6-MS-164 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 好奇心と決断。All for tomorrow.(一日目・首相の双肩と胃) -
目の前にはアンガーレム様が後ろの町にはルイーズ様が。
俺の意思はダイヤモンドよりも固くそして熱を維持しない。
基本的にはいつでも何となくクールな俺。集中さえしていれば何だって熟せるやればできる子の俺。
優先順位に変化などない。一度決めたからには最後まで貫き通すまでのこと。
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「ダダ卿」
「はっ!!」
「三皇帝と戦後処理を一任します」
「はっ、畏まりましぇあえぇぇっ!!!?」
「初代皇帝の遠い遠い最早他人レベルですが大を幾つ付けたら正解なのかすら分からない叔父上殿と、理で便宜上中精霊ではありますがその力は大精霊やそれ以上の通常精霊のアンガーレム様が俺を待っているんです。画家としては一流政治には無関心生まれる時代を間違えた御神輿皇帝ケーニッヒと、腹違いの兄皇太子と実兄を騙し討ちし家臣からは見限られ母親には縁を切られた自称皇帝コンロッドと、オリティア四世の実弟で貴族連合の主現状一番大きな町を実効支配する小山の大将自称皇帝コンラート。分かりますよねっ?」
「な、何を何が分かりますよね。ですか」
どうして分ってくれないんだ。
「ダダ卿っ」
「……陛下。宜しいですかな。確かに我が国とは関係のない他所の国の行末でしかありません。ヴァルオリティア帝国が滅びようが無くなろうが塵になろうが私は涙一粒こぼさないでしょう。人族至上主義への憎悪嫌悪厭悪同胞達の無念悲痛な叫び声がこの耳に聞こえて来ることはありませんが許せる訳がありません。ですが、私は知っています。争いからは何も生まれないことを」
フォルティーナみたいなドヤ顔をするのは自由だと思うからあえて何も言わないけど、その表情、人には見せない方が良いですよ、ダダ卿。……長くなりそうだし、一任するって言っちゃったし無視して行っちゃうか。
「急いでるんで、手短にお願いします、無理そうならこの話くらいなら後で本当に聞くんで結果報告の時にでも序に聞かせてください。では」
「でで、ではではありません陛下。正直に申し上げます。このルードヴィーグ・ダダに全てを任せてはなりません」
「はぁ~?」
おい、それって自分で言う台詞じゃないんですけど。
「ヴァルオリティア帝国の滅亡は意味をなさなかった旧教に私財を投じ届かぬ祈りを捧げ細々と生きる、夢、生きる意味そのもの。多くの者達が残飯以下雑草以下生きていて恥ずかしくないのか悔しかったら死んでみせろと罵られ暴力を振るわれ泥水を啜り」
う~ん。
「重いんで、後で聞きますね。まっ、別に無くなってしまったところで俺も困らないんで、そのへんも自由にしちゃっていいです」
「えっ!? ……ほ、ほん、本当に宜しいの……で、しょうか?」
「えぇ、という訳で、アンガーレム様お待たせしました。後の事は、家の首相が処理することになったんで、俺達はルイーズ様のところへ行きましょう」
「……お主、よ、良いのか?」
「えぇ」
「儂としては有難いのだが……」
「さぁ、時間が勿体ないんでサクッと移動しちゃいましょう。ルイーズ様もいきなり行ったら驚かれてしまうと思うんで、一度館に戻って連絡を入れつつお土産を見繕いつつ、あっ、ミト様も呼んだ方が良いかも何てったって母親ですからね。楽しくなりそうですね」
神授スキル【転位召喚・極】・対象:アンガーレム様・場所・ラクールの領主の館の来賓の大広間の俺専用のソファーの後ろ。神授スキル【フリーパス】・対象:エリウスと俺・場所・俺はさっきまで座ってたソファーでエリウスはアンガーレム様の右隣・追加項目:第三者が存在する時はその周囲一mの範囲内で第三者が存在しない場所。
「ダダ卿、報告待ってまぁ~す」
「はっ、あ、えぇぇ―――っ」
ダブルで発動≫
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
―――ダダ卿視点
「閣下、閣下はヴァルオリティア帝国を如何なされるおつもりで?」
国王代理神chefアランギー様の御不在時に陸軍省軍服組ゼルフォーラ大陸案件の責任者を代理で務めることになっている御名すら知らされていない亜神様から難しい御質問が飛んで来た。
陛下に、いや、ロイク殿に信用され嬉しい、いや、丸投げされ絶賛困惑している最中の私にはまだ答えなど無い。
私の胃がちょっとキリキリいってる。
「管理神様も神らしく成って来て喜ばしい限りですな」
国王代理神chefアランギー様の御不在時に中央軍軍服組国境警備案件の責任者を代理で任されることになっている御名すら知らされていないもう一柱の亜神様の御言葉。
全く全然ちっとも喜ばしくない。一国の王が神々様方が如く自由奔放自分勝手気ままは宜しくない。我が国が抱える上に行けば行くほど酷くなる丸投げ。これは大問題でしかないはず。だ。……だが、我が国は何故かうまく行っている。
人知の及ばない理解不能な事象の数々。一日一日が数年単位としか思えない濃密な躍進。四顧しなくても分かる私の周囲には聖獣邪獣様に精霊様に半神様に亜神様に神獣様に神様にともう何だかとっても高尚な存在階位にある触れてはいけない遠くから崇めるくらいが絶対に正しいはずの方々ばかり。
「我等は神格手前の亜神。だが亜神とて神。先程も話しましたが、我等は下界のそれに干渉するを許されず、故に見守るのみ。閣下、理ヒュームの認識では負の念を断ち切る機会です。新たに生まれるであろう負の念を気にする必要はない。摘み取りその根を断てばよい」
兵站の責任者を代理で任されることになっている御名すら知らされていない更に更にもう一柱の亜神様の御言葉だ。兵站の責任者を任されている亜神様が今居る中で最も攻撃的で容赦のない方なのが今は非常に有難い。嬉しくはないが……。
「どうするのだ?」
更に更に更にもう一柱の亜神様から優しい口調で御声をいただいた。私を心配してくれているのだろう。有難い。神々様方が皆このように優し神々様方であったのなら。
「手っ取り早く済ませたいのであれば殲滅を推奨するが。鼓舞補助を司る拙が兵士達に託宣を」
お、……御優しいのは御声だけで?
「お、お待ちください。降伏した者達とその国を殲滅するなどあってはならないことです」
「ならばどうするのだ。閣下は管理神様陛下に託された身ぞ」
更に更に更に更にもう一柱の亜神様が耐えかねて御声を張り上げ目の前に迫って来た。
ヒッヒィ―――神様お助けくださいって目の前にいるしぃ~。
「も、もう少し、ちょっとだけ、もうちょっとだけ……考える時間をください」
マルアスピー様ロイク殿の下に居れば変わることができる、生まれ変わることができるはず。私の感に間違いはなかったが、ここまで……何かが違うあっう胃、胃が……。
貴重な時間をありがとうございました。
 




