1-40 記憶の逆行と、魔獣の可能性。
宜しくお願いします。
――― 東モルングレー山脈
スタシオンエスティバルクリュ池の東側
――― 6月7日 9:00
俺は、別荘(まだ本邸も持っていないのに別邸)の東。池の畔に大規模な畑を作る事にした。邪狼獣のセリューさんから、高山闇爪大魔熊の高山での暮らしぶりを聞き、魔獣による農耕の可能性を実験してみようと考えたからだ。
「という事で、ここに広い畑を作り、野菜や果物を育てる事にしました」
「ロイク。ここは高山闇爪大魔熊が生息する15000mの高山と比べると低いぞ。人間種達が生息する平地と比べると9000mも高いぞ」
「セリューさん。ここの地形って地上から見ると南北の15000m級の山々から吹き降ろす風の影響と、東西からで吹き抜ける風の影響で、季節って物があるみたいなんですよ」
「暑い季節。寒い季節みたないあれか?」
「そこまでハッキリした物ではないらしいんですが、1月2日から7月15日の間は、北の山脈から吹き降ろす冷たく乾燥した風と、西から東に吹き抜ける温かく湿った風の影響と、周囲に自然発生している風の結界のおかげで、温暖湿潤な過ごし易い気候になるらしんです。そして、7月17日から13月30日の間は、南の山脈から吹き降ろす温かく乾燥した風と、東から西に吹き抜ける四大属性の自然魔素を多く含んだ精霊風と、周囲に自然発生している風の結界のおかげで、1月2日から7月15日の時より、3℃~5℃程温かくて温暖湿潤で過ごし易い気候になるらしんです」
「9000mの高地にある土地だが、温暖湿潤で過ごし易いという事だな」
「そして、1月1日と7月16日の2日間だけ、15時の数ラフン間だけ西から東へ精霊風が吹いて、その前後は無風状態で35℃~40℃の暑さになるそうです」
「俺は農耕の経験は無い。肉を喰らい命を繋ぐ種族だからな。だが、俺達の糧となる種を育む為に植物は欠かす事の出来ない糧だ。それで、俺を呼び出したのはどうしてだ?」
「セリューさん兄弟姉妹の皆さんに、ヒグマの丘や影の中からここスタシオンエスティバルクリュに引っ越して貰って、農地とスタシオンエスティバルクリュの管理責任者になって貰えないかと思いまして」
「ここの管理者はロイク、お前だろう!」
「いつも居られる訳じゃないので、セリューさんや兄弟姉妹の皆さんにお願いしたいんですよ。高山闇爪大魔熊の習性を利用して畑で野菜や果物を育てるのは良いのですが、念の為に治安や畑を監視する人が居た方が良いかなと・・・」
「俺達に、ここの治安の監視者に成れと言う訳だな」
「はい」
「ロイク。条件を提示出来る立場ではない俺達だが、兄弟姉妹達の手前どうしても譲る事の出来ない物がある。それを約束してくれるのなら移住し監視者になる」
「何を約束すれば良いんですか?」
「まずは、俺達が産まれ育った丘への自由な移動」
「ヒグマの丘が故郷なんですか?」
「そうだ。そしてここの周囲での自由行動。大樹の森の領域内だけで行動すると約束しよう」
「近くでも食事出来ないと不便ですからね」
「定期的に人間種達の食べ方で肉を提供する事」
「焼いた肉ですよね?定期と言わず毎日でも構いませんよ」
「毎日、夕飯に焼いた肉をくれると言うのか・・・うーん・・・分かった。俺達兄弟姉妹に、この山脈と眼下に広がる湖、丘、大樹の森の湖の警備は任せてくれ」
肉を焼いて提供するだけなんだけど・・・
「助かります」
「それと、もう1つ。ここに定住するなら、1つ夢を叶えて欲しい」
「夢ですか?」
「周囲を岩や土では無く、人間種達が住む建造物に似た感じの壁と天井のある地を用意してくれ」
「・・・ようするに家を準備すればいいんですよな?」
「快適に眠れる人間種達の壁や天井がある事を希望する」
「8人分の部屋がある家って事ですよね?」
「8人・・・あぁ~俺達の兄弟姉妹の数か・・・」
「家に入ると、広い空間があって、そこから夫々の部屋に行ける感じで良いですか?創造神様から大量に家を神授していただいたので、適した物件があるかもしれないです。探してみます」
