1-44 夜の森の外と、子爵王都邸の4人。
宜しくお願いします。
――― 王都モルングレー
ジェルマン・パマリ子爵 王都邸 ゲストルーム
――― 6月8日 26:12
俺は、マルアスピーと2人で、王都モルングレーにあるジェルマン・パマリ子爵様の王都邸のリビングへ、神授スキル【フリーパス】で移動した。
リビングには夕食を終えたアリスさんとパフさん2人の姿があった。俺は、第3師団の状況を確認している時に起こった旅人達の超高速移動。ほとんど空間移動の件をアリスさんに伝えた。悪魔の事は運の神フォルティーナ様から『人間種にこの手の話をしても無駄だろうから伝える必要は無い』と、夕食の時に釘を刺されたので伝えずにおいた。
......と、言う訳で、不思議な速さで移動する人が森の中に沢山いますが、第3師団の皆さんや野宿を決めた旅人達は落ち着いているので、取り合えず危険な状態では無いと思います」
「転位の様に移動する人間がそんなに沢山いるのですか?」
「はい。今、森の状況をアリスさんにも見える様にします」
可視化:対象・『アリス・パマリ』・今だけ 発動 ≫
≪・・・認証を更新しました。
俺は俺の正面上右に表示させている、第3師団と周辺の地図の画面を、正面へ複製し画面を2倍に拡大してから、アリスさんの顔の正面50cmに飛ばした。
「こ、こんな事も出来るのですか・・・」
「さっき実験していたら偶然発見したんです」
アリスさんは、画面に触れようとしたが、手は空気を払っただけだった。
「触る事は出来ないのですね」
「ロイク。私とパフちゃんに、総菜クレープの写真とレシピを貰えるかしら」
俺が、アリスさんと話をしていると、パフさんとデザートのレシピの事で盛り上がっていたマルアスピーが、タブレットの新機能(さっき気付いただけで元から備わっていたと思われる)【voyeurismelafenêtre】(ヴォワイユリスムラフゥネートル)スキルを名称で発動させる時に発音が難しかったので、勝手に【小窓】と呼ぶ様にした。この新機能【小窓】を所望して来た。
「分かりました。アリスさんちょっと待ってください」
画面マルアスピーを表示・【voyeurismelafenêtre】(思考の際はこっち)・1つ:場所・右手人差し指の前 発動 ≫
俺は、自分の右側に指を動かし人差し指を立てた。指の前に画面が2つ現れる。
表示:総菜クレープの画像とレシピ 対象:画面マルアスピー・新画面を画面マルアスピーの画面と関連付け ≫
≪・・・画面を表示しました。画面マルアスピーを新規画面とリンクしました。
俺は、2つの画面の内容を確認してから、2人の顔の正面50cmへ画面を飛ばした。
「ありがとう」
「え?・・・ロイク様、これはいったい・・・」
「えっとですね。パフさん、今アリスさんにも同じ説明をしているところだったので、............と言う訳で、マルアスピーとこのスキルを実験していたら偶然発見した機能です。便利なので使い慣れておこうと思ってます。国王陛下への謁見後はサーフィスでの予定だけだから、狩りとかで戦闘の時の活用の練習もする予定です。その時はパフさんにも怪我をしない程度で手伝って貰う予定なので宜しくお願いします」
「はい」
「ロイク様。私も是非御一緒させてください」
「サーフィスにですか?」
「・・・サーフィスと言いますか、狩りの練習です。ダメでしょうか・・・」
「あぁ~構いませんよ。でも、騎士団の訓練とか忙しくなるんじゃないですか?」
「私が見習い配属されている第3師団は御存じの通り、再編優先の状態で組織訓練どころではありません。騎士個人個人で修練と鍛練を忘れずに来る時に備える様にと御父様・・・団長殿から指示が出ています」
「再編大変そうですよねぇ~・・・騎士団の訓練方法を知らないので、俺達と一緒に狩りをしても練習になるか分かりませんが、アリスさんさえ良ければやりましょう」
「ありがとうございます。ロイク様」
アリスさんはとても嬉しそうだった。
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・
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「アリス様。私は、魔術を少々扱えます。アリス様は弓矢が専門なのですか?」
