6-MS-127 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 嵐の中は嵐。ディファレンスインカンシャスネス -
神聖石がなんたらって話していたが、何だか良く分からないまま適当にそうですって返事をしてしまったが、一先ずは一件落着といったところか。
イエレミーヤ様にも会えたことだし、執務室に戻るとするかってちっがぁーうっ!! いかんいかん本来の目的を忘れて帰るところだったよ。
「イエレミーヤ様。大精霊様の件が終わったんで、そろそろ」
「そうでしたね。理と水どちらからでも構いませんよ」
おっ!!
「そうですね。だったらまずは理……って、違います。違わないんですが、理と水の話も大事なんですがまずは本来の目的でもある嵐についてでお願いします」
「あの嵐ですよね? ……水面の波紋が気になって仕方がありません。場所を変えましょう」
イエレミーヤ様は、スカーレットの市街地を覆い隠す嵐を見据えながら、声のトーンを落とした。
なんだこの物凄く深刻ですみたいな雰囲気は。
「場所を変えるのは賛成です。他人の家に上がり込んで話すような内容じゃないですからね。家主に」
嬉し楽しそうに陽気な鼻歌を歌いながら話をしているタルヒーネ様とミュー様へと視線を移す。
耳に付けたイヤリングを、ミュー様に見せびらかしては。
「似合ってるぞ」
「ありがとう」
「可愛いぞ」
「そうぉ?」
「良いな、良い感じだぞ」
「そうよね」
と、じゃれ合う二人?と俺の後方二人寄りに立ち二人の会話に合わせるように頷いているエリウス。
「挨拶してからと思いましたが、今日はこのまま移動しちゃいましょう」
「男は黙って立ち去るのみ。男は背中で語るのみ。男は……あぁーあと一つ何だったかなぁ~、ここまで出て来てるのですが……」
喉に軽い手刀を当てながら、うんうん唸り始めたイエレミーヤ様。
深い葛藤に落ちてしまう前にサルベージする必要がありそうだ。沈む前だからサルベージってのも変だが。
「それって男についての格言か何かですか?」
「あぁ、男の美学という数十億年前に発行された哲学書の一節です」
「へぇ~、もしかして女の美学なんて哲学書もあったりして」
「ありますよ。ですが女の美学は哲学書ではなく知識実用書ですね。プティ情報ですが、男を司るソロモンが著書の【男の美学】から二億年程遅れて出版された女を司るベアトリーチェが著書の【女の美学】ですが未だに売れ続ける大ロングセラーマガジンの一冊なのです。化粧品や肌に良いとされる製品や食事運動、衣類装飾品小物は日々進化し続け留まるところを知りません。自ずとマガジンも一号二号三号と続き最新号は確か四十一億八千万台だったはずです。美を司る神は多く居れど、性別の女を司る神はベアトリーチェのみ、これもまた人気の一つだと言われています」
……chefアランギー様もフォルティーナもそうだけど、人間種型の神様はもしかしたら皆話が長いのかもな。
「さて、私のところでも構わないのですが寝殿しかありません。客神をベッドに座らせる訳にもいきませんので、ロイク君の執務室へ移動しましょう」
イエレミーヤ様が、右のコメカミに右手の人差し指を当て、「うーん」と軽く唸った瞬間、イエレミーヤ様と俺は俺の国王執務室の応接用のテーブルを挟みソファーに腰掛けていた。
後方を確認してから、イエレミーヤ様へと向き直り。
「あれは、精霊様側にいたんで、これで良いと思います」
「楽しそうにしていたので置いて来ましたが。それなら良かったです」
「はい、ありがとうございす」
「いえいえ」
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「嵐の中はこんな感じだったのですね」
「えぇ」
打ち付ける雨水で外は見えないが、執務室の大きな窓から外を視つめながら、ふと気付く。
「妙に静かだなって遮音してたの忘れてました」
「あぁなるほど、この嵐ですからねぇ~、雷と風と水の音が凄いことになってますねぇ~。アランギーはいったい何がしたくてこんなことを、こんなことになっているのでしょうか」
「それ、俺が聞きたいです」
貴重な時間をありがとうございました。




