1-52 人口800人の集落と、人口0人の領都。
宜しくお願いします。
祖父エンゾは、正面に出現した神様の説明によると少し大きめの家を、驚愕の表情を浮かべ見ている。
「目の前に建っているのは、領主館か?」
「神様からいただいた家シリーズの中に、少し大きめの家というのがあったので置いてみました。予想以上に大きいのでちょっとびっくりです」
「ちょっとと言うか、普通に大きいぞこれは!王宮の本宮殿より普通に大きいぞ・・・」
「う~ん・・・国王陛下や宰相閣下から苦情が出たら、誰かに設計して貰って新しい屋敷と入れ替えます」
「入れ替える・・・まぁ~お前なら可能か・・・」
「魔術でサクッと出来ますからね」
「そうだな・・・あ、あ、あれは何だ!」
「あれはですね。うん?」
祖父エンゾは、南側に出現した一際大きく優雅な建造物を目にし喫驚している様だ。
「大丈夫ですか?そんな引き攣って身構えなくても・・・あれは、大聖堂です」
「あれが、大聖堂だと!」
「そうみ説明にありました」
「コルト大聖堂より遥かに大きいではないか?」
「コルト大聖堂は4000年以上の歴史がありますが、こっちは比較的新しくて近代の建物みたいなのでその分大きいんだと思います。それに、特出しているのは、高さとその白さだけみたいです」
「2本並んだ塔の様な部分の高さはいったい何mあるんだ?」
「えっとですね・・・パーリという所のノートルダム大聖堂の詳細情報を表示 ≫」
≪・・・表示しました。
「一番高い所で約69mみたいです。長さが127.5mで、正面の幅が12.5mで、中に入ると主祭壇までの中央通路の天井の高さが32.5m。あの2つの塔だけが規格外で大きいって事になりますね」
「王宮の中央見張塔が26.8m。王都では中央見張塔が最も高い建物、優に倍以上の高さという事か。あの様に凄い建造物があるとは何処の国の大聖堂なのだ?」
「それが、分からないんです。パーリという所にあるノートルダムって名前の大聖堂って事しか・・・」
「パーリ?聞いた事が無い地名だな・・・ゼルフォーラと国交の無い国の大聖堂の可能性が高いか・・・それと、神々しいまでの白色と緑色に輝いているあの建造物はなんだ?」
「あれは、神様からいただいた家シリーズの中に神様の御家ってのがあったので置いてみたんですが・・・何か家って言うか神殿みたいだったので、大聖堂の方にしたんです」
「おうち?・・・あれも大きいな」
「はい、高さが34mで、大理石と橄欖石で出来ているそうです」
「神様がお前に建立しろと預けたおうちという事だな。・・・神様の神殿、しんでんということは、畏敬し尊ぶべき信仰の場所という事ではないか!イヴァンや他の者にも急ぎ知らせなくては」
「まぁ~道はある訳ですから、時間がある時にゆっくり見に来ればいいじゃないですか」
「神様の寝殿なんだぞ、建立したからには礼拝すべきだろう」
祖父エンゾは、御家なのか神殿なのか寝殿なのか大混乱の最中にある様だ。
「もう少し街っぽくなったら招待しますよ。今の状況だと宿泊する場所も、出入通行管理の王国兵も居ませんから」
「うむ、確かにそうだな。・・・だが、私は後で皆に先立って御挨拶に伺う。転位を頼むぞロイク!」
「・・・ははぁ、御爺様の仰せのままに!」
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街道から堤防、防波堤から船着き場、外壁から城壁、大聖堂と神殿、領主館と貴族領軍私兵隊の本部事務所予定の建物の説明を済ませた俺は、いよいよ本題のルーリン川に架ける橋について、祖父エンゾと打ち合わせをする予定だったのだが、祖父は別の事に頭がいっぱいの様子だ。
