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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-166 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 大樹の聖域はこうして生まれた。process and result. -

―――アシュランス王国王都スカーレット

 グランディール城・国王執務室

R4075年11月25日(風)9:00―――


 家の神様達は未だ帰らず、未だバカンス中である。



「ここが主親分(ヌシオヤブン)の仕事場か。ほぉー良い眺めだ」

「えぇ」


 昨日の歓迎会を兼ねた夕食(ディナー)時に、親分ではなくシックリ来る別の呼び方をお願いした結果、アンガーレム様の中でシックリ来るらしい主親分と呼ばれるようになってしまった。


 ルイーズ様曰く。

「このおっさんが飽きるまでの辛抱だ、諦めて次に呼んで欲しい敬称を刷り込み続けろ、たぶんそのうち何とかなる」


 歓迎会の主役の一人ルイーズ様は同じく主役の一人アンガーレム様と百二十年程行動を共にしていたから確実だと言い切った。


 ルイーズ様の助言に従い気長に刷り込みを行うことにしたのは良いが、この刷り込み、考えていたよりも難しかった。


 それは、アンガーレム様に主親分と呼ばれた直後に己の口から次に呼んで欲しい敬称を声に出し刷り込みという不自然な流れ。


 自分自身のことをロイクだロイク殿だロイクさんだロイク様だ管理者ロイクだ王だ陛下だと告げる違和感と言うか幼稚で気恥ずかしい違和感。


 今だ。と、その時になって気付いてしまった。呼ばれた直後にロイクだと告げる何て無理があると……。


 本当の意味で気長に待つことにした。


「元気が無いの。若いもんはもっとこう何だ、明るい内は体を動かし暗くなったら友や番と飯に酒に交尾とフィーバーとかいう洒落た奴をするのではなかったのか?」


 該当する者も中にはいるかもしれないが、人間種(ヒューム)の若者皆がそうだと思われるのはちょっと違うような。


人間種(ヒューム)はその辺の獣とは違い」

「変わらんじゃろ。猿も犬も鼠も兎も猫も馬も鳥も儂からしたら大して変わらん。飯を食い腹を満たし交尾し子を成し眠り起きる、なっ」


 アンガーレム様のこの考え方何とかできないものか。昨日もこんな感じの発言ばかり繰り返すせいで、物凄く居辛かったんだよなぁ~。


「なぁ師よ、景色の話はもう良いであろう。我等がここに集まったわ、甥っ子殿に地の魔力陣に何が起こったのか話す為であろう」

「そうか、そうであったかもしれん、ふむ、始めるとするかの」


 ルイーズ様助かりました。ただ、景色の話はもう終わってたかな……。


・・・

・・


 アンガーレム様の話は長かったが中身はそれほどなかった。



―――少しだけ時間は遡る


「...... ~ ......な訳だ」


 なるほど、ヒグマ山脈とコルトの丘が繋がっていた頃は、今はコルト川が流れているあの場所に霊峰コルトと呼ばれるカイライ山(標高18123m)よりも高い山があったのか。


 大樹の森の聖域の中にある精霊樹は、当時はその霊峰コルトの山頂の上にあった、と。


 上にか……。二万m弱もあったという山の山頂の上空百m位の場所に精霊樹が浮いてたって言われても想像ができない。


「ドゥーミナの野郎おっと野郎ってのは言葉の綾っちゅうもんだ。あれは女だからな。あの野郎、儂の顔を見る度馬鹿の一つ覚えの類じゃろうな、そろそろ落ち着いたらどうだ。もう良い歳なのだから落ち着いたらどうだ。もうもうもうもうもうもうお前は牛か魔牛か馬鹿もたいがいにせいって話に繋がる訳だ」


