1-1 故郷を救え
2019年6月13日 修正
・本文冒頭のサブタイトル等を削除しました。
――― マルアスピー村『南部素材買取所』周辺
「死っ、死にたくない。死にたくないよぉ~」
「おい、馬鹿そっちに行く...
≪ガウバウバウ ワオォー グシャ グチャ
「ぎゃぁー」
...な!・・・」
・
・
・
「隊長、もう限界です」
「隊長、後退命令を出してください」
「俺達は税の徴収兵で、戦闘専門じゃっ」
「煩い。非常時における我々の任務を忘れるな」
「ですが、守衛のエイですら・・・」
「・・・分かった。だが、民間のBT・LBT達を、先に撤退させる。我々は男爵領の領軍と...
「おい、領軍が撤退してるぞぉ~!」
「領主の息子は何を考えてるんだぁ!」
隊長と呼ばれている男が、部下らしき男と撤退について話し合っていると、部隊の後方で魔獣達と戦闘中の民間のBT・LBT達が怒鳴り声と共に叫び出す。
...時間を・・・かせ・・・」
≪バーン
隊長と呼ばれている男は、地面を強く踏み付けた。この男は、非常事態により編成された。マルアスピー村の入出村管理徴収兵3名と守衛2名の5名からなる王国軍の臨時防衛隊の隊長だ。
民間のBT・LBT達を置き去りにし撤退したのは、マルアスピー村の領主アンカー男爵家の私兵達で、貴族領軍と呼ばれ、王国軍の兵士達とは所属先の異なる兵士達だ。
「隊長、領軍の奴等が逃げ出して・・・」
「領軍の奴等・・・。最初から分かり切っていたんだ。この魔獣撃退計画を発案し押し付けた当人が、まさか先に逃げ出すとはな・・・。もともと失敗だったとはいえ・・・・・・。民間人の撤退を援護するぞ。我々も隙を見て後退する」
4月30日樹の日の深夜に始まった魔獣達の襲撃は連日のように繰り返され、5月21日無の日の今日、アンカー男爵領次期領主の無謀な指示により大掛かりな撃退計画を実行させた。
計画は、マルフォイ・アンカーを指揮官とし、貴族領軍15名。王国軍臨時防衛隊5名。領民とアンカー家の専従奴隷からJOB・BTとJOB・LBTを持つ者を強制参加。
本陣を設置する役場には、マルフォイ・アンカーの実妹レオナ・アンカーを副指揮官とし、貴族領軍4名。BT・LBT20名。総勢25名の本陣待機部隊。
アンカー家の農園の被害をこれ以上深刻化させない為、魔獣達が夜になると群れを成し侵入してくる襲撃初日に破壊された南東部の門から打って出て奇襲攻撃を与え魔獣達を撃退する総勢56名の主力部隊。
・
・
・
――― 時間は遡り、今日の昼過ぎ頃 役場
「ふぅ~む。侵入して来る場所が分かっているんだろう。ならば、魔獣達をそこで奇襲し殲滅させようではないか。攻撃こそ最大の防御というものだよ」
「魔獣の数は我々の10倍以上だと報告があります。ここは、貴族領民居住区の手前で守りを堅め迎え撃った方が良いのではないでしょうか」
「ふぅ~む。王国軍の兵士とはいっても所詮はただの税徴収兵だね。戦場は金勘定ではないのだよ。迎え撃つだけで放置した結果が、我家の南の農園のあの有様ではないか!」
「幸いな事に、初日の襲撃以降領民に死傷者が出ておりません。打って出る必要があると思えません」
「大樹の森の祭を急遽中止し、領内に滞在していた他家達の前で恥をかかされたのは私なのだよ。初日の襲撃襲撃とお前達は言うが、初日に壊されたのは、我がアンカー邸の西半分とアンカー家が持所有する領軍私兵詰所と南部素材買取所だ」
「その詰所では、民間人。王民貴族士爵家の御子息があの爆発の巻き添えになり、他にも亡骸の確認すらできていない者。入村後行方不明になっている者。領軍の兵士にも3名の消息不明者がいます。全て初日の襲撃の際の被害です」
「ふぅ~む。死んだ者は帰って来ないのだよ。いちいち気にしていては上に立つ者として無能を曝け出す様なものさ。そんな事より、11月の祭りに間に合うよう我がアンカー邸を改修しなくてはな。私の素晴らしい計画では、今日の撃退成功後、復旧作業で忙しくなる予定なのさ。実行は、今日の陽が沈んだ刻をもって開始するぞ」
・
・
・
「あの時、もっと反対していれば・・・」
「隊長。貴族領内において領主の権限は代行であっても、地方へ派遣された我々にとっては絶対です」
そう、ここゼルフォーラ王国において、貴族領の領主権限は、勅令や王国議会命令が下らない限り優先される。それが例え領主の代行者による命令であっても。
