6-MS-105 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 待つだけでは何も得られないけどサムタイムズグッド -
―――アシュランス王国・王都スカーレット
グランディール城・たいじゅの間
R4075年11月11日(無)15:30―――
アシュランス王国領エグルサーラ島通称竜の爪痕に爾後の民の為に建設した国王直轄の集落ニューリート。
居住区は体の大きさに合わせ四つの地区に分かれているが、これには住み易さを優先しただけで別段他意はない。
十mを越える種族民族が快適に暮らせるようにデザインされた【リュンス地区】。
三mを越える種族民族が快適に暮らせるようにデザインされた【リセイア地区】。
成人しても一m以下の種族民族が快適に暮らせるようにデザインされた【リパット地区】。
一m以上三m以下の種族民族が快適に暮らせるようにデザインされた【スロポス地区】。コルト下界の民が暮らすならこの地区一択になるだろう。(新たに加わった一部の高位種民族を除いて)。
住民(市民権を有する)は、爾後の民(全員ではない)を中心に帰還の民(全員ではない)と理外の民(全員ではない)とアシュランス王国の公僕と各協会関係者と商いの許可を特別に与えた商会関係者商人とメア王国の大使館(サザーランド陛下は別荘だと主張している為、大使の席は空席のまま)で働く使用人達で、人口は日増しに増え続け今では五万人を超えているらしい。
保護した人達の家族が俺の予想を上回り多かったことと、スタシオンエスティバルクリュ(空中の避暑地)の住民達がセカンドハウスを建て重複市民状態になっていることが増加の原因になっているらしい。
俺としては、頭のおかしな人達が群れを成して巣食わない限りはどうでも良いかなと思っている。
メア王国の大使館として用を成していないが、大使館には外交官特権を認められた職員が二人たまに在籍している。
容易に想像が付いてしまうと思うが、何を隠そう、サザーランド陛下とトラヤヌスさんの二人だ。メア王国の国王と国王家ボナ・サザーランド家に万年単位で仕える筆頭の執事で家令で家宰で爺や。
この二人しか所属していいない大使館(自称別荘)が大使館として機能する日が来ることはないだろうと俺は思っている。
因みに、連合国家フィリー加盟国の、ゼルフォーラ(聖)王国とララコバイア(海洋)王国とドラゴラルシム(竜)王国とターンビット(大)王国の四ヵ国には外交館(建前は外交だけを目的とする建物)の設置を認めている。要を成さない大使館を相手に微妙な状況になっているらしいが俺は気にしていない。
そんなニューリートの民ほぼ全員が参加している立食パーティーだが、五万人強も居るはずなのに目立っていない。
何故なら、公僕達の方が多いからだ。
chefアランギー様は兵士一人使用人一人誰一人取り零さず招待していた。国の色んな場所が一時的に停止麻痺状態に陥っているみたいだが昼休みの小三時間程なので問題はないらしい。
無理矢理、気にしないことにした。
「パトロン殿よ。おっとうっかり陛下。御安心くだされ。彼等彼女等を招待すると心に決め料理のらりるれろを追求すると誓ったあの日から、私がここだと思う場所には神聖域の結界を張り巡らせて来ました」
「そ、そうだったんですね……」
突っ込みどころが多過ぎる……スルーしよ。
「見つけ次第の突貫で些か具合に斑が出てしまいましたが無いよりは有るにこしたことはなく」
「斑、って、それ食べてる間に切れたりとかしないですよね? 役所とか詰め所はある意味宝の山なんで、もしそうなら先に手を」
「ですので御安心くだされと態々前置きをした訳ですぞぉー、はい。近日中に切れる結界は」
「近日中?……この立食パーティーって十八時には終わるんですよね?」
「その通りですぞぉー、美味であっても所詮は追求の過程どんなに美味しい料理でも食べ続けていては飽きが来て食が進まなくなってしまう。これが道理であり理なのです」