 ダメだ。もう好きなように喋らせておこう。放置は美徳、放置は金。

「なるほど」


「この話、何度も何度も聞かされ眠りに付くと魘されたものだ。瞼を閉じただけで浮かぶようになってしまった時は大変だったぞガッハッハッハっハッハッハッハ」

「ルイーズここは笑うところではないちと黙っとれ。儂が話しとるんじゃ」

「おぅそうだな。良し続けろ」


 この二人のノリにも着いて行けそうにない。


 肩をガッツリ組み合いガハガハヌハヌハ高笑いし、酒も入ってないのにテンションMAXなアンガーレム様とルイーズ様。


 隣の執務机の椅子に座るパフさん、後方大きな窓の前で仁王立ちしているエリウス。二人の様子をチラ見する。


 パフさんは、こっちのことは完全無視の方針のようだ。黙々と書類を作成しているようだ。


 通りで静かなはずだ。


 エリウスは仁王立ちしながら遠い目をしている。


 大事な時に役に立たない、ホント器用な奴だ、まったく。


「そんなある日、儂はついに地属性の自然魔素(マリョク)をもって空間に干渉するという離れ業を完成させた訳だ。分かるか、分かるな。地属性とは元来、大地に由来する属性であり大地にその力の根源が結び付いとる訳だ。おい主親分聞いとるのか」

「……はいバッチリ聞いてます。どうぞ俺のことは気にせず続けてください」

「うむ、でな……何処まで話したかの?」


「師よ、空間に地属性で干渉し大爆発を起こした件だ」

「知っとるは儂を誰だと思っとる。儂は」

「泣く子も泣き続けるアンガーレムだろうがガッハッハッハッハ」

「赤子は泣くものであろうが、まぁー良い、でな……ちと黙っとれ儂の声が聞こえじゃろが」

「おぅそうだな。良し続けろ」


「でな、儂はドゥーミナの野郎に罠を仕掛けることにした訳だ」


 テンションタケェ~……。って、ドゥーミナ様に罠?


「野郎の玄関の前に完成させたばかりの罠をばれんように仕掛け朝が来るの只管待っとった訳だ」


 ……この人いや精霊様か。薄々思ってたけどダメ寄りな人じゃなかった精霊様だ。


 楽しそうに語るアンガーレム様からは邪念も悪気も負の感情を一つも感じない。根っからの正直なダメな精霊様なのかもしれない。


「ついに、その時が来た訳だ。まさにその時コルト下界の歴史に大きな一歩を刻んでしまった訳だ」


 山脈と丘が離れたって件に繋がるんだろうなぁ~……。


「儂は一つでは足らんと踏み念のために十個だったか二十個だったか罠を置いたのじゃが、あの阿呆欠伸をしながらデカいまま出て来おってな一度に五六個或いは八個もっとだったかも知れんが踏み抜いてな。同じ場所に転移してもつまらんじゃろ、あえてバラバラの場所にした訳だ。それをいっぺんに踏み抜いてしまってな。もう手が付けられん有様じゃったよ。あの阿呆はいったい何を考えておるのやら、まったくもって理解できんかったわ。まぁー今もあ奴のことはちっとも理解できておらんがの」


 罠を設置したのアンガーレム様……。


「まっ結果は知っての通りじゃな。ロロノクックは南大陸の北の海岸へと転移し、精霊樹は大樹の森の適当に指定した座標へと転移し、起動を免れた罠は何処かへ転移し、起動し集まった膨大な地属性の自然魔素(マリョク)は行き場を失い魔力陣同士干渉し合い暴走した挙句大爆発した訳だ。岩の陰からこっそり見とった儂もその爆発に巻き込まれ数年程意識を失っちまった訳だ。傑作だろうヌッハッハッハッハッハ。撒いた種を尻も拭かぬまま数年も寝とった訳だからなヌッハッハッハッハッハ」


 ロロノクック様が罠を踏んでしまった訳か。気の毒に……。


「長らく寝とったからじゃろうな。儂は己のミスに気が付いた」


 ミスねぇ~。この人、創造神様とか精霊王様から罰を受けずに済んでるんだよな。不思議だ。


「地面が見当たらんもんだから仕方なく真下の地面に仕掛けた訳なんじゃが、あの玄関妙に見覚えがあると思ったが罠に集中する余り、まさかロロノクックの家の前じゃったとはな。傑作じゃろヌッハッハッハッハッハ、ホレここは笑うところじゃぞ」