「民間の皆さん、ここは我々が時間を稼ぎます。役場まで撤退してください!」
臨時防衛隊の隊長は、戦闘中のBT・LBTの領民達に聞こえるように大きな声で叫ぶ様に話した。そして、
「王民の皆様。シャレット士爵様、シン士爵様も、御助勢感謝致します。役場まで先にお戻りください」
後方に向き直すと、弓や魔術で支援していた。王民達と士爵2名に啓礼した。
「あーでもよぉー。領主の私兵達が逃げちまったんだぜぇー。おめぇーら4人じゃ何もできねぇーって、そこの若いのに南部素材買取所の状況を伝えに行かせろ」
「自分はこの村の守衛です。最後まで戦います」
「16かそこらだろうぉ~?ここはぁ大人に任せなってぇ!・・・生き残って、あの次期領主の愚行を中央に上げる奴がいねぇーと、犠牲者が増えんぞぉ!・・・隊長さんよぉっ。あんたぁー、徴収兵には勿体ねぇーな」
「私は、剣よりも槍よりも、金勘定が得意な王国の嫌われ者ですよ」
「斧両手に怖ぅえー税金取りだよなぁ!ワッハッハッハッハ」
「普段は、紙と筆ですけどね」
「ちげぇーねぇーや!・・・・・・さてとっ、盛大に暴れんぞぉー!後ろに向かって暴れながら全力前進突っ走ろぉ!」
・
・
・
・
・
・
「え? お、 おぉ~!」
「うぉ~」
「フッハッハッハ。ホバイ三等守衛!」
「はい。隊長」
「負傷した者を護りながら後ろに向かって前進だ。文句は無いだろう?」
「は、はい」
・
・
・
だが、
・
・
・
魔獣達に四方を囲まれ、後方への前進は思う様に進まなかった。
領軍が逃げ去り、士気の低下した即席の部隊は、シャレット士爵と臨時防衛軍の隊長によって、ギリギリのところで、気力を留めていたに過ぎず、既に限界に達していた。
その時だった。
≪ガウ ガゥオァ ワァオ―――
・
・
・
『精霊聖属性魔法【ビュニシオン】自然魔素:清澄聖属性10/61・発動』≫
≪シャンシャンシャンシャンシャンシャン――――――― シュゥ―――フワァッ
何処からともなく、鈴の音が厳かにそれでいて軽快な律動で響き始める。魔獣達の頭上2m程の場所にパールホワイト色の柔らかな光が煌やき出し、風に靡く絹のカーテンの様に揺らめきながら降り注いだ。その煌やきは魔獣達を包み込むと清聖の理を以て決し恭順させ浄化し昇天させた。
・
・
・
「移動したら、いきなり魔獣に囲まれてるしビックリしたよ」
「・・・【地属性】と【闇属性】の魔獣を浄化?いったい何をやったの?」
「【聖属性】って【邪属性】以外も浄化できるみたいですよ」
「そんなはずは・・・」
「でも、ホラァ~」
俺は、次々に昇天する魔獣達を指差した。
「そう・・・ね」
彼女は、小首を傾げ、胸の前で腕を組んだ。
凝視・・・(いかんまた目が胸に)・・・
そんな俺達を、唖然とした表情で見つめ固まる臨時防衛隊と村のBT・LBT達からなる即席部隊。
死を覚悟した者もいたであろう部隊と魔獣達が混戦する中に、突然俺達が出現し見た事も無い魔術?で、周囲の魔獣達を一瞬のうちに無力化したのだ。何が起こったのか理解でき無くて当然だ。
≪ワォ~ バウバウ バウ
「あ・な・た!前方、距離17m20cm。馬車用の荷車の陰【闇炎牙狼】が3匹いるわよ」
「松明の明かりだけでそこまで分かるんですか?」
「私の瞳は精霊使用なのよ」
「便利ですね」
「フフフッ。そうね」
≪ガウガウガウ
オプスキュリテは、俺達を目掛け襲い掛かって来た。
「【闇属性】には【光属性】でしたよね?こいつ等って【火属性】と【地属性】も持ってるみたいだから、優劣はどうなるんですか?」
「そうぉ~ねぇ~。【光属性】を持っていないのなら、殴るとか蹴るとかが効果的でだと思うわ」
あぁ~、直接物理攻撃ですか・・・
「よし、それなら!俺、狩人だし。『神授スキル【マテリアル・クリエイト】自然魔素:清澄無属性1/30・状態:矢一文字・長さ:80cm・個数:3本・位置:構えた弓前方10cm』・発動≫」
構えた弓の前方10cmに、薄っすらと白く光3本の矢が出現する。
よし、心象に近い感じだ。『精霊風属性魔法【ブロウ】自然魔素:清澄風属性・形状:圧縮・個数:3個・位置:矢一文字の後方・発動≫』
矢羽の後方に小さな風の塊が出現する。俺が、 弦を弾くと、
≪パッ シュッシュッシュッ (3つ程同時)
≪ドォスドゥスドシュッ
風の塊が弾け、3本の矢は三筋の閃光となってオプスキュリテの頭部を貫いた。
