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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-137 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 厨房は聖域 -

時刻 ―――14:00―――

 昼食(デジュネ)の時間まで後一時間。


 ハニーパーティーは正午(15:00)に終了しBBQ(バーベキュー)パーティーへと移行する予定らしい。


 蜂蜜が商品(ハチミツ)になる工程を見学し終えた俺達は、野外会場へと戻りBBQパーティーが始まるまでの時間を、思い思いに過ごすことにした。


 もう直ぐ昼食(デジュネ)にも関わらず、本日発表したばかりの九品の製品版に手を伸ばす者。談笑する者。読書をする者。駆け回る者。


 そんな中、ゼルフォーラ(聖)王国とアシュランス王国を繋ぐ橋"ゼルフォーラ大橋"の中央、ゼルフォーラ王国側へと神々様方と共に神授スキル【フリーパス】で移動した。


悪狼神(アッオイ)様は邪狼獣様達と一緒にいなくて良かったんですか?」

「かましまへんかましまへん。うちがいーひんでも丸く収まりますえ」

「なら良いんですけど……」

「こまい事を気にし始めたら人間負け決定言うじゃないどすか。何事も適当一番どすえ」

「は、はぁ~……」


「ユーコ様は、先日のBBQが気に入ったからサザーランド陛下達と今日も大いに盛り上がるぞぉー、おーって言ってましたよね。ロザリークロード様も、そんなに楽しいものなのかBBQとやらわ。ならば我がそのBBQとやらを確と吟味してやろうではないかって言ってましたよね?」

「ああぁぁぁ―――――BBQまで一時間もあるんだぞ。暇過ぎて死んでしまったらどうするんだ。BBQが食べられなくなっちゃうんだぞ。これから面白いことをする気なんだろう、暇潰し位にはなるんだろう、着いて来るのは当たり前だぞ」

「面白いって……この大滝(ミズノカベ)を何とかしたいなって思ってるだけなんですが」

「ハゲるぞ、気にするな。暇じゃなければ正直何でも良いんだぞ。理由なんてそんなもんだぞ」


「BBQとは良い具合に焼けた肉を家族で奪い合い親睦を深める物なのだろう」

「はっ? そ、それ誰情報ですかっ。家族で奪い合うとか無いですから、BBQは野外で皆でおかしく楽しく騒がしく平和的に食事をすることです」

「ふむ。騒がしく平和的にか……BBQとは我が考えていたよりも難易度が高そうだ。まぁー我も我の眷属ロイクの傍に居るようになってから加減というものを少しばかり覚えたからのぉ。命を奪わぬよう平和的なBBQを心掛けるとしよう。手っ取り早く我はお前の傍に居れば良いと思う。眷属ロイクに命ずる、我にBBQのいろはにほへとを実践をもって分かり易く教えることを許可する」

「そんなに難しい物じゃないんですけどね。分かりました。幼い頃から狩人として磨いて来た俺のBBQを御見せしましょう。俺って炭と油にまで拘る男なんで覚悟してくださいよ」

「ふむ、覚悟か。やはり加減が……」


 何故、着いて来たのか不明な三柱様との会話を一通り終え、大滝(ミズノカベ)へと向き直る。


「イエレミーヤ様、お待たせしました」

「プロポリスでこれをですよね?」

「試してみる価値はあると思うんです。では試してみましょう。っと、その前に、イエレミーヤ様もミュー様もエリウスももう少し下がってください」


「了解」

「はっ」

「私、魚類の神なので水の中とか地上より寧ろ得意な方です。何かありましたら言ってくださいね」

「ありがとうございます。それでは」


 プロポリスの入った小瓶をタブレットから取り出し、空高く水が現れ落ち始める付近へと投げ付け、小瓶が水の出現ポイントにぶつかる瞬間を狙い風の矢で射貫く。


 射貫かれた小瓶は俺が創造した神気の塊なのでガラスが粉々になって飛び散る心配はない。宙に溶け込みその内俺の中に戻って来る。管理者として配慮するのは当然だと思う。


 小瓶が消え中のプロポリスが水へと降り注ぐ。


 思った通りだ。風は普通に吹いてるものだからプロポリスが反応しない。逆に水圧の強い水には反応して落ちて来る水を弾いてるみたいだ。


「「「「「おおおお」」」」」


 プロポリスが飛び散った出現ポイントの真下だけ水が落ちて来ない。が……これは非常に微妙だ。


「弾いてるだけで他の所に降っちゃってますね」

「ロイク君、プロポリスを国境の滝全てに撒いたとして」

「これだと無駄ですね」

「それにだ、量が確実に足りない」

「ですね……」


「主殿、見てください」

「ん、どうかしましたか?」


 滝の中へと入り、大橋の舗装部分を手で確認していたエリウスが何かに気が付いたようだ。


 何かを手に取り、それを口に運び、そして吐き出したエリウス。


「これは、銀と牛乳とハチミツ……プロポリスでしょうか?」

「うん? エリウス?」

「主殿、神眼で滝の底を視てください」


 エリウスに促され、神眼を意識しエリウスの足元へと視線を動かす。


 線?


