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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-111 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 書籍も趣味も思念の塊だからニードパーフェクトディスタンス -

 レイジィー書籍店の屋上には大きなプランターが三つだけ置かれていた。


「アハハハハ片付けるの忘れてました、お母さんが片付けるって言ってたよね、本当にすみません。今直ぐ片付けますので……」


 パフさんが空笑いするところ初めてみたかも。


 パフさんは、恥ずかしそうに早口でまくしたてながら屋上のド真ん中に置かれたプランターへと駆け寄り、プランターの一つを持ち上げた。


 ちょっと広い屋上と三つの大きなプランター。空いてる場所ばかりのように見えるが何処に片付けるんだ?


 ハーブっぽい草が植えられたプランターを一つ一つ確認しながら、パフさんの傍へと歩み寄る。十歩あるかないかの距離だ。走ろうが歩こうが大きな違いはない。


「手伝いますよ」

「パフ殿、これはどちらに?」


 ほぼ同時にプランターへと手を伸ばし持ち上げパフさんに話し掛けたエリウスと俺。


 このシンクロ率の高さはおかしい。とは思っているが、気にしないようにしている。スルーする勇気は必要だ。


「なっ、何やってるのお母さん!! エリウス様とロイク様にプランターを持たせるとかあ、あ、有り得ないからぁ~っ!!」

「パフ殿。子供や老人女性にはこのプランターは重過ぎます。リディア殿が運ぶより私達が運んだ方が現実的で無駄がありません」

「そうかもしれませんが」


 まぁーぶっちゃっけパフさんも見た目だけなら華奢な女の子な訳だ。なんだろうなぁ~、慣れって怖いな。目の前の光景って違和感しかないもんな。だが、気にしない。

「もう持っちゃってるし気にしない気にしない。で、パフさん、これ何処に移動させれば良いのかな?」

「……で、でしたら、あちらの隅っこの方にお、お願いします」


「パセリ、セージ、ローズマリーにタイムにミントにバジルにあと何だ?」

「アイスプラントとセロリとアネットですね」

「アネット?」

「ロイク様も私も東部出身なので、ディルの方が聞き慣れてるかもしれません」


 ディルってサラダとかに入ってる細長い草だったっけ?

「九種類のハーブを育ててるんですね」

「本当は十種類だったのですが、お母さんが水をあげ過ぎて枯らしてしまったんです。乾いてる方が風味が豊かになるからってあれほど言ったのに早く大きくなれとか一日三回もあげてたみたいで、もう信じられませんよ」


 今日は随分と早口だな。……照れ隠しか?……照れ隠しだな、本当に仲の良い母娘だよなぁ~♪。


「娘も私もハーブティーが好きなので、店の屋上を間借りして育てているんです」

「ハーブティー良いですよねぇ~♪」

「お、お母さんいつの間に」

「一緒に屋上に来たじゃない。もう変な子ね」

「そ、そうだけど……」


 ハーブや紅茶の話で盛り上がった俺達四人は、プランターを運び終えた後も暫し目的を忘れ会話に花を咲かせていた。屋上の入り口に接客不能に陥ってしまった店員さんを一人残したまま。



「ヴァルオリティア帝国の旧教大聖堂が秘蔵していた物らしいのですが、施錠の呪印と現状維持の付与が施されていて開くことができません」

「閉じた状態の書籍に現状維持の付与。……読んでこその本って先入観から開かないようにする為に現状維持なんて考えもしませんでした。呪印で施錠までするとか意味が分からないです。読まれたくないなら残さなきゃ良いのに」


 本日のパフさんの目的は旧教が隠し持っていたらしい呪印と付与が施された書籍を俺に見せることだった。


 パフさんの説明を聞きながら手渡された書籍を神眼を意識し()ていると。


「はいパフ」

「あ、はい」

 リディアさんは、ファルダガパオから書籍を取り出し、パフさんが受け取った書籍の上に重ねていく。


 三作目。


 四冊、五冊目。


 六冊、七冊、八冊、九冊目。


 パフさんの腕の中に次々と重ねられていく書籍。

「あのーリディアさん、書籍っていったい何冊あるんですか?」

「二十五冊です」


 パフさんの顔……は書籍の陰に隠れてもう見えない。


 表情を見るまでもないか。重さはどうであれ、二十五冊も持てる訳がない。


 タブレットからテーブルと人数分のチェアを取り出し接客不能に陥ってしまった店員さんを座らせてから、エリウスと俺も腰掛ける。


 二人で店員さんに話し掛けながら、書籍の山が完成するのを待っていると、快晴だったはずの空が急に暗くなった。


「二つの陽が同時に隠れるとか珍しいですね」

「主殿、これは一雨きます」

「そんな感じですね。傘だと本が濡れちゃうんで、無難に時空牢獄でいきますか」


 神気スキル【時空牢獄】をちょっと広めに展開した。


「パフさん。これって全部旧教が隠してた本なんですよね?」

「お母さん、この書籍って同じところから仕入れたの?」

「そうよ。ミックの大聖堂の秘蔵図書って言ってたわ」


 ……ミックに大聖堂なんてあったっけ? タブレット、ミックで大聖堂を検索して。


≪該当は、0件です。


 う~む。

「エリウス、パフさん」

「はっ」

「はい?」


「ミックに大聖堂はないみたいです。そうなるとですね。この怪しげな書籍達はいったい何って話になる訳なんですが……何だと思います?」


「ロイク様、エリウス様、パパパパフちゃんっ!! ミックに大聖堂がない、ないって本当なの?」

貴重な時間をありがとうございました。

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