検索:対象・創造神様からいただいた家・1階にロビーと8部屋 ≫
≪・・・該当は1軒です。
「平屋で、家に入るとロビーがあって、部屋が8室って物がありました。家は何処に置きますか?」
「畑と神殿の傍が良い」
「それなら、俺の家も見えるし、この辺りに適当に出しますね」
該当する家を取り出し:場所・目の前の草原・設置 ≫
≪・・・道具・家屋より『邪獣専用ハウス』を取り出し設置しました。
俺の目の前に、真っ白な平屋建ての家が以前からそこに在ったかの様に現れ建った。
「これが、俺達の洞窟か!」
「洞窟って言うか、家ですね」
「兄弟姉妹達を呼んでも良いか?」
「えぇ」
・
・
・
今、俺は、邪狼獣の兄弟姉妹達と、邪狼獣の家の前に居る。
***邪狼獣の兄弟姉妹の説明***
【長男】セリュー【親交】家族(影響100%)
【次男】ディーズ【親交】仲間(影響30%)
【長女】ナクール【親交】仲間(影響30%)
【三男】ロージャン【親交】家族(影響100%)
【四男】イルーグ【親交】仲間(影響30%)
【五男】クルーズ【親交】仲間(影響30%)
【次女】バルーサ【親交】友情(影響50%)
【六男】ルクソール【親交】仲間(影響30%)
***邪狼獣の兄弟姉妹の説明おわり***
「ロイク様。私達兄弟はこの白亜の洞窟を貰って良いのか?」
邪狼獣の兄弟姉妹の長女ナクールさんは、耳を立て尻尾を振り舌を出し感動を隠し切れない様子で俺に話掛けて来た。
「中は、邪獣の皆さんが過ごし易い様に、ロビーは無属性の空間ですが、皆さん1人ずつの部屋は清澄邪属性と無属性が半々に保たれた快適空間になってるそうです。外は白亜ですが、部屋は焦げ茶色と緑を基調とした落ち着いた造りみたいです」
「兄者。ここに俺達は住むのか?」
四男イルーグさんは、長男セリューさんに質問した。
「そうだ。ここに住みながら、俺達の故郷の丘とこの山脈、西の眼下に見える湖、それと大樹の聖域の北の湖。そしてこの地を守る。何と、今名を上げた地での大樹の森の領域内であれば自由に食事をしても良い好条件だ」
「丘やあの村の周辺以外の地へ好きな時に出かけて良いのか?」
六男ルクソールさんが、長男セリューさんに質問した。
「そうだ。だが、好きな時と言う訳にはいかない。この洞窟での快適な睡眠と焼いた肉を条件に、さっきも言ったが、俺達は約束した地を守る」
「兄者、焼いた肉を貰えるのか?」
次男ディーズさんが、涎を垂らしながら、確認した。
「そうだ。しかも、毎晩だ」
「ま、毎晩・・・うぉ~~~兄者。何と言う好条件だっ!」
「なぁ~ロイクよ」
ロージャンさんは神妙な面持ちで俺に話掛けて来た。
「どうしたんですか?元気無いみたいですが・・・」
「俺様は、ただ焼いた肉ではなく、塩やバーバーソースだったか?あの甘い濃厚な味の肉が欲しい」
「あぁ~BBQソースですね。毎晩同じ肉だと飽きると思うので、味は変えるつもりです。肉は常に俺の方で準備するつもりですが、自分達で捕まえた獲物の肉とかを焼いて食べたい時は、妖精達に直接渡してくだい。焼いて出す様に話を通しておきます」
「兄者よ」
「どうした」
「この地。この山脈。西の湖。大樹の森の湖。故郷の丘。ロイクの影の中。持ち回りか?それとも固定か?」
「ロージャン忘れているぞ」
次女バルーサさんだ。
「何をだ?」
「邪気の洞窟の監視だ」
「それとですね。これから、ここに作る畑とそこで働く者の管理もお願いしたいんです」
「俺達兄弟で調度だな」
「ロージャンさん。なのでセリューさんにお願いして皆さんにここに集まって貰ったんです」
「分かった。俺達に任せておけ」
「お願いします。それでは、高山闇爪大魔熊を影から出します」