「それって、弓矢でやる必要あるのかしら?投擲とか投槍を放った方が早くないかしら?」
俺は狩人だし・・・それに、矢が切れる心配をしなくていいしなんて凄い事だし。
「森で拾った弓を構えてるだけよね。それ?」
「狩人だから・・・」
「そうね」
・
・
・
≪ザッ ザザザ
俺達が話をしていると、後ろから駆け寄り、1人の男が話し掛けて来た。
「ロイク!やっぱり生きてたかぁー。いやぁー焦ったぜぇー!詰所の爆発に巻き込まれて死んだって皆が言うけどよぉ!おめぇーがあの程度でくたばる訳ねぇーって思ってよぉ!葬式やって無かった訳よぉ!いっきなし目の前に出て来てあれだろうぉー・・・化けて出て来たって一瞬止まっちまったよぉ!」
・・・おい。俺はあんたの中でどうなってるだ。
この男の名はバイル・シャレット士爵。俺の父親だ。
「ちょっと、色々在り過ぎたけど、ただいま親父!」
「在り過ぎんだろうぉーがぁ!。隣の|女神様つぅーか、精霊様みたいな滅茶苦茶俺好みぃーな巨乳娘は、ロイクおめぇーのこれかぁっ?」
親父は、ニタニタしながら小指を立て、俺の前で指を動かす。
「いきなり失礼だろ。それに、久々に会って聞く事がこれなわけ?」
「・・・」
彼女は無言のまま、親父と俺の顔を見比べている。
「これってぇー。おめぇよぉー。男の浪漫が目の前にあるってぇ~のに、他に何かあんのかぁっ?」
あぁ~遺伝だったのか・・・・・・ 間違い無い。・・・俺達親子だ・・・・・・。
・
・
・
俺はロイク・シャレット。マルアスピー村の北西大樹の森への入り口【加工場口】の傍に、両親と共に3人で暮らしながら、独り立ちの許可を貰う為、日々狩りをしながら個体レベル上げに励んでいた。21日前の4月30日までは・・・
この魅力的で胸の大きな美しい女性は、大樹の森の聖域にある精霊樹に宿る精霊で大精霊のマルアスピー様。世界創造神信仰の象徴の1つで俺達人間種にとっては神に等しい存在だ。一方的に俺の嫁だと主張している。
彼女とのKissは俺に【大樹の加護】と呼ばれる加護を俺に与えた。彼女は愛の力だと主張していたが、彼女からの加護により解放された≪BIRTHDAY・SKILL≫(神授スキル)【創造神のきまぐれ】は、俺の想像を絶するインチキ能力を授けてくれた。
「親父、説明は後でゆっくりするから、まずは村に入った魔獣を先に片付けちゃおう」
≪ザッ ・・・ ザッ ザッ ザッ
「君・・・これは、君がやったのかね?」
ゼルフォーラ王国の紋が描かれたグリーン・ヘイズ色の全身甲冑から頭だけを出し、背中に盾を背負い両手に斧を持った男が、部下と思われる3人の兵士達と一緒に、俺の前に歩いて来た。
「おぉー隊長さんよぉー!こいつぁー俺の息子で、ロイクってんだ!」
「士爵様の御子息様でしたか。御無事だったのですね」
「バイル・シャレットの息子のロイク・シャレットです。隊長って事は、魔獣退治の責任者ですか?」
「いえ、私は王都モルングレーより派遣されました。アンカー男爵領マルアスピー出入村管理徴収兵の主任税務官です。出入管理徴収兵は非常事態時には防衛任務を兼ねておりますので、臨時防衛隊として部下4人を指揮し参加しておりました」
「ロイクさん」
「は、はい」
「僕ですよ。覚えてませんか?先日、大樹の森の中で道に迷っていた時に助けていただいた」
兵士は、フルフェイスの兜を取り俺にお辞儀した。
「えっと、ホバイさんでしたっけ?」
「はい。先日はありがとうございました。只者ではないと感じていましたが、こんな凄い事ができたんですね」
「ロイク殿。今回の襲撃に関し王都へ報告書を上げる必要があります。後ほど、報告書作成の為お話をお聞かせ願えますか?」
「・・・わかりました。それでは、報告書を作る為にも、魔獣を片付けてしまいますね」
「我々も協力致します」
「おぉ~。魔獣共をヒグマの丘まで押し返すぞぉ~!」
隊長の言葉に、臨時防衛隊の兵士達と村のBT・LBT達が呼応する。
「皆さんは休んでいてください。皆さんが居ると彼等が戦い難いと思いますので」
悪気は無いんだ。悪く思わないでくださいね。
・
・
・
親父以外は、皆近くで休む仲間と顔を見合わせていた。
「ロイク殿。ロイク殿と隣の女性の他に援軍が?」
「まぁ~そんな感じですね」
「なぁーロイク!それでよぉー。その子のお名前なんてぇーのぉ!」
こいつ、状況分かってるのか?