俺は、神様からいただいた家シリーズの中にあった少し大きめの家こと臨時の領主館の5階にある領主執務室と書かれた部屋に、祖父エンゾといる。
「ここは、領主館の最上階で真ん中になるのか?」
「そうみたいです。左側のドアは真北で右の側のドアは真南らしいです。真北は俺や家族が生活するエリアから直接入室出来るみたいです。真南は公務全般の為のエリアと繋がっているみたいです。って、聞いてませんよね?」
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祖父エンゾは、景色に夢中だ。
「凄いな!領地がほぼ見渡せ、王都モルングレーまで見えるとは!」
「ここ5階の領主執務室は、東西に出っ張っていて出っ張った部分はガラス張りで、しかも地上17mの高さにある様です。屋上もあるみたいで、屋上は22mの高さみたいです。屋上にある建物は研究室と見張り台って書いてます。見張り台は9mあって360度見渡せるらしいです」
「22mの高さから更に9mか!・・・しかし、ここで17mだとして、この眺めだ。神殿や大聖堂の塔から見たお前の領地や、王都はどの様に見えるのやら・・・」
「ここよりも高い訳ですから、それなりだとは思います。・・・それにしても、意外にここから王宮って近いんですね。結構近くに見えるますよね?何Km離れてるんだろ?ここから、ゼルフォーラ王国王都モルングレーの王宮本宮殿まで・・・あっ!」
「どうした?」
「ここの名前を付けないと」
「どういう事だ?」
「壁に囲まれていて、領主館があって、教会があれば、人口は関係無く領都なんですよね?」
「王国法ではそうだが・・・」
「そうなると、王国に報告して領都として登録しないとダメですよね?」
「そ、そうなるな」
「名前かぁ~・・・」
「領都が、今の一瞬で完成してしまうとはな!・・・ドラゴンを単身で討伐するだけの力を持っていることは疑い様の無い事実。力もさることながら魔力も桁違い・・・私の孫は凄いな。領都の1つや2つ簡単に魔術で造り上げてしまったか」
祖父エンゾは、窓の外に広がる景色、王都を眺めながら感慨にふけている様だった。
「領都というか、道と堤防がメインです。それよりも、領都の名前です」
「名前か!名前もそうだが決めなくてはいけない事が沢山あるぞ。領都として存在する以上、貴族領軍私兵隊や各ギルド支部の誘致、出入通行管理所を何箇所設置するのか、医療施設や図書館やアカデミー、領の条例や税。移住条件。貴族階級、王民、領民、行政施設や商業施設」
「神様からの使命や指令があるので、領地経営や国政に掛かり切りになるのは無理だし、誰かに代行とか頼めませんかね?」
「それは、問題無いぞ。市長や執政官を任命すれば良い。領主は基本王都に住み中央議会や御前会議、国政の役職を任され全うする必要があるからな」
「領主館って必要なんですか?行政専用の建物があれば事足りそうですよね?」
「領主館は領主一家や領主が住み、領国経営をする為の拠点だ。それに国王の視察時の拠点にもなる。なにより非常事態の際に、お前の場合は神様の怒りでも降らない限り人間にとっての非常事態は非常事態の内にも入らないだろうがな。ハハハ」
「王都で募集するか、神様に頼んでみます。神様の使命や指令で動く事が多い訳ですから、俺が不在の時のケアーも考えてくれているはずです」
「ロイク。お前にとって神様とはいったいどんな存在なのだ?・・・フレンドリー過ぎないか?」
「神様は神様です。国王陛下が国王陛下な様に尊い存在です」
「それなら良いが・・・畏敬の念を忘れるでないぞ」
畏敬って言われてもなぁ~・・・運の神様や料理の神様があれだからなぁ~・・・って、神様の話よりもまずは領都の名前だよ!