高山闇爪大魔熊の、ツヴァイ。ドライ。ゼクス。アハト。イリース。ヴィンデ。ブルーメ。パルメ。この日、開墾からだが8匹による農作物の生産が開始した。それと同時に、邪狼獣の兄弟姉妹による、ヒグマの丘を中心としたマルアスピー村を含む故郷地区。コルト湖周辺地区。ルーリン湖周辺地区。東モルングレー山脈地区。スタシオンエスティバルクリュ地区。畑。俺の影の中。邪気の洞窟。8か所の警備監視体制が成立した。
・
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――― 東モルングレー山脈
スタシオンエスティバルクリュ別荘のリビング
――― 6月7日 10:00
スタシオンエスティバルクリュの別荘(まだ本邸も持っていないのに別邸)の自室に戻った俺は、マルアスピーと神獣のアルさんを部屋に呼び、昨日手に入れた白色の腕輪の事を説明し、腕輪の成長を進める事にした。
「この白い腕輪に、精霊聖属性の自然魔素を注ぐと良いのね」
「えぇ~、全力でお願いします」
「分かったわ。いくわよ」
マルアスピーは白色の腕輪を左手に持ち、右手を腕輪に被せる様にすると、自然魔素を注ぎ込み始めた。暫くすると、腕輪に精霊聖属性の自然魔素が高濃度で集まっている事が、音でも分かる様になった。
≪チリッ チリッ チチチチチィッ
白色の腕輪が1度だけ白い光で発光する。腕輪には教会の浮彫細工の様な模様がエメラルド色で浮かび上がっていた。
「模様が増えたみたいですね」
「これは、ナンフ語を文字にした私達の言語よ」
「そういえば、神聖文字を精霊様達の言葉で発音するとナンフ語で、ナンフ語を文字にすると旧言語で、それを模様みたいに活用しているのが教会の模様だって言ってましたね」
「模様・・・これは私達には文字にしか見えませんが・・・そうね人間種のロイクには模様にしか見え無くて当然よね」
「何て書いてあるんですか?」
「これは・・・ですね・・・」
「文字なんですよね?」
「えぇ・・・」
「俺もアルさんも読め無いんでお願いします」
「マルアスピーさん。お願いします」
マルアスピーは、俺やアルさんの顔や腕輪をキョロキョロと落ち着き無く見比べては深呼吸を繰り返し、やがて語り始めた。
「この腕輪には、家族。子供について書かれています。以上です」
「それだけですか?いっぱい模様があるのに妙に短いですね?」
「模様風に書かれているからです」
「家族とか子供の模様かぁ~・・・いったいどんな腕輪に成長するんだ?・・・・・・あっ!そうだ。創造神様からのメールの読めなかった部分がもしかしたら読める様になってるかもしれないから、ここに表示しますね」
「そ、そうね・・・」
可視化 ≫
表示画面:10倍に拡大・今だけ ≫
≪・・・拡大しました。
表示:創造神様からの最新メール ≫
≪・・・表示しました。
***********************
R4075年06月07日(邪)時刻10:30
その腕輪に、
アル・オェングス・シャレットより、
神気:聖属性を最大神気で注がせよ。
その腕輪は、
ロイク・シャレット専用武具です。
神界の武具【白色の腕輪】
成長条件①
神気成長1/5
成長条件②
精霊気成長1/5
成長率004%
***********************
「あれ?読めなかった部分が消えてる」
「神様の指示に従って成長させていれば自ずと分かる事だと思います。今は、ここに書かれている事をやりましょう」
「そ、そうですね」
「私も、その腕輪に力を注ぎます。マルアスピーさん貸してください」
マルアスピーは、アルさんに白色の腕輪を手渡した。
「アルさん。お願いします」
「はい」
アルさんは、大きな胸の前に腕輪を浮かばせると、両腕を翼の様に大きく柔らかく広げた。アルさんの身体から神々しい黄金色と白色の光が零れだすと、翼の様に広げた両腕を胸の前に浮かばせた腕輪を包み込む様に動かす。白色の腕輪は、アルさんの胸と腕に抱かれた状態になった。
「もう少しです」
アルさんが一言そう発すると、アルさんから零れだしていた光が腕輪に集まり始める。そして、アルさんの光を全て吸収した。
「終わりました。ロイク様、どうぞ」
