6-MS-82 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 先入観と固定概念はミスアンオポチュニティ -
メア(亜)下界で姿を晦ませた旧教関係者爾後の民は無視で良い。寧ろ放置で問題ない。
十六歳、誕生日の日の神授復活の条件を、彼等は集団転移後逃亡することで満たしてくれた。彼等には感謝の気持ちすら覚えてしまう。
家が抑えた旧教関係者は城の地下九階に新設した拘置所コルト下界型地下施設に実験を兼ね移送した。
コルト下界型地下施設とは、自給自足を可能とした拘置所のことだ。
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アシュランス王国
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→王都スカーレット
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→王城グランディール
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→地下9階拘置所
【地下9階拘置所】とは
コルト下界の自然の力の循環と環境をそっくりそのまま再現した突貫の平面世界に建設した拘置所。
作り掛けの天球とは別の視点から創造した簡易の世界。
二つの陽は勿論のこと、大空と大地と大海、巨樹の大森林、大自然と時空牢獄に囲まれたまさに理想郷そのもの。
一年は十日。息吹の春は一日目と二日目、火焔の夏は三日目と四日目、大樹の休息は五日目と六日目、結束の秋は七日目と八日目、水煙の冬は九日目と十日目。目紛るしく移り行く季節は自給自足の生活に革命を齎すだろう。
出口、入口、魔獣、飢餓といった煩わしい物事から解放された生活は心をウォッシュ、リフレッシュしてくれるだろう。
と、信じて創造した。
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彼等を地下九階の拘置所に移送した後、神授スキル【タブレット】で誕生日の日の神授の妨げになっている旧教関係者及びその対象者を検索した。
予想通りの結果だった。彼等の名前は無かった。コルトの光から隔離するだけで条件を満たせる。
神授復活の日は近い。かも……。
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「神授をいただき、旧教が世界創造神様を騙り悪事を繰り返していたことが露呈しました。信仰し続けている人達の気持ちが理解できません」
パフさん。俺なんか、露呈する前から世界創造神創生教会の教えとか理解できてませんでした。
村に教会がなかったってこともあるんだろうけど。
母さんは。
「働かざる者食うべからず。体でも頭でも何でも良いから動かしなさい」
親父は。
「腹は膨れねぇー、酔えねぇー、祈ってる暇があんなら狩りでも水汲みでも酒造りでも子作りでも良い、俺はなぁっ!! 生きてるって実感が欲しんだよっ、分かんだろうぉ―――おぅ」
って、親父の話はどうでも良いや。
家は両親ともに世俗主義というか現実主義に寄ってる。最近は神々様方に囲まれ非現実的な感じになってるけど、世俗主義だと思う。
俺が世界創造神創生教会の教えを理解できていなかったのは、たぶんこういうことだ。
「地位権力、富、名声。信仰ではなく利益、狂信者共には魅力的に映っているのでしょう。烏合であっても数が数ですから」
「数の暴力、集団心理ですか」
「そう、正にそれです、流石はパフ殿、私が言いたかったのはその集団心理を悪用している者が残っていて烏合を先導しているのではないかということです」
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エリウスとパフさんの熱の入った、もとい暑苦しいエリウスの話が終わるのを待って、話を切り出した。
「光が支配する時間は陽の光が入らない地下とか部屋に潜み、闇が支配する時間になったら活動する。そういった連中もいると考えた方が自然だと思いませんか?」
「狂信者共は潜むのが好きな連中です。主殿の懸念は残念ですが的を射てしまっています」
「誕生日の日の神授を再開していただく為には旧教に関係する人を闇に隔離する必要がある。経緯をどうであれ闇に隔離された状態の人はロイク様のタブレットでも検索できないということなのですよね?」
「えぇ、ん?」
「旧教に関係する人を検索すれば隔離されてる人も検索に該当すると思うのですが違うのでしょうか?」
「ぁあっ!! 俺、何やってんだよ。神授の妨げになってる人を……いつからだ、いつから間違って、イヤ間違ってはいないんだけど……イヤ思いっ切り間違ってたからこうなってる訳で……」
「ロイク様、落ち着いてください」
「やはり主殿も狂信者共への憤りを覚えていたのですね。ウンウン」
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取り乱していた訳ではないが、落ち着いた俺は、神授スキル【タブレット】で改めて検索しタブレットの表示画面を宙に大きく展開した。
検索したのは勿論、コルト下界に残っている旧教関係者全員だ。
「「「…………」」」
俺達の想定をはるかに上回る数だった。
旧教関係者は、フィンベーラ王国、マルメット王国、ベリンノック共和国、ベトギプス王国、アイゼンタール王国、ズィルパール王国、カタストロシュール王国、三皇帝ヴァルオリティア帝国。八ヵ国の至る所に潜伏していた。
国の中枢に居たからだろうか。王族大貴族の邸宅の地下で生活している者までいた。
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状況から判断し、国交のあるフィンベーラ王国とマルメット王国に潜伏している連中を先に片付けることにした。
因みに、国交のない国はベリンノック共和国のみ。
国交が微妙な国は内戦中のベトギプス王国、小競り合いが続いているアイゼンタール王国とズィルパール王国、ポヴォエェワンの町とポヴォーエスタの町で旧教の愚行を解決し王都リプメリッフルに招待されたが忘れて放置したままのカタストロシュール王国。
属国化した覚えはないが、他国には属国にしたと思われている節のある三皇帝ヴァルオリティア帝国とは、とっても複雑な状況にある。
だが、もうそろそろ夕食の時間だ。動き出すのは明日からにしよう。
それに、皆に相談した方が良いと思うし……。
貴重な時間をありがとうございます。
 




