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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-121 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 名親は有難いことに運の女神様。グラティテュードアノイアンスアンドオネスティー -

「お引越し、おめでとう。これはお引越しのお祝いだぞ」

「あらあらこれはこれは綺麗なお花をありがとう。引っ越したばかりでまだ何もないのだけれどどうぞあがっていって」

「おお」

「ウフフ」


 あがっていってって、自宅にじゃなくて水面になのね……。


 本能の泉の水面に姿を現した水の中精霊様と楽しそうに話をする地の中精霊ミュー様。


 タルヒーネちゃんとは、湧き水を利用し創造した本能の泉に宿ってくれた水の中精霊様だった。


 これって。

「エリウス、お礼言いに行った方が良いですよね?」

「幼(童&微)精霊や小精霊精霊が住み着き自然魔素活性地(マジックスポット)化し中精霊様へと進化する。中精霊様の多くがこのケースで誕生します。ですので、中精霊様の多くは宿り木との結び付きが強くそう簡単に宿り木を変えたりはしません。このケースは非常に珍しく有難いことだと断言致します」

「挨拶に行った方が良いってことですね」

「はい」



 楽しそうに話をしているところに申し訳ないなと思いながらも、ミュー様に話し掛けタルヒーネ様を紹介をして貰った。


「いえいえこちらこそこんなにも素晴らしい泉を下賜していただき感謝しております。ここと比べてしまっては、……前の場所に恨みはありませんがあそこは肉食魔獣が食い散らかした後みたいなものです」


 比喩の意味がいまいち良く分からないけど、喜んでいただけているようだし良かった。


「タルヒーネちゃんのメイプール湖(ウチ)ってウェンディーネ様のお膝元だったよね。そんなに酷いことになってたのか? 僕、知らなかったぞ」

「湖に浮かぶ島(リッフレア島)で珍しい石が採れるようなのですが、当初は年に数回数人のヒュームが舟を浮かべる程度だったのですが、年を追う毎に数が増え最近では昼夜問わず引っ切り無しになってしまって、ハァ~……」

「同情するぞ」

「ありがとう、ミュー」


 鉱山として開発が進んだ結果なんだとは思うが……珍しい石ねぇ~、気になるな。


 溜息を零し落胆した表情を隠さないタルヒーネ様に不躾だとは思ったが以前の宿り木の話を聞くことにした。


・・・

・・


 北の大陸フィンベーラには、古代四湖(コダイシコ)と総称される『水煙の【カルーダ湖】』『生命(イノチ)の【オスダーヴァール湖】』『亀鏡の【メイプール湖】』『大成の【シュヴィ湖】』四つの湖がある。


 タルヒーネ様は遡ること七千年から九千年くらい前に亀鏡の名を持つメイプール湖を宿り木にした精霊様だった。


 因みに、当時のタルヒーネ様はまだ小精霊様で、メイプール湖はメイプルシロッ湖と呼ばれていたそうだ。


 メイプール湖に浮かぶリッフレア島で採れる珍しい石とは【空色琥珀】(スカイブルーアンバー)のことだった。


 空色琥珀(スカイブルーアンバー)は予知の儀式や吉凶を占う際に用いられる樹脂の化石で、リッフレア島でしか採れないとされている。


 タブレットで調べた結果では、ジャスパットの本西島(ホンサイトウ)不死の山(フジノヤマ)の麓にある古剗大湖(コセンタイコ)でも少量だが採れるようだ。ジャスパットの王家は【羊脂玉(翡翠)(ジェイド)】【魂虎玉(琥珀)(アンバー)】【遊色玉(蛋白)(オパール)】を三種の宝玉と呼び厳しく管理しているらしい。


 ジャスパットの話は今はどうでもいいや。リッフレア島の空色琥珀(スカイブルーアンバー)には、海辺で拾える白濁した【雪空琥珀】(スノーイアンバー)と山間部で拾える少し濁りのある【曇空琥珀】(クラウディーアンバー)と鉱山深くで採掘される透明な【快晴琥珀】(サニーアンバー)、三つの種類が存在する。


 そして、快晴琥珀(サニーアンバー)には、水色の空色琥珀(スカイブルーアンバー)と金赤色の【緋色琥珀】(スカーレットアンバー)、二つの種類が存在する。


 緋色琥珀(スカーレットアンバー)空色琥珀(スカイブルーアンバー)以上に希少で滅多に採掘されないようだ。


 緋色琥珀(スカーレットアンバー)は兎も角として、空色琥珀(スカイブルーアンバー)が大量に採れるリッフレア島を放置する権力者や豪商はいない。


 結果、メイプール湖は、空色琥珀(スカイブルーアンバー)を運び出す為の大きな船が昼夜を問わず行き交う騒がし湖へと、臭くて濁った汚水が大量に注ぎ込む湖へと変貌した。


「千年も我慢したんですね」

「はい。いつか良くなるいつか気付いてくれると……ですがもうその心配をする必要はなくなりました。ここは水精霊にとって楽園(パラダイス)です。美しい砂浜(ビーチ)は飲食やゴミの投棄は勿論のこと決闘まで禁止する徹底ぶりです。それが向こうまで続いていると思うだけで夜は安心して眠りにつくことができます」


 タルヒーネ様は、砂浜(ビーチ)と整備された道の境界辺りを指差し嬉しそうに微笑んでいる。


 綺麗だ……うんうんこれだよこれ、こういうのを美人とかお姉さんって言うんだよ。


「気に入って貰えたようで良かったです」

「貰ってばかりは、精霊としてどうかとも思いまして、お礼に伺いたいなと考えていました。今日はそのことをミューに相談するつもりだったのですが、管理神(カンリシャ)様御本人様自らにお越し頂いておりますので、急ですが御本人様から直接許可を頂ければなと……宿り木(ゴジタク)に御伺いしても構いませんでしょうか?」

「家にですか、そうですね……いつでも構いませんよ。誰かいると思うんで。それに、お礼とか気にしないでください。住んでいただけそうな精霊様を探す手間が省けてラッキーって感じだし、寧ろこっちの方が住んでいただいてありがとうございますってお礼を言いたいくらいですよ」

「……は、初めてです。わ、私初めて言われました」


 フルフルと体を震わせ歓喜の表情を見せる綺麗なお姉さんもといタルヒーネ様。


「あ、あ、ありがとうなんて言われたこと、中精霊になってから一度たりとも言われたことが、ことが、あ、ありませんでした。……管理神(カンリシャ)様、もう一度、もう一度だけこの先一生望みませんので御言葉をいただけませんでしょうか?」


 御言葉? ……この流れは、住んでいただいてありがとうございます。で、良いんだよ……な?


「あ、はい、タルヒーネ様」

「はいっ!!」

「本能の泉に住んでいただいてありがとうございます。それとお引越しおめでとうございます」

「ど、ど、どういたしましてぇっ!! こちらこそこんなにも素晴らしい泉をありがとうございます」

「いえいえ。あっそうだ。不都合なところとか気に要らないところがあったら言ってください。サクッと直しちゃいますんで」


「でしたら、一つだけお願いがあります……」

「えっと、何でも言ってください」

「は、はい……」


 タルヒーネ様は視線を俺の顔と水面で何度も往復させ、言い辛そうにしている。


「な、まえ」

「名前?」


「はい、本能の泉はちょっと……」

貴重な時間をありがとうございました。

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