俺は、アルさんから腕輪を受け取り状態を確認する。腕輪は、模様が消え最初の白色の腕輪の状態に戻っていた。俺は、創造神様からのメールを確認する。
***********************
R4075年06月07日(邪)時刻10:30
その腕輪に、
アル・オェングス・シャレットより、
神気:聖属性を最大神気で注がせよ。
その腕輪は、
ロイク・シャレット専用武具です。
神界の武具【白色の腕輪】
成長条件①
神気成長1/5
成長条件②
精霊気成長1/5
成長条件③
神気聖属性1/5
成長率006%
付与付加
神授スキル【miracle3】
※3カウン下界の時間を止める事が出来る※
※連続使用不可※
※インターバル30カウン※
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「時間を止めるスキルが付与されたみたいですね」
「下界の時間とありますが、時間を止める範囲は何処までを対象にしているのかしら?」
「ロイに行った時に試してみましょう」
「そうね」
「ロイク様。その腕輪ですが、神界や神域でもかなり貴重な神具の1つ、創神具と呼ばれる世界創造神様が自ら創造されたという【lienParadox】に似ています」
「リヤンパラドックス?」
「はい」
「創造神様からいただいた神具なら沢山あるけど、それも創神具って事になるのかな?」
「世界創造神様が創造された武具であれば、創神具で間違い無いと思います」
≪バフッ
運の神様がベッドの上に姿を現した。
「やっぱりだね。何処かで見た事があると思ったね。【lienParadox】だったとは驚きだね!」
そして、語りながら俺に抱き着いた。
「うゎっ!いきなり現れて、突然抱き着かないでください」
「朝のスキンシップだね。マルアスピーとはいつもやっている事じゃないのかね?」
「やっやってませんから!」
「ロイク」
「な、何ですか!」
「そんなに興奮してどうしたね」
「興奮?怒ってるんです」
「マルアスピー。君も大変だね」
「えぇ~全くです」
「アル。君は神気を大量に消費した様だね。平気なのかね?」
「・・・はい。この姿で活動する位でしたら、ロイク様の傍に居るだけで、微弱な神気の供給ですが大丈夫です。それにここは聖域に近い環境の様ですから」
「ふむ。ともあれ何かある前にロイクに言うね。あのプレイはなかなか面白いね」
「プレイって言わないでください!あれは、チャージ!クロコダイアンさんの指示通りにやった訳で、チャージです。ですよねアルさん」
「はい。とても気持ち良かったです」
「あたしは、思ったね。アル」
「運の神様。私の事ですか?」
「そうだね。まず、昨日決めた事があるね・・・・・・忘れていたね」
「はい」
「昨日。あたしは、シャレットになったね。つまり、姓がシャレットの者は皆家族だね」
「運の神様もシャレットなのですか?」
「ですが、神様を名で呼ぶ事には、精霊の身としては抵抗があります」
「マルアスピー。君は察しが早いね。だが思考に柔軟性が無いね」
「申し訳ございません」
「謝る事は無いね。だが、罰として、これからはあたしの事はフォルティーナと呼ぶね。家族以外の者が存在する時は女神フォルティーナと呼ぶね。あたしは、マルアスピー、君の事をアスピーと呼ぶね」
「わ、分りました・・・」
「それでは、手始めに、あたしの名を呼ぶね」
「は、はい・・・フォ、フォルティーナ」
「呼んだかねアスピー。・・・・・・うんうんだね。寝ないで考えた甲斐があったね。なかなかどうしてしっくり来るね」
「アル。君もだね。あたしの事を今からフォルティーナと呼ぶね」
「私は神界の住人です。上位の神格をお持ちの存在を名で呼ぶ何て・・・」
「アルさん。神界では上位の存在の人を名前で呼んじゃいけないんですか?」
「いけない事は無いね」
「はい」
「あのぉ~・・・どっちが正しいんですか?」
「神は嘘付かないね」
「私は嘘は言いません」
「・・・......