「・・・」
彼女は無言のままだ。
「後で教えるから、親父。俺の影からちょっと離れてくれ」
「あぁー?・・・わぁーたよ!影ってこれかぁー。暗れぇーから分かりずれぇーけど!」
親父は、俺から3歩分距離を取る。・・・気を取り直して。『神授スキル【タブレット】起動≫』
≪パァッ ←(実際は発光)
俺の左手に、幅約18cm×奥行約26cm×厚さ約0.5cmの空気色の素材不明な版が出現する。【苺】の絵が浮かび上がり軽く触る様に指示してくる。
≪トン (【苺】を軽く押す)
*****絵の浮かび上がった版の表面*****
KAMI ver.1.00 - 4075-5-21-13:06(初期)
KAMI ver.1.01 - 4075-5-21-13:16(更新)
次回更新予定 - You got SKILL or Mail.
≫≫≫≫ ≫≫ 起動中
しばしまて
***********************
≪WELCOME ≪可愛い女の子の声≫
******版には**************
≪ 管理 ≫
【道具】【武器】【防具】【装飾品】【素材】
【音声】【画像】【映像】【記憶】【通貨】
更新に伴う追加:【通信】【情報】
≪ 予約 ≫
【解体】【加工・全能】【強化・全能】
【魔素結合】【魔素分離】【魔素補充】
【神授能力】【加護】【適正能力】 ↓
更新に伴う追加:【宿泊施設】【券】 ↓
***********************
≪トン (【↓】を軽く押す)
***********************
≪ 娯楽 ≫ ↑
【プレゼントBOX】※朝昼晩何かが届くよ※ ↑
【レシピ】【成分表】
≪ 検索 ≫※初期設定音声入力※
【 検索音声入力開始 】
【地図検索】【名称検索】【万物検索】
【ヒント】【取扱説明書】
***********************
≪トン (検索音声入力開始)
「マルアスピー村 侵入魔獣 位置 詳細」
≪検索を開始します ≪可愛い女の子の声≫
―↓マルアスピー村の地図が表記されている体―
***********************
地図表記:マルアスピー村
***********************
≪検索結果に該当する魔獣は421匹です。画面地図上に反映しました。詳細情報の確認には、画面地図上に表記されたポイントに触れてください。 ≪可愛い女の子の声≫
「ロイク。おまえ、何やってんだ?」
「今、魔獣の位置を調べてるとこ。まだ、村に419匹も居るみたい」
「何かすげぇーな!版が透けてんぞ!【警戒】と【索敵】が一緒にできんのかぁっ?」
「まっそんなとこ。えっと、村の南側の農地に293匹。北のアンカー邸の中に94匹。この辺りは粗方倒したと思ったけど、まだ2匹いるみたいだ・・・倒しちゃうよ『SENSE・SKILL【警戒】自然魔素:無属性・範囲:半径500m発動≫』・・・・・・あっ、見つけた。よし『精霊聖属性魔法【ビュニシオン】自然魔素:清澄聖属性10/61・対象:感知中の2匹・発動』≫」
≪シャンシャンシャンシャンシャンシャン――――――― シュゥ―――フワァッ
少し離れた農園の中に潜伏しこちらを伺っていた【闇牙狼】1匹と【大地牙狼】1匹を、俺は【警戒】で見つけ出すと【ピュニシオン】で無力化した。
「皆さん、役場周辺に魔獣が30匹いるみたいです。徐々に減ってる様なので戦闘状態にあると思われます。俺はこれから救援に向かうつもりです」
「南の農園にまだ300匹も魔獣が?・・・押し寄せて来るのも時間の問題か」
「あっ、隊長さん。それはこちらで対処するので大丈夫です。セリューさん。ロージャンさん。力を貸してください」
・
・
・
≪ヒョイヒョイ
松明だけが頼りの闇夜に、俺の影から体長8mを超える2匹の黒い?【邪狼獣】が飛び出し横に並んだ。
「あぁ・・・ぁ・・・」
皆、驚き声を失っている様だ。当然の反応だと思う。
「ロ、ロイク。こりゃー。でけぇーなぁ!」
こいつは、余裕そうだ・・・
「おぉー!【闇炎牙狼】よりはるかに強そうだぁ!」
――― 【レソンネ】中 ―――
「ん?そこの人間。人間にしては鼻が利くではないか。俺様は獣種の頂点邪獣の邪狼獣だ」
「ロイクよ。俺達は何をすれば良い?」
「セリューさんロージャンさんも、並行空間から出たばかりでお腹が空いてますよね?」
「うん?飯の時間か?俺様は腹ペコだぞ」
「ロージャン。お前はいつでも腹を空かせているではないか」
「それもそうだな。ガゥワァハッハッハッハッハ」