パフさんが、アリスさんに質問した。
「そうですね。私は御父様からグラディアートルのJOBを継承しているので、剣も練習さえすればそこそこ扱える様になると思いますが、基本はロイク様と同じハンターです」
「アリス様は、中級職をJOBに御持ちなのですか?」
「はい。御父様のJOBを継承で所持しているだけですけどね」
「下級職のエペイストの修練度がMAXの人が転職出来るんですよね?」
「その様ですが、弓一筋でしたので、詳しくは・・・」
二人の会話が微妙に続かない。俺は、2人の正面の画面に2人のステータスとJOBを表示させた。
「これは、私達の?」
「ロイク様。これは私とパフさんのJOBでしょうか?この数字は?」
「画面に表示されている情報は、パフさんとアリスさんのステータスとJOBです。数字は、スキル【イヴァリュエイション・ステータス】のレベルが9以上無いと認識出来ない情報です。【HP】は生命力・体力値。【MP】は魔力量や魔力。【STR】は物理攻撃力とかで、【DEX】は応用力や器用度。【VIT】は物理防御力で、【AGI】は敏捷性・素早さ、【INT】は知識・智恵・記憶力で魔術の威力にも影響しているみたいです。【MND】は非物理攻撃に対する防御力です。精神や感覚器官への攻撃に対しての耐性の様な感じです。【LUK】はそのまま運というかそんな感じです」
「ロイク様。私、武具を装備した状態でこの情報を見たいのですが、装備しても宜しいでしょうか?」
アリスさんは、瞳を輝かせ凄い食い付き様だ。
「えぇ・・・」
「ねぇロイク。2人にも武器がありませんでした?」
「武器?」
『神様からの武器です』
あぁ~・・・忘れていました。良い機会だし渡しちゃいます。
『フフフッ』
何ですか?
『・・・何でも無いわ』
・・・
「パフさんと、アリスさんに、俺から武具のプレゼントがあります」
「ロイク様からのプレゼントですか?」
「私は契約奴隷です。宝石をいただいたばかりだと言うのに、そんな武具までいただけません」
「一緒に狩りしたり俺の実験に付き合って貰う訳で、前払いって奴です。パフさんは当分俺達と一緒な訳だし、武具もそれなり揃える必要があるから、使って貰えると嬉しいかな」
「・・・頑張ります」
「私も武具をいただいてしまって宜しいのでしょうか?」
「アリスさん専用の武具なので、受け取って貰えると助かります」
「私、専用の武具ですか・・・先日いただきました外套も専用装備でしたが、その武具も私専用なのでしょうか?」
「はい。今出します」
アリス・パマリ専用武器とパフ・レイジィー専用武器 取り出し ≫
≪・・・道具・武具・装備武器より【クロワールの弓】と【リアンワンド】を取り出しました。
俺の右手に杖、左手に弓が現れる。
「まずは、この杖から説明します。これは、【リアンワンド】と言って、パフさん専用の杖です。つまりリュニックファタリテです。特に盗難防止の為に目立った効果はありません。第三者が所持した状態でパフさんから10m離れると杖はパフさんの手元に勝手に戻ります」
「意思を持ってるみたいです」
「パフさん。きっと、その杖には帰還の魔術が施されているのよ」
「そうです、アリスさん。この杖には盗難防止の為に無属性魔術【転位帰還】を施してあります」
「リュニックファタリテ・・・凄い杖なんですね」
「杖の能力を聞いたら驚きますよ」
「まだあるんですか?」
「はい。戻って来る杖ってだけでは特に役に立ちませんから・・・まずは、先程のステータス値の数値が大きく変わります。【MP】の最大値が5倍。【INT】【MND】の最大値が2倍になります」
「5倍!ですか・・・マジシャン達が知ったら騒ぎになるレベルの話ですよ」
「えぇ~・・・なので、アリスさん。パフさんもですがこれは秘密です」
「はい」
「そうね。その方が良いと思いますわ」
「そして、地水火風属性魔術と特化のレベルが上限の10になります。地水火風聖邪光闇無属性の耐性のレベルが上限の10になります」
「ちょ、ちょっと待ってください。四大属性の魔術と特化を装備しただけで極めてしまえる杖という事でしょうか?」
「そうみたいですね」
「みたいって・・・ずば抜けた力をお持ちのロイク様には分からないかもしれませんが、四大属性を全て所持し全ての属性を極めた成人したての16歳・・・ロイク様の武具はロイク様と同じで私達の常識を遥かに超えた領域に存在しているのですね・・・」
