1-53 領都スカーレットの夜明けと、常識と正論。
宜しくお願いします。
――― 王都モルングレー
王宮 本宮殿 国王の間
――― 6月11日 11:30
俺は、ゼルフォーラ王国王都モルングレーの王宮の本宮殿にある国王の間で、緊急召集の臨時軍事会議に出席している。
臨時軍事会議は、文字通り臨時で開かれる軍事に関する会議だ。今日は祖父エンゾによって王国軍中央指令部に齎されたルーリン平原に巣食う盗賊の情報と、先日ルート4で起きたアドベンチャーギルドに登録する冒険者達による事件、そして石化の呪いを解呪され時間の流れを取り戻した解呪士達の件が議題だ。祖父エンゾからの盗賊に関する情報提供が無ければ、冒険者や解呪士の件は明日の御前会議の後に開かれる通常の軍事会議で話し合われる事になっていた。だが、祖父エンゾによって齎された盗賊の情報の出所が稀代の英雄として噂の俺である事や、盗賊達が巣食う拠点の近くまで王国の正街道規格で俺が道を敷いてしまっている事等を理由に、王国軍中央指令部は王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵に上申し判断を仰いだ。
王国軍長官は、ゼルフォーラ王国軍の文官階級では最高位で、そんな王国軍長官を20年間の長きに渡り務めているのがゴドウィン・モンロー(66)伯爵だ。彼は、王兄エンゾ・ルーリン天爵殿下の妃イネス・E・ルーリンの兄でもある。そして、軍務大臣レオ・スラリス辺境伯爵に緊急の軍事会議の開催を要請した。
緊急の軍事会議の開催を要請された軍務大臣は、ゼルフォーラ王国では、辺境伯爵家の当主が3ヶ月交代で務める事に成っている。1月・2月・3月に軍務大臣を務めるスラリス家。4月・5月・6月に務めるデュポン家。7月・8月・9月に務めるマーガレット家。11月・12月・13月に務めるはフェトロング家。10月大樹の月だけは王家の者が軍務大臣を務める事になっている。現在の軍務大臣はレオ・スラリス(65)辺境伯爵で、ジェルマン・パマリ(44)新伯爵の妻マリア(38)の父親だ。彼は、要請を受けると宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵に軍事会議を開催する様に申し入れた。
宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵は急ぎ、国王イヴァン・ルーリン陛下に王兄エンゾ・ルーリン天爵と俺の話を伝え、国王イヴァン・ルーリン陛下は王命(勅令)による軍事緊急会議を召集した。
軍事緊急会議に召集されたのは、宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵、剣聖ボードワン・ルーリン天爵、王兄エンゾ・ルーリン天爵、ディラン・デェイビュー公爵、アラン・トゥージュー公爵、ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵、軍務大臣レオ・スラリス辺境伯爵、王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵、中央騎士団総括団長兼第3師団団長ジェルマン・パマリ伯爵と俺だ。
「エンゾ天爵殿下の領内ルーリン平原中央地域に、盗賊の拠点が2ヶ所存在し、拠点の規模はそれぞれ800人強で内400~500人が盗賊で、他は家族や捕虜や誘拐された人の可能性が高い訳ですね?」
「ゴドウィン。その者達が盗賊の家族なのか捕虜なのかは知らないが、我が領内に盗賊が800~900人以上いるのは間違い無いだろう」
「その盗賊ですが、密偵や間者を放ち確認した訳ではないのですよね?」
「そうだ。副王の神授スキルによって盗賊の拠点を2つ発見する事が出来たのだ」
「その副王陛下の神授スキルというのは、警戒・監視・索敵・探索等を一度に行える物なのですね?」
「そんな感じです」
「その神授スキルとは別の力を使い、会議の前に王国正街道規格で道を敷いていた訳ですよね?」
王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は、訝しそうな表情で発言した。盗賊を発見する少し前、会議が開催される前の午前中の短い間に、道・準街道・正街道を敷き、壁・外壁・城壁・堤防・防波堤・船着き場・領主館・大聖堂・神殿・貴族領軍私兵隊本部事務所を設置し、橋を架けたと説明を受け、これを素直に信じる者はそうはいないだろう。
「ゴドウィンよ。疑問に思うのも無理は無い」
「陛下!陛下はこの様な話が現実に在り得るとお考えなのですか?」
「モンロー長官。陛下に対し失礼であるぞ」
「ミィストリィー宰相殿・・・宰相殿とてこの様な話」
「だが、陛下、エンゾ天爵殿下、ボードワン天爵殿下、トゥージュー公爵、パマリ伯爵そして私は、事実だと信じている」
