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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
-スタシオンエスティバルクリュ編ー
52/1227

1-39 神様の姓と、神様の下僕。

宜しくお願いします。

――― ブオミル侯爵領ロイ

ロイの駐屯騎士団事務所(オルドルロア)臨時第3師団本部室

――― 6月6日 20:10


 ブオミル侯爵領ロイの駐屯騎士団事務所(オルドルロア)へ移動した俺は、中央騎士団第3師団団長のジェルマン・パマリ子爵様と、その夫人で中央騎士団第3師団遊撃部隊隊長のマリア・パマリさん。その令嬢で中央騎士団第3師団遊撃部隊見習いのアリス・パマリさん。そして、大樹の森の聖域の精霊樹に宿りし精霊で大精霊のマルアスピー様。鉱山都市ロイの貴族領軍私兵隊侯爵邸(領主館)警備部の呪詛対策室室長で125歳の解呪士モニカさんと、モニカさんの父親で39歳の解呪士ピーターさんと、モニカさんの母親で33歳の解呪士ビアンカさんと、駐屯騎士団事務所(オルドルロア)に臨時で設置された中央騎士団第3師団の本部室に居た。


≪ピピピッ ピピピッ ピピピッ ピッ!


「身分カードでは、確かにピーターさんは150歳。ビアンカさんは144歳。見た目は御覧の通り若さ溢れる30代です」


「今の状況のまま社会に復帰するのはやはり難しいな」


「私も、両親と一頻語り合い暫くしてから冷静になって今後の事を考えどうした物かと思案しておりました」


「モニカさん。俺も迂闊でした。ジェルマン殿に指摘されていなかったら、自己満足を暴走させただけで、モニカさんピーターさんビアンカさんに迷惑をかけるだけになってしまうところでした」


「行政手続きや通行管理手続き等を回避し生活すれば大丈夫だとも考えたのですが、病気や怪我や事件。全く行政のお世話にならないで生きて行くのは、この身分カードと容姿では不可能だろうと結論に至り、モニカにロイク様にもう1度何とか相談出来ないかと話をしていたのですが・・・」


「ですが、モニカからロイク様の御身分をお聞きし、私達の様な一般人では会いたいからと言って会える御方ではないと・・・」


「はぁ~・・・そうですか・・・俺の身分ですか・・・」


「私達家族は決してロイク様の崇高な志の妨げになる様な真似は致しません。寧ろ大恩あるロイク様の為に粉骨砕身全身全霊の決意です」


「解呪士3人に力を貸していただけるのは心強いですが、俺は解呪しただけですから、そんな大恩とかって考えず友人として気楽にお願いします」


「モニカ、私達が石化していた111年の間に時代は確かに変わった様だ。国王陛下に次ぐ御身分の公爵様が・・・」


「まぁ~。今は、身分や立場の話は別として、今後の件について話し合いましょう。先程、ロイク殿に提案しロイク殿からは了承を得ている話なのですが......



......と、国王陛下の前で石化や継承の呪いの解呪を行い。石化し100年近い時間を飛び越えてしまった皆さんと同じ境遇の解呪士達に、新たな身分を国が証人となって発行する。国王陛下や国の中枢達も目の前で起きた現実に対しては建前という物がある。過去からの生還者として一時的に政治に利用され可能性もあるが、社会の中で保障も無く生きるよりは良いと思う。依り代となり地域や未来を救った祠の守り人(ピンイン)の方々の名誉回復も私は必要だと考えています。石化していた皆さんにとっては複雑かもしれませんが理解していただきたい」


「ジェルマン・パマリ子爵様。私達は解呪士です。自らの力が及ばず解呪返しの呪詛によって呪いを受け石化したのです。自分達の力足らずが原因であって依頼者の方を逆恨みする様な事はありえません」


「そうですか。それでは、私の考えに賛成していただけるという事で良いのでしょうか?」


「ロイク様。ジェルマン・パマリ子爵様。どうぞ宜しくお願い致します」


「お願い致します」


 ピーターさんとビアンカさんは頭を下げた。


「ロイク様。私は両親の解呪を機に、領軍の役職を退こうと考えています。125歳の私が両親といつまで一緒に居られるのか分かりませんが、残された時間を少しでも長く多く両親と過ごしたいと考えております」


