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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-モルングレー編ー
59/1227

1-46 仕立屋エレガンスと、怪しい装飾品屋。

宜しくお願いします。

――― 王都モルングレー

中央騎士団本部

――― 6月9日 13:30


 俺は、第3師団団長のジェルマン・パマリ子爵様と、遊撃部隊隊長のマリア・パマリさん、遊撃部隊所属の騎士(サー)リック・マケイン、魔術魔導部隊所属の仮面を被り黒いマントを羽織る正体不明の上級魔術師で第3師団第11小隊副隊長の騎士(デイム)ロレス・アリバスという27歳の女性と、他12人の団員と、遊撃部隊見習いのアリス・パマリさんに同行し、王都モルングレーのプリミエールエリアの王宮正門広場にあるゼルフォーラ王国の中央騎士団本部に来ていた。


 中央騎士団の第1師団・第2師団・第3師団・第5師団は専用の本拠地事務所を持っていない。中央騎士団本部に団長室、副団長室、監察官室があるだけだ。中央騎士団本部施設は中央騎士団全13師団の共同スペースな為、本拠地を持たないこの4師団は王都の見回りや自主鍛練訓練に1日の時間を割く事が多いそうだ。因みに、他の師団の本拠地は、第4師団と第8師団は新マルシェエリアの中央騎士団エリア20事務所。第7師団と第9師団は埠頭広場の中央騎士団(埠頭)エリア事務所。第6師団と第12師団は、西外壁門広場の中央騎士団西事務所。第10師団と第11師団と巷での通り名が【Lemon(ポン) Knights(コツ)】として有名な第13師団は北東外城壁の内部を基地として利用している中央騎士団北事務所だ。


 俺達は、中央騎士団本部の管理官執務室へ移動すると、中央騎士団本部上級管理官ライング・ヘザーレット名誉子爵様。中央騎士団本部の建物内で一番偉い人と対面した。


***管理官の説明***


【名前】ライング・ヘザーレット

【性別】男【種族】人間種人間族

【個体レベル】20

【生年月日】R4020年2月23日

【年齢】55【血液型】A型

【身分】王民【階級】名誉子爵

【虹彩】シュベーフェル

【髪色】オリーブブラウン

【髪型】サイドパーティド(七三分け)

【慎重】188cm

【体型】ややビッグ(ふくよか)

【利腕】右


【JOB・cho(チョイス)(本職)】

 戦闘型(BT):【ゲリエブウクリイェ(盾戦士)】レベル8

 ≪任意30≫≪騎士団転職≫


【JOB・inh(インヘリタス)

 戦闘型(BT):【ゲリエ(戦士)レベル10(最大値)≪父系継承≫

【JOB・inh(インヘリタス)

 戦闘型(BT):【エペイスト(剣士)】レベル4≪父系継承≫

【JOB・inh(インヘリタス)

 非戦闘型(NBT):【農家】レベル1≪母系継承≫


***説明おわり***


 連絡鳩を使い事前に文章で報告してある内容を、口頭で1から10まで全て報告しなくてはいけないという役所仕事の時間の無駄に付き合い。上級管理官ヘザーレット名誉子爵様の形式ばった長く諄い何の意味も無い言葉に付き合い。やっと解放されるのかと思いきや、損害報告と追加備品の要請が適切なのか確認する必要があるそうで、『これから第3師団の備品を確認する。本部の第1演習場に備品を昼過ぎまでに陳列し提出しておくように』と、命令を受けた。


 俺達は、第3師団の王都留守番組と合流し第1演習場へ移動した。第3師団は、監察官、監察官補佐、憲兵隊、再入団の騎士(サー)リック・マケインを加えても141人。正式な団員では無い俺やアリスさんを入れて143人。(ドラゴン)討伐命令を受け出陣した直後の第3師団の団員数は6851人。支給されていた備品の多くを戦いで失ったとはいえ、1時間やそこらで完了出来る量ではない。現在の第3師団の団員数では間に合わない事を知った上での上級管理官様からの分かり易い嫌がらせだ。だが、今日は俺が居る。


