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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-153 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 無駄かもしれない、無駄じゃないかもしれない。ザッツザウェイイットゴーズ -

 実験を開始してからそろそろ二時間。やっと最後の三人だ。


「陛下、最後の組になります。四番はゼルフォーラ聖王国パマリ侯爵家家臣貴族カルゼノイ子爵家の前子爵の実弟です。家臣貴族カルゼノイ子爵家の本家は、ゼルフォーラ聖王国カルゼノイ子爵家です。パマリ家にはカルゼノイ本家より分家の姓の変更を要請する書簡が度々届いていたそうです。ですが、現在はその要請は取り下げられています」

「なんでまた」


「カルゼノイ分家の当主エリック子爵が、(ドラゴン)討伐の任務中に戦死し、跡目争いが起きたそうです。争いは領民を巻き込んでの武力衝突へと発展し多数の死者を出しました。勝利したのはエリック子爵の第一子を担いだエリック子爵の正妻の実家を中心とする一派で、敗北側は協力した領民諸共追放処分になっています。ですが結果的には勝利側の末路の方が悲惨です。武力衝突による領民の犠牲、パマリ家の許可もなく領民を追放したことなど、数々の隠蔽事が露呈し能力不十分と判断され改易の処分が下されています。お飾りの当主と未成年者は辺境隔離処分、跡目争いの中心となった有力者達は極刑。家や残された者達は、財産没収犯罪奴隷落ち等極めて重い処罰で幕引きになっています」


「へぇ~、跡目争いって怖いですね」


 エリック子爵、パマリ家のエリック・カルゼノイ……エリック……何か聞き覚えがあるな。パマリ家のパーティーで紹介された覚えはないし、……気のせいか?


「特権階級出身の人が家でいったい何をやらかしちゃったんですか?」

「治療行為だけなら問題はありませんでした」

「あー、お金ですか」

「はい。しかも法外な金額を請求し払えない者を契約奴隷が認められているゼルフォーラに連れ出し無理矢理奴隷落ちさせていました」

「ほぼ人身売買ですね」

「無許可の治療行為自体には法による罰則はありません。ですが、金銭等の見返りを要求する行為は禁止されています」

「食べ物を受け取ったりとか結構曖昧な感じだったと思うんですけど」

「ですので罪状は、禁制品の人身売買、架空不当請求、詐欺、脅迫、奴隷禁止法違反などなどです。奴隷に関しては他国で行われたことですので、禁制品売買の人身売買罪でchefアランギー様より死刑暫くの間は保留刑の判決を言い渡されています」


 フィリー内の元特権階級の追放処分済の人の実験最初で最後、(イチ)、落ちるっと。……この人も何処かで見たことがあるような気がするんだけど……たぶん気のせいだろう。


「この者には恩赦で保留刑の免除を」

「保留刑を免除したら死刑になっちゃいません?」

「なりません。恩赦とは減刑が原則です。ですので、保留刑を減刑し未執行刑即ち死刑から無期刑を約束しています」


「無期とか終身って反省と謝罪の日々をとかって言ってますが、結局のところ貴重な税金で囚人を無期限で養うってことですよね」

「あわよくば更生もでしょうか」


「不要な行政施設と同じくらい究極に無駄って感じですね」

「全てを処刑では国としての体裁が……」


「凶悪極悪犯罪者にも人権を、でしたっけ。確か、旧ガルネス神王国とかヴァルオリティア帝国とかベリンノック大陸の国とかにその考え方が定着してるんですよね? でもそれって旧教からの押し付けだったんですよね?」

「そうかもしれません。ですが、一度根付いてしまった考え方はそう簡単には変わらないものですので……」


「これって俺の持論なんですけど、犯罪の多い国、貴族の犯罪者が多い国に限ってこの考え方が定着してる気がするんですよね。身内を守ろうとしてるようにしか見えないんですよねぇ~。自分より弱い立場の人を騙したり貶めたりするような人に人権なんてものは無いって俺は思ってるんで、こんな考え方しちゃうんでしょうけど」

「基本的には私も陛下と同じ考えです。罪を憎んで人を憎まず。と、旧教の教えを幼い頃より刷り込まれて来ました。今にして思えば旧教の聖職者共の多くが罪人で……おっと、政治と宗教の話は正式な場所で話し合うものでしたね」


「長くなりますからね」


「では、紹介を再開致します。二百番は吸血によって家畜を大量死させた器物損壊罪でchefアランギー様より百年長刑の判決を言い渡されています。この者には恩赦として、百年長刑から執行猶予なしの有期拘禁十三年刑を約束しています」

「きゅ、吸血? この女の人メアの人なのか?」

「違います。ベリンノック王国の南大砂漠地帯に住む少数部族サンサライ族の祈祷師の一族です」


 ふぅ~ん。まっ何でも良いや。フィリー以外の人で祈祷師の実験、ようはフィリー以外の人だから実験百三十七(ヒャクサンジュウナナ)、でもって落ちるっと。


「最後になります。一番は度重なる食い逃げにより詐欺罪でchefアランギー様より浄化センター預かりの刑を言い渡されています。更生したと判断されるまで拘禁刑が適用されることになっています。この者には恩赦として釈放を約束しています」

「この女の娘()更生してないように見えますが、釈放しちゃっても良いんですか?」


「問題ありません。食い逃げで再び捕まった際には裁判無しでchefアランギー様の御裁きを学ぶつもりです」

「浄化センターですか」

「はい」


 雷は、国民みたいだし、落ちないな。


・・・

・・


 ババババッチィーン×2。


 雷は予想を裏切らない。食い逃げ常習犯の女の娘以外の二人に雷が落ちた。


「ダダ卿、一番ですが親は何をしてるんですか?」

「居ません」

「身内は?」

「居ません」


「家の国民にはどういう経緯で?」

「ベトギプス王国の漁船で働いていたところ嵐に合い船が転覆し我が国の浜辺に一人流れ着いてそうです」

「遭難者ってことですか?」

「そうなんでしょうね。……わ、わざとじゃありません。偶然です偶然」

「俺、何も言ってませんよ」

「……一番はアル様の児童福祉教育一次保護センターからも脱走を繰り返しています」

「未成年者の衣食住教育の為の予算、組んだの八月に入って直ぐでしたよね? まだ回ってないんですか?」

「後程報告させていただきます」


・・・

・・


 実験は終わった。


 成果は過程も含めイマイチだ。


 予想通りの結果しか得られていない。


「陛下、今回の実験やる必要があったのでしょうか?」

「ぶっちゃっけ最初の数人だけで十分でしたね」

「ですよね」

貴重な時間をありがとうございました。

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