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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-123 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 聖域の上は準神聖域その上は神聖域その上は。イッツオールアメイジング -

「知らなかったこととはいえやってしまいましたね」


 泉の水面の上で話し込むような内容ではないが、御言葉を助言をいただく為、アシュランス王国の全ての集落と要衝で現在進行形で猛威を振るっている嵐について話を切り出した。


 はずだったのだが、返って来た御言葉は欲しいものではなかった。


 嵐は俺のせいではない……はず。chefアランギー様が起こした……はず。……何だろう、何か会話が噛み合ってない気がする。


屋代(ヤシロ)の名は(ツカサドリ)屋取(ヤトリ)の名の宿(ヤドリ)と言って真名に次する深き縁。つまり、神の神名の代、精霊の精名の代、天使の使名の前後に分かり易く役職資格特技趣味賞罰などを冠したり尾付けする行為のことです」


 つまりの後って、普通は詳細な説明が来るんじゃ、この場合の普通が何なのか確証がないんで、知らんけど……。


「フォルティーナで例えるなら、運を司ってるけど遊びも司ってて有り得ないけど良妻も司ってる。でも本当はギャンブルとか荒稼ぎとか阿漕とかって感じって話であってますか?」

「……そ、そうで……今この場は神ではなく精霊。精霊の進化について議論する場」


 えっとイエレミーヤ様それは違います。正しくは嵐です。嵐のはず……ですよ。とは言えない。


「進化とは、その存在の格が上がったことを言います」

「ですね」


「その多くは継続によって齎され、稀に神命輪廻によっても齎されます」

「ほう」


「そして先程のあれは稀です。神命によりこの泉は本能から省みへとその名を改めました。畏敬によりメイプルシロッ湖からメイプール湖へと呼び名が変わり同時に小精霊から中精霊へと昇華した水の精霊タルヒーネはその時裁定と仲裁の代理真名を有しました」

「へぇ~」


 タルヒーネ様は裁定と仲裁を、宿してる? 司ってる? って、ことになるのかな?


「ただし、それは元の話です。省みの泉へと名を改める前の本能の泉へとメイプール湖から引っ越しを済ませたばかりの水の精霊タルヒーネは裁定と仲裁の代理真名を有していません。憚りを有し代理真名の有しを辞退するは全下界共通の理だからです」

「へ、へぇ~」


「ですが、それも元の話です」


 まだ続くのか。


「ロイク君は、本能の泉に宿りし水の中精霊タルヒーネに代理真名を授けました」

「は?」


 いつ?

「省みの泉と改名するだけで良かった物を代理真名まで与えてしまうとは人が良いと言うか神が良いと言うか、ロイク君らしいとは思いますが、突飛で軽忽な行いでしたね。うんうん」


 葛藤しつつも柔らかい笑顔で俺を見つめるイエレミーヤ様。


 奥で蠢く途轍もなく沢山の悩みが伝わって来る眼差しと柔らかくて眩しい笑顔が、痛い、心に来る。……重い。


 重い。とっても、非常に、物凄く聞き難いが、あえて尋ねる。

「思い付いた順に名前を言い続けてただけなんですが、どのあたりで代理真名が発生しちゃったんですかね?」

「発生ってロイク君。害虫や害人犯罪ではないのですよ。これは、神が命じ理が精霊の真名に代理真名を刻んだのです。神が理に干渉する行為、つまりは神命にあたります」

「忘れてるかもしれませんが、俺、人族(ユマン)なんですけど」

「またその件ですか? 私達は何度も何度も何度も説明しているはずなのですが、ロイク君は限りなく神寄りの限りなく人に非ず風な存在なのですよ。君の言葉は限りなく神のそれであり命は限りなく神のそれなのです。少しくらいは人としての機微や情を内包しているとは思いますが、その程度だとそろそろ理解して欲しいものです」


 神風で人風な存在と言われて理解できる訳ない。神格があるから神様だって説明を受けた直後に俺みたいに限りなく神様寄りの限りなく人に非ず風な存在も神格はないけど神みたいな感じだと説明されて納得できるとでも?


「時期に成れるとは思いますが精進してください。これ以上の新鮮な葛藤の提供は遠慮したいというのが本音でして……お願いします。私を救うと思って頑張ってください。と、冗談はさておき」


 瞳の奥で見え隠れするあれを()る限り、冗談ではなさそうだが……。あれに触れてはいけない、スルーで良いや。

「続きをお願いします。ですがその前に一つだけ質問があります。本能の泉も神官達に急かされて俺が付けた名前なんですが、タルヒーネ様に代理真名は付きませんでした。どうしてでしょうか?」


「あぁーそれですか。簡単な話ですよ」

「簡単なんですか?」

「はい。ロイク君は本能の泉と命名する時、何処で誰と何をしていましたか?」

「のほほんと神茶を啜っていたはずだったのですが、急に慌ただしくなってしまった執務室の執務用の椅子に座り、執務用の机を挟み立ち並ぶ怯える神代と鬼気迫り過ぎて白目が血走った神官達の期待と重圧の視線に苛まれながら、名前を許可証に書いて印を捺しました」


「ようするに、国王執務室で神官達の前で紙に名前を書いた訳ですね」

「端的に言うとそうなります」

「人に物事を説明する時は、端的に簡潔に分かり易く相手の立場に立って行うことを心掛けてください。小さな思いやり小さな積み重ねが信用信頼才能能力を有した存在を育むのです。あぁー私はここに辿り着くまでにいったい何を……」


 神様に端的にって言われてしまう日が来るとは正直思ってもいなかったよ。沢山思うことはあるが、面倒なところに落ちだしてる感じだし、華麗にスルーで。


「はい。心掛けます」

「……えぇ、何処まで話しましたっけ?」

「執務室で神官達の前で紙に名前を書いたところまでです」


「そうでしたね。それはつまりただの名付けです」

「はい、そう思います」


「では次に、名を与えられる存在とそこに居を構える存在と名を与える存在が一堂に会し、名付けを行った場合の話をしましょう」

「お願いします」


「今回は、名を与える存在が限りなく神寄りであり、名を与えられる存在が中途半端な名を有した準神聖域化した地の泉であり、居を構える存在が引っ越しを終えたばかりの水の中精霊だった」

「はい」


「神が理に干渉し、準神聖域の地、気付いていないようですね」

「えっと何にでしょうか?」


「この泉と砂浜は準神聖域です。聖域の上位互換だと思って貰って差し支えありません。聖域の上位互換準神聖域の泉部分のみを理に干渉し神聖域化してしまった為、居を構える存在は無条件で下界の理における最高位へと昇華、進化したという訳です。今回はそれが精霊だった。それだけのことですね。ですが、コルトにおいては大いに問題とも言える事態になってしまったという訳です。あぁー私のお膝元直ぐ目の前でどうしていつもいつもいつもいつもいつも」

貴重な時間をありがとうございました。

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