6-MS-170 コルトに16歳の神授を取り戻せ - スポーツと理想。Don't bring politics into sports. -
神授スキル【タブレット】と自作の半神具で魔道具【MRアイズ】を関連付けさせたことで、思ってた以上の便利さを手に入れてしまった。
今更だけど、創造ておいてホント良かったよ。既存のスキルと既存の神具に手を加えた二次的な道具って部分がちょっと引っかかるけど、競合してないし改良して以上の物を生み出すのは悪いことじゃないよな。うん。
視界の左下隅に意図的に表示させた時間を確認する。
おっと、もうこんな時間か。
―――アシュランス王国王都スカーレット
グランディール城・プライベートエリア
(3Fにある国王とその家族専用の区域)
R4075年11月25日(風)14:04―――
小一時間で昼食の時間だし、そろそろ話をまとめ……この状況を?……無理だろ!……。
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王城グランディールの三階プライベートエリアのリビングルームは、宮殿エルドラドブランシュの三階のリビングルームより一回り程狭いが家具の位置はだいたい同じだ。
不規則に置かれたローテーブルは全部で七脚。七つのローテーブルを囲むように置かれた一人掛け用ソファーも七脚。三人掛け用ソファーは十二脚で四人掛け用ソファーは六脚。
普通のチェア二十二脚に囲まれた天板部分が妙に広い普通のテーブルが一脚。
座ったことのない物を置いたことのない家具ばかりだが、家にあるリビングルームはだいたいどれも同じ感じなので見慣れた感愛着は持っている。
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ジャスパットの銘菓落花生羊羹を茶請に神茶。
拘りは余りない方だが、雰囲気は大切だ。形から入るのは好きではないが、生命を脅かす程の危険が潜んでいないならそこまで気にしない。
人数も人数。羊羹とお茶。そしてここはリビングルームで生命は保証されている。
フカフカの絨毯にそのまま腰を下ろし、漆塗りのローテーブルを囲むこと早二時間。
テーブルを囲む面々を順に見回して行く。
俺の左隣に座ってるトゥーシェは呼んでいないが何故かここにいる。静かにジャスパットの銘菓と工房ロイスピーの菓子を食べてるから気にしないでそっとしておこう。
その隣に座ってるルイーズ様とその隣に座ってるラケル殿とその隣に座ってるクロコダイアン様は、当時大流行していたらしい生命を落とす心配も大怪我を負う心配もない二人一組二チームで競うスポーツとかいう中のスカッシュテニスとかいう危険を伴わない戦いの話で盛り上がっている。
さっきは、スポーツとかいう中の確か、……クレーンサッカーだったかな、蹴り合い多く倒したチームが勝利するとか。ナンバーズフットサルだったっけ、一から十五の数字が書かれたパネルを蹴り出した自然魔素で射貫き先に一列射貫きビンゴした者が勝利し賞金を得る。ビンゴゲームを態々脚と自然魔素でやるという一風変わった趣向の戦いの話で盛り上がっていた。
今三人が話てるのもそうだけど、昔は下半身を多用する安全な戦いで盛り上がれたんだなぁ~。殺試合とか魔獣狩りとか血が流れる見世物より平和的で安全で良い時代だったんだなぁ~。
「ツーハンドのフェデファン。風と氷の貴公子が勝つだろ」
「いや、鉄槌バックハンド荒野のジョコダルだな」
「いや」
「いや」
「いや」
「いや」
「まぁーまぁーいったん落ち着け。クロコダイアン様もラケル殿ももう叶わねぇーもんでどっちがあーだこーだいやいや言い合ったところでどうしよもねぇーってことは分かってるはずだ。ここは、チームを作って決着をつけるってのはぁ―――どうだろう~。選手でも監督でも好きな方で良いぞ」
「「……素晴らしい♪」」
「だろう」
話がおかしな方へシフトしたような。
「こうしてはいられませんね。……お館様」
「あ、はい」
「最強のチームを作る為、暫く旅に出ます。マーツ、ターケ、ウーメ、キークには指示を出しておきますので探さないでください。では」
キュッピーン。
「あ、はい……」
流れが早過ぎて何も言えなかった。
「陛下、あの神獣は世界最強を多く輩出した南大陸で固めてくるはずです。ですので、我々がやることは一つしかありません」
「は? 我々って、俺もその中に入っちゃってません?」
「我々はアシュランス王国の強さをあの神獣に知らしめてやりましょう」
……俺の話ガン無視されてるしぃー。
「ミト様の倅は審判として、……エリウス様」
「……」
「エリウス様」
「……」
「あくまでも神獣様は神獣様の味方という訳ですな。四方八方十六方見渡す限り敵かなか。良いねぇ~。嫌いになれねぇーわ、こういう燃えるシチュエーション!! 陛下、あの神獣に後れを取る訳にはいきませんが国民に負担を掛ける訳にもいきませ」
「あ、はい」
「ですので、兵士の中から有能な者を見繕いあの神獣を打ちのめし、アシュランス王国に勝利の美酒を捧げたいと思います。私が抜けている間の穴埋めは陛下の方で願い致します。アシュランス王国のために、それでは失礼致します」
「あ、はい……え?」
もう行っちゃったし……。俺の予感当たっちゃったよ。
開けられ閉められたドアからルイーズ様へと視線を移す。
「まさかこうなってしまうとは……、申し訳ない甥っ子殿よ」
「聞きたいことは聞けたと思うんで良いんですけど。スカッシュテニスってスポーツで戦うんですよね。いったいどういったものなんですか?」
「え、何々、スカッシュテニスって聞こえたんだけどぉ~、懐かしい話してるじゃない私も混ぜてぇ~♪」
クロコダイアン様の隣の空席その隣の空席その隣の空席その隣の空席その隣の空席その隣の空席その隣に座るミト様がテーブルに身を乗り出し話に入って来た。
「お茶が零れてしまうわ、まったく静かにできないのかしら」
「だてぇー、アスピーちゃんルイーズ達が懐かしい話してるんだもん、テーブルにお茶を零すくらい良いじゃない。ねっ、トゥーシェちゃん、私の分のお菓子あげるわよっ」
「お、テーブルとお茶々とお菓子はセットなのじゃぁ~、ミトは良い奴なのじゃぁ~」
「でしょうぉ~」
「……私もお菓子を」
「貰うのじゃぁ~」
ミト様と同じようにテーブルに身を乗り出し、俺の右隣の席に座るマルアスピーの前に置かれた菓子と俺の前に置かれた菓子を一瞬で両腕に抱え込み自分の席に戻ったトゥーシェ。
「子供ね」
言葉とは裏腹にマルアスピーはとっても楽しそうだ。表情は微妙にしか動いていないが……。
「フンフンフンフン♪」
「決めたわ」
見た目は別段子供でも何でもないが子供のように天真爛漫にリズミカルな鼻歌を響かせるトゥーシェに大声で被せて来たのはミト様だ。
「私もチームを作って参加するわ」
「え?」
「そうなるとリーグ戦になるな」
「ルイーズ様、リーグ戦ってどんな戦いなんですか?」
「会場とか準備は任せておけ、これでも王から皇帝になって玉座で胡坐かいてたこともあるんだ。イベントの一つくらい訳ねぇーよ。そいうことで、じゃっ」
シュッ。
「あ、え? ええええ!?」
ルイーズ様が目の前から消えた。
「言ってなかったかしら、あの子空間魔術、あー精霊の力を使ってるから魔法になるのかしら、分かるからどっちでも良いわよね、空間魔術のエキスパートなのよ」
貴重な時間をありがとうございました。




