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このKissは、嵐の予感。(仮)   作者: 諏訪弘
ーメア・イート編ー
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6-MS-91 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 人形も大根も三文、価値をレデムプション -

『主殿、船が来ました』

『想像してたより大きな船ですね』


 渋い声の少年擬きの大番頭から、ソールパッツァ商会の本店の裏手にある川の桟橋に着く輸送用の商船と聞いていたので、中型の川舟を想像していた。


 だが、桟橋に着いた船は大型の海舟だった。


 今、エリウスと俺がいるところは宙。姿を消し桟橋の上空十mの高さから堂々と一部始終を観察している。


 彼女達は二手に分かれて潜んでいる。シュヴァンツことダグマーさんは桟橋の真正面にある倉庫の前に積まれた積み荷の陰に、シュッペことインガさんは桟橋の下水の中だ。


 自身の商会の商品を盗ませ国に被害届を提出し補償金をせしめ取る。小物感丸出しの依頼を出す大商会とこんなせこい依頼を受けた(シュヴァルツ)。何かしっくりこないんだよなぁ~……。


『エリウス。彼女達、積み荷をどうやって運ぶつもりなんですかね?』

『中型の実験家畜が五十一匹と運搬用の檻が十ですよね。表通りでは目立ち過ぎ、かと言って桟橋のある裏通には表通りに通じる細い道が一本のみ、船も見当たりませんし。目立たずに運び出す為には盗んだ物を見えないようにする或いは収納するとかでしょうか』

自然魔素(マリョク)を内包した命ある存在を収納するのは』

『現実的ではない。ですが、主殿であれば理論的には可能なのですよね?』

『五十一匹が入った檻を十個も見えないようにする魔導具も』

『主殿であれば可能なのですよね?』

『確かに命ある存在を一時的に避難させる魔導具も移動設置型の潜伏の魔導具も俺は持ってます。でも、試験的に一個だけ作ったんで彼女達が持ってるってことはないです』

『主殿の次元で魔導具を作れるような者がいるとは思えません。そうなると必然的に方法は限られてきます』


 半分ふざけながら堂々と観察していると異様な光景が飛び込んで来た。


 人間種族(ヒューム)がぎゅうぎゅう詰めにされた小さな檻が次々と陸揚げされ、眼下の桟橋に並べられていく。


 実験家畜って……。

『え、あれって……エリウス、これはどういうことですかね?』

狂信者共奴(キョウシンシャドモメ)。……彼等は奴隷です。それも違法奴隷、我々が保護すべき者達です。旧教奴隷商最悪この国が絡んでいるかもしれません!!』

 え? マジですか。【時空牢獄】≫


「な、何だ貴様らっ!! 総員直ちに船に戻れっ!!」

「積み荷などくれてやれっ!!」

「命あっての商売だぁー!! 船を出せぇ―――!!」


『抑えて、神気が漏れてます、抑えて抑えて。この程度の怒りで神気を乱してどうするんですか」


 怒りの意思を持った神気の波動がエリウスを中心に広がった為、【時空牢獄】を展開しエリウスと神気を緊急隔離した。


 桟橋の上空では聖獣様から神獣様になったエリウスが怒りに震え、今にも神罰を落としてしまいそうな勢いだというのに、桟橋と船では三文役者も真っ青の三文芝居が失笑を誘っていた。


 この状況下で失笑する余裕があったのは俺だけだったと思う。


 十個の檻を桟橋に運び出した三文船は、棒読み台詞を大声で掛け合う三文役者達を乗せ下流へと流れて行ってしまった。


 ご丁寧なことに桟橋に本物の血を振り撒いてからの撤収劇だ。


『お!? エリウス、二人が動き出しましたよ』

『商品が奴隷だと知っていたようですね』

『助け出したい気持ちは分かります。ですが今は抑えてください。もう少し状況を見守りましょう』

『……か、畏まりました』


 もう大丈夫だろうと判断し【時空牢獄】を解除した。


 馬鹿げた三文芝居にも檻に近付く背の高い女二人にも全くと言っていい程に反応を示さない檻の中の人達。


 まるで意思を持たない人形のように彼等彼女達からは感情を感じない。


『昨日今日って感じじゃないですね。奴隷にされたのが最近なら、ここまで生きる希望や気力を失うとは』

『到底思えません。セリアンとエルフが多いようなので実験用というのは嘘ではないのでしょう。主殿』

『言いたいことは分ってます。フィーラ、カトムーイ、ダカイラと同じことがズィルパールでも行われている可能性があるってことです』


・・・

・・


「何をしていた遅いではないか」

「申し訳ありません。水が染み出し浸水していた為迂回し遅くなりました」

「言い分けなど聞きたくありません。貴方の失敗は貴方の命で償われるだけです」

「分っています。者共、転移陣の準備を急げっ!!」

「「「「「「「はっ」」」」」」」

「ふん」


 正面の倉庫から大きな布を抱えて出て来た八人の男達を、シュッペことインガさんは声を抑え叱責していた。

貴重な時間をありがとうございました。

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