6-MS-90 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 響かない届かない言葉ユアデルード -
トントン…………ガチャ。
「お待たせ致しました」
渋い声の少年擬きと初老の男性が部屋に入って来た。
「私を呼び付けたのはお前達か」
おっとっと第一声がそれですか……随分と高圧的で偉そうだけどこの人が店長なのか……この店って、大丈夫なのか?
「ヘナム様この方達は大旦那様の」
「こんな怪しい連中が親、会頭の知り合いだぁ? イグナーツお前騙されてるぞもっと頭使え、あっ、たっ、まっ!!」
偉そうな初老の男性は、少年擬きのこめかみを指で突きながら大声で罵倒を浴びせ、俺達に対しては侮辱ともとれる失礼極まりない言葉を繰り返した。
まだ続くんだろうか?
「噂通り。底抜けの阿呆か」
「何だとっ貴様ぁーっ!! 次期会頭のヘナム様を侮辱してただですむと思うなよっ!!!!」
「家畜相手に遠慮する必要はありませんね。大地に眠りし常しえ」
「シュ、シュッペちょっと何しようとしてるの。ちょ、ちょっと待ったぁ~」
シュッペことインガさんは、雰囲気一つ変えずに冷静に無機質に家畜と言い放つと小さな声で詠唱を始めた。
シュヴァンツことダグマーさんは一瞬でシュッペことインガさんと偉そうな初老の男性の間に移動し、ロングコート越しに杖を抑え付け慌てて詠唱を破棄させた。
「何をするのです」
「何をするのですじゃないでしょう。例えどんなに阿呆でも依頼主の息子を殺してどうするの。依頼主は我々の側だということを忘れるな」
「イグナーツっい今のはいったい何なのだ? あああの女はわ私にまま魔術を放とうとしたのかっ!?」
「ヘナム様殺されずに済んで誠に良かったですね」
「ウググググ……こ、こんな連中が本当に親父の……」
「ですから先程から何度もお伝えしました通り、彼等は大旦那様のいつものあれでございます」
「はっ、はは、初めからそう申せこの愚か者がっ!! あー、挨拶が遅れ実に申し訳ない。私はソールパッツァ商会会頭ジュンジェム・トンガネロールの長男で一号館本店の店長ヘナムだ。用件を聞いてやるからさっさと言え」
話がちょっとだけ進んだけど、これまた微妙な感じだな。
「ふっ、それが人に物を頼む態度とは、畏れいった。流石は天下に名高いソールパッツァ商会、店長ともなるとまるで御貴族様だな」
「イグナーツっ!!なんなんだこの女はっ!!!!」
「ヘナム様。ですから先程も申し上げましたが大旦那様が教より招待された方々です」
「聞、聞いておらんぞ」
「は? えぇ?? おかしですね……」
冷静で無機質なシュヴァンツことダグマーさんの挑発とも皮肉とも取れるれる言葉に偉そうで高圧的な老人は激怒し声を張り上げた。
やっぱりこうなったか。……ヘナムだっけ、この人本当に大丈夫なのだろうか。それに少年擬き今一瞬笑ってなかったか?
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「ヘナム様。大切な大切な取引先から態々足を運んでくださった大旦那様のお客様に対しこのような仕打ちはとてもではありませんが看過することができません。この件は大旦那様に一言一句漏らさず報告を上げさせていただきます」
……少年擬きはこの場を楽しんでる。そうとしか思えない。
「イグナーツっ!? じょ、冗談に決まっているではないか。そうだ、これは面白い冗談だ冗談。あー、あぁー、何だ。最近忙しくて寝不足気味でなっ不快な思いをさせたのであれば給金を上げてやる。……なっ、だからもう良いだろ、これで全部今まで通りだ」
「……能力以上の給金を大旦那様よりいただいておりますので、ヘナム様に上げていただく必要はございません。それと、番頭である私にではなく大旦那様のお客様に対し謝罪し誠意を見せるのが先ではないでしょうか。私はこのように考えておりますがヘナム様はどのようにお考えなのでしょうか?」
やっぱ、少年擬き、笑ってるよな……。
「お、思い出したぞ。イグナーツ、親、会頭の依頼で教から来るのは二人だと聞いたような気がする。だがここには四人いるではないかっ!!」
「はい、四人おります。それだけ今回は訳ありということなのでしょう」
「何? 今回は訳ありなのか? 二人も四人も大差ないと思うが……」
「確かにヘナム様が二人いても四人いても十人いたところで全くといって大差はないでしょう。ですが、彼等は教……ヘナム様の何百何千倍遥かに優れた方々です。金勘、商いが得意かもしれないヘナム様とは違うということをお忘れです。ですのでまずはヘナム様が先に仰られていた通りに致しましょう」
「私が言った通りだと?」
「はい。二人だろうが四人だろうがヘナム様が気にされる必要はございません。まずは死んでお詫びをするなり謝罪し許しを乞うなりしてください。まだ死にたくはないのでしょう?」
……少年擬きってヘナムって人のこと嫌いなのか?
「そ、そうだ。私はまだ死にたくない。女、疲れていたとはいえ言い過ぎた。この私とて未だ完璧には至っていない。先程までのことは互いに水にながそうではないか。うん、互いに許し合えたとことで、建設的な仕事の話をしようではないか。イグナーツっ!! 詳しく話せっ」
謝罪してないし……。言い分けにもなってないし……。
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「実行部隊は私達二人だ」
「あちらの御二人は私達の補助と監督です」
シュヴァンツことダグマーさんは、シュッペことインガさんの言葉に付け足すように俺達を紹介した。
紹介と言えるかは疑問だが気にしない。
「二人だと聞いていたのですが……そうですか。……なるほど」
「どう言うことだ、イグナーツ」
「どう言うことも何もそのままの意味ですよ、ヘナム様。彼等は彼女達の補助役で監督役。ただそれだけのことでございます」
「……む、難しい事はイグナーツお前に全て任せた。部屋に待たせてある者がいるので私はこ、これで失礼する。おっとそうだったそうだった。教会ゴホン、教からの商品が遅れているとウンドルが騒いでいた。イグナーツっ!!」
「はい」
「頼んだぞ」
「かしこまりました」
店長のヘナムはいったい何をしに来たのだろう。少年擬きはいったい何の為に店長を連れて来たのだろう。……謎だ。
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店長ヘナムが部屋を出て行ってからはスムーズに話が進んだ。
貴重な時間をありがとうございました。
 