「領都との登録には、軍旗や家紋も必要になるか!」
「軍旗ですか?」
「そうだ」
軍旗って、王宮や領主館や軍とかに掛けられたあれか・・・
「王国旗ってセルリアンブルーで、国王旗はライトブルーですよね。御爺様は何色なんですか?」
「私は、幼い頃から病弱だった事もあって軍旗を持っていないのだよ。もし今出陣する事があるとしたら、王国旗のセルリアンブルーか、息子オーレリーの軍旗ライラックを代用する事になるだろう」
「オーレリー王子様はライラックなんですね。なるほど」
「王子!お前にとっては母の兄。つまり伯父にあたる訳だ王子では無く、伯父上様と呼んだ方が良いかもしれんぞ」
「そうですね・・・」
王族って呼び方1つでここまで面倒なのか!母さんが親父と駆け落ちしたのが何と無く分かる気がするよ・・・それだけが理由じゃないだろうけど・・・
「因みにだが、私の家紋は、白地に黒い線で兎の双頭が横を向き右側の兎の右の耳が前に曲がっておる。そして兎の瞳はルビー色だ」
「白と黒と赤の3色で、兎の双頭ですか!」
「国王。つまり王家の家紋は、白地に山羊の横顔の双頭で、左側の青年の山羊は金刺繍で描かれ瞳はルビー色。右側の老年の山羊は白金刺繍で描かれ瞳はサファイア色で髭を蓄えている」
「王家ってそんな家紋だったんですね」
「ゼルフォーラ王国に住んでいて知らなかったのか?」
「王国軍は出入通行管理の税徴収兵だけだったので、王国旗は飾ってあっても国王旗や王族旗は飾ってませんでした」
「アンカー男爵領はそんなに小さい集落なのか?」
「今は、540人以下になってしまったと思いますが、その位の村です」
「貴族領の領都としては最小規模だとは知っておったが・・・ロイクお前が記録を更新したな!」
「俺がですか?」
「そうだ。人口0人の領都の領主はお前しかいないからな」
「あぁ~なるほど・・・あれ?アンカー男爵家は、スカイグレーに白い線で兜の絵でしたが、軍旗と家紋が一緒なんですかね?」
「一緒と言う訳では無い。ゼルフォーラ王国の法律で決まっているのだよ。男爵家は領地持ちならスカイグレーの軍旗に白い刺繍で家紋を描き、領地の無い男爵家なら家紋だけを白字にスカイグレーで刺繍とな。因みに、子爵家は領地持ちならオリーブドラブの軍旗に白い刺繍で家紋。領地の無い子爵家なら家紋だけを白字にオリーブドラブで刺繍。伯爵家以上の家は、王国旗、王族旗、公爵旗と誤解しない色と装飾であれば何でも自由に決めて良い事になっている。ただし、一度決定したデザインを変える場合は中央議会の承認が必要となる」
「なるほど」
「付け加えるとだな。準男爵家や半爵家等の貴族家の次男やそれより下の者達の家紋は、本家の家紋を白地にイエローで刺繍する決まりになっている。士爵位や騎士爵位は家紋は無い。ただ、騎士爵位の者は大抵の場合所属する騎士団の団旗にホワイトの刺繍で何か絵を描いているそうだ。騎士団の団旗には白地が存在しないからだそうだ」
「軍旗や家紋にもそんな決まりがあったなんて・・・意外な所に法律って制定されてるんですね」
「意外と言うか、家紋や軍旗で紛らわしいと困るのは自分達だからな」
「確かにそうですね」
「被らない様に気を付けるとして、他の王族の者や公爵3家の色を知っているのか?」
「知らないです」
「だと思ったよ。王家の軍旗は他に2つ剣聖ボードワン叔父上殿のボトルグリーン旗。バルタザールのチャコールグレー旗。公爵3家はデェイビュー家のゴールド旗。トゥージュー家のエメラルドグリーン旗。ミィストゥリィー家のカナリア旗」
「被らないのって赤系位ですね」
「色で言うならばそうなる」
「そうなると・・・ルーリン・シャレット家は大樹の副王って役職だから」
「大樹の副王は役職ではいぞ。大樹の森全域の統治を認められた領国の領主の地位を領主では無く副王として呼称している訳だ。つまり、身分その物だ」
「天爵と副王はどっちが偉いんですかね?」
「微妙だな!お前の場合公式な名乗りは、ゼルフォーラ王国近衛騎士団副団長王宮近衛隊隊長・大樹の英雄・外戚王族天爵位・ロイク・ルーリン・シャレット副王。天爵領と副王領を領地として所持し身分としては外戚王族の天爵であり王国副王だ。私の場合は至ってシンプルで、王兄エンゾ・ルーリン天爵殿下」
「ゼルフォーラ王国では、王位継承権を持たない王族が殿下何ですよね?」
「そうだ。諸外国では殿下が王位継承権を持っている事が多いらしいが、ゼルフォーラでは王子が王位継承権を持っている。叔父上殿や王族の女達や私は殿下という事になる」
「ま、王子様達の王位継承の順番は俺に関係無いし、それは良いとして・・・被らない赤系かぁ~。検索、赤系の色の名前と色具合≫」
≪・・・・・・該当は121色です。
「うわっ!大聖堂もでしたが、赤い色だけでもこんなにあるんですか!」
「似た色にしか見えない物もあるが名前が違うな・・・」
「はい」
「この色の名前の響き、領都に相応しいと思わないか?」
「どれですか?」
「サラマンダー色という名前の下にある、スカーレットやルージュだ」
「3色とも色が似てますね」
「だが、スカーレットもルージュも良い響きだ。軍旗と領都名が同じというのも便利ではないか?」
母さんに良く似ていて意外に大雑把だよなぁ~・・・やっぱり親子だよ。でも、確かにスカーレットやルージュって悪く無いかも。
「少し待ってください」
「待つのは構わんが・・・何をするつもりだ?」
「ちょっと、名前について検討を!」
マルアスピー聞こえますか?