「皆さん、団長のジェルマン・パマリ子爵様から預かった第3師団の備品を演習場に出しますので、壁側に下がってください」


「出すって、俺達が壁側に動く必要があるのか?」


「名誉団長様の御命令だ動くしかないだろう・・・」


 普通の反応だと思う。壊滅状態の第3師団に、中肉中背20代前半の男が突然現れ、英雄だ名誉団長だと紹介され、団長やその家族と親し気に接している姿を見せられ、王都留守番組の団員達の中に良く思わない者が居て当然だ。


「聞こえただろう、馬車や樽の下敷きになりたいのか!もう直昼時だ。さっさと終わらせて管理官殿に後は任せてしまおうではないかぁっ!」


 ジェルマン・パマリ子爵様は、ニヤリとほくそ笑む。


 俺は、団員達が移動したのを確認してから預かっていた備品をタブレットから取り出す。


 可視化:王国中央騎士団第3師団の備品全て・取り出し:場所・俺の目の前の中央騎士団本部第1演習場:状態・同一アイテムを並べて ≫


≪・・・・・・・・・道具......



......を、取り出しました。


 取り出した道具の詳細情報を表示した画面が、俺の正面に映し出された。


≪ザワザワ ザワザワ


「・・・な、何が起こったんだ・・・」


「本当に馬車が・・・」


 初めて見る団員達は驚きの余り地面に尻餅をつく者まで居た。



「ジェルマン・パマリ子爵様。個数ですが、依然と数は同じですが、詳細は必要ですか?」


「既に管理部に提出してあるからね。管理官達はどうせ、演習場のこの状態を見て、数など数えんさ」


「そうですか・・・管理部に人が何人いるのか分かりませんが200~300人でやったとしても、状態を確認するだけで2~3日はかかるだろうし、そうですよねぇ~・・・」


「私としては、数を確認しながら回収作業を行う管理部の者達に御気の毒にと言いたいよ。ハッハッハッハ」


「それで、遺体なんですけど、何処に引き渡すと良いのでしょうか?」


「そ・・・そうだったね。マリア、本部の医務局に行って、第3師団の名誉の帰還者達の確認を依頼して来てくれ」


「分かりました」


 暫くすると、300人近い医務官達が演習場にやってきた。俺は、演習場の片隅に1206名の遺体と、識別不可能な状態の744名分の遺体の一部をタブレットから取り出し引き渡した。744人の方はロイの駐屯騎士団の団員達も混ざっている状態だ。



 陳列を終えた俺達は中央騎士団本部を後した。


 余談だが、大好物のカツ丼を2杯。昼間からワインを飲み上機嫌で本部に戻った上級管理官ライング・ヘザーレット名誉子爵様は、部下を伴いその足で第1演習場を訪れ、見事な大逆流を医務官と部下達の前で披露したそうだ。



――― 王都モルングレー

ジェルマン・パマリ子爵邸 書斎

――― 16:00


 ジェルマン・パマリ子爵邸で昼食を済ませた俺は、ジェルマン・パマリ子爵様と書斎で明日の打ち合わせをしていた。


「それで、ロイク君は、陛下に謁見する服は準備しているのかね?」


「特に目立った汚れも無いしこの服で良いかなって思ってたんですけど問題ありますか?」


「普段着で王宮を歩き回るのは・・・ロイク君が言う所の目立ちたく無いとは真逆の行動になるだろうねぇ~」


「これ俺の余所行きの一張羅何ですけど・・・」


「そうだねぇ~・・・ファーストエリアの東コメルスエリアに、王都一の仕立屋がある。皆で行って来ると良い」



――― 王都モルングレー

子爵邸の馬車のキャビンの中

――― 16:30


 俺は、マルアスピー、パフさん、アリスさんと、ファーストエリアの東コメルスエリアに店を構える王都で一番人気の仕立屋エレガンスに、子爵邸の街乗り用馬車で向かっている。


