6-MS-146 コルトに16歳の神授を取り戻せ - チヨコと陛下②と、重なり一つになる②。 サーコンスタンス -
エリウスは、東朝廷(正式にはジャスパット皇国東朝廷)の頂(王)の帝さんだけを執務室に連れて来た。
これは、エリウスがジャスパット皇国の王は帝さんだと認識しているということだろう。
盾を自称し兎に角俺の後ろに立とうとするエリウスはあれでも聖獣様から叩き上げした神獣(神)様の一柱だ。
神様が帝さんをジャスパットの王だと認識してる以上、俺もそれにならうべきなんだろう。と、そんな気がする。
ただ俺の立場でそれは、不味いだろう。
他国の帝(王)位継承問題に干渉するのは、外交を全く理解していない俺でも分かる。これは、問題でしかない。
俺のことを兄と勝手に位置付けた欲塗れの西朝廷(正式にはジャスパット皇国西朝廷)の天だったか頂の天子殿は、正直嫌いなタイプの人間だったし、この際、帝さんが王で良いじゃね、と、俺も思わない訳でもない。
「うぅん? 儂の可愛い可愛いトゥーシェとリュシルがいながら熱い視線で若き女王を見つめるとは、婿殿も好きよのぉー」
あ? 何言ってんだサザーランド陛下は……。
「あのぉー宜しいでしょうか」
「ふ、ふむ、す、すまんのぉ。婿殿の視線がどうにも気になってしもうてな、続けて良いぞ」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただきます。チヨコ殿は、北の最果てと呼ばれる島々を統一されパンスト皇国を建国した。その後、トーターと呼ばれる絶対神様の救いの儀式に巻き込まれるかして、メア王国の王都の南に広がるシカバネ大荒野に発生した歪みの中から姿を現し、政務の息抜きで部下と遠乗りをしていた陛下は偶然にもその場に立ち会い、チヨコ殿を保護した。その際、遠乗りに同行した部下が歪みに飲み込まれ消息不明になるという悲劇にも見舞われた……」
「種族も名を思い出せぬが、絶対神ナナンフェルテリーナ様によって救われたのだ、本人も本望であろう」
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「その通りです。そろそろ結論と参りましょう」
「うむ」
ドラゴラルシム王は、分かり難いが難しい顔をしている。まだ納得していないようだ。
「そうですね」
ゼルフォーラ王は、安堵の表情を見せている。やっと終わったのかと思っているに違いない。
「そうしますか」
ララコバイア王は、ゼルフォーラ王の発言に便乗したり意見を肯定することが多い。今もそんな感じだ。
しっかし、ララコバイア王も狸だよな。為政者としての威厳を出しながらの金魚の……。
「我等が偉大なるメアですと二百一年程前、古の世界ここコルトですと九千年程前に起こったことが、ここコルトの来年リーファ四千七十六年の二月十八日から二十五日の間の何処かで起こります。それは時間にして数分から数時間、ここコルトですと数ラフンから数時間の間続きます。前回もその前までに起こった虚による歪みも都市を消滅させ人を淘汰し人工物を出現させ渡者を迷い込ませました。絶対神様による救いの儀は毎回このように小規模です。ですので、古の世界の王である皆様がそこまで気を張り身構える必要はないと私は考えます」
「国民が大量に失踪するなど我がドラゴラルシムでは一大事だぞ」
「クロージャ殿、ドラゴラルシム王よ。それはゼルフォーラとて同じことです」
「竜王国聖王国関係なく何処の国でも大事件です」
「我々とこちら側とでは状況が異なるのでしょう。弱肉強食弱い者は強い者の糧となる、食べ物の乏しいメアでは定期的に訪れる虚は絶対神様による淘汰であり救いだと信じられています」
貴重な時間をありがとうございました。