・
・
・
......・・・アルさん。アルさんを信じます」
「悩んだ挙句にその答えかね」
「だって、アルさんが嘘付くとは思えなかったんです」
「流石のあたしも傷付くね。あたしがいつ嘘付いたね」
「嘘付かれた事は無いですよ」
「それでも、アルを信じるのかね?」
「・・・う~ん。実際どっちなんですか?名前を呼んではいけないのか、呼んでも良いのか?」
「もしかしてですが、フォ・フォルティーナ。創造神様と御会いしている時は、創造神様の事を何とお呼びしているのですか?」
「うん?あたしかね。・・・呼んだ事が無いね」
「私達と話している時は、世界創造神或いは創造神と呼称していますよね?」
「それしか呼び様が無いね」
「先日お聞きしました同位の存在。息吹の女神様の事は何とお呼びしているのですか?」
「名前は何だったかな?・・・名前で呼んだ事が無いね」
「愛と憎しみの女神様の事は何とお呼びになっていますか?」
・
・
・
***運の神様が呼ぶ神様の名前***
【世界創造神】様
対面で、その名を口にした事が無い。
誰かと会話している時に口にする時、
『世界創造神』『創造神』
【息吹の女神】様
対面で、その名を口にした事が無い。
誰かと会話している時に口にする時、
『息吹の女神』
【愛憎の女神】様
対面で、その名を口にした事が無い。
誰かと会話している時に口にする時、
『愛憎の女神』
【武の神】様
対面で、その名を口にした事が無い。
誰かと会話している時に口にする時、
『武の神』
【知の神】様
対面で、その名を口にした事が無い。
誰かと会話している時に口にする時、
『知の神』
【光の神】様『リュキオス』
【闇の神】様『プルート』
【大地の女神】様『レイア』
【水の女神】様『オンディーナ』
【火の神】様『ムルキベル』
【風の女神】様『カルデア』
【無の神】様
※全ての神であり全ての神ではない※
【美の女神】様『グレイス』
【秩序の神】様『メアート』
※女神様らしいが覚えてないらしい※
【食の神】様『リーベル』
********************
「創造神様や同位に近い神様の名前を知らないではないかと考えたのですが思った通りでした」
「呼ぶ事が無いね。神には役割が存在するね」
「あれ?でも、下位の神格の神様の事は名前で呼んでますよね?」
「名前が役割を表しているからだね」
「あれ?運の神様は、フォルティーナですよね?」
「そうだね」
「名前から創造神様から与えられた役割を想像出来ないです」
「創造神には、コルト下界の言葉でフォルトゥーナと呼ばれていたね。可愛くないね。それで、フォルティーナと勝手に名乗ったね。今ではフォルティーナだね」
「なるほど・・・フォルトゥーナなら、幸運とか幸福って意味かなって何となく分かります」
「今の話から、上位は下位を名前で呼んでいる様ですが、下位は上位の神格の存在の名前を知らない可能性がありませんか?」
「ロイク様。運の神遊びの女神様は、世界創造神様に次ぐ神格の高い神です」
「そうみたいですね」
俺は、露出激しい装いの運の神様を見た。
「その値踏みする様な厭らしい瞳は何だね」
「・・・上に世界創造神様しか居ないなら、さっきの発言は仕方ないのか・・・アルさん。上位の神様からの命令って神界ではどうするんですか?」
「生命存続の危機。存在存続の危機。状態存続の危機。精神存続の危機。理不尽な指示でない限り必ず従う事になります」
「それなら、運の神様の事をフォルティーナって呼んでも大丈夫じゃないですか?」
「精神存続の危機に微妙に干渉しています」
「でも、本当の名前はフォルトゥーナな訳だから、コルト下界での愛称みたに思えば良いんじゃないかと」
「私のアルと同じという事ですか?」
「そんな感じです」
「ロイク。君は良い事を言うね。うんうんだね」
「うんうんじゃないですよね。【lienParadox】の事はどうなったんですか?」
「忘れて無いね。アル。良く気付いたね」
「前に、神界の映像放送で失われた名具・神具の特番が放送された事がありました。その時に【lienParadox】幻の創神具の事を知りました」