「それでですね。聞こえてたと思いますが、村の南の農地に魔獣が293匹いるみたいなんです。【兎耳狼】が多い様なので食事ついでにロージャンさん。農地の魔獣をお願いしてもいいですか?」
「おぉ~俺様に任せておけ。・・・まとめて喰ってやるわ」
「えぇ、お腹を壊さい程度にお願いします」
「飯だぁ!」
≪ザァッ ヒョンヒョン
「飯だぁ~~~~~!」
・
・
・
もう見えないや・・・
「落ち着きの無い奴だ。食い物の事になると昔からあぁだったのだ。待つ事ができなくてな。それで、ロイク。俺は何をすれば良い」
「セリューさんは、北にあるこの村で一番大きいな屋敷とその周辺の魔獣をお願いします」
「リトルの臭いが強い。あの建物だな」
「あっ!口からあれ絶対に漏らしちゃだめですよ」
「分かっている。ではぁっ!・・・」
・
・
・
セリューさんは、その場から動かない。何か考えているようだ。
「どうしたんですか?」
「ロイクよ。俺も腹が減っている。喰っても構わんか?」
「・・・えぇ!お願いします」
「分かった。ではぁっ!」
≪ザァツ シュッ サササァ~
・
・
・
もう、見えないや・・・よっぽどお腹を空かせていたんだな。
――― 【レソンネ】終了 ―――
「ロイク殿・・・あれはいったい何ですか?」
説明するのが難しい質問だ。邪属性の魔獣とは違う存在で、聖獣とは真逆の存在だけど聖獣と同じ様にとっても偉い存在とかって言って通じるかな?
「隊長ぉー。聞いて無かったのかぁ!邪狼獣って言ってたじゃねぇーか」
「え?現れたと思ったら、闇の中に消えただけでは?」
ん?父に俺達の会話が?
「まぁーいいやぁっ!ガッハッハッハッハ」
流石、相変わらず適当だ。俺の父・・・後で確認しておくか・・・
―――レオナ・アンカー視点―――
――― マルアスピー村 役場
普段は、役場として利用されているこの施設は、今は御父様の領地を襲う魔獣達と戦う討伐隊の本陣になっている。御兄様の命令で、本陣に待機する部隊の指揮を任されたけれど、戦力差を考えて私達も戦場に出て戦うべきでは無いかと考える。
≪バァーン
本陣の扉が勢い良く開くと、お兄様と数名の貴族領軍の兵士達が中へ駆け込んで来た。
≪バターン
「お兄様。撃退計画はどうなったのですか?」
「はぁ~はぁ~はぁ~・・・ふぅ~む。どんなに武勇に優れた私であっても、3000匹もの魔獣を相手に即席の部隊を指揮して勝利を収めるのは難しいというものだ」
「3000匹ですか!・・・他の者達はどうされたのですか?」
「私の命令も聞かず部隊が広がってしまってね。指示に従い傍にいた者達だけは、私が一緒に撤退し助ける事ができたのだが、私とて全能では無いからね」
「見殺しにされたのですか?」
「ふぅ~む。妹よ人聞きの悪い事を・・・彼等もアンカー男爵領の為に戦えて本望だろう」
「魔獣が来たぞぉ~」
お兄様と撤退して来た貴族領軍の兵士が、本陣の窓から外を覗きながら叫んだ。
「ふぅ~む、よし!皆で迎え撃つ事にしよう。私は屋上で応戦する。弓を扱える者と魔術を使える者は着いてきなさい」
「お兄様、ここはどうされるのですか?」
「実妹よここはお前に任せたではないか。確り守ると良い。私は屋上からここを護って見せるよ」
お兄様と貴族領軍7名と領民のBT・LBT達4名は階段から屋上に行ってしまった。残されたのは、私と領軍3名と領民のBT・LBT達16名の20名。
「皆さん、聞いてください。我が兄の奮戦虚しく、撃退計画は失敗したそうです。今は数匹の魔獣が近付いて来る程度なので対処できていますが、直ぐに本部も魔獣達に取り囲まれてしまうと思われます」
「皆、殺られてしまったのですか?」
「はい、我が兄の話では立派な最期だったそうです・・・」
「王国軍や士爵様達でも勝てないのに、俺達だけでどうするんですか?」
「朝まで、陽が昇るまで、魔獣達をここに釘付けにしましょう」
「さっき3000匹とかって聞こえたぞ!」
「おい、本当かよ・・・」
強制参加のBT・LBT達が騒ぎ出した。無理も無い3000匹の魔獣が本陣に向かっているのだから。それに主力部隊が全滅したと聞かされてしまっては、落ち着けと言っても無理だろう。
「朝まで何とか絶えましょう」
「俺達も避難するべきだ」
「おぉ~それが良い」
「待ってください。ここを放棄する訳にはいきません」
「何言ってるんだ。・・・あいつは、次期領主はどこ行ったんだよ!」
「我が兄は、応戦する為、本部の屋上に間接攻撃が可能な者達と共に移動しました」
「俺達は次期領主の盾ってことかぁっ!」