「それでなんですが、他にもありまして」
「ま、まだあるんですか?」
「この杖は、直前に発動した魔術を無詠唱で発動させる事が出来ます。無詠唱の魔術の際は【MP】も消費しません。なので1度、強め目の魔術を発動させておけば、その魔術だけを連射し続けるなんて荒業も出来ます」
「・・・無詠唱で、連射・・・軍が聞いたら魔導の回路や仕組みを知りたがるでしょうね・・・」
「でも、秘密です」
「隠し通せるレベルでは無いと思いますが・・・パフさんばれない様に気を付けてくださいね」
「はい、アリス様」
「装備しないと機能しない効果なので、就寝時以外は可能な限り装備状態で居てください」
「はい」
「アリスさんの武具は、【クロワールの弓】と言います。これもリュニックファタリテです。ステータス値の【STR】【DEX】の最大値を2倍。【AGI】【LUK】の最大値を5倍にします」
「こ、この弓も凄い物なのですね・・・」
「地水火風属性の特化のレベルが上限の10になります」
「私も、四大属性の特化攻撃を最大レベルで行えるという事ですか!」
「そうなりますね。そして、1Km圏内の標的への命中率が100%になります。勿論、標的の場所を認識している事が条件です。それと、これも絶対に秘密ですが、この弓には神授スキルが神授されています」
「バースデイ・スキルが?ロイク様が御造りになった弓ですよね?・・・どうして神授スキルがそれに・・・」
『フフフッ』
こういう時の説明ってどうしたら?
『適当で良いのではないからし』
適当って・・・
『この子はロイクが言った事なら、何でも信じるわよ』
・・・
「えっと・・・完成した時に神授されみたいで・・・」
「武具が完成する際に啓示を受ける事があると聞いた事がありましたが、これがその啓示を受けた弓と言う事なのですね」
へぇ~そうなんだ・・・
『良かったわね。啓示って便利』
そうですね。
「えぇ・・・たぶんその啓示だと思います・・・」
「神授を受けた武具を私がいただいてしまって本当に宜しいのでしょうか?」
「限定装備なので、アリスさん以外の人は使えないですから・・・」
「ロイク様の弓を一生大切にします」
俺のじゃないけど・・・創造神様からだって聞いたら倒れちゃうかも!
『フフフッ、どうかしらね』
「それで、神授スキルなんだけど、【シールド】って風属性の防御魔術レベル10が使える様になるみたいです。【MP】の消費が分からないから、これは実験の時に一緒に確認しますか?」
「は、はい。ロイク様!是非、お願いします」
アリスさんのテンションは更に上がっている様だ。
「この弓も装備している事で、全ての効果が機能するので、装備時と非装備時の違いに早く慣れた方が良いと思います」
「分かりました」
「という事で、パフさん、アリスさんどうぞ」
杖と弓は、リュニックファタリテとしての効果を開始した。
「さて、武具を装備した状態で改めてステータスを確認しますか」
「はい」(2人)
***パフさんとアリスのステータス***
――――――――――
パフ・レイジィー
――――――――――
≪JOBの状態≫
【JOB・cho本職】未設定
【JOB・inh】
戦闘型:【メディウム】レベル1≪父系継承≫
【JOB・inh】
非戦闘型:【リプレリー】レベル1≪母系継承≫
≪武具の装備状態≫
【装備武具】**武器:リアンワンド
※リュニックファタリテ※
※①【MP】最大値5倍※
※②【INT】【MND】最大値2倍※
※③【四大属性魔術】レベル10※
※④【四大属性耐性】レベル10※
※⑤【非四大属性耐性】レベル10※
※⑥【無属性耐性】レベル10※
※⑦【四大属性特化】レベル10※
※⑧直前に使用した魔術を無詠唱で発動可能※
※⑨直前に使用した魔術の再発動時【MP】消費0※
※装備時のみ上記効果発動※
【装備防具】:普通の服(上下)
:普通の靴
【装備装飾】:普通の髪留め
≪ステータス値の状態≫
【個体レベル】3 【NEXT】78
【HP】37 【MP】810 【STR】20
【DEX】57 【VIT】22 【AGI】45
【INT】96【MND】104 【LUK】15
【BONUS】4
―――――――――
アリス・パマリ
―――――――――
≪JOBの状態≫
【JOB・cho本職】
準戦闘型:【ハンター】レベル5
