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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-96 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 取り繕うものは皆同じアピアランスアンドスマイル -

 流石は、大商会の大番頭専用の馬車だ。六人も乗車してるのに狭さを感じさせないこの空間この快適さは素晴らしい。


 薄いが質の良いクッションが敷かれた座席を見る限り、十二人から十四人は座れるだろう。床もありなら倍はいけそうだ。


 二頭立ての大型馬車なのにまだまだ余裕がありそうだし、ホント素晴らしい、ソールパッツァ商会、何気に凄いんだな。



 本日のエリウスは俺の後ろに立っていない。


 降車し馬車を隔て俺の後ろに立つだけで信念を貫くことができる状況にありながら立っていない。


 納得できないらしい。


 信念だけを満たしても意味がないらしい。


 譲れないものがあるらしい。


 …………正直どうでも良い話だ。気持ちは嬉しいが俺の後ろに立つ信念とか本気で要らない。


 だから、今日は全てを華麗にスルーすると決めた。


 手始めに、俺の右斜め前で仁王立ちし正面の席に並んで座る四人を睨み付け恐ろしいまでに付け入る隙が見当たらないエリウスをスルーしている。


 更に、紹介とは建前で世辞が飛び交い笑顔溢れる偽名の名乗り合いもスルーした。


 更に更に、本題に入った瞬間馬車内の空気が一段(十度程)下がった気がしたのも気のせいだとスルーした。


 犯人はエリウスだがスルーしている。



「ソールパッツァ商会会頭ジュンジェムに問う。だがその前に一つだけ忠告しておこう、嘘偽りは絶命を意味すると心得よ」

「ははぁー」


 エリウスが語り始めてくれたのでこれ幸いにと俺は聞き手に回ることにした。邪魔しちゃ悪いしね。


 ブヒブヒフゴフゴ空気を漏らすしゃがれた高い声の肥満体型老人会頭のジュンジェム、渋い声の美少年大番頭のイグナーツことソナハナ嬢、同じような出立でどっちがどっちか分かり難いシュヴァンツことダグマーさんとシュッペことインガさんは、体を震わせていた。


 急激に下がった馬車内の温度が原因だとは思うがシバリングする程のことだろうか?


「会頭は全てを知る者か?」

「す、全てとは当商会をということでしょうか?」

「質問を変える。会頭は商会で働く者が知り得る全てを知る者か?」

「商いに関する報告は番頭達を通し全て把握していると自負してはおりますが、働く者達の全てをとなりますと流石に、それは不可能にございます」

「商いとは人を情勢を見るものだと聞く。会頭は大番頭が知る情勢を全て知る者か?」

「……し、知る者にございます」

「そうか。では、始めるとよう。先の戦でガルネス神王国は敗れた。知っているな?」

「はい」

「陛下の御身は囚われの身である。知っているな?」

「はい」

「神王家教貴族家貴族家特権階級にあった者達の身柄も囚われの身にある。知っているな?」

「は、はい」

「世界創造神創生教の総本山寺院教会聖堂。ガルネス神王国内の世界創造神創生教会関係者は全て囚われの身にある。知っているな」

「……は、はい」

「我等が組織を率いる御方とそれを支える同志が消息を絶った。知っているな?」

「!?消、消息を絶ったっ?? ……ですが、お言葉ですが、依頼は従来通り変わらずに……いったい何が、起こって……嫌な予感がする」


「そこでだ。話を戻そう。ソールパッツァ商会会頭ジュンジェムに問う。依頼者は誰だ。何処で依頼を受けた。我等が組織に非ずとは気付かなかったのか?」

「……」

「どうした何故黙っている」


 エリウス、黙ってるのはですね。更に冷えた馬車内の空気のせいで寒くて喋れないだけだと思いますよ。


 唇が紫色になってるし。それに、全身がガタガタ震えてますからねぇ~。


「考える時間を与えよう。その間と言っては何だが、シュヴァンツ、シュッペに聞きたいことがある」

「「はっ、腐れ根(ヴルツェル)に敬意を、殿下に忠誠を」」


 腐っても、(シュヴァルツ)か。シバリングはしているがまだまだ平気そうだ。


「お前達は、任務の背後に我等を騙る似而非者がいるとは気付けなかったのか?」

「も、申し訳ございません。まさか」

「まさか。だと? シュヴァンツよ、まさかとは何だ」

「い、いえ。まさに、そうまさにそうなのです。……あ、その……そうだ、わ、我等二人を騙る似而非者の噂を聞き探っている矢先に今回の任務が……」

「えっ? 雑魚など気にするな。陰に身を置く者として有名になるのも困ったものですって」

「言ってない」

「え、でも」

「仮に言っていたとして、そ……それは似而非者を我等が組織の名を騙る愚か者共をあぶり出す為の方便だったかも、方便です」

「前に、ラワルトンクとコルトで続けて私達の偽物を見かけた時、あのマントは大寺院で支給された物に見えるって、あれ、あれってなるほど、そう言う」

「そ、そうだ。あの時から私は確信を持っていたんだ。我等の中に似而非者がいるとなっ!!」


 なんだろう。物凄く胡散臭い。上手くまとまった感じだけど、シュヴァンツことダグマーさんの必死さが逆にとっても嘘臭い。そうとしか思えない。


 そして何がそんなに楽しいのだろう。シュッペことインガさんの声からは高揚感が伝わって来る。


「シュッペよ。ラワルトンクとコルトで見かけたのはいつの話だ?」

「はっ、見かけたのは...... ~ ......」

貴重な時間をありがとうございました。

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