「親子の時間を大切にするのは良い事だと私も思います。ロイの御自宅でゆっくり過ごされるのは問題無いのですが、王都への移動のタイミングが問題です。ピーターさんとビアンカさんの移動はロイク殿の転位で通行管理を無視するとして、モニカさんはロイの外出手続きと、モルングレーの入都手続きが必要です。年齢を考慮して手続き後はモニカさんもロイク殿の転位移動が良いと思いますが、ロイからモルングレーへの移動中となっている間は知り合いに遭遇する事を避けなければなりません。私達中央騎士団第3師団と一緒に王都へ移動している事にし世間を欺きましょう」


「ジェルマン・パマリ子爵様。ありがとうございます」


 モニカさんは、深々と頭を下げた。


「ロイク殿ありきの方法なので、私というよりもロイク殿にお願いします」


「俺は自己満足で動いてるだけなので、気にしないでください。・・・ふと、思ったんですが、領軍の仕事を止め王都へ行って来る何て言ったら、モニカさんの息子さんやお孫さん達が心配しませんかね?」


「息子達は既に亡くなっています。孫達でも70代~80代の老人です。107年間の軍での疲れを癒しに二泊三日で湯治に行って来るとでも言っておけば良いのです。それに80年以上も一緒に住んでおりませんでしたし、毎日会いに来てくれるのは来孫(らいそん)のルナくらい」


らいそん(・・・・)?』


 なかなか聞かないし、人間では寿命の問題で難しいので分からないと思いますが、孫の孫の子供です。


『長生きな人間種だからこその芸当という訳ね』


 芸当というか、まぁ~そうですね。


来孫(らいそん)とは流石、125歳のモニカさんですな!ハッハッハッハ」


「私達から見ると、昆孫(こんそん)という事か・・・」


「そのルナに伝えておけば、他は誰も私の事を気にする者はいません」


「モニカさんの家族の事はモニカさんにお任せするとして、俺達が国王陛下に謁見するのは今月の10日です。第3師団としてロイを発つのはいつを予定していますか?」


「2日後の8日の昼食後を予定しています。休憩を挟み夜になる前に王都へ到着する予定です」


「そうなると、モニカさんは8日の夜からは王都に居た方が良いって事ですよね?」


「王都での滞在中は私の別邸を使うと良いとして、今日から王都に到着するまでの間は、気を付けてください」


「分かりました」


「はい」


「モニカ。そのルナって娘だけでも、私達に会わせて貰えないかしら。毎日通っていたのなら私達を見ていて知っているわよね?」


「石化した二人の埃を払い、移動を手伝ってくれたのはあの子です。解呪されたと知れば喜ぶと思います。ロイク様。来孫のルナには会わせても良いでしょうか?」


「協力者がいた方が良いと思うし、モニカさんが信用出来る人なら問題ないと思いますよ」


「ありがとうございます」


「御礼を言われる事は何もしてません」



――― 東モルングレー山脈

中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ) 一応別邸の自室

――― 6月6日 22:40


 ジェルマン・パマリ子爵様、マリアさん、アリスさんの3人とロイの駐屯騎士団事務所(オルドルロア)で別れた俺は、125歳の解呪士モニカさんを改めてパーティーメンバーに加え、モニカさんの父ポーターさんとモニカさんの母ビアンカさんの2人をパーティーメンバーに加え、3人を【フリーパス】でモニカさんの家へ送った。


 その後、中空(スタシオン)の避(エスティ)暑地(バルクリュ)の家へ戻った俺は、いつも突然届く創造神様からのメールを1人自室で確認していた。


***********************

 R4075年06月06日(聖)時刻22:40


 差出人:Souzoushin-Sama

 宛先 :Roiku Charrette

 件名 :指令②


 指令② 迷子の御使い天使を探せ


 期限 6月6日 時刻29:59:59


***********************


 今日中に迷子になった天使を探せって言われても。天使って何なのか知らないんですけど・・・運の神様に記憶操作を元の状態に戻して貰うのも急ぎたいし、この天使の事も聞いて見る事にしよう。


 運の神様は今何処に居るんだ?・・・検索:対象・運の神様&遊びの女神様 ≫


≪・・・干渉規制対象ワードです。


 神様についてはダメって事なのか?あのガラス玉は、離宮になっちゃったし、どうしよう。創造神様にメールを送って運の神様に会いたいって伝えるのもおかしな話だしなぁ~・・・


『ロイク。どうしたね?』


 うおっ!


