動許可※
※対象の召喚移動許可※
※指定座標許可※
≪指定座標≫
1.中空の離宮 ①本殿・守護者の間
②ハレム・リビング
2.スカーレット領主館 ①リビング
②寝室
3.スカーレット大神殿 ①守護者の間
≪指定許可≫
1.マルアスピー・ルーリン・シャレット
2.アル・ルーリン・シャレット
3.フォルティーナ・ルーリン・シャレット
4.アリス・ルーリン・シャレット
5.サラ・ルーリン・シャレット
6.テレーズ・ルーリン・シャレット
7.パフ・ルーリン・シャレット
8.トゥーシェ・ルーリン・シャレット
9.〇〇〇・ルーリン・シャレット
10.〇〇〇・ルーリン・シャレット
11.〇〇〇〇・ルーリン・シャレット
12.〇〇〇〇〇・ルーリン・シャレット
13.〇〇・ルーリン・シャレット
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「ようするに、神眼が強化されたって事ですね」
「ようするに、創造神の予定では、嫁は13人って事だね」
・・・
・
・
・
「・・・はぁ~~~?」
「ルーリン・シャレットはロイク、君の苗字だね」
「そうですね。新しい苗字です」
「ルーリン・シャレットの姓を持つ者はロイクの嫁か子孫しか現時点で存在しないね」
「あぁ~そういう事ですか・・・って、おい!何の冗談ですか」
「あたしは知らないね。後で創造神にメールして確認すると良いね」
「いや、それは・・・自分事で創造神様にメールを送る何て出来ないですよ」
「変な所で畏敬しているね。でも、創造神の言う事は聞けないという話なのかね?」
「そういう意味ではな・・・」
「分ったね」
「お、創造神様にフォルティーナが話てくれるんですか?」
「任せる。13人じゃ足りないみたいで納得してなかったね。ちゃんと伝えておくね」
「・・・いえ、結構です」
この神に期待してはいけない。忘れる所だった・・・
「冗談だね」
親父より質が悪い存在が神様だなんて何とかしてくださいよ創造神様!俺、創造神様の気に障る事を何かしましたか?
「気に入られたね」
気に入られて・・・それでこの仕打ちだなんて。
「ロイク」
運の神フォルティーナ様は急に真面目な表情になった。
「ど、どうしたんですか?」
「前から気になって居た事なんだがね」
「はい」
「あたしは、男の子と女の子が欲しいと思っているね。どちらかだけというのは寂しいね」
「ん?・・・・・・あぁ~確かに両方居ないと人間は滅んでしまうし男と女が存在するって重要ですよね」
「・・・子供の話だね」
「そりゃぁ~突然大人で産まれて来たら怖いですよ」
「・・・もう良いね。アスピーはどうやって一緒になったんだね・・・分からないね」
「何の話をしてるんですか?」
「まずは、創造神からのメールを全て見てしまった方が良いのではないかね?」
「それもそうですね」
何かはぐらかされた感じがしないでもないが・・・
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指令③ 神界牢獄逃亡犯神5柱を拘束せよ
期限 R4076年
02月22日 時刻15:00:00
依頼料:前払い分
①:神授スキル【連携の歓喜】×14
※ルーリン・シャレット姓を持つ者限定
≪機能≫
同一スキルを所持している者が、
パーティー内居る場合、
その人数分の経験値を獲得する。
例:2人なら2人分。4人なら4人分。
≪捕捉≫
運の神フォルティーナと、
神獣アル、
大精霊マルアスピー、
悪魔トゥーシェの、
レベル、ステータス、
経験値に対しては無効。
ただしPTメンバーへは反映
臨時検索結果を表示する【 Go 】
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「神様を5人捕まえろって意味にとれるんですが」
「そう書いてる」
「神様に犯罪者を捕まえる機関って無いんですか?」
「天使があるね」
「天使じゃダメ何ですか?」
「天使達は万能じゃ無いね」
「・・・それ俺にこそ相応しい言葉と思うんですが」
「天使は神格の無い、眷属でも無い存在だね。神格を持った神を捕まえる事は難しいね」
「それ、捕まえる機関に天使を配属している時点で思いっきりミスってますよね?」
「かもしれないね」
「かもって・・・間違ってるって断言出来ると思います。というか改善した方が良いですよ」
「創造神に言っておくね」
それは、伝えるんだ・・・
「それで、画面の【 Go 】を押すね」
「・・・そうですね」
俺は、画面の【 Go 】を押した。
≪強制検索を開始します。この検索ワードに限り、指令③を達成するまでの期間、認証を許可します。【邪の神の神気を帯びた者・物】【邪の神気を帯びた者・物】【拘束任遂行中の天使・使徒】 ≫
≪・・・該当は、36人と不明4。9品です。表示します。
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人間種人間族 18人 人間種小人族 0人
人間種巨人族 2人 人間種獣人族 5人
人間種樹人族 2人 人間種竜人族 0人
人間種妖精族 3人 人間種魔人族 6人
その他 4
武具 9品
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「これでどうしろと・・・」
「この中に逃亡した神がいると言う事だね」
「それは何となく分かります。俺が気になっているのは、この世界に邪の神気を帯びた人間がこんなに存在してるんだって事と、9品邪の神気の武具があるって事と、領主館の問題です」
