6-MS-167 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 最下階の魔力陣の基礎を作ったのは精霊様だった。The culprit dances nearby. -
昨日は、家族眷属使用人家臣を伴いラクールまでいったい何をしに行ったのだろうか。
表向きは三皇帝達から直接報告を聞く為、本当の目的はアンガーレム様に会う為。
結果的には目的を達成できた訳だが、今のこの状況……俺が望んだ形とは全く違う。
周りに無理を言いスケジュールを空けたのにこれではいったい何の為に同行したのか……。と、概ね皆に言われてたし。
理解していますよ。と、目が合う度に微笑みを浮かべ頷いていたアルさんマリレナさん神格持ち's。
特に余り何も気にしていない感じのメア組。
見た感じ分かり難いがあれで結構楽しんでいたマルアスピーと、大先輩を前に終始ガッチガッチだったミューさん、クーランデールはアンガーレム様と知り合いだったらしく人化し浴びるように酒を飲み交わし、ミト様はいつも通り些細なことは一切気にしない片手で数えるしか会ったことのない実子ルイーズさんをからかい玩具にし歓迎会を一番楽しんでいたと思う。
優秀な家臣で我が友ルードヴィーグ・ダダに任せた三皇帝ヴァルオリティア帝国のことが気にならない訳ではないが、二十四年位しか生きていない人生からでも学んだことがある。なるようにしかならないと。
歓迎会のクライマックス二歩手前ビンゴゲームで最初にビンゴしてしまった瞬間、結果を真摯に受け止め、それを全て受け入れよう。それで全てを終わらせようと決意した。
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だから、気にしたら負けだ。笑顔でスルー、スルー、スルー。
「つまりだな。儂の基本は地、大地な訳だ。その儂が成功させた離れ業は言ってみれば離れ業だ」
はぁ~……この調子がまだ続くのか?
「おっ」
「何じゃ」
「離れ業を離れ業と言い換えるその勇気、流石は我が師だと改めて関心しただけだ、続けてくれ」
「そうか、それならば良い」
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ようは、アンガーレム様は地属性の精霊様だから、地属性のアンガーレム様が作った魔力陣は、地属性の原点でもある地の公王ヘリフムス・フォン・センペル様の力の波長と親和力が高い。
だから、コルト下界中に飛び散った罠改め魔力陣の中には大爆発の拍子にちょっとした不具合とか書き換えが起きて地の公王ヘリフムス・フォン・センペル様の近くと繋がってしまった。その一つが偶然ガルネス大寺院の最下階にあった魔力陣だった。
罠はばれないように小ぶりに仕上げ沢山仕掛けた。と、言っていたが、小ぶりな罠がどうやったらあんなに大きな魔力陣で存在したのか。それは。
「成長したからに決まっとるだろうが、儂の魔力陣はそういうことになっとる」
なってるとは何ぞや。俺の研究者魂が追及と追求の手を緩めることが出来ず、脱線気味な状況を更に大いに脱線させることになってしまった。
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「儂等地の精霊は中くらいになるとだいたいこんなもんじゃよ」
「そうなんですか? 前にミューさんに魔力陣について聞いた時は、専門外だから分からないぞって言われたんですが」
「主親分、聞いとったのか? 儂はだいたいと言ったろ。それに儂より上位の大精霊が答えを出しておるではないか、専門外なのだろう? 得てして得意不得意とはそういう物ではないのか? まぁーその地下にあったっちゅう儂の罠はちと異常ではあるがの、綺麗サッパリなくなったんじゃろならばもう良いではないか」
確かに次はないから良いっちゃぁ~良いんだけど……。
「大地は寛容、全ては大地に還る。限度ちゅうもんがあるのもまた事実だ。あそこまで成長したとなると、いったいどれ程の穢れを還したのやら、あれでは多くの念に干渉されていたはず、良く動いたの、儂、儂の才能が怖い」
スルースルー。
「あそこで命を失った人達の念が魔力陣に干渉してたってことですよね」