「な!・・・デェイビュー公爵殿。ミィストゥリィー公爵殿。スラリス大臣殿。私の認識がおかしいのでしょうか?」
「陛下、父上。モンロー伯爵の見解は的を射ております。ドラゴンやS級討伐対象の魔獣を何十匹何百匹と討伐に成功した英雄殿であったも、日の出から緊急会議までの僅かの間に、西ルーリン平原の海岸まで移動し魔術で領都を完成させ、何Kmも離れた場所の盗賊を見つけ出し、緊急会議に出席する等不可能です」
「・・・陛下、私もミィストゥリィー公爵殿と同じ意見です」
ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵は、父である宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵と国王イヴァン・ルーリン陛下に対し、常識的な見解に基き正論を展開した。そして、ディラン・デェイビュー公爵はこの正論に賛成の意向を表明した。
「公爵2人は盗賊の討伐に反対する訳だな」
「陛下。盗賊の討伐を反対する意思はありません。ですが、それは盗賊が確実に存在するという前提があった上での話です」
「ゴドウィンは公爵達と同じ考えなのだな?」
「はい!陛下」
王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は力強く肯定の返事した。
「してレオお前の意見はどうなのだ?」
「慎んで申し上げます。軍務大臣として申し上げるのであれば常識的に考え、この話には不可能な点が多く信憑性を欠いていると判断します。ですが、軍務大臣としてでは無く1個人として申し上げる機会をいただけるのであれば、副王陛下の類まれな資質や僅か2週間足らずで遣り遂げた多くの実績。そして、義理息子ジェルマン伯爵との信頼関係を考え、不可能や信憑性あらゆる点を凌駕し真実を語っているのではないかと思えてなりません」
「つまり、お前は賛成か」
「はい。私は賛成します。盗賊の有無に関わらず、新たに敷かれた街道が存在するのであれば、利用許可を出す為にも街道管理局の兵士を討伐隊の後方に配置し、検査点検を行軍と同時に行わせるのが良いと考えるからです」
「ですが、その道も本当に敷かれているのか定かでは無いのです」
「その時は、兵士や指揮官達の野営訓練や、街道行軍非街道行軍の訓練だと位置付けて考えると良いのです。それに定かでは無いのであればなおの事、街道を確認しながら盗賊の討伐を念頭に行軍する必要がある訳です」
「なるほど・・・盗賊がいようがいまいが、街道が有ろうが無かろうが、王国軍を行軍させるメリットはあるという事か」
「そうです。ミィストゥリィー公爵殿」
「それでしたら、私も王国軍の出陣に賛成しましょう」
「ミィストゥリィー公爵殿・・・デェイビュー公爵・・・」
王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は、ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵の名を呼び、直ぐに視線をディラン・デェイビュー公爵に移すと助けを求め名を呼んだ。
「うむ。一理あるな!私も出陣に賛成しよう」
「陛下。副王陛下、エンゾ天爵殿下、ボードワン天爵殿下、デェイビュー公爵、トゥージュー公爵、ミィストゥリィー公爵、軍務大臣レオ・スラリス辺境伯爵、私パトリック・ミィストゥリィーは、全会一致で王国軍による盗賊の討伐を認めました。参考人として、王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵、中央騎士団総括団長兼第3師団団長ジェルマン・パマリ伯爵に意見を求めました」
ディラン・デェイビュー公爵、ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵が、王国軍の出陣に賛成する発言をすると、宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵は国王イヴァン・ルーリン陛下に透かさず決議の報告をした。
「世の命により、王国軍による盗賊討伐を行う。本日正午までに王都モルングレーより出陣する。討伐隊の編成は王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵に一任する。」
「か、畏まりまた」
王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は、納得のいかない表情のまま深々と臣下の礼をし、国王の間を後にした。
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「街道管理局局長ラントレ・ボール準男爵をここへ」
≪はぁっ!