「皆さん、それは違います。私達がここに魔獣を釘付けにする事は、貴族領民居住区の領民が避難する北部素材買取所。皆さんの家族を守る事です」
「領民は北部素材買取所と王民居住区に避難しているのでしたね?」
「はい、お嬢様」
「私達は、本陣で迎え撃ちます。ですが、今ならまだ間に合います。家族の元に戻りたい者は行きなさい。命令違反として咎めたりしません。私が約束します」
「戻ったところで、役場がやられたら同じだろう?」
「111年前と同じだ。魔獣達を怒らせちまったみたいだな・・・」
強制参加のBT・LBT達が気になる事を話をし始めた。
「今日の撃退計画の前日までは、魔獣の襲撃はアンカー家の農園とアンカー邸周辺だけだったのに、こっちから攻撃した途端に、初日の詰所の時みたいに魔獣達が村の中心に入り込んで来やがった」
「前の時は、大量に押し寄せた魔獣達に、オプスキュリテが9匹現れたんだ!」
「3000匹を凌いだところで、オプスキュリテが現れたら・・・」
「朝まで耐えたら村から離れた方が良いんじゃないか?」
3000匹の魔獣の次にはオプスキュリテ9匹が現れる?アンカー領を見捨て逃げ出すつもりなの?
「魔獣が領地の中心まで来たのは最初だけだったのですか?」
「はい、お嬢様。領地の中心まで魔獣が入り込んできましたのは初日だけです。その後は南東部の南部素材買取所を中心にアンカー家の南の農園。北の農園。そして、アンカー邸周辺に出没しておりました」
「私は南東部を中心に領地全体が・・・・・これでは、まるで魔獣達は、家を狙っているみたい」
「お嬢様。私も、マルフォイ様にこの件に関しては進言致しました」
「お兄様は何と?」
「魔獣に知恵があると思うのか?考え過ぎだと一蹴されました」
「俺、領軍の奴等の話を聞いちまったんだけどよ。村が最初に襲撃された日に3回大きな爆発があっただろう。3回目の領軍詰所の爆発だけどよ、爆発のかなり前に一度襲撃を受けてたらしい」
「それは確かですか?」
「領軍の奴等が逃げた兵士がどうだって言ってる時に話てたから間違いないと思うぜ」
「貴方、何か知っていますね。答えなさい」
「そ、それは・・・」
「答えなさい」
「はぁ~・・・私は、マルフォイ様と領軍の兵士達とで、領地の南にありますヒグマ広陵に...
「ヒグマ広陵?」
...あ、現在はヒグマの丘と呼ばれております。そのヒグマの丘に行ったのですが」
「お兄様は何をしにそのような場所へ?」
「は、はい。大樹の森の奉納祭初日の森猪狩り用の・・・為の鍛練を・・・」
「領軍を伴って鍛練ですか・・・」
「はい。・・・その際に、偶然にもリトル・アンカー様の私物と思われる武具を幾つか発見しました」
「曾祖父様の武具ですか?」
「はい。大樹の森の奉納祭に合わせ領地に滞在していた行商の骨董商人に詰所で鑑定させました」
「どうして曾祖父様の武具が丘に・・・?」
「それは分かりません。ただその行商人の鑑定が終わり武具をアンカー邸に運搬していた際に、【闇炎牙狼】と思われる黒い魔獣数匹に襲われまして・・・」
「初日の襲撃の前にオプスキュリテにですか?」
「その際に、領軍の兵士2名と行商人1名が喰い殺されました」
「魔獣達に襲われた日に、消息不明になった領軍の兵士は3人と聞いていましたが」
「その後の爆発で、シャレット士爵家の御子息と共に亡くなった領軍の兵士が1名。実は爆発の・・・襲撃の前には既に2名亡くなっておりました」
「オプスキュリテの目撃情報は本当だったんだ。皆、どうする?」
「3000匹の魔獣だけお手上げなのに、オプスキュリテかよ」
強制参加のBT・LBT達が益々騒ぎ落ち着きを失っていく。
その時だった、
「魔獣達がぁっ!」
ついに来た・・・
「魔獣達が中央通りをこちらに曲がり向かって来ています」
「数は?」
「はっ!お待ちください。あと100m程で【索敵】範囲に入ります」
「分かりました。・・・皆さん。この話は無事朝を迎えてから確認する事にしましょう。今は窓に板を張ってくだい。私達は扉から入って来る魔獣を1匹ずつ各個撃破で凌ぎましょう」
「報告します。魔獣の数は凡そ30」
・
・
・
「えっ?30匹ですか?」
「はい、間違いありません凡そ30です」
お兄様の報告では、3000匹を超える魔獣達の襲撃に合い、即席の部隊は壊滅状態・・・。お兄様の指示に従い行動を共にした領軍の兵士達数人だけが本部に戻って来た。50人で3000匹の魔獣の撃退に成功するとは到底思えない。この30匹は斥候?でも、魔獣達にそんな知恵があるとは・・・