『呼んでおいてそれはないね。流石のあたしも傷付くね』


 突然、話掛けられたの驚いたんです。


『それで、どうしたね?』


 運の神様に折り入ってお話があります。


『話かね。結婚の申し入れなら、答えはYESだね』


 今迄の流れからで、どうやったら結婚の申し込みになるんですか!


『違うのかね?』


 当たり前です!


『そこまではっきり言われると、流石のあたりも気付くね』


 あっ・・・嫌いだからとそうい訳じゃ無いですから・・・


『それでは、あたしは好かれているという事だね。良かったね』


 神様の事を嫌う者なんて居ませんよ。皆、畏敬(いけい)敬仰(けいぎょう)の念を常に心に持っているはずです。


『ロイク。君は、そんな事を気にしていたのかね』


 はい?


『安心するね。あたしは、仕事と遊びの線引きを確りする女だね』


 はぁ~・・・?


『プライベートとビジネスは確り分けて生きてるね』


 ・・・遊びの女神様だし、遊びも仕事ですよね?


『仕事の遊びと、プライベートの遊びを確り分けられる女だね』


 運の神様の仕事への姿勢は分かりました。それで、本題なんですが......


『他の人間種の事等気にする事はないね。プライベートでは良い妻になるね。仕事の時は皆の神様だがね』


 何の話をしてるんですか?


『君は、冗談の通じない男だね』


 冗談に聞こえないからですよ・・・


『半分、本気だったね』


 はいはい、分りました。半分本気だったんですね。ありがとうございます。・・・それで、話をしても良いですか?


『何を言ってるね。ずっと話をしているね』


 こういう話じゃなくてですね。


『冗談だね』


 ・・・それで、運の神様に調整していただいた今の記憶の状態だと、俺の立場が微妙で周囲の人間と会話が難しいんです。何とかなりませんか?


『どうしたら納得するね?』


 友人関係を元の状態に戻して欲しいんです。


『人間関係の相談かね?あたしは運の神だからね。適任では無いね』


 先日、記憶をコルト下界の人間の記憶を大規模に操作しましたよね?


『したね』


 操作する前に戻して欲しいんです。


『困るのは、ロイク。君の両親だね』


 ・・・何か良い方法ありませんか?


『考えておくね』


 可能な限り早くお願いします。


『そうだね。呪いを解呪して周っていたようだがね。気を付けるね』


 大丈夫ですよ。状態異常が効かない身体ですから。


『そうじゃ無いね。タブレットに保管してあった継承の呪いを見たね。あれは、地属性闇属性邪属性3つの属性を複雑に組み合わせた精霊による物だね』


 111年前に、邪属性の自然魔素(まりょく)が暴走して、抑えた事でその呪いが生み出されてしまった様なんです。精霊様が関わっているんですか?


『呪い返しや解呪返しは人間にも出来るね。呪いを子々孫々に継承させるのは邪属性の心得を所持した者か精霊以上の存在でもない限り難しいね』


 精霊様が関わっているとしても大丈夫ですよ。俺にはマルアスピーが居ますから。


『そうだね。彼女はいつでもロイク、君の味方だったね』


 だった?


『味方だね・・・あたしも、君の周囲に居る全ての存在が君の助けになるね』


 それには、俺も感謝してます。この状況になる為には沢山の偶然が重なる必要がありましたからね。なので、やっぱり神様にはとても感謝しています。


『神の導きは全て必然だね。偶然で片付けられる程、簡単に物事は重なって居ないね』


 でも、それだと人間は何かに抗う事も努力する事も止めてしまいますよ。


『違うね。どの道を選択するのか、未来を紡ぐのかは人間だね。神は沢山の可能性を全ての種に与えているに過ぎないね。経緯の結果と選択の結果。最後の時がどのような結果になるのかは必然では語る事は出来ないね』


 道は沢山あるけど、どれを選択するかは偶然で、経緯がどの様な物になるのかも偶然で、最後の結果がその積み重ねなら、それって偶然の積み重ねって事になりませんか?