「くるしいだけだと……」
「これは、妖精のおしごが総力を挙げ長い年月の間に調べ上げた結果でしかありませんが、どの種族も概ね十ラフンから三十ラフン長くても小一時間の食事で飽きが来てしまうようでカトラリーを止めてしまうのです。私達はこれを異界あるあると呼称している訳なのですが」
「異界あるあるですか……それはそうと近日中に切れる結界って、それっていつ頃切れる感じなんですか?」
「おっとそうでしたそうでした。今は急遽張り巡らせた神聖域の話の最中でしたなっ、はい。近しい物ですと四百十年程で切れる西モルングレー山脈に建設した収容所ですかなっ」
「四百十年?」
「本当は絶対にやってはいけない宜しくない事なのですが、鍋を火にかけたまま離れるなど言語道断打ち首ものなのですが」
「確かに一時的とはいえ神聖域をポンポン作り出すのは問題だと思います」
四百年を一時的って言うのかちょっと悩むところではあるが……。
「火の前から離れていたのはものの五カウン(五秒間位)程でしたので大目に見ることにし以後気を付けると己に言い聞かせる切欠になりましたラクール州のオリティア川に架けたアンガーレム大橋通称ヴァルオリティア帝国アシュランス王国平和の架け橋は最長ではありますが長い長いと言っても一万年もつかもたないかの心許無い物ですので気にする必要はないかとっ、はい」
「その位なら問題なハァーアッ一万年って」
「高位の者、聖属性の適性を非常に高く持つ者、神聖魔術を嗜む者、神聖魔法を行使できる者、神授神託託宣の類を与えられた者、聖獣、精霊、聖人、半神亜神、神。おっとそれにロイーナと公僕も皆渡ることが可能です。ですが、この橋今の状況ですと非常に残念な状況にあるとも言えるのです」
「まぁー今の話で何となく想像はつきましたが、話したそうなんでどうぞ」
「神聖域化にともない列挙した存在にしか渡ることができなくなってしまった為、隣に手頃な橋を第二の平和への架け橋として架けました。等価での交換は異界の存在に対し申し訳ないと思いましたので少しだけ多目に交換したまでは良かったのですが」
「突貫だったから誤ってその橋も神聖域化しちゃったとか?」
「そのようなケアレスミスchefアランギー生まれてこの方一度もしたことはございません。問題は、急に現れた名も知れぬ分からぬ橋を渡る勇気ある者は少ないだろうと言うことですぞぉー、はい」
「あーなるほど……」
「処置として、名だけは読めるように刻み直しておいたので、ボチボチ渡り始める頃合いだとは思うのですが、何分私は料理専門。ここからは橋等を主に扱う神に任せてしまおうと考えた次第なのです」
「橋専門の神様もいるんですね」
「橋と言いますか、その類全般を司る神が明日以降来訪と言いますか来宅するかもしれないと記憶に留めておいていただけると幸いです」
「ねぇーロイク」
「はいなんでしょう。って、デザートコーナーで新作の発表会がどうのこうのって、もう終わったんですか?」
chefアランギー様と話をしていると、工房ロイスピーの発売前の新作デザートが気になるのか、コーナーの横で目を光らせていたはずのマルアスピーがエリウスの前に立っていた。
「神聖域の話は本当なのかしら」
「直接見た訳じゃないんで何とも言えませんが、らしいですよ」
「神聖域化して回った私自らが断言致しますですぞぉー」
「そっ、私が気にすることではないのだけれど、普通の人間達、不埒な輩はこの先何年も足を踏み入れることができないのでしょう。目の前にあるだけの建物にいったい何の意味があるのかしら?」
「あっ!!」
行政施設公共施設が利用できない。
「気付いたようで良かったわ」