「魔獣を視認致しました。オプスキュリテと思われる魔獣が7匹。凄い勢いでこちらに向かって来ています」
「分かりました。急いで窓を塞ぎ為さい」
「はぁっ!」
≪バンバンバンバン バンバンバンバン
曾祖父様でも、真実の話では、追い払う事しかできなかったオプスキュリテが7匹も・・・
≪ガウ ワオォー ドン ドン バン
≪シュッ シュッ
「ウォーター・ボール」「ウォーター・ボール」
≪ガウ バウゥ~
≪シュッ
「駄目だ全くきいて無いぞ!」
「何をやっている。この愚か者!手を休めるな。どんどん打ちたまえ、来てしまうではないか。火を放てぇっ!火だ。矢だ矢だ!」
お兄様が兵士を怒鳴り散らす声が聞こえる。
≪シュッ
≪シュッ
≪ガルルル ガウ
「ファイアー・ボール」
≪ボフ
「何をやっている。全く利いていないではないか」
「オプスキュリテは火属性の魔獣だと言われています」
「誰だ、火を放った愚か者はぁ!私の指示に従え1匹も近付けるなぁ!水だ水。水魔術を使える者は前に出てどんどん放てぇっ!」
「ですが、先程も放ちましたがきいていませんでした」
「煩ぁい、さっさとやれ、私の命令に従え~!」
「ウォーター・ボール」「ウォーター・ボール」「ウォーター・ボール」
「ビチャッ ビチャビチャ バチャ」
「だめです。土属性の魔獣でもあるのかもしれません」
≪シュッ シュッ
≪ガウ ガォー シュタ
「魔獣が入って来たぞぉ~」
屋上に気を取られていては、本営1階を守り切れない。集中しなくては、入って来た魔獣は【兎耳狼】1匹だった。
「皆で一斉行くわよ。はぁ~」
「ヤ―」「セイヤッ」「ハァ~」
≪ブス ブシュ ブシュ
「この方法なら何とかなりそうだな」
何とかなるの?オプスキュリテ7匹が入って来たら?1匹ずつなら倒せるの?曾祖父様でも1匹も倒せず9匹を撃退しただけなのに。
≪ガルルル ザァッ シュタ トン
「なっ・・・うわぁ~。飛び跳ねて来たぞぉ~!剣を抜け盾だ盾ぇ!私の前に壁を作れぇっ!」
あれはお兄様よね?狼狽している様にも聞こえたけれど・・・それに何かおかしい。扉を開けっ放しにしてあるのに、入って来た魔獣は1匹だけ?屋上の方に魔獣が集中してる?
・・・・・・まずいわ。私は屋上へ続く階段の周りにいる兵士達に叫んだ。
「皆、階段から離れてぇ~!」
≪ドタドタドタ ドドドドバターン ゴロゴロゴ
同時だった。
「屋上にオプスキュリテがぁ うわぁ!」
血の気が引き青ざめた顔の領軍の兵士が階段から転がり落ちて来た。
「く・るぅぞ・・・! グホォ!」
≪ドタドタドタドタ ドゴ ドタドタドタ ドゴ
「邪魔だ、どけ逃げないと」
「階段の下に居るな邪魔だぁ」
貴族領軍達は階段を踏み外し階段の下に倒れた仲間を踏み付け下りて来る。
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≪ガル グゴガァー ワオォ~
≪バタバタ シュッ ドタバタドタバタ
「何をやってるんだい。退きたまえ・・・階段はお前のベッドか何かなのか!退け退けぇ!盾を持った者は塞げ耐えろ!これは命令だ!」
領軍の兵士達とお兄様が先に逃げて来る・・・屋上に行った領民のBT・LBT達はまだ戦っているというのに・・・。
≪タッタッタッタ
「ふぅ~む。下は無事だった様だね。屋上は悪夢さぁっ!」
「マルフォイ様。オプスキュリテがまた現れた様ですね」
「その通り、屋上に数匹が飛び込んで来たよ」
「お兄様・・・領民の者達は?」
「何人か殺られたか、喰われたんじゃないかな」
「お兄様は、何をされているのですか?」
「ふぅ~・・・・・む・・・・!下の様子が・・・心配になってね。実妹の心配をしない兄はいない」
「・・・」
「襲われていると言うのに、誰だ扉を開けっ放しにしたのは・・・愚か者達が」
「・・・」
≪ダッタ ダッタ ダッタ
お兄様は、小走りで本陣の扉を閉める為、自ら近付いた。
≪ガルルル
「うわぁ~入口からも来たぞ!攻撃しろ攻撃だ!」
≪ガルルルル ワオォ―――――
オプスキュリテは、遠吠えを上げるとピチャピチャと涎を垂らし、ゆっくりと入って来た。その体は黒く揺れる炎の様な物を全身に纏っていた。お兄様が本陣の中央に走り出した時だった。
≪ガルゥッ バァッ ガブゥッ バッ
「ぎゃぁ~」
「マルフォイ様」「お兄様」
「ギャーァ~ 死ぬぅ 痛い いたい あっあっあぁ~~ 何をしている。早くこいつを殺せぇ~~~」
腕に装備した鞣し革のプロテクターの上から噛まれただけでこの慌て様は何事なの?