『必然の中から偶然を選択し、必然の中から経緯の状況を紡ぎ、数ある必然の結末の中から偶然それを最後の時として迎えるね』


 何だか、偶然と必然には余り意味が無い気がしてきました。


『そういう事だね。物事全てに理由や意味を求めてはいけないね。理由の無い行動。理由の無い気持ち。理由の無い現象という物が世の中には意外に多いね』


 記憶の件と呪いの件は理由がある事なので、記憶の件は本当に御願します。


『任せておくね』


 それと、運の神様は、天使って何か分かりますか?


『世界創造神の使い。召使下僕みたいな存在だね』


 創造神様の使用人って事ですね。


『そうだね。それがどうしたね?』


 創造神様から、この天使って人が迷子になったから探し出す様にと指令が来たんです。


『天使は人ではないね。神界と神域と精霊界と精霊域と各下界を創造神の指示に従い行ったり来たりする忙しい存在で、天使という種族だね』


 種族なんですか!


『天使を探すのは簡単だね』


 そうなんですか?探し出す方法を教えてください。


『それは構わないね。しかしだね・・・ロイク。君は先程断ったね』


 何をですか?


『結婚だね』


 天使を探す方法ですよね?


『そうだね。奴等は神気の強いおめでたい匂いを嗅ぎ付けて必ず現れるね』


 ・・・それ以外でお願いします。


『分かったね。それなら、一緒に探した方が早いね。今からそっちに行くね』


 分かりました。待ってますので、お願いします。


≪バフっ


「来たね」


「はやっ!・・・」


 運の神様は、俺が話終える前に、俺が腰掛けていたベッドの上に出現し舞い降りた。


「家が近所だからだね」


「近所って・・・」


「このベッドは創造神がくれた物だったね?」


「そうですね。最初からありました」


「これは、神水鳥の神聖羽毛の最高級品質の極上物の掛布団だね。素晴らしいね。眠くなって来たね・・・ロイク。神であるあたしが許すね。隣で眠る権利を与えるね」


「いえ結構です・・・・・・」


「そ、そうかね・・・・・・」


「天使を探しに行きましょう」


「見返りは何だね?」


「神様が神様に頼まれた事で見返り要求ですか?」


「神は忙しいね。そしてケチで貪欲で、人間の為に存在している訳ではないね」


「何ですかそれ、まるで子供を産むだけ産んで教育も躾も何もかも放棄した親みたいじゃないですか」


「神は人間の親じゃないね。神なんだね」


「・・・不思議なQ&Aは!」


「さて、遊んでいないで探すね」


「・・・・・・そうですね・・・宜しくお願いします」


「タブレットを出すね」


「タブレットですか?」


「そうだね」


「分かりました」


 可視化:対象・運の神様・常時


「画面を展開してくれれば見えるね」


「あ、はい。それでは、拡大だけします」


 表示画面:10倍に拡大・今だけ ≫


≪・・・拡大しました。


「なるほどだね。思っていた以上に綺麗で鮮明な映像だね。天使を検索してみるね」


「はい。検索:対象・下界で迷子の天使 発動 ≫」


≪・・・干渉規制対象ワードです。


「あっ、そうでした。運の神様。どうやらタブレットは神様とかの事を調べる事は出来ないみたいなんですよ」


「知らなかったね。しかしだね天使は神では無いね」


「でも、干渉規制対象ワードって・・・」


「干渉しなければ良いね」


「干渉しないでどうやって検索するんですか?」


「興味ないんだからね。でも検索って感じで検索するね」


「いや、それ無理でしょう」


「そう思うね」


「・・・頼みますよ・・・」


「ハッハッハ。分かったね。タブレットを借りるね」


「構いませんが、俺のスキルなので......


「タブレット認証更新:対象・運の神遊びの女神フォルティーナ」


≪パチン


 運の神様は、タブレットへの指示を口にしながら指を鳴らした。


≪・・・認証更新しました。


「そういえば、タブレットの中から宝物殿の扉を取り出して、この家に設置したの神様でしたね」


「そうだね。今、更に便利にしてやるね。ちょっと待ってるね」


「はい」


「干渉規制を変更」


≪パチン


 運の神様は指を鳴らした。


≪・・・干渉規制変更を受け付けました。


「コルト下界、精霊界、精霊域に滞在する、神界と神域に存在する者の検索許可。ロイクの全スキルをタブレットに関連付け、コルト下界、精霊界、精霊域、魔界、悪魔域、魍魎域におけるタブレット画面による介入の許可。干渉規制変更許可権限女神フォルティーナ。対象・眷属ロイク・シャレット・更新」