「女性はドレス何ですよね?男の正装って何ですか?」


「私も良く分かりません。店の者なら詳しいはずですから、聞いてみましょう」


 アリスさんも、詳しくは分からない様だ。


「着る服に決まりがあるのですか?」


 マルアスピーが、人間のマナーやルールに精通している訳が無い。


「式の種類や、日中なのか夜なのか、身内なのか外交親善なのか、着用する服には決まりがある事は学校で学んだのですが、スーツとかコートって名前位しか覚えていません。式典の服の事よりも弓の事で忙しかったもので・・・」


 実にアリスさんらしい回答だ。


「ロイクの正装には着る服に決まりがあるとして、私達のドレスにはどの様な決まりがあるのかしら?」


「そうですねぇ~・・・リュミエール(ひかり)スタイル。テネーブル(やみ)スタイル。クレピュスキュール(ゆうやけ)スタイル。スプランドゥール(かがやき)スタイル。こんなところでしょうか」


「アリス様が何を言っているのか全く意味が分かりません」


 俺もパフさんと全く同じ意見だ。


「つまり、日中と夕方と夜と華やかで煌びやかな形があると言う事ね」


「今ので分かったんですか?」


「言葉の意味を解釈しただけよ」


 マルアスピーは言葉からで、そのスタイルの雰囲気を想像出来たらしい。


「襟や袖や裾や装飾品や色。細かいルールはありますが、陽の状況に合わせてドレスを間違え無い限り、女性の場合は恥を晒す事は無いと思います。ですが、問題はデザインやアクセサリーや合わせる小物です」


 アリスさんの言葉を聞き、俺は宝石の時を思い出していた・・・・・・



――― 王都モルングレー

仕立屋エレガンス

――― 17:00


 仕立屋エレガンスの店の前に馬車が停まると、御者が俺達に声を掛ける前に、仕立屋から人が飛び出して来て、馬車のドアの前に立つと大きな声で、


「いらっしゃいませ。仕立屋エレガンスまで足を御運びいただきましてありがとうございます」


 御者は慌てて御者台を降りる。


≪コンコン


「目的に到着いたしました」


 そして、馬車のドアを開け足元に台を置いた。


「アリス様、ロイク様、マルアスピー様、パフ様。御足元に御気を付けください」


 俺達が馬車を降りると、御者は台を御者台に片付け馬車のドアを閉めた。


 俺達は、仕立屋から飛び出して来た男性の案内で店の中へ入った。


「いらっしゃいませ。本日はどの様な御用向きでございましょう?」


 エレガンスの店主と思われる横に大きな身体の金髪で長髪の40代後半位の男性が俺達に近付いて来た。


「入口係の君はもう良いよ。シッシッ」


 何か嫌な感じの人だ。


「それでぇ~・・・」


 嫌な感じの男は、俺達を値踏みする様に確認している。


「なっ!・・・何?何なのそれぇ~」


 甲高い声で、横に大きな体をくねらせながら、マルアスピーに近付くと、襟や袖を素材を確かめる様に触り続ける。


「何よぉこれぇ~・・・見た事も触った事も無い感触よぉ~・・・あぁ~」


「あ、あの~鼻から血が・・・」


 パフさんが、嫌な感じの男にガーゼを渡した。


「興奮したら血管が切れたのね。お嬢ちゃんありがとう!」


「いえ・・・」


 血を拭いている最中も片方の手は、マルアスピーの服を離していなかった。鼻血を拭き終わると男はマルアスピーに恐ろしい剣幕で詰め寄った。


「こ、この服は何で出来るの?これは何処で買った物なの?誰が作った物なの?幾らで買った物なの?これは何なの!いったい何なのよぉ~!あぁ~・・・」


 この人、大丈夫なのか?