「お兄様。おふざけはここまでにして、剣を抜いて戦ってください」
「あっあっあっあぁー・・・はっ はっ はぁ~」
≪ガタガタ方 ドン ブルブルブルブル バタン ・・・・・・
お兄様は、膝を震わせながら地面に倒れ込み痙攣しながら白目を向いて意識を失い、
≪シャァッ―――~~~
そして、失禁した。
「マルフォイ様。兵士よマルフォイ様をお守りしろ」
≪ガル グゥワァ―
≪キン カキン
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≪ザジュッ カキーン
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屋上で応戦していた者達は、オプスキュリテに殺られてしまったのだろうか?少し前から静かになっている。オプスキュリテが屋上から階段を使い下りて来くる。気が付けば私達は7匹のオプスキュリテと【闇牙狼】【大地牙狼】数匹に囲まれていた。そして、オプスキュリテ7匹は、気絶し失禁したお兄様を明らかに狙っているようだった。
≪ザァツ ガブゥビリグチャ
一匹のオプスキュリテが、お兄様の脇腹を森熊の鞣革ごと喰い千切った。
「ぐがぁっ。ぎゃぁ――――――――あ」
気絶し倒れ失禁していたはずのお兄様が、低く大きな呻き声を上げた。
「死、死にたくない。死にたくない・・・あっあっあっ・・・」
「マルフォイ様。落ち着いてください」
お兄様の脇腹からは大量の出血が確認できる。涙なのか鼻水なのか判断できない程にグチャグチャに顔を引きつらせ、身体中を痙攣させながら、私達の方に腕を伸ばしている。
「あっ、あっ あぁ~」
その時だった。
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1人の男・・・いえ、もう1人?・・・女性が・・・私達とオプスキュリテの緊張した空気の中に出現した。
「え?」
私だけではなく、1階に居た者全員が在り得ない状況に言葉を失っている様だった。
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「精霊様の移動ですけど」
「マルアスピーでしょう。それに、これは【転位】」
「その移動ですけど、これもう少し優しい所に出られませんか?」
「私の能力は、あ・な・たのとは違って大雑把なのよ。フフフッ。人間種達の街の自然魔素が弱いからよ。それはそうと、私は困らないから良いけれど、放っておいたらそこに倒れてる人間死んでしまうわよ」
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私達の目の前には、初日の襲撃の爆発で亡くなったと聞かされた士爵の息子に良く似た男性と、女の私から見ても見惚れてしまう程に美しい女性が、凶悪なオプスキュリテと大量の魔獣達を歯牙にも掛け無いそんな雰囲気で楽しそうに話をしていた。
――― ロイク視点―――
――― 役場1階
「この人。凄い事になってるけど、あれ?この人次期男爵のマルフォイさん?」
「知り合いだったのね。私に感謝じゃない。フフフッ」
「知り合いって程でも無いんですが、1度お茶を飲んだだけなんだけど目の前で死なれると気分が良くないので・・・精霊様。回復って1とかで良いですかね?」
「5とかでも、多過ぎても破裂はしないわよ」
「それなら」
俺は、マルフォイ・アンカーに右手を伸ばす。『精霊聖属性魔法【ベネディクシヨン】自然魔素・清澄聖属性5/61・発動≫
マルフォイ・アンカーの身体が優しく淡い白い光に包まれる。
「回復と治癒はこんな感じで良いとして・・・次は魔獣達だな」
「ねぇ。さっきの浄化をもう1度やってみて貰えないかしら」
「いいですよ」
俺は、何かしている事が、周りの人達に分かるように、左手に持った弓を顔の前に動かした。そこから腕を頭の上に伸ばした。『精霊聖属性魔法【ビュニシオン】自然魔素:清澄聖属性10/61・発動』≫
≪シャンシャンシャンシャンシャンシャン――――――― シュゥ―――フワァッ
何処からともなく、鈴の音が厳かにそれでいて軽快な律動で響き始める。
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ありがとうございました。