「あぁー気付かれちゃいましたね」

「気付かれ、って、イエレミーヤ様知ってたんですか?」


「だってホラ視えてるし、ねぇ~」

「どすなぁ。初めから視えてましたで」


「うん? アランギーが引いたその銀色の線のことか? なんだ一応まだ人間の(おと)、ロイクはその線が気になるのか?」

「気になると言うか、今気が付きました」

「ふぅーんそっか、良かったな」

「え、えぇ」


「我の眷属ロイクよ。我はお前が銀の線が好きだったとは知らなんだ」

「いやいや好きとか嫌いとか線にそこまでの思入れ何てないですよ。あの銀の線の真上に水の出現ポイントがあるってことは無関係ってことはないんだろうなって考えてるだけですよ」


「バレてしまったようなので種明かしをするとしましょうか。あの銀の線は、ここからは食に携わる者の聖域だ。客は黙って席に座ってな。という俗世と聖域を隔てる為の物です。得意とするは勿論アランギー・フゥファニー。上席の食の神リーベル様以上の使い手として有名です」

「へぇ~……」


「食に携わる者の聖域は、何時如何なることがあろうとも常に聖域でなくてはいけません。不衛生誰もが出入り可能など論外です。彼等にとって厨房とはそういう物なのです」

「イエレミーヤ様、厨房の話はもういいんで、この線の消し方を教えて貰えませんか」

「無理です」

「え?」

「考えてもみてください。料理人が一度厨房だと定めた場所を厨房ではないといったい誰が訂正できると言うのですか?」

「はぁ?」

「一度定めた聖地を、やっぱりここは聖地ではありませんでした。と言って誰が納得すると思います?」

「お、俺とか……」

「そ、そういう場合もあるかもしれませんが、今は普通、普通はそうだって話をですね……ああああああ私はいったい何を喋っているのだ。矛盾だらけではないか、はっ!! か、神は矛盾の代名詞なのか?」


 どうしてこのタイミングでこの神様葛藤タイムに入っちゃうんだよ。頼むから戻って来てださい。お願いします。神様創造神様女神様神獣様もう誰でも良いんでお願いします。


「なぁ、お前の、アランギーが引いたそこの線を持って帰りたいという不可思議な気持ちを我は理解することがどうしてもできない。が、眷属だからと言って趣味趣向にとやかく言うつもりも毛頭ない。だが一言だけ助言をくれてやろうと思う。その線はほんの少し断線するだけで全てパーになってしまう程度の際どい物だ。持って帰るのは現実的ではないと思うのだ。分かったか? もう良いだろう、そろそろBBQの時間なのだし戻ろうではないか」


 持って帰りたいと言った覚えはないが、まぁー良いや。

「ハァー、進展なしかあ”ぁぁっ!! ロザリークロード様!!!!」

「な、何だ急に」

「一ヵ所でも断線させればこれ消えるんですか?」

「この戯けが、今さっき説明したばかりではないかもう忘れてしまったのか?」


「ロザリークロード様!!!!」

「だから、いったい何なのだ」

「あれ、サクッと断線させちゃってください」

「お前、何を言っておるのだ?」

「あれ、エリウスとか俺とか、偉大な葛藤の神様とか、その辺の神様には無理だと思うんです。でも、神竜の中の神竜偉大過ぎるロザリークロード様なら簡単に壊せると思うんです」

「……お前」

「BBQが俺達を待ってるんですよ。どうせ食べるなら同じ食べるでもスッキリして気持ち良く食べたいじゃないですか。BBQってそういう物だと俺は思うんです」

「ほう、深いなBBQ。我の中で興味が湧きっ放しで溺れてしまいそうだ」


 ……あと少し、もう一押しってところだな。


「ですよね。BBQの為にあの線のあの辺りをちょっとだけ削ってください。三倍は美味しくなります」

「三倍とは強く出たのぉ、……フッ、任されたぁああああぁぁぁぁ!!!!」


「はい、ストォ―――ップ。邪神竜よそこまでにしましょうか」

「チッ」


 もう戻って……葛藤するならしててくださいよ。まったく。


「イエレミーヤ、何故我のBBQの邪魔をするのだ」

「私は、私ならあの線を断線させることなくBBQを四倍楽しむ方法を教えて差し上げることができますが……如何でしょう?」

「四倍だと」

「はい、四倍です」

貴重な時間をありがとうございました。

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