「小さいを事を気にしているとハゲるね」
「・・・家に問題を残したまま生活する方が精神的に厳しいと思いますよ」
「分ったね。話すね・・・」
「そんなに話したくない事だったんですか?」
「そうでも無いね」
「あぁ~もう!お願いします。フォルティーナ!」
「あの建物は居住用の北地区に招かざる者を拒む結界が張られているね」
「?それの何処が問題何ですか?」
「1階の結界は、魔界の悪域と同じ物。2階の結界は、下界の聖域と同じ物。3階の結界は、精霊界の精域と同じ物。4階の結界は、無域と同じ物。5階の結界は、神聖域と同じ物だね」
「何故?」
「どの存在にとっても快適な空間をお届けする為の創造神の優しさだね」
「無域と神聖域ってなんですか?」
「無域は、どの域にも属さない不快でも快適でも無い何でも無い結界の中の事だね」
「それで良く無いですか?」
「ダメだね。快適では無いね」
「そ、そうなんですね」
創造神様の拘りって事か・・・
「神聖域は、神界や神域に存在する創造神が存在する創造神殿の結界と同じだね」
「そんな凄い結界が家にあっても良いんですか?」
「問題無いね。中空の離宮の創神殿や、スカーレットの大神殿の降臨の間や安息の間も同じ結界だね」
「・・・良く分からないですけど、そうなんですね。それで、特に問題点が分からなかったんですが、何が問題何ですか?」
「中空の離宮の温泉の効能を知っているかね?」
「別荘のバスルームに貼ってあった奴ですよね?」
「そうだね」
「フォルティーナの寝殿の温泉と同じ効能で、アルカリ性単純泉で美容美肌の効果があるとかって書いてましたよね?」
「そうだね」
「それがどうしたんですか?」
「あの建物の効能は、単純硫化水素泉で美肌、疲労回復、呼吸疾患、神経、五臓六腑に良いね」
「それで?」
「少し臭いね」
「はぁ?」
「問題だね・・・」
「あのぉ~言ってる意味が良く分からないんですが」
「体験した方が早いね。今夜教えてあげるね」
「わ、分りました・・・それで、結局、俺達って何の話をしてたんでしたっけ?」
「邪の神の神気を纏った者がロイクの近くから消えた話だね。神界の牢獄から神5柱がコルト下界に逃亡したから新しいスキルを駆使して拘束しろという話だね」
「・・・創造神様からクレメンス・オデスカル大司教を見つけ出す手段を、偶然いただいたって訳無いですよね?」
「偶然は必然であり必然は偶然だね」
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――― 王都モルングレー
王宮内 エンゾ天爵の居住地区
――― 6月11日 16:30
俺は、ゼルフォーラ王国王都モルングレーの王宮内にある祖父エンゾの居住地区に神授スキル【フリーパス】で戻り、祖父エンゾ、祖母イネス、運の神フォルティーナといる。
「つまり、邪の属性を帯びた状態にあるクレメンス大司教は脅威であり人間にとって危険な存在だと言う訳か。そしてクレメンス大司教の様な存在がこの世界には36人も居る」
「そうみたいです」
俺は、創造神様からいただいたメール。つまり神授の内容を所々伏せながら説明した。
「ロイク。確か、そちらの方は降臨の間の椅子の後ろに控えていた・・・」
「えぇ・・・」
どうして着いて来たんですか?
『私は常に自由だね』
そ、そうですね・・・
「私は、フォルティーナ。訳あってフォルティーナとしか名乗れ無いね」
それ、自分で言っちゃダメですよ・・・
「私はロイクの祖父エンゾ。そして妻のイネスだ」
「フォルティーナさんは、メアリーとも親しくしているようでしたが、創造神様の離宮にお住まいなのですか?」
「あたしは、自分専用の寝殿があるね」
「そうなのですか・・・」
祖母イネスは、祖父エンゾを見る。
「もしや貴方様は・・・・・・」
「貴方・・・」
祖母イネスは、祖父エンゾの袖を引っ張り、視線を動かした。
「・・・そうだな」
長年連れ添った夫婦だからこそ出来る目配せによる微妙な意思疎通だ。
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「それで、危険人物達のリストはあるのかな?」
「残念な事に、名前や詳細情報は分かりません。分かっているのは場所のみです」
「その1つが、私の領地の集落という訳か!」
「はい。邪の属性を帯びた樹人族が1人集落に紛れ込んでいる様です」
「盗賊討伐隊は正午前に出陣したそうだ。それで、どうするつもりかな?」
「そうですね、まずは王国軍に盗賊を発見して貰います」
「発見・・・盗賊の場所なら既に知っているだろう?」
「はい。ですが、王国軍は情報を与えられ行軍しているだけです。情報通りの場所に集落があって、盗賊が存在し戦闘になる必要があります」
「邪の属性を帯びた存在の対処はその後でという事だな・・・」
「ただ、始めから危険だと分かって居る場所に兵士達を行かせ、無駄死にされるのも後味が悪いので、近くで待機し直ぐに助けに出られる様にするつもりです」
「あたしも同行するね。安心するね」
「2人だけで戦地へ行かれるのですか?」
フォルティーナも一緒に行くんですか?
『神が絡んでいる可能性もあるね。あたしはロイクの傍にいるね』
逃亡している神1柱を初回で引き当てる可能性か!運の神様と俺の運だとありえるか。ハハハ
『今のところ【運の暴走】は起きていないね』
それは、有難いです。
「はい、御祖母様。フォルティーナと俺なら万が一って事もあり得ません」
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