「数十万人分の食事を用意できる。たったこれだけのことに目が眩み私は何てことを……申し訳ございません。……少しばかりうっかりしておりました。立食パーティーが終わり次第、異界より等価交換以上で交換し然るべき建物を準備すると神としてここに宣言しましょう。回収した建物は私には不要ですのでパトロン殿に差し上げますのでお好きなように使ってくだされ、はい。パトロン殿の奥方マルアスピー殿の助言に、これをば」
「いったい何かしら?」
chefアランギー様は、宙から小瓶を取り出すと、マルアスピーの前に差し出した。
「私が最も大切にする調味料の秘蔵空間、和三盆だけを贅沢にも保存した甘味調味料最高峰の空間、砂糖の中の砂糖が未来永劫出続ける小瓶です。感謝の印として差し上げましょう」
「そっ」
何だか凄そうな……未来永劫出続けるってことは無くならないってことだろうから、たぶん凄い小瓶だと思う。
小瓶を受け取ったマルアスピーの表情は、いつものように相も変わらず変化に乏しい。僅かに変化しただけかもしれないが、実はあの表情は物凄く喜んでいる時のものだ。
「ねぇロイク」
「はいなんでしょう」
「母に」
「ミト様ならあそこに居ますね」
銀のフォークで串刺しにしたローストビーフの塊を右手に、持ち込みと思われる赤ワインのボトルを左手に、優雅さとは程遠い豪快なスタイルで回りに迷惑を掛けながら楽しんでいるミト様を視界に捉える。
「パフパフに」
「リディアさんも招待あっロイーナだし家族みたいなものだから来てて当然ですね」
パフさんは母親のリディアさんと料理を片手に楽しそうに談笑していた。
「そ、そうみたいね。パフパフが楽しそうにしていて私も嬉しいわ……大切な用事を思い出してしまったわ。大切な用事なのだから仕方がないことなの。行って来るわ」
マルアスピーは工房ロイスピーの中枢、アトリエへと転位移動(転移)した。
「あれ、マルアスピーって外套以外でも移動出来たんですね」
「思慕と恋慕の応用だね」
フワッ。
声が響いてから姿を現したフォルティーナにちょっとだけ驚いたのは内緒だ。
「アスピーが強く思う場所ならあの外套で移動が可能だね」
「あれって一方通行の創神具だったはずなんですが……」
「忘れたのかね」
「何をですか?」
「成長を止めた時それが本当の死だね」
「は?」
こいつの話は無視で良いや。折角だし聞いておこう。
「chefアランギー様。序にフォルティーナにも確認しますが、マリレナさんが言ってた例の件ですがあれって、俺が関わってしまっても良いんですかね」
「ダメだね」
「ダメでしょうなっ、はい」
「ですよねぇ~……そうなると神様になちゃったマリレナさんも無理ってことですよね」
「その通りだね」
「その通りですぞぉー」
「ロプコブラッド家、ナノハナ嬢の件は」
「今はどうすることもできないでしょうな。何せ分霊おっとコルト下界民同士の争いを優しく見守るのも管理者としての立派な業務でするからなっ、はい」
「転移の魔力陣の動力源に利用されてるって分ってるのに何も出来ないとか」
「ロイク、君は何か勘違いしているね。良いかね、神にも存在の意義があるたぶんあるね。下界の存在にも存在するだけの価値があるね。管理者だからと言ってだね、その存在の意義を奪ってはダメだね」
「はぁっ?」
「そういうことだね」
……こいつに聞いた俺が馬鹿だった。
「陛下。この件はパトロン殿ですなっ、要するにこの件も保留と言うことで宜しいかと」
「家って、保留ばかりで大丈夫なんですかね?」
「古来より早急になどという耳触りの良い言葉の後に何かが良い方向へと転じたことはありません。何事も中長期で構え運良く短期で片付いてしまった位が良いのですぞぉー、はい。幸いなことにここには唯一LUKに関わる運を司る神フォルティーナ様がおられるのです。極稀に訪れるかもしれない御利益にあやかり甘露の日和を待つのも一興というものなのですぞぉー、はい」
貴重な時間をありがとうございました。
三話を一話に修正した結果、
繋がってないですね……。
省き過ぎたらこのような結果になってしまいました。
いつか訂正します。