『面白さを通り越して、気味が悪いわね』


 そうですね・・・


「アリスさん。このお店が王都で一番人気の店なんですよね?」


「という話ですよ。店の中に入ったのは私も初めてなもので、この様に個性的な方がいらっしゃるとは思いもしませんでした」


「何なの騒がしいわね。わたーくし醜い物と騒がしい物が大っ嫌いなーのよねぇ~」


「奥様。私が確認して参りますので、VIPルームへお戻りください」


「カミラ侯爵夫人様。仕立ての途中ですのでお戻りくださいませ」


 店の奥から嫌な感じの男よりも更に一回り大きな女性が姿を現した。


「きゃぁ~あの生き物はなーにかしら・・・!」


「奥様。彼はエレガンスのオーナー『ビューティー・ルビトン』です」


「おーもい出したわ。先日首にしておきなさいと、わたーくし言いませんでしたか!躾がなーって無いわ、オーナーを呼びなさい」


「奥様。ですから彼がオーナーです」


「あーりえないわ!醜い物から美しい物は生まれないもの。わたーくしの美貌は御母様譲り分かるでしょうぉ~」


『あれって、人間種よね?』


 普通に人間ですよ。どうしてですか?


『大樹の森に、あれに良く似た。森大黒豚って獣が居るのよ・・・森の獣の方は言葉を話したりしないわ種類が違うのね・・・』


 ん?あの女の人、人間ですよ。


『あら、そうなのね。森大黒豚に人間種達のこの店のドレスを着せ、後ろの人間種が声を当てているのだと思ってしまっていたわ』


 ・・・ハハハ・・・人に豚って言っちゃダメですからね。


『どうして?』


 似ていれば似ている程、人間は傷付くんです。自覚がある場合に限りますけど・・・


『大変ね。美的センスが大衆のそれとは大きく異なってしまうとあの様になってしまうのね』


 どういう意味ですか?


『精霊の私には、人間種というより、森豚種に見えるからです』


 ・・・それって・・・


「あーら!ここエレガンスは、わたーくしの様にエレガント(せんれん!)された者が(つど)う店なーのよ。みすぼらしいあの子達はなーにかしら?」


「確かにそうよね」


 マルアスピーが、同意した。


「マルアスピーさん。あの様に失礼な物言いに対して合わせる必要はありませんよ」


「はい。私はともかく、アリス様やマルアスピー様がみすぼらしいだなんてありえません。世の中の女性はどうしたら良いのですか・・・?」


 アリスさんが、マルアスピーの言葉に反応すると、パフさんも反論を口にした。


「そうかしら、あそこの人間し・・・女性の立場で考えてみたのよ」


「何をですか?」


 パフさんは、首をかしげる。


「みすぼらしいと思うはずですよ。大きな自分と比べ私達はとても小さいです。4人が1つになったとしても太刀打ち出来ない程ですよ。小さくみすぼらしい存在だと認識したとしておかしいとは思いません」


 うん?それって、凄くデブって言ってるだけなんじゃ・・・


「ま、ま、ま、まるで、わたーしが、大女だと・・・不敬罪不敬罪不敬罪不敬罪。あの者達を逮捕しなさい」


 誰も動こうとはしない。


「なーにをしているのです。そこの醜い男。そこのみすぼらしい者達を捕まえなさい」


「奥様。社会を知らない子供達です。御洋服の注文を済ませましたら、御屋敷に戻りましょう」


「不敬は許されぬ。わたーしを大女だと馬鹿にする言葉は死刑にあたいします」


「な、何なんですか、さっきから聞いていれば、貴方こそ失礼だと思います」


 パフさんは、不敬罪だと連呼する大きな女に対し強い口調で言葉を返した。


「なーんですと、成人したかしていないのか分からない程度の小娘が、口のきき方という物を知らないようね。名を名乗りなさい」


「私は、パフ・レイジィー。貴方は何方なのですか?」


「こちらのエレガンスな御客様は、トニナス侯爵(マルキー)家の御令嬢カミラ様です」


 御令嬢って・・・トニナス家の娘なら幾つになっても御令嬢かっ!・・・


『マルキーは侯爵の事よね』


 はい。トニナス家は、パマリ家やブオミル家と同じ5侯の一角です。


「小娘。爵位も持たぬ王民風情が、わたーくしに発言していたとは・・・汚らわしい」


「こちらの御客様は、パマリ侯爵家の方ですよ。私を醜いと罵る事は構いません。ですが、私のエレガンスな店で私のエレガンスを理解するお客様を蔑み罵倒する醜い行為は見過ごせません」