≪パチン


 運の神様は指を鳴らした。


≪・・・干渉規制を更新しました。


「今ので、天使を検索出来るんですか?」


「そだうね。寂しくなったりムラムラモンモンとした時、あたしを検索すると良いね」


「何か嫌な予感がします」


「冗談だね。だがだね、下界に滞在しているあたしとはいつでも画面で顔を見つめ合いながら会話が出来るようになったね」


「クロコダイアンさんやchef(シェフ)アランギー様とは出来ないんですか?」


「彼等は神界や神域に存在する空間に住んで居るからね。それに、鰐やおっさんと顔を見合わせるよりも、このあたしとの方が心が癒されるね」


「・・・そ、そうです・・・ね・・・」


「その反応は何だね。流石のあたしも傷付くね」


「・・・それで、天使を検索出来るんですよね?」


「そうだね」


「それなら、検索:対象・下界で迷子の天使 ≫」



「あれ?」


「忘れていたね。タブレット認証更新:対象・ロイク・シャレット」


≪パチン


 運の神様は指を鳴らした。


「これで、ロイクのタブレットに戻ったね」


「・・・」


「どうしたね」


「運の神様ってやれば出来るん神様だったんだなぁ~と、運任せなところがある神様だったので、見直してました」


「運の神様だからね。運任せなのは仕方がないね・・・やれば出来る神様だったって傷付くね」


「済みません。半分本音で言っちゃいました」


「素直なのは良い事だね。しかし傷付くね」


「ごめんなさい・・・」


「後で、見返りを要求するから許すね」


「ただより怖い物は無いって事ですね・・・分かりました。無理な事は無理ですからね」


「分かっているね。さぁ~検索するね」


「はい。検索:対象・下界で迷子の天使 ≫」


≪・・・対象:天使アラキバ・場所:コルト下界です。


「何か、ちょっと良くなった感じです」


「ちょっとじゃないね。表示 ≫」


≪パチン


≪・・・表示しました。


***********************

 R4075年06月06日(聖)時刻23:10


 【天使アラキバ】の所在地


 【コルト下界】

  ↓

  →【ゼルフォーラ大陸】

   ↓

   →【ゼルフォーラ王国】

    ↓

    →【トゥージュー公爵領】

     ↓

     →【サーフィス(Sir・Fils)

 

 ・上級貴族街ゴールデンビーチ地区1-7

  【リラリス・トゥージュー公爵夫人邸】


***********************


「リラリス・トゥージュー公爵夫人?何処かで聞いた様な・・・取り合えず、アラキバという天使にあって創造神様が探していたと伝えようと思います。サーフィスに行って来ますね」


「待つね。タブレットの新機能を試すね」


「新機能ですか?」


「そうだね。この画面で指示する事は、リアルタイムである事を条件に、干渉規制を解除した界や域であれば、画面に映し出されている万物に干渉出来るね」


「離れた場所から、画面を通して何でも出来るって事ですか?」


「そうだね。あたしやマルアスピーのの入浴を覗き、タブレットの画面を通し乙女の魅惑の柔肌を撫で回す事が出来るね。待ってるね」


「なっ?そんな事しませんから・・・運の神様って痴女神様ですよね」


「ロイク。君はあたしを褒めるのが上手だね。飴と鞭の心得を実は持っているね!」


「そんな物持ってませんから!・・・って、それで、タブレットを使って天使に何をすれば良いんですか?」


「天使は滞在する世界の何かに姿を変え、しかも決して姿を見られない様にする」


「化けてるのに、見られない様にするんですか?意味無くないですか?」


「あるね。間違って見られた時に、天使として見られていない事になるね」


「なるほど、2段構えって事ですね」


「そして、素早くて直ぐに他の次元に逃げてしまう」


「まるで逃げ回っている様です。創造神様の指示で仕事をしてるんですよね?」


「そうだね」


「でも、直ぐに逃げてしまうって事は、厄介ですね」


「タブレットの出番だね。まずは、タブレットの画面で天使を聖属性で捕捉するね。捕捉してから【召喚転位】でここに召喚するね」


「なるほど。運の神様がやった方が確実じゃないですか?」


「頼まれたのはあたしじゃないね」


「・・・分かりました。天使アラキバの所在を地図で表示 ≫」


≪・・・表示しました。


「これでどうしたら良いんですか?」


「対象を選んだら、魔法を発動するね」


「分かりました。対象:天使アラキバ・精霊聖属性下級魔法【テルールパンセ】レベル2・自然魔素:清澄聖属性180分の1:発動 ≫ 魔法の効果が対象に反映した場合は、対象の表示色を青から赤へ移行」