≪任意16≫≪母系継承≫
【JOB・inh】
戦闘型:【グラディアートル】レベル1≪父系継承≫
【JOB・inh】
非戦闘型:【為政家】レベル1≪父系継承≫
【JOB・inh】
※【JOB・cho(本職)】へ≪任意16≫※
【JOB・inh】
非戦闘型:【商人・貿易商】レベル1≪母系継承≫
≪武具の装備状態≫
【装備武具】**武器:クロワールの弓
※リュニックファタリテ※
※①【STR】【DEX】最大値2倍※
※②1Km圏内の的に対して命中率100%※
※③【四大属性特化】レベル10※
※④【AGI】【LUK】最大値5倍※
※⑤神授スキル【シールド】レベル10※
※装備時のみ上記効果発動※
【装備武具】中央騎士団支給武器:矢(良品)30本
【装備防具】中央騎士団支給防具:見習いの軽鎧
※①【HP】+10※
※②【VIT】+14※
中央騎士団支給防具:見習いの革靴
※①【VIT】+5※
※②【AGI】+7※
**防具:俊足の外套
※リュニックファタリテ※
※①スキル【俊足】レベル3※
※②【AGI】+30※
※③地・水・火・風・闇属性特化レベル+1※
※④地・水・火・風・闇属性耐性1.5倍※
※⑤矢の飛距離1.2倍(1Km以上から)※
※装備時のみ上記効果発動※
【装備装飾】:普通の髪留め
≪ステータス値の状態≫
【個体レベル】9 【NEXT】250
【HP】107 【MP】55 【STR】154
【DEX】139 【VIT】90 【AGI】447
【INT】71 【MND】73 【LUK】165
【BONUS】16
***2人の説明おわり***
「あれ?」
「どうかなさいましたか?」
「いや、パフさん何ても無いです」
マルアスピー。
『何?』
マルアスピーやアルさんや母さんや親父の時は、スキルの各【心得】の数値をステータスに反映処理出来たんだけど、パフさんとアリスさんの【心得】の数値が反映出来なくて・・・
『あら、そうなのね』
はい・・・どうしてだろうぉ~。
『きっと家族では無いからよ』
家族か家族じゃないかで神授スキル【オペレーション】ってやれる事変わるんですか?
『さぁ~・・・何となくの意見よ。忘れて』
・・・創造神様に確認して方が良い事がまた1つ増えたよ。アリスさんは心得の所持が多いから、ステータスを操作出来た方が良いし。
『フフフッ。そうね』
「ロイク様。私のこのステータスの数値はどの程度の物なのでしょうか?」
「比べる対象ですね」
「はい」
「アリスさんは弓使いなので、俺が知ってる弓使い・・・」
俺って知り合い村の人ばかりで、思い当たる弓使いが居ないです。
『ロイクでしょう。義理の御父様でしょう。人間種のマリア・パマリ。3人いますね』
なるほど、マリアさんのステータスなら認識しているので、それです!流石マルアスピーです。
「アリスさん。マリアさんのステータス値と比べてみますか?」
「御母様とですか」
「俺が知ってる弓使いって、後は親父とか俺位で比べても意味無いかなって・・・」
「そうですね。御母様の情報を知る事も良い経験になりそうですしお願いします」
表示:マリア・パマリのステータス値
***********************
R4075年06月08日(光)・・・・・・・
【名前】マリア・パマリ
≪JOBの状態≫
【JOB・cho本職】
戦闘型:【アーチャー】レベル6
≪任意22≫≪騎士団転職≫
≪武具不明≫
≪ステータス値の状態≫
【個体レベル】25 【NEXT】2400
【HP】262 【MP】250 【STR】247
【DEX】330 【VIT】201 【AGI】379
【INT】261 【MND】258 【LUK】80
【BONUS】48
***********************
「マリアさんの装備状態が分からないので、この数値は基礎とレベル補正とJOB補正のみの物です」
「個体レベルだけでは分かり難かった御母様との差が、数値で見比べる事で納得出来ました」
「これに装備の分が加わるとして、騎士団の遊撃部隊の隊長になる為には、この以上じゃないと成れないって事ですね」
「ロイク様。このBONUSという物は何でしょうか?」
「・・・見えてますか?」
「え?パフさんも見えますよね?」
「はい。ロイク様、私にも見えますが・・・」
見えてるって事は問題無いって事ですよね?