 この人のエレガンスを理解した覚えは無いけど・・・


『フフフッ』


「パマリ侯爵家?そこのみすぼらしい者達がですかっ!笑止」


「ロイク様。この者と話をしていても時間の無駄です。明日、王宮に着て行く服を決め、装飾品を選びに行きましょう」



 俺達は、途中何度か、カミラ・トニナス様から嫌がらせを受けたが、エレガンスのオーナー、ビューティー・ルビトンさんにコーディネートして貰い明日の正装の準備を終えた。ビューティー・ルビトンさんの縫製や仕立ての魔術は容姿とはうらはらにビューティーそのものでとてもエレガンスだった。


 また時間がある時に伺うと伝え、マルアスピーの服の素材については何も明かさずに店を出た俺達は、店の前に待機する馬車には乗らずに、仕立屋エレガンスの隣に店を構えるアクセサリー(装飾品)屋に入店した。ドレスに合わせる為の小物を購入する為だ。


 俺は店に入った瞬間、違和感を覚えマルアスピーに確認した。


 マルアスピーこれって、精霊気ですよね?


『えぇ!・・・地属性の精霊気です』


 精霊地属性が王都の中でこんなに強いって変ですよね?


『そうね』


≪ガチャ ヒョコ


 レジの横のドアが少しだけ開くと、女の子が顔を覗かせた。


「御祖母ちゃん。御客さんが店に入って来たよ!」


「帰って貰いな」


「はーい。という事で、帰ってください」


「あ、でもわた・・・」


 パフさんが何か言い掛けた時だった。女の子が詠唱無しで魔術いや魔法を発動させたのが分かった。


≪キィキィキィー


 店のドアがゆっくりと開いた。


「どうぞ、お帰りください」


 今のは、無属性の精霊魔法でしょうか?


『だと思います』


 あの女の子何者だと思いますか?


『さぁ~・・・誰かしらね。魔法を扱える人間種。パフちゃん達を(うち)へ戻したら、私達だけでもう1度ここに来ましょう』


 そうですね。


「あぁ~申し訳ありませんでした。定休日だと気付かないで入ってしまって!さぁ~皆違う装飾品屋に行きましょう。お騒がせしました」


 俺達は店を出た。


「ロイク様」


「ロイク様。どうされたのですか?」


「他にも店は沢山あるんですよ。さっきの店で時間を損したのに、ここでも無駄にしたくないって思ったんです。マルアスピーもそう思いますよね?」


「そ、そうね。フフフッ」


 俺は、パフさんとアリスさんに適当な理由を取り繕い、マルアスピーに同意を求めた。


 マルアスピーは、さっきの精霊気をどう思いますか?


『精霊が居るとしか思えないわね』


 やっぱり、そうなりますよね・・・


『そうね。フフフッ』


 俺達は、同じファーストエリアにある西コメルスエリアへ馬車で移動し、明日の為の買い物と王都観光を確り楽しんだ。買い物とは時間がかかるもの、コサージュと帽子の店で買い物を済ませ外に出た時には、既に2つの陽が沈み夜になっていた。



――― 王都モルングレー

精霊気を感じたアクセサリー(装飾品)

――― 26:50


 ジェルマン・パマリ子爵邸で夕食を御馳走になり、食休みをした後、俺とマルアスピーは、地属性の精霊気。精霊地属性を感じたアクセサリー(装飾品)屋へ神授スキル【フリーパス】で忍び込んだ。


「強くは無いですが、やっぱり精霊気ですよね・・・」


「はい。この空気は間違いなく精霊の物です」


 フリーパスで移動する前に、タブレットで精霊を検索してみたが反応は無かった。人の反応も無い様だったので、俺達は堂々と忍び込んだ。そう堂々と・・・


「マルアスピー。今からこの店を出るまでは、レソンネ(共鳴)だけにします」


『分かったわ』


 念の為に、周囲の状況と図を表示した画面を、マルアスピーの正面右側に表示させておきます。


 俺は、画面をマルアスピーの正面へ飛ばした。


『ロイク。この建物内の地属性を何かに集めて弱くして貰えないかしら』


 弱めるって、発動しないけど集積するか、何かに貯めておけって事ですか?


