6-MS-169 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 今を積み重ねる。過去から得る。come in sight the day to come. -
何てことでしょう。オリキュレールカプリスの英雄が、俺の眷属の中に三人もいるじゃないですか。
竜種系のお肉主に臓物や鮮血で交流を深め勝手に爆上がりした信用と信頼が良い方向に暴走した結果。
「ドームココドリーロですか。あれは、……そうですね優先順位の低いお遊び趣味が喫茶店の店長でコーヒー好きの鰐が偶然神格を持っていて偶然神域に店を持っていた。私の中では終始それだけのことと完結しています。ですので、これ以上の詮索は不要ということになりますのであしからず。私の天職は中空の離宮でサールマジョルドムをそれとなく熟しトゥースマジョルドムのドラゴン料理三食で満たされることだったのです」
と、神獣クロコダイアン様は俺の【眷属・神(神獣)】として究極の食生活を手に入れた。
chefアランギー様率いる妖精のおしごとが織り成す天元突破が止まらない料理に日々満たされドームココドリーロのオーナーも中空の離宮のサールマジョルドムも順風満帆。趣味と食欲の為、建前と神格を振りかざす様は正に神様だ。神様としての超通常及第点を欲しいままにするクロコダイアン様。
趣味と食欲とあとは惰性で何とかギリギリのところで動いてるって思ってたけど、まさか、コルト下界を救っちゃった系の本物の英雄だったとは……。
無能の癖に女に溺れ恥を上書きし続ける愚か者に帰る家など不要と一族から同族達から勘違いされ追放されたが気にすることもなく。気が向けば勝手に集落内を闊歩し飽きれば別の地を闊歩し孤児や弱者を見つけては保護し生きる知恵と知識を与え独り立ちさせる。遊び人の皮を被った聖者だったとバレたその日から。
「目立つことはアイツ(大賢者マクドナルド)に任せておけば良い。悪目立ちはいざって時に足腰を重くする。世間の目を気にして助かる者が助からないってのはゴメンだぜ。風任せな生き方。……そうかもな。だがな、光(光が世界を支配する時間)だろうが闇(闇が世界を支配する時間)だろうが同じ空の下に居る限りいつだって何処にだって風は吹く。俺は風の一族、生まれた時からそよ風なのさ」
と、風の高位樹人族ラケル・カサノヴァは俺の【眷属・忠臣】として遊撃参謀局の局長を堅実に熟すかたわらアルさんやマリレナさんの助手としてそよ風を続けていた。
子供の笑顔、明日への希望、正しく悩む為の知識、生き残る為の知恵。着る物食い物寝る場所を与えるだけでは何も解決しない。自己満足も偽善も有難いことこの上ないが一時的なものでは結局のところ最後には破綻してしまう。未来へと繋がるように支え合いほんの少し背中を押してやることこそがあるべき姿、正しい共存の在り方だと思っている。現実を直視せず青い考え方だとは承知しているらしい。
大を救う為に小を切り捨てることは間違っていると思う。ただ、全員を救うことは難しい。限界を超えてしまった命より確実に助かる命を救済する。合理的で建設的で自然な流れだ。そよ風は優しく囁き安らぎを与えるか……。まさか、遊びん人の風任せ男がコルト下界を救っちゃった系の本物の英雄だったとは……。
「放浪してた頃の話は余りしたくないのよねぇ~。流行りの駆け落ちってのをやってみたくて、どうせやるなら面白くてドキドキする方が楽しいかなって、王様と精霊なら皆驚くって思ったのに国を挙げて邪精霊だ闇精霊だって私のことを追い掛け回すのよ。頭来て見えなくなるくらい遠くまで吹っ飛ばしてやったこともあったわね。縦派とか横派とかお構いなしに神殿でやり過ごしたこともあったわ」
「ミト様、コルトの大聖堂とかもその一つだったりします?」