『でしょうね』
「それは、ボーナスといって、この数値は任意で別のステータス値に加える事が出来ます」
「隠された力があっただなんて・・・」
「たぶん、俺しか操作して振り分け出来ないので、普通はこの数値を活用出来る人は居ないと思います」
「ロイク様・・・」
「パフさんどうしたんですか?」
「あっ・・・あ、いえ。こ、このボーナスという数値の操作だけでも、物凄いお金持ちになれかもと考えたら、一瞬、驚きの余り・・・」
「この数値は、個体レベルが高い程多くなるのかしら?」
「ジェルマン・パマリ子爵様がレベル37でボーナスの数値が96。親父のレベルが前に見た時で28でボーナスの数値が54。母さんがレベル18でボーナスの数値が34だったので、たぶんそれで当っていると思います」
「バイル様は、個体レベル28で英雄様なのですか?」
「トミーサス大行進の時はもっと低かったと思いますけどね」
「英雄様になられるお方は、高レベルなのだとばかり思っておりましたので意外です」
「親父の場合は、必要最小限の事しかしないから、レベルはなかなか上がらないと思います」
「それでも、英雄様なのですよね?」
「そうみたいですね」
・
・
・
「ねぇ~ロイク」
「はい、何ですか?」
「第3師団と地図を映している画面を見てください」
「うん?・・・な、何が起きてるんだこれ?」
ジェルマン・パマリ子爵様を中心に半径100mを表示した画面には、大量の黄色の点が移動し点滅を繰り返していた。
「何か、人が増えてるるような・・・森全体を表示します」
ジェルマン・パマリを中心に半径15Kmを表示 ≫
≪・・・表示しました。
「アリスさん」
「はい」
「王都って、夜にこんな大勢で狩りをしたりするんですか?」
「軍や協会の夜戦演習とかなら夜に大勢で行いますが、軍の演習にしては規模が余りにも小さい様に思えます」
「画面を拡大します」
表示画面を10倍に拡大 ≫
≪・・・表示画面を拡大しました。
王都側の森の入り口付近では、無数の黄色の点が動き回っていた。そして、森の中に踏み込んだ点は森の中を高速移動する人の仲間入りをしている様だ。
「第3師団以前の問題な気がしませんか?」
「ロイク様。この入り口付近の黄色の点なのですが、隊列を組み組織的に動いてる様に見えるのですが」
「言われてみればそう見えるような・・・」
「重装備の騎馬隊もしくは重装備の騎士隊或いは重戦車隊かもしれません」
「でも、魔獣も居ない様だし、人間同士で争ってるって事ですか?」
「かもしれません。隊列を組み組織的に動いている、この部分の点の詳細情報を見る事は出来ませんか?」
アリスさんは、画面を指差す。
「出来ますよ」
王都側の森入口周辺に居る人間の所属を表示 ≫
≪・・・ ・・・ ・・・ 表示しました。
「ゼルフォーラ王国軍王都モルングレー王民地区治安部隊所属の騎馬中隊が3部隊みたいですね」
俺は、画面を見ながら一番多い情報を読上げた。
「こっちの人は、王都モルングレー駐屯騎士団所属、戦車小隊第1部隊って書いてます」
パフさんも読上げる。
「この点の動きと所属を見ながらですと、私1つしか思い当たる事がありません・・・」
アリスさんは小さな声で話した。
「王都モルングレーのアドベンチャーギルドに所属している冒険者と、王国軍の騎馬隊と王都の駐屯騎士団の戦車隊が戦っている様に見えなくも無いですが」
「ロイク様。森の中で動き回っている点の詳細情報もお願いします」
「分かりました」
森の中を高速で動き回っている黄色の点の詳細情報を表示 ≫
≪・・・ ・・・ 表示しました。
アリスさんは、画面を確認すると、頷いた。
「思った通りです」
「アリス様。何が起こっているのか分かったのですか?」
「これは、王国軍による蜂起鎮圧作戦か夜盗の掃討作戦だと思われます」
「蜂起って反乱って事ですよね?」
「はい」
「でも、冒険者達って書いてるし、夜盗とか反逆勢力では無い様ですが・・・」
「この森の中で勢い良く動き回っているのは、王国軍を欺く為の何らかの罠の可能性があります」
「アリス様」
「どうしましたパフさん?」
パフさんが画面を指差す。
「あっ・・・見失ってしまいましたが、森の中で動き回っている点には、王国軍の人も含まれている様でしたよ」
「・・・森の中でも、王国軍と冒険者達の戦いが始まったのね」