「ロイクが手に持っている神具は間違い無く【lienParadox】だね。正確には【lienParadox】の一部だね」
「1部?」
「数億年前、創造神が理の力を強く持ち過ぎたそれを4つの姿に分け、創造世界の何処かへ無作為に飛ばし封印したね」
「頑張って成長させても扱い切れない神具になるだけじゃないですか・・・」
「大丈夫だね。4つが揃わない限りは白色の腕輪だね」
「因みにですが、気になったので聞きますが、【lienParadox】の力ってどんな物だったんですか?」
「全てが肯定であり全てが否定である。全てが存在し全てが無。時間の定義、時の定義、神界や神域以外の全ての定義を根底から覆す力を持った神具だね」
「良く分からないですが、凄そうな事だけは分かりました」
「その白色の腕輪は、数多く存在する創造世界の中で、このコルト下界に黄金の兜の姿で存在していたね」
「そうですね」
「御丁寧な事に、神気を持つ者には解呪出来ない神気耐性の状態でだね。神気の強過ぎる神では神具その物を消滅させてしまう。神気が同等や下の神では何も出来ない。神気を持たない者は石化してしまう。良く出来た仕掛けだね」
「でも、俺みたいなのが居たら簡単に解呪出来ちゃいますよね?」
「居たらそうだろうね。だが本来は居ないね。神気を持ち、神気を本来持たない存在。神格を持たざる存在でありながら創造神による石化の呪詛を無効化する存在。自然魔素各属性を超純水な清澄状態で扱う事が出来る存在。神気を各属性の清澄状態に抵抗無く変換し運用出来る存在」
「【lienParadox】の能力に似ているわね」
「アスピーは鋭いね。その通りだね。ロイクは神の恩恵を受ける身だね。それも世界創造神のきまぐれを神授された神格を持たずして神気を持った人間種だね。創造神によって存在自体がlienParadoxしてるね」
「私はその場に居ませんでしたので正確には分かりませんが、根底から根底を覆す存在を、根底から根底を覆す存在は、根底を覆し黄金の兜の呪いと天使の石化の呪いを解呪し黄金の兜を手に入れた」
「そうだね。創造神はロイクには可能だと判断し、あの指令をしたと思うね」
「数億年も前にバラバラにして飛ばした神具をなんの為にですか?」
「それは知らないね。創造神の思惑は常に創造の中にあるね」
「結局、何しに来たんですか?」
「流石のあたしも傷付くね・・・皆の顔を見に来たねダメかね」
俺は、マルアスピーと、アルさんと、フォルティーナさんと、不思議な時間を過ごしました・・・
・
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――― 6月7日 11:30
「記憶の件はどうなりました?」
「呼び方について考えていたからね。それどころでは無かったね」
「・・・あぁ~もう・・・それなら俺が言った通りの状態に1つずつ戻して貰えますか?」
「1つずつは面倒だね」
「一気に戻して貰えるならその方が俺も助かりますが、何を変えたか覚えてますか?」
「細かい事は気にしないね」
「・・・で・ですよねぇ~・・・」
「フフフッ。フォルティーナは大らかな女神様ですから仕方の無い事です」
「大らかって、マルアスピー。こういう時は大雑把っていうんです」
「あたしは、大らかな女神だからね、ロイク。今の言葉傷付いたが忘れたね」
「・・・いやいやいやいや、そこは忘れないでくださいよ。少しは考えてくださいよ」
「ロイク様。元はどの様な状態だったのでしょうか?」
「1つずつ確認していきますから、気付いているところから戻して行きましょう」
「分かったね・・・全く神使いが荒いね・・・」
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・
そして、コルト下界の人間達の記憶は元?の状態にたぶん戻された。マルアスピー村の人達の記憶には、国王陛下に謁見する事になった俺の謁見式と新たな英雄の誕生を祝う式典が王都モルングレーの王宮で催される事となり両親はその式典に招待され王都へ旅立った。式典の後の事はその時に考える事になった。
「これで良いね?」
「ありがとうございます」
「気にする必要は無いね・・・フッ」
「ん?」