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「R4075年6月8日に発生しました冒険者達による争いにより、王国街道ルート4の交通が半日以上麻痺。また、王国軍、王都駐屯騎士団による殲滅完了後の現場調査の結果、修繕点検の必要が確認された為、街道管理局として修繕補修班を編成マジシャン60人を動員し6月10日夕刻全行程を完了致しました。街道修繕補修費用の総額は約1020万NL。修繕補修費用はアドベンチャーギルドに罰金を課し国庫への負担はございません」
ラントレ・ボール準男爵は、紙を持つ手を震わせ緊張した面持ちで報告した。
「経済物流への被害。騎士団の帰還遅延。軍の負傷者死傷者への保障はどうなっている」
「はぁっ!争いを起こした冒険者達を警備部の真偽確認の魔導具にかけ、容疑が確定した者は司法省へ引き渡す事になっております」
あれ?あの状況で、他の冒険者を拘束出来たのか!
「ラントレ・ボール準男爵殿」
「は、はい」
「宰相閣下殿。ラントレ・ボール準男爵殿の名前を呼んでしまってからですが、発言しても良いですか?」
「どうぞ副王陛下」
「あの日は、名を持たざる森と森の入り口が気になり、神授スキルでずっと確認していたのですが、俺が知ってる限りの情報では」
「うん?例の盗賊を見つけたというスキルの事でしょうか?副王陛下!」
ダヴィッド・ミィストゥリィー公爵だ。
「はい。それによると、戦闘終了の時点で、ゼルフォーラ王国王都モルングレー王民地区治安部隊所属騎馬中隊3部隊300名は、死者14名、負傷者20名、夜の森に迷い込んだ者が5名。王都モルングレー駐屯騎士団戦車小隊1部隊50車両200名は、死者1名、負傷者16名、迷い込んだ者は0名。冒険者側は、死者4人、負傷者7人、逃亡を企て森へ逃げた者が59人。拘束に成功していたのは死者4人負傷者7人の合計11人でした。早朝から探索や修繕を開始したとして、身柄を拘束した冒険者は何人だったのか気になりまして・・・」
「今の数字は何処からでしょうか?」
「俺のスキルで確認した物です」
「宰相殿。改めて王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵をここへ呼び8日の事件の軍の状況を報告させましょう」
「数字が明確な情報だ。副王陛下のスキルの程を見極めるのに良いな」
「・・・陛下いかが致しましょうか?」
宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵は、デェイビュー公爵、ミィストゥリィー公爵の発言を聞き、陛下に判断を求める。
「良い機会だ。ゴドウィンをここへ呼ぶが良い。ただし、ディランとダヴィッドには確認が済み次第考えて貰う事になるぞ」
「私はそれで構いません」
「私もです」
「畏まりました・・・王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵をここへ!」
≪はぁっ!
