6-MS-102 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 北の大地にコンバージオン① -
―――旧ガルネス神王国・神都(王都)ガルネス
神王宮殿(王城)フェード・ダス・デ・ルング
R4075年11月11日(無)9:30―――
「はい、という訳で、ここは、……見えませんが、フェード・ダス・デ・ルング城があった場所です」
「「「「「はぁぁぁっ!?」」」」」
俺の神授スキル【転位召喚・極】で半強制的に転移で集められた皆の声が、澄み切った大空に広大な土の丘に王城だったはずの吹きさらしの大地に溶けた。
皆とは...... ~
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【ゼルフォーラ(聖)王国】
・聖王(国王のイヴァン大叔父)
・ジェルマン侯爵
【ララコバイア(海洋)王国】
・海洋王(国王のヴィルヘルム殿)
・イニャス公爵(首相)
【ドラゴラルシム(竜)王国】
・竜王(国王のクロージャ殿)
・ドラゴ(世界に数人しか存在しない英雄)
【ターンビット(大)王国】
・大王(ターンビット王)
・ガウリック侯爵
※余談:王城バドロザールは復興済※
【ジャスパット東西朝王国】
・帝(東朝廷の王)
・天子(西朝廷の王)
・ムーコン親王(東西両王家で親王)
【旧ガルネス神王国】(解体済なので旧)
・神王(元国王のホノクレマ一世)
・教貴族家の当主一同
※コルト下界在住の者に限る※
・貴族家の当主一同
【世界創造神創生教会】(旧教邪教汚教等)
・枢機卿
・大司教
・司教
・大司祭
・司祭
※身柄を拘束中の者のみ※
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~ ......親しい者も親しくない者も含め錚々たる面々のことだ。
一人喚き散らし、直ぐに膝から崩れ落ち、今は奇声を発し続けているホノクレマを無視し、話を再開する。
「今日の日の出直後だったそうです。白光の夜と同じ感じの光がフェード・ダス・デ・ルング城を包んだそうです。で、こんな感じです」
「アシュランス王よ。もう少し詳しくは」
「分かりません」
大叔父イヴァンの要望に答えることはできない。
「あの屋敷には見覚えがある」
「あの屋敷は私の神都邸です」
「ほう、岩肌のようなあの感じ我好みの良い屋敷だとは思っていたがなるほどメアのドラゴン種族は我等竜人種と美的センスが近いようだ、ヌワッハッハ」
「そのようですな、ガッハッハッハ」
「屋敷とはあの辺りの木の陰に点々と見える茶色い……」
「詔には何も見えん。ガウリック、あの者等はいったい何に興じておるのだ?」
「大王陛下、確証はございませんが発言させていただきます。ドラゴラルシム竜王国の王の話から推測するに、屋敷の話をしているようにございます」
「あの辺りの森の中に屋敷があると申すのか……何も見えんようだが」
場違いにも楽しそうな声が笑い声が聞こえて来た。確認するまでもない。
この出鱈目に大きな声は竜王クロージャ殿だ。もう一人は……誰だ? 記憶にないな。
首を動かして声の主の顔を確認する。
あの人は、確か……ホノクレマに騙されてることに全く気付いてなかった人だったような。
「エリウス。あの人って」
「旧ガルネス神王国北カルーダ山脈山頂領の領主悪竜族のゲットンゼルゴ・テル・ヴィラザラライガ教伯爵です」
「あぁーそうそう、山頂とその周囲三百mってアホみたいなところが領地の人でしたね。悪竜族だったんですね」
「はい」
竜王と似たようなもんだし、気が合うんだろうな。
「ララコバイア王よ、見えるか?」
「いや、目には自信がある、つもりだった、大海原で慣らした目はつもりだったようです」
「聖王陛下、ララコバイア王。ご安心ください、ロイク君に強化して貰ったはずの私の目ですら針葉樹の中に薄っすらと茶色い屋根のような物が点々と見えるだけでございます」
「ゼルフォーラ聖王国最強の騎士ジェルマン殿でも見えませんか。ゼルフォーラ王よ、どうやら見えぬのが普通のようだ」
「そのようだな。ハッハッハッハッハ」