 タブレットの画面上の天使アラキバの表示が青から赤へ変わる。


「ロイク。君の魔法の発動は変わっているね。もっと簡単に発動する方法があるね」


「そうなんですか?」


「天使を創造神の所に送還したら、教えてあげるね」


「ありがとうございます。って、捕まえたり送還するのが目的じゃないです。あくまでも探す事が指令・・・あっ!天使を魔法で拘束しちゃったじゃないですか・・・」


「探すのも捕まえるもの同じだね」


「違いますよ」


「細かい事を気にしていてはハゲるね。拘束してしまったものはしょうがないね。さぁ~召喚するね」


「・・・天使が怒ってたら責任取ってくださいよ。対象:天使アラキバ・【召喚転位】場所・俺の目の前・発動 ≫」


 黄金の兜を被った百獣の王ライオンの石像が俺達の目の前に現れた。


「・・・石像?」


「天使アラキバ。仕事もしないで石像の真似事かね?」


 石像は喋らない。


「あたしは、運の神フォルティーナだね。君を召喚したのは、創造神とあたしの眷属ロイク・シャレットだね。石像の真似事をしているのは何故だね?」


 石像は喋らない。


「・・・ロイク。拘束の魔法を解くね」


「逃げちゃいませんか?」


「あたしの神気で閉じ込めるね」


「分かりました」


 俺は、ライオンの石像に手を翳し、聖属性の自然魔素を自身に吸収し、【テルールパンセ】を解除した。


≪パチン


 運の神様は、俺の解除と同時に指を鳴らした。


「天使アラキバ。仕事はどうしたね?」


 石像は喋らない。


「運の神様、おかしくありませんか?・・・これって本当に石化してません?」


≪カンコン カンカン


 運の神様は、石像に歩み寄ると、石像が被っている黄金の兜を叩いた。


「この兜の呪いによって石化しているね」


「俺って石化に縁があるのかな?」


「ハッハッハ。それは面白い縁だね。さぁ~ロイク解呪するね」


「俺ですか?」


「あの兜は中途半端な神気を弾く対神気用の強力な耐性付与が神授されているね」


「また随分と面倒な物を・・・自分達に都合の悪い物を神授したんですか?」


「中途半端な力の場合だね。だが力加減を間違うと跡形もなく消えるね。だからロイクだね」


「って、俺自分で言うのも何ですけど、加減全く出来て無いんですよ」


「いつもの手順で魔法で解呪するね」


「・・・ま、魔法で良いんですね」


「神気を弾く効果があるだけで、魔法や魔術を弾く効果は無いね。石化を解呪する前に、兜の呪いを解呪するね」


「分かりました。精霊聖属性下級魔法【ベネディクシヨン】レベル4・自然魔素:清澄う聖属性180分の1:発動 ≫」


 ライオンの石像は頭に被った黄金の兜だけではなく全身が神々しい白い輝きに飲み込まれる。


「・・・ロイク。君は、自然魔素(まりょく)の清澄属性で、神気ではないが神気と同じ解呪【sceau(ソー)libération(リベラシオン)】が扱えるのかね?」


「いや、普通の聖属性魔法【ベネディクシヨン】第四形態の呪い解呪の威力を180分の1に抑えた物ですけど・・・」


「ん?うわっどうして人間種の目の前に居るっち。・・・あれ?転位でき・・・何だここ・・・時空監獄?どうなんてんだっち??????」


「あっ、動いた」


「一回の魔法でどっちも解呪した・・・?みたいだね」


「そうみたいですね」


「天使アラキバ。君は創造神の仕事もしないで石化していたみたいだね。何があったんだね?」


「うん?俺っちの名前を知ってんお前は誰だっち」


「あたしは、運の女神フォルティーナだね。君を召喚し石化の呪いから救い出しのは、創造神とあたしの眷属ロイク・シャレットだね」


「人間種じゃなかったっちか」


「彼は人間ではあるが、創造神に選ばれた者だね」


「分かったっち。逃げないっちから、監獄から解放してんくれっち」


≪パチン


 運の神様は指を鳴らした。


「どうして、石化してたね?」


