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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-107 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 短くも長くも感じられる時間だがネバーストップキープムービング -

 立食パーティーの名を借りた顔合わせの席。


 chefアランギー様率いる妖精のおしごが界を跨ぎ紡いだ空前絶後の究極の創作異界籍料理は、美味くて興味深くて面白くてもし間違って次に機会があるとしたら百年後か五百年後それ以上先が良いかなと思わせてくれるまでに至高を極めつつある物だった。


 俺達が暮らすこの世界【コルト下界】と、御伽噺の中で魔界と呼ばれ地獄と同一視される世界(悪魔域と魍魎域)【メア(亜)下界】と、御伽噺の中で精霊界と呼ばれ天国に最も近い理想郷の一つだと語られる世界【プリフェスト下界】と、chefアランギー様が豊かな自然と篤厚な存在に恵まれ優れた食材を生み出し続ける世界だと賞賛ベタ褒めする世界【KANBE(カンベ)下界】と、本当の意味で地獄を完備する世界【冥界】(冥府下界でも可)。


 chefアランギー様は。

「五つの界の食材と料理。それらを心ゆくまで融合させ新を生み出す。この旅は今始まったばかりなのです。一歩また一歩と踏み出すたびに訪れる衝撃は究極へと進もうとする試練の壁。挑戦状。……実にすんばらしいぃーですなぁー、はい。初の試みは有意義な物であり成功だと言わざるを得ない。今私達の中にある物、それはほんの少しだけ満たされた満足感と鋭利な刺身包丁が如く研ぎ澄まされた探求心料理を作りたい極めたい笑顔を見たい色々なたいです。パトロン殿よ、陛下、近いうちにまたこのような催しを開きますですぞぉー、はい」


 美味しそう。美味しい料理も沢山あったが、つい二度見しついついガン見し嫌悪感を抱いてしまった料理も数多くあった。


 思うに、メアと冥界の食材と料理に問題がある。もしかしたら、高尚過ぎて不味さしか理解できなかったのかもしれない。俺程度の舌だし参考にはならないと自慢ではないが自負している。



 帳の下を目指し、立食パーティーの名を借りた顔合わせの席の中を簡単な挨拶をしながら縫う様に三ラフン程歩いた。


「これだと、パーティーの間に着けないですね」

「解散は十八時(イチマルハチ)ですので、後一時間と十三ラフンと少しの余裕があります」


「フリーパスで移動しちゃいましょう」

「はっ」


 帳から十m程離れた場所に移動し最初に目に飛び込んで来たのは、楽しそうに殴り合う聖獣様と邪獣様の姿だった。


 近くで声援を送る邪狼獣ロージャンさんの姿を見つけ声を掛ける。


「これ……あれって番の」

「お、久しぶりだな。まだ間に合うぜ、俺様はピエール殿(聖栗鼠獣)に七百七十七万NL(ネール)賭けた。お前達はどっちに幾らだ!!」


 番って言うから結婚式とかそんな感じのことを想像してたんだけど……。


「ロージャン。主殿に対しお前とは何だ」

「何怒ってんだ? 俺様はロージャンで俺様、エリウスは盾でお前、ロイクは主でお前、前からずっと」

「ロージャンさん、それよりも、殴り合ってるようにしか見えないんですが、あれってどうなったら終わるんですか?」

「ん? 地面に両肩が先に着いた方が負け、先に気絶した方が負け、先に絶命した方が負け、先に負けを認めた方が負け、あとは」

「気を使用した時点で負けになります」

「エリウス、気って」

自然魔素(マリョク)、聖気、邪気、精霊気などの気全般のことです」


「どっちに賭ける? 始まったばかりだから四、五日は続くと思うが早目に賭けておいた方が良いぞ」


「五日間も殴り合いが続くんですかっ!?」

「どっちも体は小さいが熟年同士だからな、そのくらいは当然だぞ」


 ロージャンさんは胸を張りながら自慢気だ。


「ピエール様の相手をしてる邪獣様は」

「あれは、火の中精霊イグマリリア様の眷属邪栗鼠獣のクリステルです」


 どっちも初めて聞く名前だ。

「栗鼠系は殴り合う感じですか?」


「お前何言ってる。番の門出は勝つか負けるかの真剣勝負だぞ。負けた方は一生台所を握られてしまうのだ」

「台所を握られるって、エリウス、はい、説明」

「番に成ると同時に財産が一つに成ります。一つに成った財産を管理することを一生台所を握られると私達の世界では言います。財産を賭けた門出なのでそれに便乗し財産を賭け合い福の御裾分けを少しでもいただいてしまおうというのがこの番の壁の主旨です」


 主旨ねぇ~……まぁ~楽しそうに殴り合ってるし、気にするだけ無駄かな。


「私は、ピエールにマルアスピー様のチョコレート菓子エクレアを百本賭けることにします。主殿は如何なされますか?」

「因みに、ピエール殿が三でクリステル殿が七だ」


 七、三? ……意味が分からない。


「賭けた時点での数字がそのまま倍率になります。今、ピエールに賭けピエールが勝てば賭けた物が三倍で、クリステルに賭け勝てば七倍で戻って来るということです」

「なるほど、ピエール様が人気あるってことか。賭けるのって何でも良いんですか?」

「気、命、自分以外の存在、権利の無い物は賭けても成立しません」

「へぇ~、……例えば、アシュランス王国の王様の権利とか」

「成立しません。建国の際、世界創造神様にここに一人の王をと宣誓したはずです」


 あぁーしたな。ここは無難に。

「分かりました。明日飲む分の神茶(シンチャ)を賭けます」

「神界の物ですよね。……成立するかどうか不明ですが、試してみましょう。ロージャン。立会人は誰だ?」


「イッケェーそこだぁ―――。馬鹿何やってんだよ。そこは左ストレートからの、あっ?」

「立会人は誰だ?」


「あの木の枝に居るだろうが」


 ロージャンさんが指差す木へと視線を向ける。


 たいじゅの間にどうして木が生えているのかについてはスルーしたいと思う。枝に止まってるのサビィ―様だし……。


「サビィ―が元締めですか……」


 エリウスは隠すことなく嫌そうな顔をしている。


「二人の出会いの切欠がサビィ―らしいぞ」



 サビィ―さんを呼び、エクレアと神茶を渡し、賭けた物が光に包まれ消えたことで賭けが成立したので、殴り合いが終わったら二人にお幸せにと伝えて下さいと伝言を頼み、神授スキル【フリーパス】で玉座へと移動した。


 七km四方の下段を神眼で視渡し、もっと効率の良い顔合わせの方法があるよな、立食パーティーってこうじゃないよな。と、少しだけ考え考えるのを止めた。



「ギャハハハハハハお祖父(ジジ)王はバカなのじゃぁ~~~」

「そうか儂はバカかトゥーシェは本当に賢いのぉ」

「そうなのじゃぁ~~~」

「はい、トゥーシェお嬢様の愛らしさは旦那様の曇り切った眼ですらその真実を映して止まないと信じておりました」


 何だろうな。あれが普通なんだよな。楽しそうだし放っておこう。


・・・

・・


「主殿、まだ五十ラフン程あります」


 まだそんなにあるのか、長いな。

貴重な時間をありがとうございました。

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