「ハッハッハッハ」
あっちもこっちも緊張感が全くないや。
皆が話題にしてる屋敷って、……あれのことだよな。確かにちょっと遠いか。
フェード・ダス・デ・ルング城がここにあったとして、十kmちょっとってところか。ここら辺は何もなくて見晴らしは良いけど、ちょっと高い丘ってだけだしな。
周囲を見回しあったであろう建物の位置を何となく把握していく。
「主殿。ここフェード・ダス・デ・ルング城は、今はありませんが三層の城壁に囲まれた丘の上の宮城でした」
「詳しいですね。来たことがあるんですか?」
「はい、ガルネス大寺院の視察に同行した際、上空に留まる時間がありましたので、今後の為に役に立つのではないかと考え、施設市街地などを記憶していました」
「へぇ~」
「三層目の城壁があの辺りです」
「針葉樹の雑木林があるところですか?」
「はい。東西南北同じ距離」
「城を中心にざっと十kmと八m分が消えたって認識で良いのかな?」
「はい。範囲内の建物と植物が綺麗さっぱり無くなっているようです」
「兵士達が消えなかったのは良かったですが」
「なななななにゃにがよよ良かっただぁぁぁぁ――――、し、しししし豫の城が豫の豫のかかかかかか返せぇ―――豫のよよよよ豫の城は何処に行ってしまったのだぁぁぁぁあがっ」
「今回は前回の様に魔力陣の暴走ではありません。メアとの連絡は」
「まだです。先に確認した方が良いかなと」
「ぅん!? あ、主殿、歪みがっ!!!!」
エリウスが張り上げた声より少しだけ早く違和感に気付いた俺は横一文字で裂けた宙を凝視していた。
「循環に乱れが生じているようです。あれはいったい……」
王城が建っていたはずの地の中央付近高さ二m位の宙に現れた自然の力の循環を乱す歪み。
乱れてはいるけど、吸うでもく吐き出すでもなく、宙にただ存在してるだけって、いったい……あっ、歪みに動きが。
「主殿、覆って様子を見ますか?」
「いえ、何が起こっているのかさっぱりな状況です。もう少しだけ何もしないで様子を見ましょう」
「畏まりました。ですが、危険だと私が判断した時は速やかに離脱していただきます」
「了解了解」
離脱するのも隔離するのもぶっちゃっけ簡単だし焦る必要はない。
・・・
・・
・
見極め続けること数ラフン。裂け目は、大空(上)と大地(下)に向かって未だに広がり続けている。
縦横綺麗に六mは裂けたみたいだけど、歪んでいるだけで何の反応も感じられない。
ここまで来ると逆に不気味でしかない。念の為、旧教関係者以外にも展開しておいた方が良いかもしれない。
「皆さん。緊急ってことで呼んだ訳ですが、何だか更に緊急って感じになってしまいました。俺のスキルで皆さんの安全は約束するんで慌てずそのまま適当に待機しててください」
一人ずつは面倒だし皆まとめてっと。
神気スキル【時空牢獄】を大きく展開し皆を一時的に保護した。
「ロイク君、あれはいったい」
「分かりません、ジェルマン殿」
「ロイク、あれは何だ?」
「ゼルフォーラ王」
「おっと、公私をと言った私が、申し訳ない。アシュランス王、あれが何か分かりますか?」
「見たままで良いなら、宙が切れて穴が開いた。なんですが」
「私の目にも穴が開いてるように見える。だが私の常識では宙に穴が開いたりはしない」
「ゼルフォーラ王の言う通りだ。アシュランス王よ、あれは良くないことが起こる前触れではないのか?」
「さぁ~、流石に宙に穴が開いただけなんで、良し悪しを判断するにはちょっと情報が足りないです。ララコバイア王はどうして悪いことが起こると思ったんですか?」
「いや、どうしてって……普通は、普通だと思うが、宙に穴が開いたら何かあると考えるのは普通ではないのか?」
「ガッハッハッハッハ、普通はそうだ。我等大空を翔る者にとっては由々しき事態だ。地を駆る主等でいう落とし穴のような物が宙にあるのだからな」
「なるほど。宙に落とし穴って発想は思い付きませんでした」
今度、実験してみよ。
「じろがえぜぇぇぇぇぇ――――ゴホゴホゴホッペッペッペッぺぐちにずながペッペッペッペッペ」
「主殿、歪みから誰か出て来ます」
ん? あれって。
貴重な時間をありがとうございました。