「何かおかしくありませんか?森の中で争いが始まったとして、どうして第3師団や動かない点がこんなにあるんですか?これって、たぶん野営を決めて交代で見張りをしながら寝てるんじゃないかなって思うんですが・・・普通、起きて避難するか、第3師団なら王国軍に加勢しませんか?」
「森の全長は14Kmあります。入口の戦闘の音が御父様達まで聞こえないのかもしれません」
「でも、森全体に黄色の点が動き回ってる訳だし・・・」
「私も見て来た訳ではありませんので、断言は出来ませんが、王国兵の騎馬隊が285名負傷者10名。騎士団の戦車隊50車両に192名負傷者8名。冒険者側は、森の外に29名負傷者17名。森の中で待ち伏せしている(高速移動している冒険者)24名。騎馬隊5名。傭兵8名。商人3名。馬車7車両。召使7名。犯罪者奴隷33名。今分かっている情報から察するに、冒険者と王国軍の戦闘が起こっている事に間違いは無いと思います」
「フフフッ。ねぇロイク」
「はい、なんでしょうか?」
「森の中と森の外。移動速度に大きな違いがありますよね。私が思うに、事象そのものが異なっているからではないでしょうか?」
「事象ですか?」
「えぇ。2つの事が同時に起きていると仮定し分けて考えてみたのよ」
「なるほど。そうですよね。森の外で狩りをやってた時から、森の中では人が高速移動を繰り返していた訳ですから。森の外で王国軍と冒険者が衝突している件と、この高速移動は別物だって考えても良いかもしれませんね」
「ですが、ロイク様。マルアスピーさん。森の中にも王国軍と冒険者が居て動いている訳ですよ」
「騎馬隊が来た事で、森の中の移動がほぼ転位レベルだって事が分かった訳ですが、端から端に移動して中央に移動してって、この人達何やってるんでしょうね?」
「ロイク様。この画面がおかしくなっている事ってありませんよね?」
「それ、俺も考えて、さっき違う所で確認したんですが、この森だけなんですよ。なので、おかしいとしたら、この森に居る人達ですね」
「そうなのですね。アリス様、スキルの転位魔術を使える人ってこんなに沢山いるものなのですか?」
「転位の練習をしているにしても、移動の終始を見て術者は100人以上。ロイク様とマルスピーさんが気付いた時から練習しているとして夕食前からですよね・・・ポーションを大量に消費しながら練習しているにしてもやり過ぎです」
「そう考えると、転位って線は無しで考えて良さそうですね」
「私もそう考えます」
「でも、冒険者達による罠って線も無理がありませんか?」
「そ、そうなりますわね」
「ロイク様。王国軍と騎士団の人達が、冒険者と戦っているのは見て私も分かりますが、止めに行かなくても良いんですか?」
「パフさん。あと20数人の冒険者を取り押える事が、王国兵や騎士団の人達には難しいと思いますか?」
「いえ・・・ロイク様だったら一瞬で止める事が出来ると考えただけで、そんな事は・・・」
「状況がおかしくなったら行きますよ。それまでは、本職の人に任せます。俺は、第3師団に危害が及ばない限りは動かないつもりです」
「そうなんですか?」
「えぇ。全てに関わる事は不可能ですからね。なので、名誉団長としては自分の団位には関わろうかなと、森に居る第3師団のメンバーなら森の外の冒険者達が万全の態勢で40人以上居たとしても平気でしょうけど・・・って、さっきマルアスピーに言われた事何ですけど。ハハハ」
『フフフッ』
・
・
・
俺達は、森の外と森の中の状況について、思い思いに意見を出し合い語り合った。森の外の王国軍と騎士団による冒険者の鎮圧?が終了した頃には、マルアスピーとパフさんはデザートのレシピをまとめる為、紙とタブレットの画面を確認していた。俺は、アリスさんと武具やスキル、ステータスの会話で盛り上がっていた。
≪トントン
「ルナです。モニカ御祖母ちゃんが、ロイク様にお話があると言うので連れて来ました」
「どうぞ」
アリスさんが、ドアの向こうに声を掛ける。
≪ガチャ
モニカさんとルナさんが部屋に入って来た。そして、俺が腰掛けるソファーの目の前のソファーに腰掛けた。
「俺に話って何ですか?」
「はい、私と両親そして、ルナの今度の事について相談したい事があります」
「・・・俺に出来る事なら良いんですけど、どんな事ですか?」
「実は・・・」