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王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は、国王の間に再び呼び出されると、関係書類と関係者からの確認の為慌てて国王の間を飛び出し、約30分で戻って来た。そして、軍の被害状況と冒険者の拘束状況を報告した。
「副王陛下の情報は軍の所属まで正確であったな・・・」
「信じられん・・・離れた地に居ながら、見通す力があると言うのか!」
「これで、分っただろう。ダヴィッド!副王陛下の力は我々の常識を当て嵌め考えて良い物では無いのだ」
「陛下!陛下と父上は、副王陛下の力をどこまで御存じなのですか?」
「それは、次の御前会議の場で打ち明けるとしよう」
「畏まりました・・・」
「このディラン・デェイビュー。ロイク・ルーリン・シャレット副王陛下に対し謝罪する。その力まさに本物。神授スキルを疑っていた訳ではありませんでしたが、数々の無礼な言葉を御許し願いたい」
「いや、普通の反応な訳で、俺は気にしていませんから、気になる事がある時は聞いてください。その方が俺も助かります」
「・・・副王陛下の御命令とあらばその様に致します」
「命令っていうか・・・お願いっていうか・・・」
「副王陛下、私も謝ろう。済まなかった」
「はぁ~・・・」
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「王国軍と王都駐屯騎士団が協力したにも関わらず、身柄を拘束出来た冒険者達は死者4人負傷者7人逃亡した6人だけなのか?」
「その様に報告にあります」
「あと53人だと人数も分かっている。王都の交易商でワインを運んでいた商人と、ロイの奴隷商で奴隷を運んでいた商人が雇っていた冒険者達だと分かっているのだ。速やかに身柄拘束の命令を軍と各ギルドに出すのだ」
「は、はい・・・」
「街道管理局局長ラントレ・ボール準男爵と王国軍長官ゴドウィン・モンロー伯爵は下がって良いぞ」
「はぁっ!」
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「さて、先日の石化の呪い解呪の場に皆立ち会ったと思うが、その呪いを解呪された者達の処遇について話合いたいと思う」
「何故軍事会議で話し合う必要があるのだ?」
「それは、彼等の石化する前の所属や知識が問題になっているからです」
「100年程前の所属や知識がか?」
「そうです」
宰相パトリック・ミィストゥリィー前公爵と剣聖ボードワン・ルーリン天爵は2人で話を進める。
「どの様な問題が生じるというのだ?」
「現代に復活した彼等の多くが、王国軍やブオミル侯爵領ロイ貴族領軍私兵隊に所属していた者達なのです。中には高い能力を持ちマージギルドやアカデミーに所属していた者もいます」
「当時の機密や秘密を知っていると言う事か・・・」
「それだけなら良いのですが、戸籍の管理によって血縁関係を把握する事は出来ても、遡って財産や住居を取り戻す事は、現時点で正当な権利を有している者から取り上げる事に成ってしまう為好ましくないという判断に至ったのです」
「つまり、社会に戻し失った年月をどうこうしろという話ではないと」
「戸籍や年齢の問題は何とかなりましたが、生きる事の再開として、彼等には1から新しく生きる事を条件にする必要があります」
「新しく生き生活する場所か・・・71人。先に解呪した2人を含め73人の新生活を助成する必要があるとして、王都では無理なのか?彼等は解呪士だ働き出せば直ぐに一定水準まで生活レベルを上げる事は出来ると思うが」
「解呪士は魔獣使いと同じ様に先祖代々継承によって受け継がれるケースが多いのです」
「なるほど」
「王都でも貴族領でも、呪詛・解呪士は概ね必要要員に達しているのです。医療機関や教会等であれば採用の可能性はありますが、過去の軍の機密や秘密を知っている可能性のある彼等を創生教会に・・・」
「なるほど」
「ロイク。お前の新しい領都で雇い日頃は行政の仕事でもやらせたらどうだ?73人もの呪詛や解呪に長けた者を一度に雇える機会など早々無いと思うが」
・・・あぁ~確かに貴族領軍私兵隊として雇っても良いし、行政運営要員として雇っても良いし、後から独立しても問題無い訳だしありか!