「俺っち、世界創造神様に頼まれてん、コルト下界に来たっち、仕事は守秘義務があってん教えられないっち、仕事の後空から地上を見てんたっち、ビーチの方からキラキラ綺麗な光が見えたっち、バラバラになったマーブルの像と黄金の兜が落ちてんあったっち、綺麗な兜だと思った俺っちは被ったっち、気付いたらここに居たっち」


「その兜の呪いはさっき、石化の呪いと一緒に解呪したので、もう大丈夫ですよ」


「そうだっちか、でも、要らないっち、頭に物を被ったままでんは、天使の輪が隠れてん力のコントロールが難しいっち。これは、お礼にあげるっち」


 俺は、天使アラキバから、黄金の兜を受け取った。


「ありがとうだっち、お礼は今度するっち、まただっち」


 天使アラキバは、俺と運の神様に手を振ると、宙の中に溶ける様に消えた。


「創造神に報告するね」


「そうですね」


 メール画面を表示 ≫


≪You've Got Mail


「あっ!たぶん、創造神様からです」


***********************

 R4075年06月06日(聖)時刻23:30


 差出人:Souzoushin-Sama

 宛先 :Roiku Charrette

 件名 :指令②クリアおめでとう


 女神フォルティーナは、

 神気を黄金の兜に注ぎなさい。


***********************


「だそうです」


「創造神からの頼みは無視出来ないね」


≪ホワァ~ン


 運の神は、黄金の兜に人差し指を当てる。人差し指が白く清らかな輝きを放つと、黄金の兜は白い腕輪(ブレスレット)に姿を変えた。


***********************

 R4075年06月06日(聖)時刻23:32


 差出人:Souzoushin-Sama

 宛先 :Roiku Charrette

 件名 :指令②クリアおめでとう


 女神フォルティーナは、

 神気を黄金の兜に注ぎなさい。


 その腕輪は、

 ロイク・シャレット専用武具です。

 神界の武具【白色(はっしょく)腕輪(うでわ)

 

***********************


「メールに文字が増えました。・・・何か、黄金の兜と比べると、地味ですよね?」


「そうだね」


***********************

 R4075年06月06日(聖)時刻23:32


 差出人:Souzoushin-Sama

 宛先 :Roiku Charrette

 件名 :指令②クリアおめでとう


 女神フォルティーナは、

 神気を黄金の兜に注ぎなさい。


 その腕輪は、

 ロイク・シャレット専用武具です。

 神界の武具【白色(はっしょく)腕輪(うでわ)


 その腕輪に、

 マルアスピー・シャレットより、

 自然魔素(まりょく)精霊聖属性を、

 最大魔力で注がせよ。


 その腕輪に、

 アル・オェングス・シャレットより、

 神気:聖属性を最大神気で注がせよ。


 その腕輪に、

 ****************

 ****************

 

***********************


「あれ?最後の方が読めないです」


「・・・ハッハッハッハッハ。なるほどだね」


「どうしたんですか?」


「指示に従って腕輪を成長させるね。読めない言葉のその答えが分かるね」


「マルアスピーと、アルさんに頼むだけなので、簡単に次の段階に行けると思います」


「そうだね」


「さて、指令が終わったね。見返りを要求するね」


「忘れていませんでしたか・・・」


「私は馬鹿じゃないね」


「・・・・・・それで、何が望みですか?」


「それはだね・・・・・・先に、魔術の属性と精霊魔法の属性と神気の属性の簡単な扱い方を教えるね」


「あ、ありがとうございます。凄く嬉しいです」



 俺は、30ラフン()という短い時間の中で、鬼の様な(シゴ)きを受ける事となった。それは、運の神様が創り出した空間の中で、運の神様が発動させた神気の属性を、全力全開で相殺させるという物だった。どちらか一方の方が強いと相殺は失敗する。何百発・何千発と発動させ教えは終了した。