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『どうしたの?』
俺の領地に街を作ったんですが、その名前を決める必要があるんです。
『そう』
それで、名前なんですけど、スカーレットかルージュにしようと思うんですが、どう思いますか?
『ルージュはナンフ語で口紅とか唇という意味よ。スカーレットにしましょうよ』
そうなんですね・・・分かりました。街の名前が口紅とかって嫌なので、スカーレットにします。
『えぇ。今、ティラミスという御菓子を食べているの、忙しいからまたね』
食べるのに忙しいって・・・俺って御菓子以下なんですね・・・
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「ルージュって口紅とか唇って意味らしいので、ルーリン・シャレット領の領都の名前はスカーレットにします。軍旗もスカーレットなら被らないので、王国にはこれで申請します」
「そうか、ゼルフォーラ王国の王国民達が生活する大樹の森の外区域で、もっとも西にある地の領都はスカーレット。西の地に相応しいかもしれないぞ」
「色の名前がですか?」
「横陽が沈む海、西の領都。赤く染まる白い領主館と大聖堂。神々しい白色と緑色に輝く神殿。サーフィスのゴールデンコートと寸分違わぬ黄金の海岸。夕陽に染まったスカーレットを想像してみろ。まさにスカーレットの名にふさわしいと思わないか?」
やっぱり母さんと祖父は親子だ。想像の世界がロマンティックな所なんかそっくりだ。
「夕陽の港町か!悪く無いですね。・・・大聖堂と神殿と夕陽の港町スカーレット!」
「長いな」
「とりあえず、スカーレットで決定です!と、いう事で、スカーレットの領主館から王都モルングレーの王宮の本宮殿の距離を表示 ≫」
≪・・・表示しました。
画面に、84.2Kmと数字が浮かぶ。
「王宮まで直線だと約84Kmなんですね。どうりで近くに見えるはずです。大聖堂や神殿から見るのが楽しみですね」
「そうだな!・・・しかし人口0人の領都がまるで王都の様だ!」
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やっと、橋を架ける話になった俺と祖父エンゾは、許可を貰う流れを確認していた。
「国王・王国直轄領に道を通す場合の許可は、私が御前会議で掛け合おう。街道に道を繋げるだけだ、多数決で否決される事は無いだろう。それと、橋を架けるのは事後報告で十分だろう。川の管理者である国王の許可イヴァンから許可を貰えば良いだけだしな」
普通は、国王陛下から許可を貰う事が難しいと思うんだけど・・・そこは事後報告で良かったんですね・・・って、もう1本架けてしまったし、間違って森を切り開いて街道を敷いてしまったし・・・祖父に任せてしまおう!