「じゃな」
「あぁあぁあの念か。兄上が念とは闇属性の派生、煩悩に近い力だと言っていたが。なるほどなっ!! 地属性と闇属性は相性が良いのかと眺めていたが、地属性の力が地を這い念が闇属性の力に転じ宙を満たした訳か。なるほどなっ!! 闇属性の力が世界を支配する刻に地属性の爆発で濃厚な闇属性が放たれ飽和した力が白銀の世界を演出した訳か。遠くから見ていたが、一件綺麗に見えたあの光は悍ましい白だった訳か。たまに感じる歪みもあの時感じたが、あれは師の罠程度で成せる業とも思えんが、そこのところはどうなのだ? 師よ続けろ」
「……ルイーズちーっとばっかし会わんかっただけでこれか。儂を舐めるのもたいがいにせい」
「成せるのか?」
「ふっ、儂にそんなことができる訳がなかろう。空間までが限界じゃ、神格でもありゃべつじゃが、あれは欲しいからとって手に入るような代物ではないからの」
「知ってるかっ!! 我等が遠き遠き甥っ子殿は我等が乙御前の旦那様だ」
「知っとるわ、阿呆」
「さてここからが閃きの時間って訳なんだがぁ~、彼は何とこの世界の管理神様なんてすっばらしく大層な御方な訳だがぁ~……」
アンガーレム様に向かって何度も何度もウィンクを繰り返すルイーズ様。
「何じゃ、いったい何が言いたい」
「分からないかなぁ~……分かんねのかよぉ~……あぁあ―――、言っちゃおうかなぁ~」
ゴッ
「殴るぞ、はよ言え」
「……つぅーてめぇー頭は止めろよ。馬鹿になったら一日中てめえーの隣で笑い続けてやっからな覚えてろよっ!!」
殴る言う前に殴ってるし……。それに、一日中隣で笑ってる人がいるのはかなりの拷問。
「で?」
「分かった分かった言います言えばいんだろっ。我が義弟殿に神格を貰えば良いんだよ」
「は? ……強く殴り過ぎたのか、どれ見せてみぃー」
「おい、触んな。俺に触って良いのは、俺と家族と師と俺が認めた奴だけって相場が決まってんだよ」
「ならば問題あるまい、どれ」
「お、おい、こらっ」
「あ」
「あ? あって何だよ。もしかして本気で馬鹿になっちゃった系か……」
「阿呆か、もとから馬鹿じゃろうが」
「それもそうだなガッハッハッハッハッハ」
「変わらんのヌッハッハッハッハッハッハッハ」
さっきからこの感じ、いつまで続くんだろうか?
触れてはいけない気がする二人の絡みを何度もスルーして来たが、そろそろ精神的に限界が近付いている。自分自身のことだから良く分かる。
「まっ、ものは試しだ。世の中楽しく生きたもん勝ち言ったもん勝ちちゅうしなっ。主親分。儂の地属性の知識錬金練成方陣魔力陣何万年生きたか忘れたが数万年は培ったはずだ。全てやる。儂の技術を全部教える、だから頼む、お頼み申す。いっっっち番下で、亜神とか努力して神様目指します。だから、神格だけでも良いからくれ」
くれって……人に物を頼む時の態度がおかしい。
「……おいルイーズ。公王様は亜神半神どっちじゃったかの? 儂できれば公王様とは別の方が良いんじゃが」
「師の口から聞いたことしかない地の公王。はてさていったいどっちなのだろうなっガッハッハッハッハ」
『主殿、爾後の民の問題解決にアンガーレムの知識は必要かと。ここは恩を売って損はないと進言致します』
『なるほど。神の階位余ってるし』
『まずは亜神で宜しいかと』
『亜神って神様だけど神様じゃないんですよね』
『本人が努力すると言っているのです。ここは本人の意思を尊重してあげるべきかと』
『なるほど。本人の意思って大切ですからね。分かりました。エリウスの意見を採用しましょう』
『はっ』
「アンガーレム様」
「ヌッハッハッハ、な、何じゃっとおっと主親分。あぁ―――今のは冗談じゃ冗談。笑って許してくれると有難いのじゃが、ダメかの……」
「亜神で良ければ付与しますが」
「……」
「おっ、おおおぉぉぉぉぉ師よ、人間言ってみるものだなっガッハッハッハッハッハ、あ? お、おいどうした、しっかりしろ、我が義弟殿よ、わ、わわ我が師が遂に死んだ」
アンガーレム様は、俺の執務机の上で立ったまま気絶していた。その顔は、とても人様にお見せできるようなものではなかった。
が、とっても幸せそうだった。
貴重な時間をありがとうございました。




