6-MS-133 コルトに16歳の神授を取り戻せ - これがあのだいだいハニーキャンディー。ハニーパーティー① -
「...... ~ ......なんだそうです」
「そう」
今さっき聞いたばかりの悪狼神様と邪狼獣の兄弟姉妹と叔父さん達の話をマルアスピーに伝えた。
反応はいつも通りで素っ気ないが、本当は違うので気にしない。
・・・
・・
・
カチーンカンカンカァ~~ン。
透明な厚手のガラスコップのボウルを小さな銀のスプーンで叩き音を出したパフさん。
自然と皆の視線がパフさんへと集中する。
「これより工房ロイスピー主催第四回ハチミツパーティーを開催致します。本日の司会進行役は、私、"世界に夢と希望を"の工房ロイスピーイニシャルスタッフズナンバーⅠ副工房長代理のパフ・R・シャレットが務めさせていただきます。どうぞ宜しくお願い致します」
パチパチ……パチパチパチパチ。
えっとこの拍手はいったい何だ?
何に対する拍手なのかちょっと分からないが、マルアスピーの拍手を皮切りに、パフさんへの拍手が大きくなった。
良く分からないが、二、三回程俺も便乗しておくことにしよう。
パチパチパチ。
「ありがとうございます。それでは、早速始めさせていただきます。本日、一番目の商品は、ダララララララララララ」
……パフさん、まさかの口でドラムロールですか。
パフさんのドラムロールに合わせ、妖精のおしごとの五人が大きなシルバートレイを抱えパフさんの周囲に姿を現した。
五人は会場に設置されたテーブルの招待客の席の前にトレイを何処からともなく取り出しては置いていく。
トレイを流れるように美しい動きで並べ終えた五人は、揃って一礼し姿を消した。
「ダダダッ」
姿を消すのが合図?
五人が姿を消すと同時にパフさんのまさかの口でのドラムロールが止み、同時にトレイのシルバーの蓋が消える。
トレイの中央には小さな黄金色の飴玉?が一粒乗っていた。
「マルアスピーこれって飴ですか?」
「そうね」
「な、なんと精霊様もまっしぐら神聖なる大樹の森の"マヌカハニー"を七、八回通り越しここ神聖域は中空の花園産の"マヌカハニー"と、聖域【省みの砂浜】の中央に鎮座する神聖域【省みの泉】に宿りし氷と水二属の大精霊タルヒーネ・グラミエール様が生み出した神聖泉の清らかな"湧き水"と、神聖域は中空の果樹園産の"完熟橙の搾り汁"のみで丁寧に作られた陽の恵み微笑みの一粒"だいだいハニーキャンディー"です。それでは皆様、お召し上がりくださいませ」
凄いのか凄くないのか良く分からない飴の名前は、だいだいハニーキャンディーって言うのか。……まんま普通だな。
飴玉を手に取り口へと運ぶ。
「おっ……」
「フフフ、どう凄いでしょう」
「えぇ、まさか飴玉なのに口に入れた瞬間溶けて無くなってしまうなんて思いもしませんでした。掴んだ時はひんやりしててそんな感じは一切しなかったんですがこれってどうやって作ったんですか?」
「企業秘密よ」
「俺って経営者の一人」
「そうね」
招待客からは驚きの声があがっている。違う意味で驚きの声をあげてしまいそうになってしまったが何とか我慢しスルーすることができた。
その内、気が向いたら話してくれる時がきっとたぶん来るだろう。それよりもだ。凄いな皆、俺よりも素晴らしい反応だ。あのくらいハッキリとしたリアクションの方が喜ばれるのかもしれない。が……相手は感情が分かり難いマルアスピーだ。そこまで体を張る必要は……。
ないかな。
「パフパフっ!! お、おぉ―――。おっ、おおおお、こぉ、これ、これはなんなのじゃぁ~。う。う。ううう美味いのじゃぁ~チョコレートとかチョコレートエクレアとかチョコレートケーキとかリキュールチョコレートとか何かチョコレートの次位には美味いのじゃぁ~」
「トゥーシェ様。本日一番目の商品の名前は"だいだいハニーキャンディー"でございます」
「こ、こ、これがあのだいだいハニーキャンディーなのじゃぁ~」
トゥーシェ、これがあのって、あのの使い方が……。
「はい。これがあの、あのだいだいハニーキャンディーでございます」
「す、しゅごいのじゃぁ~」
「フフフ」
「楽しそうですね」
「そうね」
トゥーシェとパフさんの掛け合いを分かり難いが優しい眼差しで見つめ、少しだけ口元を緩めたマルアスピーの反応は、いつも通りだった。
貴重な時間をありがとうございました。