「あとは、トゥージュー公爵家に掛け合って、橋と道を繋ぐ許可を貰う必要があるか!損は無いし、道を敷く費用を負担するか、道をこちらが敷くと伝えれば喜んで応じるだろう」
「なるほど」
「しかしあれだ。国王の管理と王国の管理は、微妙に異なるところが面倒この上ない。国王だけならば簡単な話も、王国の管理となると中枢の者達の合意が必要になる」
「中枢って、御爺様達ですよね?」
「そうだ。イヴァン、私、叔父上、パトリック宰相、デェイビュー公爵、トゥージュー公爵、ミィストゥリィー公爵、アヴィル侯爵、ヴィクナン侯爵、トニナス侯爵、パマリ侯爵、ブオミル侯爵、他要件によって参加者が変わる国王御前会議が国の中枢だ。そして、今日からはお前も副王として天爵として中枢の一員だ」
俺もなのか・・・面倒だなぁ~
「俺は神様からの仕事があるので・・・」
「それはイヴァンとて承知しているさ」
「それなら良いのですが・・・」
「神授いただいた内容から、私達が出来る事は、国を豊かにし軍備を整え兵士を鍛え、来たる悪に備える事と、王国として人間としてお前に協力する事のみだ」
「北の地ってアバウトな情報から、場所の特定もしないといけないし忙しくなりそうです」
「次の御前会議では、この件が議題だ。中央議会に情報を開示し、国内或いは各貴族家に公表するか決める必要があるからな。諸外国への連絡も早い方が良いだろう。・・・それと街道だな」
「対策としては、創生教会との連携も重要になりますが、あの大司教はどうしましょう・・・」
「2~3日は寝た状態なのだったな」
「そうです」
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「さて、かなり早いですが、サーフィスに戻りますか?」
「いや待て、我が領内の不審な集落はどうなった?」
「そうでした。・・・その集落の人達は驚いているでしょうね。街道が目の前に突然完成したんですから」
「あれは誰でも驚くと思うが・・・本当にサス湖まで繋がっているのか?」
「この地図の通りに道を敷く様に心象して魔術を実行したので繋がってますよ」
「そうか・・・この歳になって私も領都を持つ時が来た様だな」
「御爺様も領都の領主様って事ですね」
「木材や石材の運び入れが可能になった訳だしな。それに、サス湖の水運を利用すれば大量輸送が可能になる。対岸のダリウス伯爵領シリウスや、下流のトミーサス王国の王都トミーランとの交易も可能になる。おっと、これは、領都が完成してからの話だな。私もお前の事が言えんな」
「ハハハ。いっそサス湖の湖畔に領都を建設したらどうですか?」
「森を切り開くのか?」
「領都をサスに面し森に囲まれた場所にすれば、森を抜けた先の広大なルーリン平原は農園として開発し放題ですよ」
「考えておくよ。それよりも、今は怪しい集落だ」
「突然押し掛けて、何やってるんですか?じゃダメですよね?」
「違法な事をやっている場合、素直に喋る訳が無いし危険だ」
「う~ん。まずは、タブレットで付近を拡大して確認しましょう」
「そうしてくれ」
「エンゾ・ルーリン天爵領の人口800人程の怪しい集落を中心に半径5Kmを表示≫ 」
≪・・・表示しました。
タブレットの画面は広範囲の地図を表示し、画面には800人を超える集落が2つ表示されていた。
「農地に対して住居と人口がおかしい集落が2つあるみたいですね」
「その様だな。・・・集落の周りに畑が増えている様なら麻薬や違法植物の栽培かもしれんが、家ばかり集り800人が暮らしている。いったい何だ?」
「人間を青色。魔獣を赤色。獣を黄色で表示≫」
≪・・・表示しました。
「魔獣は居ないみたいだし、獣を飼育しているという事も無さそうです」
「その様だな」
「人物を特定出来ていないので、この青い点1つ1つの詳細情報から、知っている人を探すか、気になる情報を見つ出すしか無いです」
「そうか。それなら、まずは奴隷や盗賊を表示してくれ」
「分かりました。青の表示の下に奴隷の場合はesclave、盗賊の場合はbrigandと表記 ≫」
≪・・・表示しました。
画面には、半数以上の青の下にbrigandと表示された。
「盗賊が領内に巣食ってしまうとはな!急ぎ王国軍に報告し討伐隊を組織させ殲滅させよう」
「俺がやってしまった方が早く無いですか?」
「お前が殲滅するのが確実で一番早い。だが今回は新街道や橋の存在を印象付ける為にも、王国軍が討伐した方が良いのだよ。何よりそれが彼等の仕事だ」
「王都からだと街道を使ったとし2つの集落は約80Km。兵士全員が馬に乗って移動したとしても、1日はかかります。戦闘に入る前に休憩を取る必要もあるので、仮に今直ぐ王国軍が出陣したとして、殲滅完了は明日の夜頃でしょうか・・・」
「出陣から帰還まで、約3~4日だろうな・・・あくまでも騎馬だけで動いた場合の話だがな」
「なるほど」
街道と新街道や堤防。マルアスピーやコルトやロイやモルングレーや中空の離宮を地図に加えました。