『可能よね?』


 非活性の大魔晶石10個とかそんなレベルじゃないですよここ・・・


『実はね』


 どうしたんですか?


『5月21日から6月9日。僅か19日間で冗談抜きで一気に【MP】【SMP】【GMP】が上がったでしょう』


 そうですね。本当に冗談抜きで大丈夫だと思いますが、一気に上がりましたね。


『その影響だと思うのだけれど、精霊気には勿論気付く事が出来ます。ですが、この様に余りに弱い精霊気の場合、あるって位しか分からないのです』


 俺が自然魔素(まりょく)コントロールに苦労したみたいに、マルアスピーの場合は自然魔素(まりょく)が一定以下だとその差が分からない状態になってるって事ですか?


『だと思うわ』


 この建物の精霊気は、約1000ってところです。


『中精霊以下で通常精霊以上の精霊気です』


 それって、通常精霊って事ですよね?


『う~ん・・・どちらかというと中精霊にとっても近い通常精霊です』


 それで、地属性を弱めた後は何をするつもりなんですか?


『属性が弱まれば、補う為に必ず何処から供給されるはずです』


 なるほど、それなら調度良いかも。【マテリアル・クリエイト】大地石(ソル)を生成 ≫


 俺の目の前に、自然魔素(まりょく)・地属性が集まり出す。地属性の密度が高まり中心に石が現れる。石は周囲の地属性を吸収し少しずつ成長する。


『ロイク。それ、魔晶石が属性を吸収して成長しているみたいね』


 魔晶石が魔獣の体内で生成され成長する石なら、大地石(ソル)は自然界で生成され成長する石な訳ですよね。違う点は1つだけだったんですよ。魔獣から取り出された魔晶石は自らの意思で自然魔素(まりょく)を集めない。でも、大地石(ソル)はいつまでも集め続けます。そして集めた自然魔素(まりょく)が一定量を超えると大きくなります。


『そうみたいですね』


 はい、これを利用すると宝石を好きなだけ大きく成長させる事が出来ます。今、地属性を吸収している石を良く見てください。


『緑色の石みたいね』


 暗い中で、しかも地属性が高密度で渦を巻いているので分かり難いと思いますが、あれは、灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットです。マルアスピーの髪の色はラッキーグリーンです。白い肌にとっても似合っています。灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットはマルアスピーにやっぱり似合うって事なんです。ここで地属性を吸って大きくなった灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットを持って帰って加工して明日のドレスの飾りの1つにしましょう。ここの地属性は弱くなる石は大きくなる調度良いでしょう?


『そんな事を考えていたのね』


 さっき店で見た鶯色は何かがちょっと違うなって思ったら、灰鉄礬柘榴石デマントイドガーネットが頭から離れなくてハハハ。・・・石1つだと吸収に時間がかかる様なので、あと3つ程生成します。【マテリアル・クリエイト】大地石(ソル)を生成 ≫



――― 27:20


 そろそろ、この建物全体の地属性が無いに等しい状態になります。


≪カタカタカタカタ


 店の商品がカタカタと音を出す。


 うん?マルアスピー。これ地震です。


『大きいのが来るわ』


≪ドォ―ン


 地面を突き上げる衝撃が、俺達の足元を襲う。


≪グワングワン グワングワン


 波打つ床はまるで水面の様だ。


≪カタカタカタカタカタカタダダダダダダダダダ



≪シーン


 おさまった様ですね・・・でもこれで、この下に何かが居るって分かりました。


『精霊ではないわよ』


 そうですね。この建物の地中部分1Kmまでを 表示 ≫


≪・・・・・・表示しました。


 地下300mの所に空洞がある様です。・・・行きますよね?


『えぇ』


 ですよね。それじゃ行きましょう!


 【フリーパス】タブレット表示画面の空洞の中 移動 ≫



――― 王都モルングレー

アクセサリー(装飾品)屋の地下300m

――― 27:20


 俺はマルアスピーと、神授スキル【フリーパス】で、地下の空洞へ移動した。


「に、人間・・・種?・・・人間種が、どうやってここへ・・・?」

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