「そうだな。笑うところだなガッハッハッハッハッハ」


 ……楽しそうで何よりです。


 豪快に笑い合う二人から視線を外し思考を巡らす。


 設置した罠は何処かへ転移した。これって、もしかしてだけど。

「世界中に散った罠、地属性の魔力陣って例えばこんな感じの物だったりしますかね?」


 タブレットの画面を、アンガーレム様とルイーズ様の目の前に展開する。


「お、これじゃこれ。何じゃこれ、あの時は最高傑作じゃとばかり……ハァ~若気の至りじゃな。これはダメじゃ」

「……見覚えがあるんですね。これを作ったのはアンガーレム様なんですよね?」

「若かりし頃の儂であっとるよ。だがこれはダメだ、失敗作じゃ」

「と言いますと?」


「よいか、ちと見ておれ」


 アンガーレム様は俺の執務机の上に上がると、宙に魔力陣を描き始めた。


「ここがこうでこうなってこうでああでああなってそれそれそれそれそれそれ...... ~ ......ほれほれほれほれここが良いんじゃろとこんな訳だ。分かるだろ」


 宙に展開したタブレットの画面に映るガルネス大寺院の地下にあった魔力陣と、アンガーレム様が描いた宙の魔力陣を見比べる。


 同じものにしか見えない。


「……ほぼ同じと言うか結果は同じですよね?」

「そうじゃ。結果は一緒じゃ、だが全くの別物じゃ。ここを良く見てみぃー、ここじゃ」


 アンガーレム様は指差した場所を器用に点滅させた。


「同じですね」

「おい師よ。何処が違う?」


「お前達は、ハァ~……良く見てみぃー。一万年じゃったか三万年じゃったか五万年じゃったか覚えとらんが若かりし頃の儂が作った可愛い罠とこの完成された罠、こっちは可能な限り左右対称に近付いとるじゃろが」


「「あぁ―――――なるほど、言われて見ればそんな気もしないような……するような」」

「ほれみい」


―――時間は戻って今


「大地の聖域の上空に大樹の聖域があった訳か」

「いやちと違うの。精霊樹は大地の聖域の上空に浮かんどった感じじゃの。大地の聖域はぶっ飛び、聖域の主は南へとぶっ飛び、精霊樹は森へとぶっ飛んだ訳だ。目覚め放浪生活を再開した頃風の精霊に聞いた訳だ。剥き出しになった精霊樹に危険が迫り緊急措置として張られたのが大樹の聖域だとな。このコルト下界に聖域が増える瞬間に立ち会えなかったことが儂のトップ二十の悔やまれることじゃな」


 ……スケールが、ぶっ飛び過ぎだろこの話。


「陛下、ダダ首相からの報告書です」

「あ、はい」


 パフさんから一枚の紙を受け取る。


 えっと何々……。

「総督府を置きました。暫く滞在します。こちらはお任せください。一つだけお願いがございます。神々様方に王都への帰還を伝えていただきたく。お願いします。お願いします。お願いします。この程度の内容なら念話で十分な気がするんですが……」


「こちらは添付されたメモ書きです。どうぞ」

「あ、はい」


 何々……。

「神々様方を侮ってはいけません。陛下も省みる勇気をお忘れなきよう切に願います」


 ……ダダ卿、その気持ちとっても凄く痛いくらい分かります。それにしても、ダダ卿はホント良い人だ。こんな状況でも俺の心配までしてくれるんだもな。うんうん。


 何だかちょとだけ気分が乗って来た気がする。

「さて、アンガーレム様、ルイーズ様、もう少し詳しく魔力陣の話をしましょう」

貴重な時間をありがとうございました。

三つに分けようとしたのですが、

切る場所を決められませんでした。

駄文が無駄に長文です。申し訳ありません。

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