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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-155 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 傍観ではなく静観。パスェイドソフィストリー -

―――アシュランス王国・王都スカーレット

 グランディール城(王城)3F・国王執務室

R4075年11月22日(地)10:00―――


 chefアランギー様が食べ歩きの旅に出てから一週間(コルト下界では十日間)が過ぎた。


 どうでも良い話だが、食欲の秋を拗らせたフォルティーナも序に一週間程居ない。


 雷は解決していないが基本的には静かで充実した一週間だった。検証と実験と失敗と成功と新商品の開発を心ゆくまで出来たと思う。


・・・

・・


 さて、本日の問題もこの空模様だ。


 執務椅子から立ち上がり、後方に控える自称盾の右隣へと移動し、大きな窓ガラスから外を眺める。


「ハァ~……」

「主殿、ゼルフォーラには溜息は不幸を招く、されど長蛇の命は恙なく。と言う格言があります」


 盾ことエリウスは俺が零した小さな溜息を聞き逃さなかった。


「知ってますか、エリウス」

「何をでしょうか?」

「俺って、ゼルフォーラ大陸生まれなんですよ」

「はい、存知ておします」

「その話って、村ではお年寄り達と顔を合わせる度に聞かされるんです」

「そ、そうなのですか」

「お年寄りとの社交の一つ、みたいな」


 老若男女問わず人間(ヒューム)は悩む。悩むとどうしても零れてしまう物がある。


 それは、溜息だったり涙滴だったり憤怒だったり人其々様々だ。


 憤怒する者に近付くお年寄りは他人(ヒト)は少ないが、溜息を零す者に近付くお年寄りは物凄く多い。


 失礼だとは思うが基本的に皆暇を持て余しているからだ。


 因みに、涙滴を零す者にも近付かない。暇は潰したいが他人(ヒト)の面倒事に巻き込まれたくはない。藪を突いて出て来るモノは(ジャ)でも面倒この上ない。


 (ジャ)(ヘビ)ねぇ~……。


「長生きするにしても不幸に塗れた人生死ぬまで不幸とかはちょっと勘弁して欲しいです」

「細く長く慎ましく時に大胆に滑稽に。ヒュームも聖者獣(ワレワレ)と同じように過ごすだけで楽になると思うのですが、何故そうしないのでしょう。興味深くそして奇天烈な存在です」

「……そうですね」


 言いたいことはそれなりに沢山あるけど、今はいいや。面倒それこそ藪蛇になりそうだし。


「天高く馬肥ゆる秋の快晴を縦横無尽に稲光が蠢く大空。一週間近く続くと結構見慣れて来るものですね」

「へぇ~」


 パフさん、この空って見慣れるとか見慣れないとかあったんですね。


 気が付くとパフさんが俺の右隣に立ち空を見上げていた。


「この状況っていったい何時まで続くのでしょうか?」


 ……う~ん。

「このってのは、どの模様のことを言ってます」

「そうですね。先程説明致しましたが、主に旧ヴァルオリティア帝国のことでしょうか」

「ハァ~……期限もっと先にしておけば良かったです」

「無能な皇族と強欲な奸臣の揃い踏みがここまで酷いとは想像していませんでした。今までの分は旧教を理由にしてさえいれば帝国民も黙っていたでしょうが、今はもうそれが許されません。帝国民はいったいどうしたいのでしょう?」


「ヴァルオリティアは皇族や貴族の血に能力(チカラ)が集中してして、軍や武力を握っているのも皇族や貴族。国民はどうしたいか以前に従うしかないって感じなんじゃないかな。そう言う意味では、この空模様と同じなんですよね」


「「「……」」」


・・・

・・


 窓越しに空を見上げたまま無言の時が暫し流れた。


「あ、あのロイク様じゃなかった陛下。雷は無理でも帝国は可能ですよねっ!?」


 可能か可能じゃないか、……か。

「それって、旧ヴァルオリティア帝国内の旧教の鎮圧を理由に、……ってことですよね」


「例えば、例えばです。大ゼルフォーラ王国時代は一つだった訳ですから、ゼルフォーラ聖王国に戻って貰うとかはどうでしょうかって無理がありますね」


 どうやら、パフさんの中で自己完結したようだ。しっかし凄い空だ。高く青い空と音の無い雷。これに慣れるって無理があると思うんだが……。


 でも、この人は。


 パフさんへと視線を動かす。


「あーでもない、こーでもない。でもそれだと解決できないような……ブツブツブツブツブツ」


 快晴の雷空模様を見つめながら思考を巡らすパフさん。


 邪魔をするのは良くないことだ。と言うか、これも(ヘビ」)だ。


 華麗にスルーし、エリウスの方を一度見てから空へと視線を戻した。


「「「……」」」


・・・

・・


 そろそろホント、動かないと。でもなぁ~…………。ハァ~。

貴重な時間をありがとうございました。

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