「ロイク。君は、創造神から【清澄魔力変換】のスキルを貰っているね」


「はい」


「さっきの訓練は、ロイクだから出来た荒行だね。神気による属性や精霊気による属性。自然魔素による属性。君は全ての属性運用を清澄魔力に変換する事で好きなタイミングで好きな様に扱えるみたいだね」


「好きな時にですか?」


「そうだね。しかしだね、今のままでは強過ぎる力を統制する事が難しいね。あたしが力の放出を手伝ってあげるね」


「ありがとうございます」


「こっちに来るね」


「はい」


 俺は、運の神様の前へ歩み寄った。


「瞼を閉じるね」


「はい」


 俺が瞼を閉じると、運の神様が小さな声で俺に囁いた。


「今から、子供の神が神気を扱う時に、補助として使うスキルをロイクに神授するね」


「はい」


「いくね」


「お願いします」


≪チュッ


 唇に何かが触れる。



「終わったね。瞼を開けて良いね」


「はい・・・あの。今のって?」


「Kissしたね」


「・・・どういう事でしょう?」


「KissはKissだね。Baiser(ベーゼ)、接吻。口付そんな感じだね」


「今ので、俺は魔法の加減が出来る様になったんですか?」


「試しに火の魔法を何か発動してみるね」


「やってみます。精霊火属性下級魔法・・・・あれ?」


「分かったかね?」


「はい。頭に浮かびました」


「それが、子供の神が力の扱い方に慣れるまでの期間、発動時に補助してくれるスキルだね」


「なるほど......


***補助スキルの説明***


 魔法【発動威力】(中級)

 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 12345678910

 魔法【発動範囲】(中級)

 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 12345678910

 ※精霊魔法による属性の統制※

 ※☆1は魔術レベル10の約13倍※

 ※★1固定下方修正付不可※


 神気属性【発動威力】(上級)

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆ ☆ ☆

 12345678910111213

 神気属性【発動範囲】(上級)

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ☆ ☆ ☆

 12345678910111213

 ※神気による属性の統制※

 ※☆1は、魔法☆10の約13倍※


 神気【発動威力】(神級)

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 12345678910 ~

 神気【発動範囲】(神級)

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 12345678910 ~

 ※神気その物を統制※

 ※現在☆31まで発動可能※

 ※☆1は、魔法☆10の約166倍※


***********************


......これなら、心象する時も発動させる時も分かり易いです」


「それでは、あたしの願いを叶えて貰うね」


「は、はい・・・」


「運の神様、遊びの女神様と呼ぶのは他人が居る時だけにするね」


「他人ですか?」


「そうだね。家族の前では、フォルティーナと呼ぶね」


「神様を呼び捨てなんて出来ませんよ」


「許すね。寧ろ呼び捨てし忘れたら天罰をくだすね」


「・・・理不尽な天罰ですよ。それっ!」


「今更だね。神はいつでも理不尽極まりない存在だね」


「居直りましたね」


「神は何でも許されるね」


「・・・分かりました。2人の時はフォルティーナと呼びます」


家族(・・)の前ではフォルティーナと呼ぶ絶対だね。あと、あたしは、(カバネ)を名乗る事にしたね」


「カバネ?」


「苗字だね。今からあたしは、フォルティーナ・シャレットだね」


(うち)と同じ苗字ですか?」


「家族だからだね」


「大精霊様に神獣様に神様。(うち)って何気に凄い家族構成ですよね」


「そうだね。宜しく頼むね」


「まぁ~神様がシャレットを名乗ったからと言って、他の人間や神様に迷惑が掛かる訳でも無いし、良いんじゃないでしょうか」


「・・・ロイク。君は、本当に鈍珍(ニブチン)だね」


「どういう意味ですか?」


「マルアスピーの真似だね。フフフッ」


「何か不気味ですよ。それ・・・」


「流石のあたしも傷付くね」



 今日、魔法と神気の統制が、力の加減が出来る様になりました。力を最大で発動した時の自分自身の恐ろしさを理解しました。運の神様がシャレットを名乗る事になりました。


 創造神様からの指令②をクリアしました。とても簡単に終わってしまい何だかとっても不安です。



 そして、記憶の調整の事等(ことなど)すっかり忘れ、俺の6月6日が終わった。

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