「宰相閣下殿。ボードワン天爵殿。俺の領都に彼等を迎え入れるってのはどうでしょう?」
「領都?」
「ですから、今朝作って来たと報告した領都の事です」
「だが、領都として登録する事は王国法上問題は無いが、人が生活する為の生活物資が無理だろう?」
「ボードワン天爵殿。上下水道は建物を設置する時に整備出来る様にしてあるので、魔導具と食料さえあれば生きていけます」
「その食料が問題では無いか?」
「暫くは俺が運び込んだ食料を配給にしても良いし、仕入れた値段で売っても良いし何とかします。生活が安定し彼等が自分達で考えどの様に生きて行くか決定するまでは、解呪した俺の責任だし責任を持ちます」
「そこまで言うなら、儂は反対しないが・・・」
「宰相閣下。彼等に話を通しておいていただけますか?彼等の準備が整い次第、領都に彼等を移動させ新生活を開始させます」
「う、うむ・・・陛下?宜しいでしょうか?」
「副王の領地に住むのであれば問題は無いし良いか・・・」
「畏まりました」
「それで、俺の領地の話になったので、橋と道と出入通行管理税徴収兵と領都の件で相談があります」
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俺は、正街道をモルングレー西の森と勘違いし、モルングレー北の森まで切り開き敷いてしまった事を報告した。国王陛下や宰相閣下の反応は祖父エンゾや俺の予想に反し好意的で、森を切り開いた部分は、ルーリン・シャレット天爵領の追加領地となった。その代わり2つの条件を提示された。1つは森を切り開き敷いた街道をそのまま伸ばしヴィクナン侯爵領の手前まで街道を敷く事。もう1つはヴィクナン侯爵の求めに応じ無償で橋を架け街道を敷きリッツと繋ぐ事。(この橋と街道は、次の日6月12日の国王御前会議の場でヴィクナン侯爵より要請を受け魔法で完成させました)
ルーリン川に既に架けた橋1本と架ける予定の橋4本の許可は国王陛下から簡単に貰う事が出来た。
橋と繋ぐ道に関しては、アラン・トゥージュー公爵が二つ返事で認めてくれた。
国王・王国直轄地内の街道と橋を繋ぐ許可は次の日の6月12日の国王御前会議で可決され無事敷く事が出来た。
そして、6月11日(無)14:10。ゼルフォーラ王国に新たな領都が誕生した。ルーリン・シャレット天爵領【領都スカーレット】だ。現在の人口は0人。
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――― 王都モルングレー
王宮内 エンゾ天爵の居住地区
――― 6月11日 14:20
俺は、祖父エンゾの居住地区にあるリビングに、祖父エンゾと祖母イネスと3人でいた。
「朝から見かけないと思っていたら、私を置いて領地の視察に行っていたなんて、貴方だけずるいですよ」
「視察と言っても、ロイクが魔術で道や壁や建物を完成させるのを見ていただけで、行って楽しくなるのはこれからの話だ」
「王都や王宮が一望する事が出来るのですよね?」
「なかなかの景色だったぞ」
「・・・あれ?後で神殿に参拝するんですよね?」
「そのつもりだ」
「それなら、その時は、御祖母様も一緒に行きますか?」
「私も連れて行ってくれるのかい?」
「えぇ!折角なので、今日は領主館に泊ってみようとも考えています」
「そうなのかい・・・・・・」
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≪コンコンコン
「なんだ?」
「王宮寺院の司祭殿が、至急のお目通りを副王陛下に求めています」
「うん?俺にみたいですね」
「もう直ぐ昼食だが、会うかね?」
「そうですね」
「会うそうだ。通せ!」
「はぁっ!」
「失礼致します。エンゾ天爵殿下、イネス妃ご機嫌麗しゅう」
「あぁ、まぁ入りたまえ」
「司祭様こそお元気そうで何よりですわ」
「ありがとうございます。ロイク副王陛下。お初にお目にかかります私はゼルフォーラ王国王都モルングレー王宮殿教会の司祭を務めておりますトール・ベスキモと申します」
70歳後半の男性がいかにも司祭様といった井出達でリビングに入って来た。
「司祭様がわざわざ俺にいったい何の御用でしょうか?」
「昨日、預かりました者が目を覚まし行方を晦ましました」
「え?・・・クレメンス・オデスカル大司教がですか?」
「はい」