6-MS-81 コルトに16歳の神授を取り戻せ - 心に刻もう忘れてはいけないオーダーオブスィングス -
式典に招待された訳ではない。高位竜人族の夫婦をドラゴラルシム竜王国に連れて行くだけの簡単な依頼を受けただけ。
フォルティーナの計らいとは違う気もするが計らいでパレードを少しだけ楽しんでから帰国した。
「高い場所から見る街の景色ってロマンティックですよね」
「赤い屋根の家ばかりでしたね」
「上からだと普通の家にしか見えませんでした」
どうやらパフさんの眼ではパレードを楽しむことは出来なかったようだ。景色は楽しめみたいだし良しとしよう。
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神授スキル【フリーパス】で国王執務室に戻ったパフさんと俺に気付き物凄い勢いでドアを開け執務室へと駆け込んで来たエリウスの口から怒涛の如く放たれる言葉を右から左へ左から右へとスルーしながら執務机の椅子に腰掛けパフさんが淹れてくれた紅茶を飲みながら一息つく。
「フゥー」
「あ、主殿。フゥー、フゥーじゃありませんよ。盾たる私を置いていったいどちらに行かれていたのですか?」
「さて、次の仕事はっと……」
「ロイク様、本日分は先程の物が最後になります」
「でしたら良い機会です。王の盾について」
「エリウスそれよりももっと大事な話をしませんか?」
エリウスは盾の話になると面倒臭い奴に豹変してしまう。三度も付き合わされ、ハッキリ言おう、もう懲り懲りだ。
「はっ!!」
話し出す前ならこうやって直ぐに姿勢を正してくれるんだけどなぁ~。
「パフさん、応接テーブルに移動するんで、エリウスとパフさんの分も紅茶をお願いします」
「畏まりました」
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こうなるとは思っていたが……。
パフさんと俺は応接テーブル越しに対面し座り、エリウスは俺の後ろソファーの背もたれは挟み立っている。
「エリウス、行儀が悪いですよ。紅茶くらい座って飲んで欲しいんですけど」
「いえ。私は主殿の後ろで十分です」
前と後ろを意識して話すって結構大変なんですよ。どうせ気遣ってくれるならその心意気もう少しだけ違う方にさ……ねぇ~。
「大事な話って言うのはですね。世界創造神創生教会、旧教の総本山大聖堂教王枢機卿を抑えることは出来ましたが、まだ足りてないって件です」
「主殿には申し訳ありませんが手緩いと私は考えています」
俺もそう感じてはいる。が、今はエリウスの強行姿勢は放置だ。
「十六歳、誕生日の朝の神授が未だに復活していないのは何故か。それ」
「世界創造神様の名を騙り悪行を繰り返し世界に混乱と騒乱を齎した旧教が狂信者共が未だに大手を振って俳諧跋扈しているからです。主殿の御心がほんの少しでも柔いでくれるのであればと考え眷属を使い狂信者共の行方を探させておりますがいったい何処で俳諧跋扈しているのやら、未だに場所を突き止めることが出来ておりません」
タブレットで場所は分かってるんですよね。……長々と説明ありがとうございます。エリウスさんや。
「場所は分かってるんですよ。問題は国交の無い国の地方都市だったり辺境の集落だったり王侯貴族有力者達の邸宅だったりと結構広範囲に散ってるってことなんですよ」
「主殿の」
「ロイク様の……エリウス様続きをどうぞ」
「これはこれは、パフ殿申し訳ございません。譲っていただき感謝致します。主殿の神技タブレットで狂信者共の居場所が分っているのであれば、もう一つの神技召喚で強制的に拘置所へ押し込んでしまえば良いのではないでしょうか?」
それ思いつかない訳ないじゃん。
「試したんですよ。でもたった三人しか召喚できなかったんですよね」
「「え?」」
まぁー驚くよな。召喚した俺もこの結果には流石に驚いたし。
「chefアランギー様、イエレミーヤ様、ロザリークロード様、悪狼神様に相談したら、俺の召喚を回避する方法は結構あるみたいなんです」
「ヒュームに、主殿の神技たる召喚を無効化する力があるとは思えないのですが」
「人間種の私もそう考えます。間違いないと思います」
「フィーラで転位召喚できない人が数人いましたよね。彼等のような特異耐性を持った人達を使い研究していた可能性もあります。古代の技術を再現し俺達の知らない方法で何かしてる可能性もあります。ただ、可能性として最も高いのは転移の魔力陣や召喚の魔力陣を待機状態のままにしている。転移とか召喚には優先順位があるみたいで、後からの方は前のが済んでからじゃないと不発するか発動すらしないらしいんです」
「こちらから出向くことは可能ですよね?」
「近くまで移動してから会いに行くくらいは可能ですが会ってくれないだろうし逃げられてしまうでしょうね」
「でしたら協力者達も含め根こそぎ制圧してしまいませんか?」
「大混乱最悪戦争に発展ってことになったらどうするんですか。突いたのは俺なのに戦争になったら創造神様の御意向御意思で俺は傍観応援してるから皆頑張って戦ってってそれ不味いでしょう」
「「確かに……不味いですね」」
貴重な時間をありがとうございます。