「コルトの大聖堂ぉ~?……あぁあれね。あれってセザールがあっ別れた旦那の方のセザールね。セザールが神聖魔術の【バリケード】を戸だけで良いのに建物全体にかけちゃってね。あれ、全力に近かったみたいで、でもね、彼にも悪気はなかったのよ。兎に角慌ててたから誰も入って来るなぁ~って感じでガンバちゃったみたい」
「コルト大聖堂って正面扉の横にある潜り戸からしか出入り出来なかったらしいんですが、セザール様がかけた魔術のせいで窓も開かないし建物もそのままだったんですね。あれ、かなり強力な魔術なのに何で潜り戸は開いたんだ?」
「私達がそこから外に出たからに決まってるじゃない」
「ああなるほど」
ルイーズ様との話が終わり、オリキュレールカプリスについて詳しく知りたくなった俺は、【レソンネ】で『待ってるから...... ~ ......では』と関係者をグランディール城の三階にある俺のプライベートエリアのリビングルームに招待した。
ルイーズ様とエリウスとパフさんと共に【フリーパス】で執務室からリビングルームへと移動し、皆が集まるまで小一時間はかかるだろうと寛ぎモードでソファーに深く腰掛け神茶を啜りホッコリしていた俺の膝の上に突然姿を現わしたミト様と、マルアスピーがリビングルームのドアを開けるタイミングが重なり。少々騒がしいホッコリ時間になってしまったが、俺の膝の上で話し続けるミト様にマルアスピーが根負けし今に至っている訳なのだが……。
「主殿はいつの間にルイーズ殿を眷属に迎えたのでしょうか?」
話の切れ間を待ってたかのようにエリウスが大声で差し込んで来た。
「は?」
「は、はっ、は。ではありません。【フリーパス】で一緒に移動できたという証拠があるのです。わ、わ、私という者がありながら、ああああ主殿はいったい何をお考えに……」
「お、お……お前、エリウス、言ってる意味が分らないんだけど」
「主殿も親族一族が大事やはり一番だったのですね。分かります。分かってはいるつもりなのです。家族を蔑ろにする者は馬の後ろ脚に蹴られて死んじまえと言いますからね、分かってはいるのです。はっ!! そうですよね、しょ、所詮私は馬、主殿にとって私は所詮馬、そういうことだったのですね…………分かりました。このエリウス今後は主殿の揺るがぬ強靭な盾としてあり続けると誓うことにしました。うん、それが正解だ」
……こいつにとって盾ポジションってどんだけなんだよ。もう面倒臭いから一生放置で良いかもな。
「うむ」
エリウス……お前のいったい何処にそんなにも自信があるんだろうな?
神獣様は神様だ。神様だけど更に何かを悟ってしまったエリウスの表情は自信に満ち溢れ力強くて凛々しかった。
「ぬおぉぉぉ、コルト下界の管理神の【眷属・大々々々々々々々々々々々々々々伯父】カッコ大の数は適当って何だよ、ダッセェー、これぇ―――ふざけてんのか、おいっ」
「あらぁ~良かったわねルイーズちゃん。親子で眷属なんて夢があるわぁ~」
……ミト様、夢って、どんな?
ダセェー、ダセェー、何とかしてくれよ。と、叫ぶルイーズ様と、素知らぬ顔で俺の湯飲み茶わんで神茶を啜るミト様。
俺の後ろに立っている兎に角凛々しいエリウスと、自身の定位置に腰掛け我関せず静かに神茶を啜りたまにマルアスピーと言葉を交わすパフさん。
自身の定位置ではなく俺の右隣に腰掛けミト様に睨みを利かせたりパフさんと言葉を交わしたり俺の目を見て頷いたりと忙しそうなマルアスピー。
スー。
「参じました。お館様、話とはいったいなんでしょうか?」
トントントン。
「ラケルです。お召しにより、参上致しました。入室の御許可をいただきたく」
貴重な時間をありがとうございます。
タイトルも遡って直します。
たぶんそのうち……。




